シスコンでブラコンなお姉さま セリーヌたん物語 作:uyr yama
舌戦が終わり、戦闘が再開された。
この時の私は既に冷静という言葉から程遠く。目はリウイ・マーシルンを捉えたまま離さない。
(この男を一人殺せば、戦争は終わる。私の……勝ちだッ!!)
ただただ彼の事だけを『想う』私は、まるで恋する乙女の様だ。
死 ね
「目標、メンフィル王、一斉射っ! 放てぇッッ!!」
死 ね
「陣形を矢の如く、一気に貫けっ!!」
死 ん で し ま え と……
「殿下っ! 殿下はお下がりください! 危のうございますっ!!」
アナタが死ねば、全てが終わるのです
だから
死 ね
臣下の声は耳に届かず。
一人の男だけを、私は想う。
兵力は圧倒し、威勢は互角。疲労は不利で、損害は大きい。
でも、たった一人、メンフィル王リウイ・マーシルンを殺すだけで、私の勝利だ。
「魔王を……リウイ・マーシルンを、討つのですっ!!」
ああ、本当に私は……なんて愚か……
どうやら口では勝てないようだ。
舌戦が終わると同時に、リウイ・マーシルンは、フッ、と小さく笑う。
外見が似てるのは当然としても、悪態の付き方までイリーナにそっくりだ。
……いや、違うか。イリーナ『が』そっくりなのだろう。
そのセリーヌ・テシュオスが激昂している。
ならば、次にどうくるかなど解り切っていた。
お淑やかそうに見えて、あれでやたらとお転婆なイリーナだ。しかも気が強く手まで速い。
(ならば、来るか)
狙いが解り切っている集中砲火をいなすなど、数多の死線を潜り抜けた彼にとっては造作もない。
リウイは薄く笑うと、豪雨の如く降り注ぐ矢を容易く斬り払う。
そして一瞬の間を置いて襲い来る魔法の炎を見るまでもなく、身体を前のめりに地面を蹴った。
耳がつんざく様な爆音と同時に、背中がチリチリと焼け焦げる感触がする。
振り返って確かめるまでもない。あの場に残っていれば死んでいた。背筋がヒヤリとする。
だがリウイは顔色一つ変えず、爆風を背に勢いよく敵陣へと向かって駆け出した。
リウイ・マーシルンは『一騎当千』と呼ぶに相応しい武力を持つ王だ。
しかし、相手はレスペレント最強国家、カルッシャの精兵である。
騎士は無論、兵とて下手を打てばそこらの国家の将クラスのレベルを誇っていた。
流石のリウイとて、このカルッシャ相手に一騎当千を誇るなど自殺行為に等しいだろう。
それが分からぬリウイではない。なのに、リウイの足は止まらない。
(一騎当千? バカバカしい。たった一人で何が出来るというのだ)
一騎当千どころか、万夫不当と呼ばれるに相応しい男であったクラナ国王ジオ・ニーク。
戦斧で持って猛威を奮った彼は、リウイ・マーシルンと、その『仲間達』の手によって戦場の露と消えた。
そう、リウイは一人ではない。彼の創るレスペレントの未来に想いを馳せる仲間たちがいる。
肩を並べて数多の戦場を共に潜り抜けてきた仲間たちは、何も言わずともリウイがナニをしようとしているのか分かっていた。
「まったく、無茶をする人だ」
そう呟いたのは誰だったろう?
