俺と雪ノ下の最初のポケモンがユキワラシなのはまちがっている。 作:リコルト
「ふー……やっと抜け出せたぜ」
一日ぶりの日の光を浴びて、ディグダの穴を無事に抜けたこと、クチバシティの近くまで来たことを噛み締めるように確認する。
まさか、ディグダの穴がこんなに長いとは思ってなかったわ。偶然会った山男に聞いたら、自転車では半日、徒歩だと一日はかかる長さだって言うし。まぁ、途中でペンションみたいな小屋もあったし、何もない野宿よりはマシだっだと思う。
「それにお前達を鍛えるのにも丁度良かったな」
そう言って、俺は手持ちのモンスターボールに目をやる。ポケモン図鑑で調べたら、カマクラとニドリーノのレベルは29ぐらいとかなり成長している。
「さてと、ここを西の方向に向かったら、クチバシティだよな。洞窟で付いた泥も洗い流したい所だし、即刻ポケモンセンターに「だ、誰かー!!?我を助けてくれー!!?」……ああ?」
まさかの洞窟を抜けてからすぐにトラブルに遭遇かよ。本当はポケモンセンターにすぐにでも行きたいが、あんな大声の悲鳴が聞こえた以上、確認しないわけにはいかない。
それにしても、今の悲鳴………何処かで聞いた事があるんだよなぁ。今時、自分のことを我と言う知り合いなんてそんなにいない筈なんだが。
そう思いつつ、俺は悲鳴がした場所へと急行する。到着すると、そこには茶色いロングコートを着た男が大量のサンドに襲われていた状況だった。
「ぬおー!!?誰かぁ!??」
「ちっ!!カマクラ!こごえるかぜ!!」
カマクラをモンスターボールから繰り出し、大量のサンドに向けて冷たい冷気をカマクラは吐き出した。すると、じめんタイプのサンド達は逃げるように草むらへと走っていく。この様子なら、報復をするような気配も無いな。
「おい、大丈夫か………って、お、お前!?」
「むっ!!?その声、その姿、八幡ではないか!」
わーお……マジですか。何で久しぶりに地上に出てきた俺が最初に話す人物がこいつなんだよ。というか、こいつもこの世界にいること忘れてたわ。
何とそこにいた見慣れたロングコートの男の正体は元の世界ではラノベ作家を目指していた中二病、こっちの世界ではトレーナーズスクールの同級生にあたる中二病、材木座であった。どっちの世界でも中二病はやっぱ変わらないのかい。
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「まさか我が相棒に助けられるとはな!」
「あー……うん、そうだな……」
クチバシティへの帰路の中、俺はこいつの話をひたすら聞かされていた。普通に話せば良いのだが、武勇伝のようにいちいち話が長くなるためうんざりとしている所だ。こいつに会った時点で、色々察していたけど。
「……そう言えば、お前何でサンドに襲われていたんだ?普通にしてれば、襲わないポケモンだろ?」
「うむ……実は貴様にも話したと思うが、我は親の関係で研究者を志している。トレーナーズスクール卒業後はクチバシティにある研究所で、フィールドワークを続けていてな。そしたら、そのフィールドワークの最中にサンドを驚かせてしまって………」
「なるほどな……」
要するに自分が蒔いた種というわけか。というより、この世界では材木座は研究者になろうとしているのか。ラノベ作家よりはマシな職業だな。
「お!そうだ!八幡には後で我の新作を見せてやろう!研究者にはなりたいとは思っていたが、未だに物書きだけは止められなくてな!」
ごめん、前言撤回。ここにさりげなく兼業しようとしてる奴いたわ。
そうこう話している内に俺達はクチバシティへと辿り着いた。流石は港町。今まで見てきた中で、一番発展している。豪華客船もあるしな。
ひとまずはポケモンの回復だ。そう言えば、雪ノ下は大丈夫なのだろうか?四天王がいるわけだし、死ぬことは無いだろう……多分。