#リプで来たサーヴァントが2人1組で模擬戦するSSを書く 作:乃依
「じゃあ1人ずつくじを引いてね」
私はなぜ今くじ箱を持っているのだろうか。
流されやすいと言っても限度がある、というホームズのお小言が即座に飛んできそうだ…。
「レイシフトさせろ……?」
「今の環境で!?ムリムリ絶対ムリ!」
検討する暇も無くダヴィンチじゃんが手を頭の上で交差させながら抗議する。
「どうして?スカサハ。」
「うむ。何を隠そう…」
そう言ったスカサハは少し満足気な表情を浮かべて
「異聞帯とやらにもう1人私が居るそうじゃないか。であれば闘いたくなるのは戦士として当然の事だと思わないか?」
言い終えた後に何故か渾身のドヤ顔をキメた。
「私は戦士じゃないから分からないですけど…」
「ならば鍛えてやろう。お前も今日からケルトの戦士だ。」
「レイシフト検討するのでちょっと待ってくださ」
「こらーーー!!!!」
耳をつんざくようなダヴィンチちゃんの怒鳴り声が鼓膜を震わせる。
「…はぁ、スカサハ、気持ちは分かるけれど今そんな余裕は無いよ。どうしてもって言うならシミュレーションルームで戦闘の真似事ぐらいしか……」
「ならそれでいい。では1時間後に開始する。もう1人の私もそこに呼んでおいてくれ。」
「え、は、ちょ」
ダヴィンチちゃんの表情をチラっと横目で伺うと
「…よしよし」
思わず抱きしめたくなるような顔をしていた。
「最初はスカサハだけだったのに何で全員集合なの……どうして……」
どこからかその噂を聞きつけたカルデア中の英霊が私も俺も僕もアタシも、とこぞってダヴィンチちゃんの(簡易)工房に押し掛けてきたのだ。
私は燕青が怪しいと思っている。
「…みんな引いた?」
ちなみにその中にはホームズとダヴィンチちゃんも入っている。なんで?
「じゃあ1組目は………………」
穴が空くほど視線が注がれている。
「……順番的には妥当かな……。スカサハとスカディ。」
というか異聞帯メンバーまで入れてるの?
「バーサーカーのアルジュナが最後に来たら干からびそう……あは、はは…」
そんなこんなで。
「本当に私と同じ顔だな。」
「…」
同じ顔がふたつ。ひとつがウキウキとした表情を浮かべていて、もうひとつはムスっとしている。
「勇士と戦ってみたいとは言ったが私が求めているのは戦士ではない。分かっているのか、マスター?」
「そう言われましても…」
くじなのだから仕方がない。
「なんだ、つまらん。同じ私ならば敵を見つけたら襲い掛かるぐらいしてもよかろう。ちなみに私は我慢しているぞ。」
この人そんなバトルジャンキーだったっけ。そうだったっけ。
「そもそも、同じ影の国の性質なのだから、決着など着くはずがなかろう。死の因果は影の国の特性で跳ね返る。」
「ならば物理的に霊核を砕けばよかろう。キャスターになって心まで小さくなったか?」
ヒールの問題で少しだけ目線がスカサハの方が高い。
「…女王に不敬であるぞ、もう1人の私よ。」
「残念だったな、私も影の国の女王だ。王同士、対等に行こうではないか?」
「一緒くたにするでない。」
パキパキと音を立てて部屋中が氷で覆われ…え?
「ちょ、まだ私居るんですけど!?」
「はよう退け、マスター。」
「はぁぁあぃ!!!!!」
とりあえずダッシュで逃げた。
氷塊1つ1つに槍を投げる。
自分でも慎重すぎるとは思うが、あの氷はただの氷ではない、と自分の直感が言っていた。
妖しく紫色に光る氷塊、おそらくニブルヘイムを形成、維持している氷。
宝石のような輝きで人を魅了し、その間に命を奪うのだろう。
「それが無尽蔵に湧いて出るとはな…」
足元に現れた氷塊を砕き、上から降り注ぐ氷柱を槍で払う。
「フッ、手一杯か?もう1人の私。こういうことも出来るが。」
「なに?」
ヤツが1歩踏み出すと、おびただしいルーン文字が足元に広がる。
そして足の前は全て氷に━━━
「…1本取られたな、もう1人の私。」
「降参だ、降参。霊基まで凍らされては叶わん。」
『はい終わりー!!交代!こうたーい!!』
ダヴィンチちゃんの怒声で無理やり退出させられた2人は、仲良くなったんだろうか。