メンフィル大将軍ファーミシルスか。
イルビット族の大魔術師エスカーナか。
バルジア王女リン・ファラ=バルジアーナか。
元ミレティア領主、竜騎士ティファーナ・ルクセンベールか。
リウイの父、魔神グラザの盟友、神格者ミラ・ジュハーデスか。
恐らく、その全てであろう。
事実、彼女達はリウイが駆けだすよりも速く、行動に移していたのだから。
紡錘陣形にて、ザッザッと歩を進める重装騎士の群れの槍先が、紅の夕焼けに反射する。
その眩しさに僅かに目を細めながら、リウイは冷静に眼前の敵の実力を推測していた。
防御は無論、その攻撃力は、今まで戦ったどの国の兵や騎士よりも脅威だろう。
その千の軍勢が、ただ一人の命を狙って歩を進める。言うまでもない、狙いは自分だ。
リウイは「ははッ!」と不敵に笑った。彼も恐怖を感じない訳じゃない。
だが、それ以上に────頼もしい。
「────いまぁ! 吹き荒れてぇ! 熱風っ!!」
リウイの盟友エスカーナの大魔術。
その凄まじい熱波の余波が、重装騎士達の頭上の空気を焼く。
あまりの爆音と熱に、思わず進軍する足を止めたようではある。
が、流石は大カルッシャの精兵といった所か。陣形は僅かなりとも崩れない。
しかし、彼らは困惑を隠せなかった。
直撃させず、なぜ頭上を狙った?
その問いの答えが出るより早く、メンフィル王リウイが間を詰めた。
となれば、こんな疑問など些末に過ぎぬ。
勲一等の手柄首。しかもセリーヌ殿下が欲する首でもある。
カルッシャ本国を出てから全ての会戦を勝利で飾ったセリーヌ・テシュオス、その人が。
彼女の在る所に勝利が有り、彼女のなき所には勝利が無かった。
そのセリーヌ殿下が欲するというのだ。何が何でも討ち刎らなければ。
重装騎士達は、ギラついた殺気をリウイに向けると、長いランスを前へ倒して突き出した。
真実一騎当千の働きで他国を蹂躙してきた魔王と渾名称されるリウイ・マーシルン。
だが、彼らには恐れはあっても畏れはない。
いや恐れだとて、背中で鼓舞する勝利の女神がいる以上、恐怖は霧散し、我らが功名の具となるだけだ。
第一、吹けば飛ぶような弱小国家の木端兵で一騎当千成し得たとしてもだ、このレスペレントにおける最強国家カルッシャの精鋭騎士たる我らが相手では話が違う。
ヤレルモノならヤッテミロ。
我らに、恐れるモノなど、何もナイっ!!
「隊列を乱すな! 功名は其処ぞっ!! チャージッッ!!」
カルッシャ軍の一糸乱れぬ行軍だ。
その矛先が自分に向かうというのでなければ、思わず見惚れてしまいそうになる。
リウイは笑みを一層深くし────左手を上げ────「陛下ァーッ!!」────掴んだ。
冷たい竜の足の感触が手のひらに広がったかと思うと、フワリと身体が宙に浮いた。
数瞬の間を置き、背中を押す様な風を感じ────そのまま一気に、茫然と空を見上げるカルッシャ重装騎士の頭上を飛び越える。
カルッシャ陣営の竜騎士は、先の熱風の影響により近づけない。
いや、それ以前に、『負けない戦い方』をし始めたメンフィル大将軍ファーミシルスを抜けなかった。
先程までとは違い、無理してまで自分で勝つ必要がなくなったファーミシルスにとって、勝てないまでも負けないでいるのは容易である。
縦横無尽に襲い来る竜騎士の群れを、決してティファーナのいる方へはやらせない。
────当然だ。陛下の邪魔は、させないッ!
