俺と雪ノ下の最初のポケモンがユキワラシなのはまちがっている。 作:リコルト
「イワーク!いわおとしだ!」
「カマクラ!かげぶんしんでかわせ!」
イワークの巨体から繰り出される大きな無数の岩をユキワラシはかげぶんしんで回避する。
くっ!!ゲームだと、ボタン一つで決まるようなバトルが現実だとここまで気が抜けないものだとはな。ジムリーダーだとまるでデスゲームをやっているような緊張感だ!
「かわすだけじゃ勝負は勝てないぞ!イワーク!たいあたりを決めろ!」
「イワー!!!」
「ユキッ!?」
「か、カマクラ!」
あの巨体で何て素早さだ!?ゲームでなら、重さ的にユキワラシの方が軽い筈だろ!
んっ?……ゲームなら?まさか。
ポケモン図鑑を開き、イワークのページを見る。
〇普段は土の中に住んでいる。地中を時速80キロで掘りながらエサを探す。
おいおい、地中を時速80キロが適用されるのかよ。しかし、あのイワークがやけに素早いのはそれだけが原因じゃないだろう。
そう思いつつ、イワークの姿を見ると、さっきより長さが短くなっているのが分かった。
「なるほど、ロックカットか」
「その通り!動きが鈍いと見せかけて、相手を素早く、力強い、攻撃で打ち負かす!これが俺のイワークの戦い方だ!」
流石はジムリーダー。ポケモンの能力を生かした優れた戦い方だ。これまでのトレーナーとは一味も二味も違う。こんな人があと7人もカントー地方にいるのには驚きだが、タケシさんがこれでも本気を出していないのも驚きだ。事実、葉山のヒトカゲを倒したカブトプスとは戦わなかったわけだし。
「ちっ!カマクラ!こごえるかぜだ!」
「ユキッー!!ユキキッ!!!」
だが、俺も負けるわけにはいかない。俺も全力でイワークに攻撃をしかけようとする。しかし、じめんタイプを持つイワークに効果は抜群ではあるものの、決定打ではない。効いてはいるが、まだピンピンとしている感じだ。
「フンッ!そんな冷風はイワークには効かない!イワーク!いわなだれを見せてやれ!」
すると、ユキワラシの頭上にいわおとしの比じゃない量の岩が落ちてくる。
いわタイプの技はこおりタイプには効果抜群だ。こういう時、ゲームと違って4つの技に限定されない現実で良かったと思う。
「カマクラ!まもるだ!」
「ユキッーー!!!」
俺はカマクラの最後の無敵防御技、まもるを命令する。すると、カマクラの周りに薄緑色の透明なバリアが張られ、いわなだれという窮地を脱した。
このポケモンの世界が一度覚えた技なら何時でも使えるというもので助かった。だが、こちらが劣性だという状況は変わらない。
くそっ!ユキワラシが素早さでイワークに負けるのは分かっている。どうにかして、あのイワークの動きを止められれば、良いんだが。
そう思っていると、ポケモン図鑑がスマホのように点滅する。この点滅の仕方は新たにポケモンが技を覚えたシグナルだ。どうやら、戦いを通してカマクラはレベルアップをしたらしい。
(この技……一か八かの賭けだな)
カマクラがレベル23に上がり、新たに覚えた技を確認して微かに見えてきた勝機を伺う。これがもし決まれば、イワークの動きを止められるかもしれない。
「カマクラ!」
俺は新たに覚えた技をカマクラに命令する。
「こおりのキバだ!!」
「ユキキッ!!」
すると、カマクラの小さな歯に辺りを凍らせるような冷気が纏う。
「ユッキー!!!」
「イワーッ!!?」
「なっ!?イワーク!?」
カマクラはその歯でイワークにこれまでのお返しだと言うように噛みつく。すると、イワークの体が噛みついた場所から徐々に凍りついていく。
「賭けには……勝ったようだな」
そう、俺の狙いは状態異常。こおり状態だ。ゲームの頃なら、こおりのキバには僅かながら相手をこおり状態にする能力がある。俺はそれに賭けたのだ。
後は体が凍りつき、動けなくなったイワークを可哀想ではあるが、一方的に技を浴びせるのみだ。
「カマクラ!イワークにありったけの冷気を浴びさせてやるんだ!!」
「ユッキーッ!!!」
カマクラはこのチャンスを逃さず、ありったけのこおりタイプの技を浴びせる。それにより、こちらにも冷気が入り込み、肌寒いぐらいだ。
「………見事だ」
そして、イワークはうめき声のような低い声の悲鳴をあげて、地面に倒れた。
『イワーク戦闘不能!!勝者、比企谷選手!』
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「おめでとう。四人とも良い勝負だった」
俺達によって倒されたポケモンを回復させるためにスタッフに預けたタケシさんは俺達の方までやって来て、賛辞の言葉を送る。
「君達には色々と渡すものがあってね。まずは俺に勝った証を君達に送ろう」
そう言ってタケシさんは人数分のバッジケースとニビジムのジムチャレンジをクリアした証であるグレーバッジを渡した。
これがジムバッジか。元の世界では切手みたいにバッジを集める趣味は無かったが、ゲームを知っている俺からすれば、これは集めたくなる。雪ノ下なんか目を輝かせているし。
「次はこれだ」
「あっ!ポケギアですね!」
タケシさんが次に見せてきたのはポケギア。この世界でいうスマートフォンみたいなものだ。それを見て、戸塚は興奮した様子を見せる。
「その通り。君達全員分のものを用意してある。これを使えば、いつでも電話番号を交換した人と連絡が取れるし、旅も楽になるだろう。俺の電話番号はすでに君達のポケギアに登録してあるよ」
そう言って、タケシさんは黄緑色のカラーのポケギアを戸塚に、オレンジ色のポケギアを川崎に、水色のポケギアに、俺には黒色のポケギアを渡す。起動してみると、電話番号の場所にはすでにタケシさんの電話番号が登録してあった。
まさか、ポケギアをくれるだけでなく、ジムリーダーの電話番号も教えてくれるとは。タケシさんに聞くと、ジムリーダーを倒した人物の中でジムリーダーが特に気に入った人物には電話番号を渡しているらしい。ジムリーダーのお気に入りにされて、少し恥ずかしい気分だ。
「そして、最後に比企谷君と雪ノ下さんにはある人からの伝言を送りたい」
「「ある人?」」
「ああ。比企谷君の父ー比企谷重吾と、雪ノ下さんの姉ー雪ノ下陽乃さんからの伝言だ。二人がニビジムをクリアした時、伝えてくれと頼まれたのさ」