re:1から始めるボゴブリン ゼルダの伝説・ブレスオブザワイルド異伝 彼と勇者の百回戦争   作:笛ふき用

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序章:一回目

 彼の最初の最後の記憶は、長くハイラルの伝承に語られる偉大なる勇者リンクその人が騎士の息子として生を受け、長じて神の造りし聖剣に認められ、やがてハイラルに襲い掛かった厄災に立ち向かう英傑として姫を守り抜き、そして力尽きたその時よりおよそ百年。勇者自身のかけがえのない記憶と引き換えに【回生の祠】で百年の長き眠りから目覚めたしばらく後のことまでさかのぼることができる。

 

 場所は忘れられた台地の【回生の祠】から峠一つ隔てた高台。

 

 その時の彼はただ目の前でじわじわとおいしそうに焼かれる焼きケモノ肉がおいしく出来上がるのを待つただのごくごく平凡なボコブリンであった。体も小さく、色もごくごく一般的な明るい茶色。少なくてもこの後訪れた運命の時まで彼はどこにでもいるどこまでも平凡なボコブリンに過ぎなかった。

 

 そんな彼の周りには二人の仲間。一人は彼よりも少し大きな身体つきのボコブリン。目の前のケモノ肉を仕留めた気のいい先輩ボコブリンであった。もう一人はそれを料理した女の子のボコブリン。木がやさしく細やかで気の利くとてもよい娘で、彼と先輩の二人からそれはそれは大切にされていたのである。

 

 ゲギャギャギャギャ!! 

 

 叫び声をあげながら大喜びで踊り叫ぶ彼と二人の仲間。確かにボコブリンは魔物であり、弱く邪悪な生き物であるかもしれない。だが今この時一瞬を切り取れば、牧歌的で平和で仲睦まじいそんな光景がそこには広がっていたのだ。

 

 そしてその時はやってきた。

 

 フォンフォンと何かが空気を切る音に彼が気が付いた時には、先輩ボコブリンの頭部にどこからか勢いよく飛んできた木の枝が見事に直撃しそのまま大きく弾き飛ばされた先輩ボコブリンは崖下に落下。そのままあえなく溺死。

 

 さらに状況を把握する間もなく呆然としていた彼と彼女の下に、鋭く迫る影がひとつ。右手に錆びた剣を手に大岩とともに突貫してきた美しい金髪とサファイア色の目をした青年は、一息に彼の傍らにいた彼女に迫ると三度剣を振い、瞬く間に彼女の命を切り裂いた。

 

 ようやく我に返った彼は本能にしたがって自分の信じる獲物であるボコこん棒を手に振り返り、自分の大切なものを瞬く間に奪った憎い目の前の敵に向かって叩きつけた。だがその一撃は華麗に回避される。さらに逆に剣の一撃を喰らう彼。そしてグラリと態勢を崩した彼に襲い掛かる錆の浮いた剣の一撃を目にしたとき彼は自分の命を諦めた。

 

 彼は思った。自分は幸せであったのだ。気持ちのいい天気の日に気の合う仲間とおいしそうな食事が出来上がるのをただただ待つあの時、彼は確かにささやかであったが幸せだったのだ。

 

 迫りくる刃は錆が浮きそれほど切れ味の良いものではなかったが、それでもその一撃が自分の命を奪うことをこの時の彼はどこか他人事のように確信していた。

 

 だから死ぬのはしかたない。彼はそう思った。

 

 だがこの憎い仇にせめて一撃、目の前に無残に殺された二人に、つい先ほどまであった彼らの平和で幸せな日々を奪われた怒りをぶつけぬことには死んでも死にきれない! 

 

 そう刹那の時に思った彼がとった行動は崩れたままの体を無理やりに迫りくる剣を迎えに行くようにぶつけることであった。体を剣が切り裂く感触が彼の全身を熱く焼いたが、それでも彼は止まらない。不格好で拙く、大した威力でもないそんな一撃ではあったが、彼の放ったボコこん棒の一撃は確かに勇者に一撃を加えることに成功した。

 

 サファイアの瞳にわずかに浮かぶ驚き。彼はその顔を自分の目に、網膜に、記憶に、否、魂に刻みつけながらゆっくりと目を閉じた。

 

 もし自分が再び生まれ変わるなら、次こそは必ず目の前の男を殺してみせると。そう見たこともない魔物の神に誓って彼は、彼の一回目のボコブリン生を終えたのである。

 

 

 これが彼の最初の、最後の記憶。

 

 

 

 この物語は彼のその今際の際の誓いの声を聞き届けた彼ら魔物にとっての神厄災ガノンによって、力と経験、そして記憶を引き継いだまま赤き月が輝くたび幾度も蘇りその度にハイラルの勇者、かの英傑に挑み続けた一人のボコブリンの復讐の物語である。

 

 

 

 

 

 

 さて、最後にこの物語の別の側面について言及をしてこの序幕を終えたいと思う。

 

 この物語は、何度も何度も蘇りその度に自身に挑み続けるボコブリンをありとあらゆる方法で退け続けた勇者リンクの、時に勇敢でかっこよく、そして時に非常に実験的かつ卑怯で、陰惨極まりない物語である。

 

 

 一回目 死因:剣による惨殺死

 

 

 

 




誤字脱字、感想お待ちしてます。

今回のリンクさんの行動。

気づかれないように崖上へ移動。そこから木の枝を投げてクリティカルで一体を崖下に。そのまま崖下にかけおりて二体のボコブリンを錆びた剣で斬殺。

なお、リンクさん、この時のダメージは即座に焼きケモノ肉にて回復した模様。

なお、この物語を引き取ってくださる方いたら連絡ください。

全ては忙しいのに思いついた私が悪いんです……(涙)
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