ファーミシルスの視界の端に映るのは、ティファーナの騎竜の足に捕まり、空を移動するリウイの姿。
そして、エスカーナの熱風により狙いがままらない弓兵と、強力な魔法の残滓のせいで、魔術をうまく放てなくなっている魔術師たちだ。
流石だな、と思う。
強力とはいえ、たった一手の魔術の一撃で、敵竜騎士の行動を牽制し、敵支援攻撃を封じてみせた。
ただでさえ醜態を晒しているのだ。私も負けてはいられない。
ファーミシルスは不敵な表情を浮かべると、満身創痍の身体に活を入れ、連接剣グレイネティールを腰から引き抜いた。
淡い輝きを放つその剣は、ファーミシルスの意思に従い、まるで蛇の様に宙を踊る。
これにはカルッシャ竜騎士達もまいった。
下手に近づけば、騎竜ごと引き裂かれるのは目に見えている。
逆にいえば、近づかなければ怖い物ではなかった。
だが、彼女の先────そこにはティファーナ・ルクセンベールに運ばれるリウイ・マーシルンがいる。
一等の手柄首であることを除いても、かの魔王の目指す先は間違いなくセリーヌ殿下だろう。
いかせる訳にはいかない。
だが、先の大魔術の影響と、ファーミシルスの決死の鉄壁により、抜けそうにはない。
こうして空における戦いは膠着し……地上は、リウイを茫然と見送った重装騎士隊が我に返る所から始まる。
我に返った重装騎士隊の隊長連は、すぐさま兵の一部を残してリウイを追う形で反転迎撃に移ろうとしていた。
リウイの目的を考えれば、当然と言えば当然だ。なにせ彼らのすぐ後ろには、セリーヌがいる。
守りの堅い本陣を飛び出し、敵国王との舌戦を繰り広げた我らの将帥が。
「急げっ!」と怒鳴り声をあげる騎士隊長の声を聞きながら、重装騎士達が慌てて身体を反転させようとした、その瞬間だった。鼓膜が破れるかと思う程の轟音と、同時に襲い来る衝撃に襲われたのは。
「な、なんだ……っ!?」
そう思えた者は幸いだ。それは命が在る証拠なのだから。
だが、部隊中央に位置していた騎士や兵の多くは、この瞬間に意識を冥き途へと送られて、身体は躯となって大地に横たわった。
「まったく、世話が焼けるわね」
言葉面で言うなら呆れた物だったろう。
が、どこか楽しげな口調でもある。
この言葉を言い放ったのはミラ・ジュハーデスだった。
彼女はリウイがティファーナの騎竜の足に掴まると同時に行動を開始し、重装騎士の部隊が我に返るより速く魔導鎧による制圧砲撃を行ったのだ。
それは大地を抉る、凄まじい威力の砲撃だった。
直撃を受けた中心部の騎士たちは無論のこと、その周囲にいた者達も決して無傷ではない。
それでも士気が些かたりとも落ちないのは、主将たるセリーヌへの信頼の高さだろう。
流石はカルッシャ、と感嘆するミラ。
だからこそ、手は抜かない。抜ける筈もないが。
実際、彼らはミラの砲撃で出来た穴をすぐさま埋めると、支援治癒により怪我を完全に治していく。
このまま砲撃を続けても、時間ばかりがかかってジリ貧なのは自分だろう。
リウイの下に、カルッシャの援軍を駆け付けさせないというミラの目的を考えれば、手も足もでない状況だ。
だが、ミラは余裕を崩さない。
「行くぞッ! 奴らに陛下の邪魔をさせるなっ!!」
リン・ファラ=バルジアーナの号令が、間髪告げずに放たれたからだ。
彼女の指揮する部隊の兵は満身創痍。戦闘力でいえば申し訳なさ程度でしかない。
それでも、『常勝』の誉れ高い彼らの王の為、傷つき疲れ果てた身体に鞭を入れ、突撃する。
むろん、例え彼らの身体が万全であろうとも、カルッシャの誇る重装騎士たちに勝てるはずはない。
それは指揮するリン・ファラ=バルジアーナも同じだった。
彼女は戦士としてはあまりにも未熟で、先のサラン街道における会戦でも、何一ついい所なく敗戦している。
そんな彼女を逃がす為に戦い、そして帰らなかったのが、姉とも慕うセルノ王国王女、ラピス・サウリンである。
