リプで来たサーヴァントが二人一組で摸擬戦するSS   作:warlus

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5戦目 クー・フーリンvsモリアーティ

「気に食わねえな、あんた」

お互いが顔を合わせて第一声だった。アイルランドの大英雄クーフーリンは、犯罪界のナポレオンことモリアーティを前にはっきりと嫌悪感を顔に出す。

両者を遮る物のない砂漠地帯。これ以上にないほどの決闘フィールドで、二人は対峙していた。

「それはそれは。大英雄ともあろうものが、こんな無害な老体を前にしてあんまりじゃないかね?」

「ぬかせ、おたくの顔は老獪な獣の顔だ。獲物のは前で決して爪を出さないな」

吐き捨てるように言って、クーフーリンは槍の穂先をモリアーティに向ける。モリアーティは武器を向けられているというのに、臆せずニイと頬を邪悪吊り上げる。

「だとしたら、どうするね?」

「ここで選べ。おとなしく棄権するか、死ぬまで戦うか。弱腰の男を相手に振るう槍は無い。ここで降りるんなら見逃してやるよ」

「死ぬとはまた随分物騒だネ。確かルールは両者で決めてよかったのではないかネ?」

尚もはぐらかし続けるモリアーティに、クーフーリンは腹立たしげに舌打ちをうつ。

「わかってんだろ?一度やり合うってんなら、俺はてめえを仕留めるまでとまりゃしねえよ」

クーフーリンからの容赦ない死の宣告に、モリアーティはふふっと苦笑いをする。

「それはまた随分と悠長なものだヨ、殺す相手の選択を待ってくれるなんて。いや、それが大英雄の器というものなのかな。おかげで、仕掛けを仕込むだけの時間を稼げてしまったじゃないか」

茶化したようにモリアーティが言った瞬間、クーフーリンの足もとが爆発した。

砂塵が大きく舞い、二人の視界をあっという間に埋め尽くす。

「目隠しか、くだらねえ」

「矢避けの加護、といったかね?」

モリアーティが口にする。そう、ことクーフーリンとアーチャーの戦いに於いて、クーフーリンの持つそのスキルこそがネックとなる。

クーフーリンが視認できる範囲であれば、あらゆる遠距離攻撃に対して対処しうるというスキル。

このスキルを打破する方法がなければ、アーチャーの長所はほぼ潰されてしまう言ってもいい。ましてやモリアーティは戦闘に秀でている戦士ではない。遠距離が通じなくなってしまった時点で、対抗する手段が無くなってしまうのだ。

「だから、煙幕でまず視界をつぶすって?」

あざけるように、クーフーリンは言葉を吐き出す。そして手に持った槍を振り回すと、周囲の砂埃をすべて掻き消してしまう。

「で、これで視界は空けたが」

「それはどうも、おかげでこちらも狙いやすくなったヨ」

視界が空けると、モリアーティはすでに300メートルほどの距離を取り、クーフーリンに銃口を向けていた。

機動式棺桶から一発の銃弾が放たれる。

だが、すでに視界は明瞭だ。ならばクーフーリンは矢避けの加護をもって、当たり前のように一発の銃弾を弾く。

そのはずだった。

「なっ!?」

驚きはクーフーリンのものだ。

手に持つ朱槍で弾いた一発の弾丸、矢避けの加護を使う必要さえないなんてことのない銃弾は、しかし確かに、クーフーリンの体に食い込んでいたのだ。

「貴様…」

「フライシュッツの弾丸」

弾をリロードしながら、モリアーティは言う。

「知らないかね?無理もない。私が取り込んだ幻霊のことなのだがね。悪魔と契約を交わし、7発の弾丸のうち6発までは必ず狙ったものに当てる。

分かるかネ?何があろうとも必ずだとも。もしかしたら通じないかもしれないという懸念はあったのだが、どうやら私の予測は正しいようだ。

この弾丸は君が矢避けの加護でどれだけ弾こうと、最終的には当たるようになっている」

クーフーリンは滔々と語るモリアーティの言葉を聞きながら、弾丸の当たった箇所、すなわち自身の胸部に触れる。

ぬちゃりと血のぬめりとともに、弾丸が手の平に転がる。

「やれやれ、君の心臓を狙ったのだがね。どうやらふつうの銃弾では君を打ち殺すのには火力不足らしい。

だが、あと5発も同じ箇所に打ち込めば、弾が心臓まで食い込むんじゃないかね?」

「はっ、ぬかしやがれ。はなっから一撃で殺せる腹じゃなかっただろう。

じゃなきゃ、こんなに距離をとる理由は無い筈だ。つまりこれは、」

「そうだとも、私の弾丸が君の心臓を食い破るか、」

「俺がてめえに追いついて心臓を打ち抜くか、」

「「どちらのほうが早いかって勝負だっ!!」」

 

お互いの咆哮と同時に、クーフーリンが疾走する。

300メートルなどクーフーリンにとっては一瞬で詰められる距離だ。しかし、モリアーティがそれを許しはしない。

2発目の魔弾の発射に合わせて、副次機関からも一斉掃射を放つ。

クーフーリンは矢避けの加護ですべての弾に対処できる。だが同時にそれは、ひとつひとつに対処していかなければ、被弾してしまうということでもある。

足を止め、様々な軌道を描くミサイルを順次払い、弾き、避けていく。だが、その隙を縫うようにして2発目の魔弾がクーフーリンの胸を抉る。

「ぐっ!」

衝撃にクーフーリンがのけぞり、モリアーティはその隙に3発目を装填。

再びいくつかの牽制のばら撒きとともに、3発目の魔弾を発射する。

両者間の距離は残り270メートル。

「小賢しい!」

クーフーリンは槍の柄で地面をついて大きく前方へ跳躍。爆撃を捌きながらも距離を詰める。

そこに3発目が着弾。

空中のクーフーリンは撃墜されたように落下する。

モリアーティはその間に4発目を装填。

両者間の距離は残り200メートル。

起き上がったクーフーリンは、脇目も振らずにモリアーティに向かって走る。

そこで、モリアーティが仕込んでおいた地雷が起爆した。

起爆と粉塵に一瞬足が止まっている間に、4発目が着弾。

モリアーティは即座に装填。

両者間の距離は残り100メートル。

モリアーティは複数のMAP兵器をばらまきながら、5発目の魔弾を発射する。

モリアーティはほくそ笑む。

ここでクーフーリンが足止めを食らっている間に6発目を装填して、むき出しになった心臓の霊核を打ち抜けば、勝利。

モリアーティの中で勝利の算段が完全に組みあがったのだ。

だが、

「なっ!?」

爆炎の中からボロボロのクーフーリンが飛び出してくる。

ありえない。あそこでMAP兵器の対処に追われれば、6発目の発射に間に合うはずはないのだ。

どう考えても時間の計算が合わない。

「刺し穿つ――!」

眼前で槍を構えるクーフーリン。その息も絶え絶えなボロボロの姿を見て、モリアーティはようやく自身の間違いに気づく。

最後のMAP兵器。クーフーリンはその爆撃の中を、一切避けずに被弾しながら突っ込んできたのだ。

「死棘の槍――!!」

放たれる朱槍は、一部の狂いもなくモリアーティの胸を射抜く。

ごぶっ、と心の臓を撃ち抜かれたモリアーティは大量の血を吐き出す。

「まったく…やられたヨ。計算とはいつも一部の蛮勇に覆されるのだ…」

霊核を打ち抜かれたモリアーティは、消滅とともにシミュレーションルームから退室する。

その寸前、

「だが、それもまた、面白い」

笑って、そう言い残していったのだった。

 

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