俺と雪ノ下の最初のポケモンがユキワラシなのはまちがっている。   作:リコルト

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VS葉山

 

 

「さぁ、早く始めろよ」

 

 

 ニビシティの町中にある屋外のバトルフィールドに移動した俺達は早々と勝負を終わらせようと互いに準備をし、俺と葉山は向かい合うようにバトルフィールドに立つ。

 

 ちなみに、その他の雪ノ下達はバトルフィールド脇にあるベンチでそれを傍観しているつもりだそうだ。三浦と由比ヶ浜は大きな声で葉山を応援しているが、海老名さんと戸部はあまり乗り気ではない様子。

 

 そこで、試合前に海老名さん達にトレーナーズスクールでの俺について簡単な話を聞いてみると、葉山には成績で負けていたのは事実らしい。ポケモンの扱いについても葉山の方が上だったとか。

 

 そして、そんな成績だった俺がトレーナーズスクール時代でも優等生だった雪ノ下と一緒にいる事と彼が負けたジムリーダーに俺が勝った事が葉山にとっては気に食わないらしい。それが、今回の事件の発端だ。

 

 何でも、葉山家は雪ノ下建設お抱えの弁護士一家で、嫡男である葉山隼人と雪ノ下雪乃は幼馴染みの関係であったとか。それを聞いて、雪ノ下はこの世界でも変わらないのね……と、絶句していた。

 

 戸部と海老名もこの凶行には最後まで反対していたらしいが、三浦と由比ヶ浜、そして彼女らに賛成した葉山によって多数決のような形で言いくるめられてしまったらしい。

 

 まぁ、葉山は元の世界でも女には甘いからな。ニビジムで見た時もどうせ由比ヶ浜と三浦によってよいしょされて、言われるままに最も自信のあるヒトカゲを出したに違いない。

 

「ああ、君の実力が本物なのか俺が確かめてあげるよ。いけ!ヒトカゲ!」

 

 そう言って、葉山は回復させたヒトカゲをバトルフィールドに繰り出した。

 

 やはりヒトカゲを出してきたか。

 

 こおりタイプのカマクラに相性が良いほのおタイプのヒトカゲを出すのは当然だと思うが、疲れたばかりのポケモンを回復させたばかりのポケモンと戦わせるのはどうかと思う。そのいつまでも余裕ぶっている顔を崩してやりたい気分だ。

 

「さぁ、ヒキタニ君も早くポケモンを」

 

「ああ……いけ!ニドリーノ!」

 

「ニッドー!!ニドッ!」

 

「なっ!!?」

 

 対して俺はカマクラを出すと思っている彼らの予想を覆すためにジム戦には出してやれなかったニドリーノを繰り出した。

 

 ニドリーノも初陣だからか、自信に満ち溢れている様子だ。それとは対照的に葉山達は予想外と言わんばかりの顔をし、雪ノ下は口に手を当ててクスクスと笑っている。

 

「ヒッキーマジキモいし!?何で別のポケモンを使うし!あんなの卑怯だし!」

 

「あーしも反則だと思うし!何でさっきのジム戦で使ったポケモンを使わないし!?」

 

 あーあー、向こう側のギャラリーがうるさい。これには雪ノ下もそうだし、同じグループの海老名さんと戸部もドン引きしている。

 

「だから、さっき確認したよな?今の手持ちのポケモンなら、大丈夫だと。お前達が手持ちのポケモンが一体しかいないと勝手に勘違いしているのが悪いだろ。それに疲れたばかりのポケモンをバトルを出すのはトレーナーとしてはどうかなと思うぞ。その疲れたポケモンを狙いに来た奴も大概だけどな」

 

「そうだよ。結衣、優美子。さっき比企谷君も目の前で確認してたじゃない」

 

「だべ~。比企谷君が二体目を持っていたのはビックリしたけど、文句を言われる理由は無いっしょ」

 

 そう言って海老名さんと戸部は俺を擁護するように二人に反論する。この反論には同じグループの由比ヶ浜と三浦も予想外で、これ以上ギャーギャーと何も言うことは無かった。

 

 元の世界では葉山グループに何とか従属するBL好きの女子とお調子者ではあったが、彼女らにもポケモントレーナーとしてのプライドがあるらしい。そう言えば、この世界の葉山グループで名前をしっかり呼んだのはあの二人だけだ。元の世界では間違えて呼んで嫌気はあったが、この世界の彼女らとは仲良くやっていける気がする。

 

「何かそちらで勝手な手違いがあったらしいが、まだポケモンバトルをするのか?」

 

「くっ!確かに君が二体目を持っていたのは予想外だったが、君には負けるわけにはいかない!ここで、君の実力を見定める!ヒトカゲ、ひのこだ!」

 

「カゲッ!!」

 

 そう言って葉山が命令すると、ニドリーノに向けて小さな炎を撒き散らす。

 

「ニドリーノ!ひのこをかわしつつ接近して、ヒトカゲにどくばりだ!」

 

「ニドッ!!ニッドー!!!」

 

「カゲッー!!?」

 

 だが、ニドリーノも何もしないわけがない。ニドリーノはひのこを丁寧に当たらないようにかわしながら、ヒトカゲに毒々しい角の攻撃を浴びせる。

 

「ちっ!?ヒトカゲ!ニドリーノが接近した今がチャンスだ!連続でひっかくだ!!」

 

「カゲ!カゲッ!カゲッ!」

 

 どくばりを喰らったヒトカゲはそのままニドリーノを離さず連続でひっかく攻撃をする。

 