(どうして……私なんかよりも、ラピス姉さまの方が……ずっと、ずっと……なの、に……)
だからこそ、負けられない。
自分を逃がしてくれたラピス姉さまのためにも。
そして……愛する人のためにも。
「征けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」
メンフィル軍の先頭に立って突撃するリンの勇姿は、兵達の士気を否が応にも高めた。
彼女の黄金色の鎧の輝きを追うように兵達は駆け、剣を抜く。
そして、
「キサマらの相手は────私『たち』だぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
重装騎士目掛けて撃ち放つ、リン・ファラ=バルジアーナの聖炎剣。
ゴウっと刀身が聖なる炎に包まれて、重装鎧をバターの如く斬り裂き、それを見たメンフィル軍が一斉に続く。
ただ、彼女に続く兵達は、みな一様に満身創痍。そうでなくてもカルッシャ軍に比べれば、吹けば飛ぶような貧弱さが垣間見えた。
それも仕方ない。現在、レスペレントの半ば以上支配するメンフィル軍ではあるが、急激な国土の膨張に軍備……特に一般兵の装備や練度が追い付かず、貧相と思われても仕方ないのだ。
しかし、カルッシャ軍にはない別の勇壮さがそこにはあった。
今、ここで目の前の軍勢を抑えることが出来たなら、必ずや陛下は勝利を掴んでみせるだろう。
逆にいえば、自分達が何とかせねば勝利はない。
勇壮さは、そんなリンの想いから来ているのだろうか。
しかしカルッシャ重装騎士団と、リン率いるメンフィル軍の激突は、最初の槍合わせだけでメンフィル側の兵の4分の1が吹き飛んだ。
カルッシャ軍に比べ、明らかに弱いメンフィル軍。だが、その勢いは重装騎士の反転を完全に喰いとめ、しかも粘り強い。
その上、後方からエスカーナの放つ大魔法が轟き、支援砲撃を終えたミラ・ジュハーデスが凶悪な笑みを浮かべて突撃して来る。
カルッシャ軍にとっては悪夢だろう。
それでも。こちらの支援魔法と治癒魔法が絶えず使われてるため、被害自体はとても軽かった。
だが、重装騎士達はメンフィル王を追えない……セリーヌ殿下の下へ駆け付けられない己が身の不甲斐なさに顔を歪めた。
(セリーヌ殿下……どうか、どうか……ご無事で……)
竜の足を掴んで飛んでくるリウイの姿に、沸騰していた頭が急速に冷めた。
ただ一人……リウイしか見えなかった視界はクリアに広がり、自分の迂闊さに頬が軽くひくつく。
(まずい……)
なにせ、自分の傍には数人の騎士しかいない。
副将たるオイゲンすら後陣に置き去り、敵王と舌戦するなんて、本気の本気で迂闊だった。
(死にゅ……)
ティファーナの騎竜に掴まりここまで来たリウイ。
彼が、こうした短距離の空送を行う可能性に気づかないといけなかった。
まあ、後の祭りだけど。
竜の足から手を放し、ストンと軽やかに地上に降りたリウイを見ながら、私は心の中で、あははは、と笑う。
(ダメ、これ、詰んだ?)
そう絶望する私に、
「セリーヌ・テシュオス、アナタを討てば、我々の勝利だ」
静かな声色で私に告げるリウイ・マーシルン。
私はもう一度、あははは、と心の中で笑った。
バカみたい。気づかなかった。
リウイを討てば私達が勝ちなように、私を討てばリウイが勝つのだ。
(ほんとうに、私ってバカだなぁ……)
お付きの騎士達に目配せしながら小さく自嘲めいた笑いの衝動を喉から漏らし、私は腰に差した剣を抜いた。
セリカに買って貰ったプラチナソード……ではなく、水晶の刃を。
夕日を反射し、眩くキラリと輝く水晶で出来た解呪の刀身。
それを視界の隅に入れながら、私はスゥと左の手を前に出し、剣先を突き出す。
「リウイ・マーシルン、私のような病弱な女に剣を向けるなんて……ほんとう、さいっっっていっ! な男ですねっ!」
簡単になんて死んでやるもんですか!
