「お待たせ。準備出来たずら」
花丸がパーテーションから顔だけを覗かせ、俺達に呼びかける。
準備には多分ニ分くらいしかかかってないだろう。だが、その待っている間に善子のやらしい声や花丸の悪代官のような笑い声を聞こえてきたこともあって、その不愉快さから体感時間はとても長く感じた。
「それは占いのだよな?」
「当然だよ! 果南ちゃんは何を考えているの?」
「お前は一度と自分の行動を振り返るべきたと思う」
「クーックックックッ! よくぞ来た! リトルデーモン達!」
中に入るやいなや、黒マント姿の善子が厨二病全開で出迎えくれた。
いつもの甲高い声ではなく、まるで作ったように低い声の時は花丸曰く堕天モードらしく、この時は津島善子ではなく『堕天使ヨハネ』を演じるらしい。
今は占い師という役柄上、特に違和感がないどころかロールプレイとしてきっちり型にはまっていい感じだが、普段の生活でもこうなのが大変なんだよなぁ。
「はぁ……」
「か、可愛い!」
「えっ!?」
千歌の予想外の反応に俺は驚きを隠せない。
意外な趣味なのか?
確かに千歌なら似合うと思うが……。なんか、見てみたいというやましい気持ちとなんて破廉恥な格好だと叱りたい気持ちが混ざり合って何とも言えない気持ちになる。
「かわ!?」
純粋に褒められたことに流石の善子も鳩が豆鉄砲を食らったように反応を示す。
平常心が崩れたのか演技風の厨二病モードからいつもの善子に声色と口調が戻る。
「あなた。よくわかっているじゃない! いいわ! 名前は?」
「千歌だよ!」
「そう。なら、千歌! 今日から三人目の眷属であるリトルデーモン四号にしてあげるわ!」
「本当に!?」
おいおい。千歌を勝手に巻き込むなし。それに見た目は善子並に幼いが上級生なんだからせめて、先輩はつけろよ。後、四号って他に眷属がいるのかよ。
ツッコミが積み重なっていくがいちいち口に出していたらきりがないので忘れることにする。
「さぁ、あなた達。さては迷いごとがあってここに来たのでしょう。それならこの迷冥ヨハネが占ってしんぜよう!」
再び堕天モードになって、いよいよ占いを始めようとする。正直、善子の占いなんて信用できないんだよなぁ。
「本当に当たるのか?」
「当然ずら。だって善子ちゃんだよ?」
「いや、善子だから心配してんだが……。どうせ、かっこいいからって見様見真似でやったパチモンだろ」
「む、むきー!」
「か、果南ちゃん……それは流石にいい過ぎじゃ」
つい本音が漏れてしまい、善子は子供っぽく怒り、千歌は焦る。
正直、善子はかっこいいからと手を出し、大したレベルでもないのに披露して、痛い目に遭うのを何度も見ている。
どうせ今回もそうなんだろうと高を括っている。
「……果南ちゃんは怖いんだね?」
「はぁ?」
しかし、恋人である花丸だけは違った。あいつだけは善子よりも自信ありげだった。
「悪い結果が出るのが怖いんだ。そーだよね。高海さんにフられるのが怖くて告白できない臆病者の果南ちゃんだもんね。占いが怖いのも頷けるよ」
プチッと血管が弾ける。
人を臆病者呼ばわりとは随分と言ってくれるじゃあないか。
ここまでコケにされて、引くのは本当の臆病者だ。
「やぁってやろうじゃあないの!」
「果南ちゃんはば……正直者で扱いやすいずら」
花丸は呆れたように笑った。