コンプレックス・ラブ   作:シママシタ

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第40話

 女子中学生二人と写真を撮った後、私達は色んな出し物を見て回った。

 ヨーヨーすくいや輪ゴム鉄砲での射的などの簡素の屋台が一つの教室に集まった小さな縁日。

 自主制作のコメディ映画や段ボールで作った迷路。

 美術部の展覧会や演劇部の舞台など気色の違う出し物ばかりで飽きが来ない。

 飽きないの気色が違うだけじゃない。果南ちゃんが毎回、大袈裟なくらい面白い反応をするからそれを見ているだけで楽しい。

 やっぱり果南ちゃんと一緒にいるのは楽しい。本当は私の誕生日祝いに一緒に出掛ける予定だったけど、すれ違ってしまったせいでなくなってしまったから、今日はあの日のリベンジと言っても過言じゃない。

 果南ちゃんもいつも以上に気合が入っているように見える。

 きっと、ダイヤさんのせいだろう。

 

「しっかし、まぁ、色んな出し物があるんだな」

 

「そうだね、他に見てないのは……」  

 

 まだ見ていないところはあるかと校内を練り歩いていると、一つの出し物を見つけた。

 あっと思わず声が出た。

 

「ねぇねぇ、果南ちゃん。あそこが気になるなぁ」

 

 私はできるだけ小悪魔のような笑みを浮かべて、指差す。

 

「おう! なら早速……」

 

 果南ちゃんは意気揚々と指先にある出し物を見た。

 その瞬間、天井まで高まったテンションが下り坂を転がる球のように一気に下がっていく。

 私が見つけたのはお化け屋敷だった。文化祭では確実に一つはある定番の一つだった。

 友達同士で和気藹々としながら楽しむもよし。カップルで入ってスリルを味わうのもよし。

 所詮はアマチュアが作ったものということでそこまで怖くなくて、基本的に誰でも楽しめる人気の出し物の一つだ。

 しかし、私の周りには基本に該当しない人がいる。

 

「あぁ……知り合いからあそこはクソつまんないから行かないほうがいいって……」

 

 果南ちゃんは露骨にお化け屋敷から視線を逸し、後退りをして、逃げようとしている。

 不良として名高くて、喧嘩が強い。運動神経が抜群な果南ちゃんは一見、弱点が勉強だけかと思いきや、実は暗いところが苦手。

 幼い頃、私の家で果南ちゃんと曜ちゃんの三人で遊んだことがあった。その時、丁度台風が来ていて、そのせいか家が停電してしまった。

 その時の果南ちゃんの怯えようは今でも忘れない。ハグゥと何かの生き物みたいな鳴き声を発して、木の柱に抱き着いて震えていた。

 今でこそ、そこまで怯えないけれどそれでも停電の時なんか体が少し震えてたりするのはよく見るから克服はしていないらしい。

 だからだ。だからこそお化け屋敷に誘った。

 

「そういえば果南ちゃんって暗いところが怖いんだよねぇ?」

 

「……あぁ。得意ではないけど……つか、知っていてなんで誘うのさ!」

 

「果南ちゃんは私に自信をつけて欲しいからわざわざメイド服姿で巡ってるんでしょ?」

 

「まぁ……」

 

「なら、果南ちゃんも暗闇を克服してもいいんじゃあないの?」

 

 確かに果南ちゃんは私を変えてくれようとしてくれたのはわかる。引っ張ってくれるのは果南ちゃんらしいだけど。

 だけど、それとは別に恥ずかしい思いをしたんだから、果南ちゃんにもそれ相応の何かがなければ割りに合わない。

 だから、暗闇で怖がる果南ちゃんを見せてもらってもいいのではと思った。

 

「いや……そりゃあ、一理あるけど……」

 

 自分で撒いた種というのはわかっている。

 ここで私の提案に乗らないと筋が通らないのもわかってる。

 だけど、やはり怖いものは怖いんだろう。

 強気な果南ちゃんが子供みたいに怯えているのを見て、ギャップを感じて、少し可愛いと思ってしまう。

 

「……やっぱり……別の所に行こうか」

 

「……わかった! 俺も男として度胸を見せないとな!」

 

 あまりにも怖がっているのを見て、冷静になった私はやっぱり無理を強いるのは良くないと思って、やめようと提案したけれど、果南ちゃんは腹を括ったようだ。

 私の手を固く握り、お化け屋敷を睨む。

 

「ほ、本当に大丈夫!? 無理しなくていいんだよ!?」

 

「いや……大丈夫だ! 男に二言はない!」

 

 そう言って、まるで暴走した機関車のような勢いでお化け屋敷の前に並ぶ列へと向かう。

 不安だ。多分、ここまで無理をするのも私にいいところを見せようとしているからだろう。

 きっと同じ立場なら私だって同じことをする。

 でも、気合や見栄だけで恐怖を振り払えるとは思えない。

 運がいいのか悪いのか列の進みは早くて十分も経たずに私達の番が来た。

 

「……はぐれないように手、繋いどこうぜ……」

 

「う、うん」

 

 中に入る直前、果南ちゃんと手を繋ぐ。

 果南ちゃんの手は汗でぐっしょりと濡れていて、小刻みに震えていた。

 

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