BLEACH - 鏡面世界   作:桂ヒナギク

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4.反転

 鏡面世界への突入に成功した新一とルキア。

 しかし、鏡面世界には人っ子一人いないのである。

「本当にこんな世界あったんだな……」

 と、新一が呟く。

「しかし誰もいないとは異様だな」

 と、ルキア。

「人間どころか、(プラス)も虚もいませんよ?」

 二人は鏡面世界を探索する。

「はあ……はあ……はあ……はあ……!」

 どこからか荒い息遣いが聞こえてくる。

 二人は音の方を振り向いた。

 すると、こちらへ走ってくる男の子が。その背後を死神が追う。

「待て!」

「いや! 来ないで!」

 新一は死神の目前に移動し、振り回される斬魄刀を自身の大刀で受け止めた。

「なにしてんだおめえ?」

「なんだお前?」

「俺は及川 新一、死神だ」

「なぜ魂魄を守る?」

「死神だからだ」

「貴様!」

 死神は新一の斬魄刀を押し返し、飛び退いた。

「ルキア隊長!」

「わかった!」

 ルキアが魂魄の男の子を保護した。

「死神が魂魄を襲うたあ聞いて呆れる」

「それが普通だろ」

(なに?)

 新一は考え込んだ。

(この世界は鏡の世界。左右反転してるなら、死神と虚の位置付けも反転してるのか?)

「そこをどけ。俺はその魂魄を斬るんだ」

(食べるんじゃなくて斬るってとこだけは一緒か)

「いいだろう。俺に勝てたらな!」

 新一は斬魄刀を振り、斬撃を飛ばした。

「ぐ……!」

 斬撃を自身の斬魄刀で受け止める死神だが、圧されて刀が吹き飛んだ。

 地面に突き刺さる斬魄刀。

「とどめ!」

 新一は無防備になった死神に最後の一撃を浴びせた。

「うわああああ!」

 悲鳴を上げて消滅する死神と、同時に失くなる斬魄刀。

 新一は魂魄に歩み寄った。

「大丈夫か? えっと……」

「重明。僕の名前は甲斐(かい) 重明(しげあき)だ」

「重明、お前はなんで死んだんだ?」

「僕、車に轢かれたんだ。助けてくれてありがとう。でも、死神なのになんで?」

「俺たち、鏡を通ってきたんだけど……」

「え、それじゃあリアルワールドの?」

「ああ。とにかく、ここにいたら危ない。魂葬するぞ」

「うん。地獄に行けるんだね?」

「地獄? いや、ソウル……」

(待て。死神の位置付けが逆ならこっちでの尸魂界は恐らく地獄)

「お……おう、地獄だ」

 新一は斬魄刀の柄の先端を重明の額にあてがう。

 重明は光につつまれ、天へ昇っていった。

「及川、なぜ地獄などと?」

「今までのでわかりませんか?」

「何がだ?」

「ですから、ここは鏡の中。死神と虚の位置付けも、尸魂界と地獄の位置付けも逆なんですよ。つまり、この世界は虚が我々死神と同じで、死神が虚なんです」

「そうか。そういうことか」

「それより、この姿だとなにかとやりにくい。誰かの肉体借りましょう」

「うむ、そうだな」

 二人は生きた人間を探すが、しかし、人っ子一人見当たらない。

「どういうことだ。これほど探して街に一人もいないなんて……」

「まさか、昼夜も反転してるってか?」

 辺りが暗くなり始めると、案の定人が起き始め、店が開き、車の往来が始まった。

「お!」

 新一は人混みの中に端正な顔立ちをした女を見つけた。

「どうした?」

「俺あの女にします」

 新一はその女の中に飛び込んだ。

「え?」

 急に意識が遠のいた女の体が倒れそうになるが、新一が体勢を整えさせた。

「貴様、何をやってるのだ?」

「ルキア隊長も何か適当な体に入って下さい」

「じゃあ私は……」

 ルキアは人混みの中に赤毛の男を見つけた。

「あいつにしよう」

 ルキアが赤毛の男に乗り移った。どことなく夫の恋次に似ていた。

 


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