そう思いながら、数瞬だけ目蓋を閉じた。
たくさん、たくさん、浮かぶ、アイツ。
そして、最後に浮かんだのは炎。
私を死に追いやった、炎だった。
(……そう、そうだよね。『あの』時と違って、私は『まだ』何もしてやいない)
まがりなりにも弟を救ってみせたあの時とは違い、今の私はまだ何も救ってなんかいなかった。
だから負けてたまるか!
せめて、一矢報いてやるんだからっ!
私はセリカに向けるように艶やかに頬笑み……リウイに向けて、べー、っと舌を出した。
セリーヌ王女が剣を引き抜く姿を遠く見ながら、
(大丈夫、大丈夫だ。まだ幾許かの時はあるはず……)
と、今すぐ駆け付けたいという逸る気持ちを抑え、部下達に指示を飛ばす。
例え相手が魔王と言えど、王女付きの騎士達がそう易々と討たれる筈がない。
第一、女に目がないと噂立つ魔王である。
お美しいセリーヌ王女は、さぞかし魔王の劣情を誘うことだろう。
(ならば、今の私がすることは……)
「閣下、『撤退』の準備、整いました。あとは殿下をお迎えしにいくだけであります!」
「そうか。ならば歩兵を先発に、続いて神官兵、魔術師。騎兵の半数は私と共に殿下の救出、残りの半数は、その後、殿下をお連れしてそのままメンフィル国境の外まで駆け馳せよ!」
「……はっ!」
「途中、後軍と合流出来そうならば合流しろ。だが、危険を少しでも感じるならば無視して横を抜けろ。味方を見捨てたという不名誉は、全て私が引き受ける。続いて竜騎士隊に伝令。一部の部隊は急ぎ本国へと帰還。レオニード殿下に拝謁し、此度の『宰相サイモフの策は失敗、至急援軍を請う』と伝えよ。いいか、『レオニード殿下』に直接だ。けして鳥の骨……サイモフを通すな!」
「そ、それはセリーヌ殿下に対して裏切り行為とはなりはすまいか? 第一……」
流石はセリーヌに仕えているのだと高言する男だ。
あの方の考えを、良く分かっている。私と違って……
「解っている。セリーヌ殿下は望むまい。あの方は、自身が敗れし時はメンフィルに降伏せよと、常々おっしゃっていたからな。だが……」
そう、だが……
セリーヌ王女と皇太子レオニード。お2人が揃えば、もしやと思ってしまう。
王女は戦略家であって戦術家ではない。皇太子は未知数だが、側近である翼獅吼騎士団団長モナルカは、信頼に値する戦術家である。
サイモフの邪魔なく、次期王たるレオニードに、セリーヌ、モナルカが補佐した戦場は、勝利の凱歌が響くに違いないと確信する。
しかし、これが再び王女を裏切る行為なのだとも分かってはいた。
戦略家である王女の視線は、ただの武人である己を超えて遠くを見据える。
きっと、この布陣で戦ってはいけないのだろう。それが何なのかは分からぬが。
だが、この誘惑。抗えるはずもない。
カルッシャのレスペレント統一。そんな夢の誘惑に、抗える筈がなかったのだ……
「とにかく、命令違反の咎は、全てこのオイゲン・ハイランドが受け持つ。そして、ご期待にそえず申し訳ありませんとオイゲンが言っていた。そうセリーヌ殿下に伝えて欲しい」
それだけ言い、大きく息を吸う。
血と鉄の臭いが混じる戦場の空気。
己が生涯の大部分を過ごした場所である。
心が沸き立つ。駆け、剣を振り、そして殺す。高揚感。
まさに血湧き肉躍る。恐らく、今の自分は凶悪に嗤っているだろう。
将の位を貰って以来、薄くしか感じられなくなった、この感じ。
その感情のまま、声を張り上げ……
「突撃ぃぃぃぃぃぃぃ!」
数百の騎兵と共に、王女の下へと馬を走らせた。
間違いなく、私はここで死ぬのだろう。
そう、思いながら……
セリーヌLv30 vs リウイLv230 開始