「それがダイヤさんと果南ちゃんの出会いなんですね」
「はい。漫画みたいですよね」
松浦果南が去った後、僕は歩きながら過去を語ろうとした。だけど、それだと疲れると思い、場所を変え、喫茶店の出し物をする場所に向かった。
そして、お茶をしながら、再び松浦果南との過去について語った。
一通り、話を聞き終えると千歌さんは笑った。
「何だかんだ、ダイヤさんは果南ちゃんのこと嫌いっていってますけど、本当は好きなんですね」
「それはありませんが、しっかり認めていますよ」
そう言うと千歌さんは「またまた」と意地悪な笑みを浮かべる。好きではありませんが、確かに本当は嫌いであれば話題にすら出したくないものだ。
ただ、松浦果南を妬んでいるだけなんだ。
「へい! ケーキ、お待ち!」
「それにしてもここは何ですか?」
丁度、話し終えたところで頼んでいた手作りカップケーキ二つが野太い声と僕達の前に出される。
喫茶店の出し物なら普通なのだろうが、何というウエイターの見た目と声が全くあってない。
「ここは女装喫茶です! 生徒会長!」
「それはわかっていますが……言葉に一切の女性らしさが感じられないのですが……」
「でも、面白いよ」
そう。ここは野球部が出している女装喫茶だ。
本人達もわかってのことだからはっきり言うが、完全にネタ枠の出し物だろう。
ご覧の通り、接客も野球部仕込みの妙に気合の入った大きな野太い声だから女性らしさなんて微塵もない。
正直、見た目なんか化粧なんて一切していなくて、ただドンキホーテで購入したであろう、メイド服やセーラー服を着ただけ。
千歌さんの言うように面白いのは確かなのだが、もう少し別方向のインパクトは欲しいとは思う。
「そう言えば果南ちゃんって野球部の人達に呼び出されていましたよね?」
「そうでしたが……どうせ裏方でしょう」
「果南ちゃんも女装してたら、面白いですね」
「……それは吐きそうだ」
松浦果南の女装姿なんて一切見たくない。あんなガタイのいい男が女装なんて気色が悪い。
もし、松浦果南が本当に女装して出てきたらこれ見よがしに馬鹿してやろうと思った。
「えぇ! 超可愛い!」
「私達よりも……綺麗!」
急に喫茶店の雰囲気が変わる。
周囲の女子達が一斉に同じ方向に向き、集まっていく。
あまりのタイミングの良さに僕の心に陰りが見えてくる。
まさか、今の台詞がフラグになるわけがないと言い聞かせる。一体誰なんだと僕達は黄色い声援が湧き上がる場所に目を向ける。
「う、嘘!?」
「えぇ……」
僕達は絶句した。
「ちょ……なんで、千歌達がいるんだよ!?」
群がら女子達の中心に頭二個分大きい人間がいた。それは女装した松浦果南だ。僕達を見つけた松浦果南の顔が一気に青褪めていく。
きっと、いつもの僕なら女装する松浦果南を馬鹿にするような言葉をぶつけて挑発し、マウントを取るだろう。
でも、できなかった。確かにがたいのいい体格に関しては全く持って隠せていなかったが、その顔立ちに関しては女性と見間違うレベルであった。
多分、普通に街中を歩いていれば道行く男性は注目するだろうし、なんならスカウトに声をかけられるだろう。
そして、よくわからないが妙にしっくり来るのだ。まるで元は女性であったかのように似合っているので弄りたくても弄れないのだ。