「………………………………」

 

 あいつ、何も分かってないな。

 

 

……………………

 

 

…………………………………

 

 

………………………………………………

 

 

「この勝負、比企谷君の勝ちね」

 

「えっ?どういう事?雪ノ下さん」

 

「そうだべ。俺っち達には分からないべよ。比企谷君のニドリーノは明らかにヒトカゲの連続ひっかくで攻撃を受け続けてるべ。比企谷君もまったく反撃をしないなんて変だべよ」

 

「そうね。確かにヒトカゲは攻撃を続けているわ。けれど、攻撃をする度にヒトカゲの調子は悪くなっていないかしら?」

 

「言われてみれば、そうだね。ヒトカゲの顔色が徐々に悪くなっているし、攻撃も遅くなっているような……。もしかして、これって!?」

 

「そう、答えはどく状態。あのヒトカゲは戦闘中に状態異常にかかっていたのよ」

 

「でも、雪ノ下さん?隼人のヒトカゲはどくばりしか喰らってないべよ?そんな簡単にどく状態になってしまうものなのかだべ?」

 

「戸部君の言う通り、どくばりで状態異常になったケースもあるけど、一発でなるのはかなり可能性が低いわ。答えはあのひっかく攻撃が原因よ」

 

「ひっかく……?あ、そう言えば!!」

 

「海老名さん、気付いたようね」

 

「ニドリーノには『どくのトゲ』という物理攻撃で相手をどく状態にする特性があるんだよ!!」

 

 

………………………

 

 

 

……………………………………

 

 

 

………………………………………………

 

 

「おいっ!?ヒトカゲどうした!?」

 

「カゲッ……カゲッ……カゲッ……」

 

 しばらく攻撃を続けていたヒトカゲであったが、やがてその場に倒れるように寝てしまう。

 

 ヒトカゲには悪いが、ようやく効いたようだな。俺もあまり攻撃はしたくなかったんだ。

 

「答えはニドリーノのどくのトゲだよ」

 

「どくのトゲだと?そうか、ニドリーノの特性でヒトカゲがどく状態に…………」

 

「そうだ。連続でひっかくなんかさせたら、特性でどく状態になるのは分かっているだろう。そんな短絡的だから、お前はタケシさんに負けるんだよ。ポケモンが可哀想だ。」

 

 それを言うと、葉山は唇を噛み締めながらヒトカゲの元に駆け寄る。しかし、その反応からは俺への悪意という物が感じられなかった。

 

 

「ヒキタニ君……いや、比企谷君。君の実力を俺は甘く見ていたようだ。俺は今からもう一度鍛え直してタケシさんに挑む。だから、俺が強くなったら、もう一度君と戦いたい」

 

 

 俺の方を真っ直ぐ見て答える葉山。その目からはタケシさんのような真っ当なポケモントレーナーとしての資質の片鱗を感じられた。まるで、正気に戻ったような感じである。

 

 

「ふっ、気が向いたらな」

 

 

「やれやれ、トレーナーズスクールの頃からだったけど、君は素直じゃないね」

 

 

 こうして、葉山とのポケモンバトルは俺の勝利で、葉山が更正した感じで終了した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

 

 

「比企谷!危ない!」

 

 

 葉山の言葉で俺は突如飛んできた飛来物に対して何とか回避できた。見てみると、後ろにあった木の枝がスパッと綺麗に切れていたのだ。

 

 

「優美子!何のつもりだ!」

 

 

 葉山は俺に飛来物を飛ばした犯人、三浦優美子と相棒のフシギダネに一喝する。その声からはみんなの隼人の片鱗が見えない怒りが詰まっていた。

 

 

「隼人がこんな奴に負けるわけないし!!きっと、負けたのはこいつが仕組んだからだし!」

 

 

「バトルは俺達が提案した事だろう!それに、俺が負けたのは相手のポケモンの特性やタイプを知らない俺が悪かったからだ!比企谷とのポケモンバトルはもう終わった事なんだよ!」

 

 

「っ!!うるさいし!隼人はそこで見ているし!あーしが倒してやるから!」

 

 

「やめろ!優美子!!」

 

 

 葉山の言葉は三浦に届かず、三浦はフシギダネにはっぱカッターを命令する。おいおい、倒してやるって俺の方かよ。トレーナーに技を放つなんて言語道断だろ。

 

 

 

 

「ジュゴン!れいとうビーム!!」

 

 

 

 

 だが、その攻撃が俺に来る気配がなかった。なぜなら、俺の前で何者かによる凄まじい冷気がフシギダネの攻撃を無効化したからだ。

 

 

「な、何者だし!?」

 

 

 三浦が邪魔をした犯人を見つけようとすると、凄まじい冷気の霧からあしかポケモンのジュゴンと女性のトレーナーが現れる。

 

 

「まったく……陽乃が言うからわざわざニビシティに来たのに、この騒ぎはどういうことよ。ポケモンがポケモントレーナーに技を撃つなんて今時R団ぐらいしかやらないわよ?」

 

 

 そう言って出てきた女性トレーナーは橙色のポニーテールを揺らしてバトルフィールドに入ってくる。その姿はまるでOLのような姿ではあるが、明らかにOLの仕事をしている人物ではない。まるで、ジムリーダーに似たような雰囲気を醸し出している。

 

 

「な、何者だし!?」

 

 

 

 

「私はカンナ。元・四天……いえ、今はただのこおりタイプのポケモン使いよ。そんなに戦いたいのなら、私が相手になるわよ」

 

 

 

 

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