リプで来たサーヴァントが二人一組で摸擬戦するSS   作:warlus

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4戦目 岩窟王vs岡田以蔵

巌窟王のけたたましい嗤い声とともに、高速の光が岡田以蔵へと飛来する。

「じゃかしいわ!あほう!」

岡田以蔵は罵りながら、迫りくる光に向かって剣を振り下ろす。だがそれはすんでのところで躱されてしまい、カウンターで顔面にこぶしを撃ち込まれる。

ぶっ、といううめき声とともに、以蔵はひっくり返り倒れこむ。

先ほどから、都合8度ほどはそのような状態であった。

巌窟王と岡田以蔵の対決は、洋風建築の立ち並ぶ街中であった。二人はそれぞれ街中の離れたところからスタートし、都市中央の開けたスペースで鉢合い、そのままなし崩しに戦闘の形となった。

高速軌道を得意とする巌窟王にとって、広いスペースはそれだけで優位だ。

一方で、岡田以蔵には剣術の冴えはあるものの、高速で移動できる手段や、それを打ち落とせる武器は持ち合わせていない。

結果二人の勝負は、早々に一方的なものに変わっていった。

あるいは、以蔵が足早に屋内に逃げ込み、ルートを限定するような戦いに持ち込めば勝ちの目もあったかもしれないが、それはつまり、以蔵が巌窟王の速さに全く対応できなかったことになる。そのような情けない真似は、以蔵には決して許せなかった。

「あ゛あっ、くそっ。思いっきり殴りよって」

悪態をつきながら以蔵は立ち上がり、血の痰をぺっと吐き出す。

「リタイアという選択肢もあるぞ」

以蔵の周囲を高速で旋回しながら、巌窟王が投げ放つように提案する。

「阿呆言え。さてはおまん、わしの事を舐めとりゃせんか?」

「ふん、愚問だな」

巌窟王の挑発するかのような物言いに、以蔵は凶暴な笑みを作る。

「よういうた。憶えちょれよ、もう少しで見えそうなんじゃ」

以蔵はもう一度刀を前に構えなおす。

その姿に、巌窟王はすでに不毛さを感じていた。岡田以蔵から半ば喧嘩を売られるようにして始まったこの立会いだが、両者の格差は絶望的なものだった。

何物にも縛られない、とらえられない巌窟王と、言ってしまえばただ剣がうまいだけの岡田以蔵では、同じサーヴァントであっても大きな開きが生じていた。

そのため、格差をわからせて早々に降伏させてしまおうという巌窟王の試みだったが、以蔵は幾度と倒されても懲りた様子がまるでない。

往々にして痛い目に合わなければ理解できない者というのは存在する。目の前の男もそういった者なのだろう。

岡田以蔵に対して完全に見切りをつけた巌窟王は、以蔵を気絶させて終わりにしてしまおうと、今まで同じく以蔵に裁けないスピードで突進を仕掛ける。

平気なように振舞っているが、以蔵はすでに何発も良いものをもらっている。通常サーヴァントは多少殴り蹴られしたところで支障はないが、巌窟王のそれは強い怨嗟のまとった呪詛である。以蔵の体は猛毒に蝕まれるようにボロボロの状態だった。

「ちぇすとおお!!」

岡田以蔵の迎へ撃つ渾身の大上段。しかしそれを悠々と避けるのも、先ほどまでと全く同じ流れだ。

くだらないと感じつつ、巌窟王が以蔵の刀を横に躱す。

後はこめかみに一撃食らわせば終わりだろう。彼は冷静に判断して拳を振るう。

だが、その瞬間。巌窟王はありえないものを目にした。

以蔵の視線が、まっすぐにこちらを見据えていたのだ。

驚愕する巌窟王をおいて、以蔵は振り下ろした手の片方を離し、代わりに巌窟王の腕しっかりとつかむ。

「つかまえたぞ」

そしてその腕を強引に引き寄せ、思いっきり地面にたたきつけた。

「ぐっ!」

思わず巌窟王は呻く。たたきつけられた衝撃よりも、とらえられた事実のほうが彼を混乱に陥れていた。

岡田以蔵は天才の剣士だ。一度見た剣技はほぼ模倣できる。

つまりそれは、尋常ではなく目がいいということである。

相手の剣技を、体幹を、流動を、そしてその速さをたった一度で見切ってしまうずば抜けた天才の前で、巌窟王は自分の速さを見せすぎていたのだ。

これは、岡田以蔵という男を舐めていた巌窟王の侮りのつけに他ならなかった。

結果、巌窟王は以蔵に「捉えられた」。

「はっ…はっ…どうじゃ…」

巌窟王を組み伏せながら、以蔵は喘ぐようにして言葉を吐き出す。

「手を離せ、呪詛が浸食するぞ」

こうして組み伏せられている今も、巌窟王の体から放出される呪詛は、以蔵の体を蝕んでいく。

それでも、以蔵は構うものかとばかりに巌窟王を抑え続ける。

「はっ…じゃかしいわ…これで……わしの…勝ちじゃ…」

やがて堪え切れなくなった以蔵は、そうつぶやくと同時に意識を手放して倒れこんだ。

解放された巌窟王は立ち上がり、服の埃をぱんぱんと払ってから、一本煙草をくわえる。

巌窟王の誇りとは、とらえられぬことである。何者にも縛られぬ、あの監獄からも抜け出した男の象徴。

「ならば、ああ。確かにとらえられた時点で、俺の負けなのだろうよ」

巌窟王は素直に、目の前でつっぷせる勝者に賞賛を送ったのだった。

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