夏休みが終わって、いつもの日常が再開した。
今年の夏はあっという間に終わってしまった。いつもの夏休みならギリギリまで宿題に追われ、ひぃひぃ言いながらペンを走らせていた。
今年は違う。梨子ちゃんが厳しいながらも定期的に見ていてくれたから特に苦しい思いもしなかった。
だけど、いつもと違う理由は果南ちゃんとダイヤさんの存在だ。
ダイヤさんとデートをして、告白された。それだけで済まず、果南ちゃんにまで告白されるなんて思いもよらなかった。
今までずっと憧れていた果南ちゃんに告白されて、それは天に上るような嬉しさだった。
普通なら思いが繋がり、晴れて、恋人同士になる……はず。
でも、今の私はダイヤさんにも惹かれていた。
果南ちゃんとの正反対の真面目な優等生。そんなダイヤさんに優しくされて、落ち込んでいた時には親身になって励ましてくれた。
これで惚れない女の子なんていないなんて言ったら言い訳になるかもしれない。
まるで少女漫画の主人公になったような気分だ。
勿論、二人に告白されて嬉しい。二人とも心の底から私を好きになってくれたからその気持ちに必ず答えたい。
でも、同時に答えることはできない。どちらかにしか答えられない。
それがとても心苦しくて、でもそれが私の背負うべき責任だった。
ずっと、ずっと、考えていた。私はどちらの手を取ればいいのか。どんなに自分の心に聞いても全く答えが出なくて……そんなことを考えてたら蝉の鳴き声なんてパタリと止んでしまっていた。
そんな大切で大事なことを考えている間も無情にも時間は歩み続けていて、
「千歌ちゃん、ボーッしてどうしたの?」
「あっ! ううん! 大丈夫!」
気がつくと待ちに待った学園祭が始まっていた。
私は曜ちゃんと梨子ちゃんと一緒にモノクロのメイド服を着て、来るお客さんを笑顔で迎えていた。
「や、やっぱり、恥ずかしいよ!」
「でも、梨子ちゃん。似合っていて、滅茶苦茶可愛いよ!」
「だけど!」
笑顔と言っても純情な梨子ちゃんはずっと顔を赤らめ、恥ずかしそうにしながらも接客している。
さっきから曜ちゃんが茶化していることもあって一向に変わらない。
というか寧ろ、梨子ちゃんのような真面目な子が恥ずかしがりながら接客してくれた方が色々と需要があるらしいと他の女子は言っていた。
確かに当たり前のように接客されるよりも何だろう……味があるっていう感じは私でもわかる。
「三人共! 次のお客さん入れるよ!」
廊下から教室に入ってきた同じくメイド服姿のよしみちゃんが合図をする。
私達は梨子ちゃんを励ましながら入口の前に横に並んで、お客さんを迎える。
そして、ガラリと扉を開いた瞬間だ。
「おかえりなさいませ♡ ご主人様♡」
とアイドル並の笑顔を浮かべて、元気に挨拶をする。
どんな反応を顔を上げるとそこにいたのは二人の男子と一人の女子の三人組。
「Oh! 三人とも、Very cute!」
「三人とも滅茶苦茶似合っているな! 特に……いや、止めとこう」
「これは……破廉恥な……」
「果南ちゃんにダイヤさん!? それに鞠莉ちゃん!?」
私は驚く。
鞠莉ちゃんは私達のコスプレ姿を偉く気に入り、テンションが上がっている。
果南ちゃんはニヤニヤと笑みを浮かべている。だけど、私を見た瞬間、頬を赤らめて、咄嗟に視線を梨子ちゃんと曜ちゃんに向ける。
そして、ダイヤさんだ。私達を見て、私を見る果南ちゃん以上に顔を真っ赤にし、何だか今にも爆発しそう爆弾みたいになっていた。
慌てるダイヤさんの影響か、私も段々と冷静になっていく。果南ちゃんとダイヤさんにこんな格好を見られたと思うと途端に恥ずかしくなってくる。
ひょこひょこと曜ちゃんの後ろに隠れる。
「あれれ? もしかして、千歌ちゃん照れちゃってるのぉ〜。可愛いでありますなぁ」
「曜ちゃんの馬鹿ぁ!」
ニヤニヤと笑いながらからかってくる曜ちゃんの背中をポカポカと叩いた。