果南ちゃんとダイヤさん、そして、鞠莉ちゃんの三人が手伝ってくれたおかげで予定よりかなり早く準備が終わった。
そして、バイクで来た果南ちゃんとダイヤさんを除く私達三人は鞠莉ちゃんが乗ってきた車に乗せてもらった。
やっぱりあの小原家が所有する車は凄い。私は車のことなんてわからないけれど、果南ちゃん曰く、一般人では決して買えない代物らしい。
見た目からしてデザインはかっこよくて、普段見る車とは雰囲気が明らかに違う。左ハンドルで内装もなんかお洒落でシートの座り心地もホテルにある高級ソファーに座っているみたい。
こんな車に乗れる経験なんて、今日限りなんかじゃないかと思った。私も、曜ちゃんと梨子ちゃんも緊張で体がカチコチになっている。
そして、この高級車の窓ガラスを鞠莉ちゃんを助ける為に果南ちゃんが金属バットで叩き割った話なんてここでしか聞けないだろう。
「あの……今日は送ってもらって……」
「いいのよ。私も帰るついでよ」
前の座席に座る鞠莉は前を向きながらそう答えた。
車内のバックミラーに写る鞠莉ちゃんは笑みを浮かべていた。
「それにしても果南ちゃんとダイヤさんから言い寄られるなんて千歌ちゃんも隅に置けないね」
「そ、そんなこと言われても!」
「まぁ、千歌ちゃんは可愛いから」
「梨子ちゃんまでぇ!」
両脇からからかわれて、私の顔はポッと赤くなる。
「それでどっちが好きなの?」
「それは……」
「「それは?」」
「……どっちも……」
二人のどちらが好きかと言われでも正直、二人共かっこいいし、優しく私じゃ手に余るほど魅力的な人で選ぶなんて……というか本当に二人が好きだから選べない。それは私の我儘なのはわかっているけど……。
「それは……えっちかちゃんだね」
「うん。これはいけない。大学生になったら大変なことになりそう」
「二人共!? それはどういう意味なの!?」
曜ちゃんと梨子ちゃんは私を心配そうに見てくる。
「そうね。これなら早く二人に貰われたほうが私達にとっては安心ね」
「鞠莉ちゃんまで! そんなこと言われても……」
三人が色々と言ってくるのもわかる。
二人を好きになるなんて優柔不断だし、まるでママがよく見ている昼ドラの女性みたいであんまり良い印象はないのはわかる。
でも、こんなに男の人に好かれるなんて全く経験がない。それも片やずっと思っていた果南ちゃんで片や今まで出会ったことのないタイプのダイヤさん。
私はこんな状況を上手く立ち回る力も経験がないからこうやって悩んでいるんだ。
「まぁ、ちかっちは恋を知らなすぎたのよ」
「それはどういう意味?」
「今までずっと果南が好きだった。それはきっと他の男を知らなかったから。ちかっちの中で男と言えば果南。そうじゃない?」
あぁと私は頷く。
確かに鞠莉ちゃんの言う通りだ。今まで生きてきた中でまともに接してきた男性はお父さんと果南ちゃんくらいしかいなかった。
色んな男の人が世界にはいる。だけど、どんな違いがあるのか正直、想像もつかなくて、そういうこともあって、どこかで男の人はみんな果南ちゃんやお父さんみたいな人だと思い込んでいた。
ダイヤさんのような人は私にとって結構衝撃だったりする。だから、惹かれたのかもしれない。
「二人を好きになったのは、ちかっちが大人になった証拠だと思うわ」
「大人に……」
大人に成長したからの悩み。正直、実感は全くなかった。
でも、確かに昔の私は男の人とは緊張して殆ど会話なんてできないかったけど、今なら少しくらいは話せる気がする。これが成長なのかはわからないし、ただの思い込みかもしれない。
私はふと窓の外を視線を移す。
水平線まで広がる青い空に白い鳥が翼をはためかせて飛んでいるのが見えた。