コンプレックス・ラブ   作:シママシタ

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同人誌にするか迷っている作品ですが、取り敢えず最初の数話を投稿して、気分が乗らなかったらこのままネットで連載する予定です


第1話

 初夏の太陽が内浦をジリジリと照らす。今さっき冷房の効いた家から出たばかりなのに既に額から汗が流れ、制服が汗で張り付く。

 眼下に広がる駿河湾の青い海は太陽の光が反射してまるで宝石のように光る。今年も沢山の人がこの綺麗な海に遊びに来るだろう。そして、海を目前に佇む私の家もとい旅館十千万に宿泊するお客様で賑わう。そうなれば私も手伝いを強要される。少し億劫だけど、お小遣いも出るから苦ではない。

 

「そろそろ……来るのかな?」

 

 私、高海千歌は十千万の前である人を待っていた。

 すると、遠くから聞き馴染みのあるエンジンの唸り声が段々と近づいてくる。

 現れたのは青とエメラルドグリーンのツートンに染められたバイクが私の前に停まる。

 そして、夏には不釣り合いの黒い学ラン姿の彼はエメラルドグリーンのフルフェイスのヘルメットを外し、端正な顔を顕にする。

 

「千歌、おはよう」

 

「おはよう、果南ちゃん」

 

 果南ちゃんは初夏の太陽に負けないくらい眩しい笑みを浮かべる。

 果南ちゃんは淡島に住む私の大切な幼馴染だ。

 私を妹にように大切にしてくれて、守ってくれる私のかっこいいヒーロー。

 同年代と比べて高い身長に、モデル顔負けのスラリと伸びた脚。制服の上からわかりづらいがまるでプロボクサーのような筋肉が引き締まった体つきをしている。家がダイビングショップを営んでいるということで果南ちゃんもよく手伝いをしていて、私は曜ちゃんとよく遊びに行くのだけれど、水着姿は本当に凄い。

 そして、特に目を引く珍しい青髪。後ろ髪はポニーテールで纏めている。果南ちゃん曰く、髪を切るのが面倒くさいから伸ばしているとのこと。

 顔つきも正直かなりハンサムで女子から絶大な人気を誇っている。バレンタインデーの時なんか下駄箱が溢れかえるくらいのチョコレートを貰うくらいだ。

 また果南ちゃんのかっこよさは女子だけでなく、男性にも光る物があるらしい。

 去年の修学旅行で表参道を歩いていたらたくさんのスカウトマンに声をかけられたらしい。果南ちゃんは芸能に全く興味がなかったから全て断ったと聞いた。

 そんな人気者の果南ちゃんにはもう一つの仮面がある。それは所謂、不良という立場であるということ。

 不良と言っても飲酒やタバコを嗜んだり、盗みを働いたりと犯罪に手を染めているわけじゃない。少しばかり学校をサボったり、いけない物を持ってきたり、斎より喧嘩を買ってしまうことがあるくらいだ。

 不良でも果南ちゃんは人気があって慕われていて誰にとっても「特別」な人だ。一方で私は何もない「普通」な人だ。本当なら釣り合うことのない二人だろう。学校でもクラスメートから果南ちゃんによく一緒にいることに意外と言われることが多い。

 本来なら果南ちゃんは私の手の届かない場所にいる人。でも、幼馴染という唯一の糸のおかげで私は果南ちゃんと繋がりを持つことができている。

 傍から見ればまるで恋愛ドラマのヒロインみたいな立ち位置。だけど、私は彼女達のように「特別」な何かを持ち合わせてはいない。

 

「しっかし今日は暑いな。ちゃんと水分補給しとけよ」

 

「う、うん!」

 

 果南ちゃんはその大きな手で私のみかん色の髪をクシャクシャと撫でる。少しごつごつしているけど撫でるその手が私は好きだ。

 

「さて、遅刻する前に行くか」

 

「うん」

 

 私の髪からそっと手を放し、果南ちゃんは椅子の下からみかん色のフルフェイスヘルメットを取り出し、手渡す。私は両手で抱えるように受け取り、頭に被る。

 そして、果南ちゃんの後ろに座り、腰に腕を回して、離れないよう大きな背中に体を密着させる。

 

「うっ」

 

 果南ちゃんは小さく呻き声をあげる。

 いつも私が体を密着させる度に呻き声をあげている。私は不思議に思ってどうしたのと理由を聞いても果南ちゃんはただ気まずそうに目を逸すだけ。

 ものすごくもやもやするけど、果南ちゃんの体調が悪いというわけでもなさそうだから最近は気にしないようにすている。

 

「……よし。エンジンかけるからしっかり掴まってろよ」

 

 エンジンをかけると、バイクは勢いよく走り出す。

 風の中を切って走るバイク。

 太陽の熱が反射するアスファルトの上をもろともせずに前に進む。

 右側から吹く駿河湾の潮風が気持ちいい。

 密着する果南ちゃんから仄かに香る汗と制汗剤の匂い。そして、大きく、少し火照った背中は何だか安心する。

 幼い頃、足を怪我をして歩けなくなった時や小学生の時に男子にからかわれて、泣きじゃくった時はいつも果南ちゃんにおんぶしてもらって、家まで送ってもらっていた。

 何回、果南ちゃんの背中を涙で濡らしたことだろう。迷惑をかけたに違いない。それでも果南ちゃんは泣きじゃくる私を背中越しに慰めてくれたことは今でも鮮明に覚えている。

 私はぎゅっと抱き締める力を強める。脈打つ鼓動が速くなる。

 でも、果南ちゃんは運転に集中していて私の変化に気づくかない。

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