………なんかね、オカシイです。これは明らかにオカシイです。
何がって?
いやね?わたしは今、海列車に乗っているんですよ。エニエス・ロビーにいるCP9長官に任務遂行の報告をするためにね。でんでん虫で報告してもいいですが、何処かで誰かが盗聴してるとも限りませんから。
ただ疑問なのは、何故……
「何故、海列車内がこんなにも物々しいんですか……。」
周りには誰一人として一般人を思わせる人が居ません。居るのはどいつもこいつも世界政府の下部組織の奴等ばかりです。海軍だったり諜報組織の人間だったりね。
いやもう本当にウンザリしてしまいます。いきなり、乗っていた車両にいた海兵どもに、海列車を降りてください、とか言われますし!
まあ、それはたまたま乗り合わせていた海軍本部大佐に事情を説明して、なんとか降りなくてすんだんですがね。
ただ、事情を説明した後に何故か一番前の無人の車両に連れていかれたのは謎でしたが。
つまり、わたしは今ぼっち状態にある、ということです。誰も乗ってないです。すごく、さみしいです。
そんなことを考えていると、ガチャ、とドアを開ける音が聞こえました。誰か部屋に入ってきたんですね!これでもう寂しくないです。
そう思って後ろを振り向くと、そこにいたのは同じCP9に所属しているルッチ、カク、ブルーノ、カリファでした。でも、それだけじゃありません。あれは……
「ニロ・コビン……」
「誰じゃ、それは」
「おや、感心しませんねえカク君。政府にとっての重要人物の名を忘れるとは。」
「それは貴様のほうじゃろが。というか、何故ここにおるんじゃルーク。」
「任務の帰り道でして、ここに居るのはたまたまです。」
「ふん、たまたま、のぉ?」
いや、なんでカク君はわたしのこと疑ってるんですか。いつも微笑みを携えている、この裏の人間とは思えない爽やかさ満点の好青年であるこのわたしを!
「取り敢えず、お喋りは後にして頂けないかしら?」
「おっと、そうじゃった。」
カリファちゃんとカク君がそう言って、コビンちゃんを座席に座らせると四人は前の車両、第二車両へ戻って行きます。
ふむ、わたしも第二車両に来いという意味でしょう。カク君が指をチョイチョイっと動かしています。その動作に従い、わたしも第二車両へと移動し、そこで聞きたいことを口にしました。
「コビンちゃんはさら」
「訂正しておくけれど、ニコ・ロビンよ。」
ああ、そうだったんですか。道理でカク君やカリファちゃんがずっと微妙な顔をしていたんですね。
「これは失礼しました。それで、ロビンちゃんは攫ってきたんですか?」
「いいや、ニコ・ロビンは自主的に投降した。」
即答してくれたのは、なんとルッチ君でした。めちゃくちゃ凄い悪人顔になってますが大丈夫ですかルッチ君?
ただ投降したとは、また面白い言い方をしますね。
「フフッ」
おッと、つい笑いが漏れてしまいました。
「何がおかしい、ルーク。」
ギロリと睨みつけてくる、やはり悪人顔のルッチ君。
「いえ、20年間も政府から逃げ続けたロビンちゃんが、何故いきなり投降などしたのか疑問に思いましてね。」
「一つ、取り引きをしてのぉ。」
今度答えてくれたのはカク君でした。しかし、取り引きとは……世間では冷酷非道やら悪魔やらと、色々言われている女性ですが、全く何を求めて取り引きをしたのか見当がつきませんねえ。
「我が身を差し出してまで求めたものとは……何だったんです?」
少しだけノリで間をとって話してみました。しかし、それだけで真剣そのものの場の雰囲気を作り出すわたしの話術に、自分で言うのもなんですが脱帽してしまいます。
わたしの才能大・爆・発。
思わず口角が上がってしまいます。が、カク君から返ってきた言葉に、上がっていた口角は下がり、口を真一文字に結んでしまいました。
「仲間が、麦わらの一味がウォーターセブンを無事に出航することじゃ。」
「それだけですか?」
「ああ、それだけじゃ。」
「それはまたなんとも……。」
意外としか言えません。ロビンちゃんは今まで人に取り行っては裏切るという行為を繰り返して生き延びてきた、そういう報告を受けていたのですが……。
麦わらの一味とは自分の命を差し出してまで生かす価値があるということでしょうか?それとも、全ての事情を知った上でロビンちゃんを受け入れたとか?
もしそうだとすれば、流石は主人公勢としか言えません。
しかし、一つだけ憂慮すべき事があります。
今わたしたちが向かっているのは司法の島エニエス・ロビー。麦わらの一味が主人公勢だという事を加味して考えたとき、麦わらの一味がロビンちゃんを奪い返すためにエニエス・ロビーまで乗り込んでくるかもしれない、ということは十二分に考えられることです。
これはよろしくないですね。主人公勢が乗り込んでくるということは、ロビンちゃん奪還が成功してしまう確率が大です。
それは言い換えれば、CP9が任務を失敗するという事です。
裏の世界での失敗は人生を大きく左右します。たとえそれ以前までの任務を全て成功させていたとしても、そのたった一度の失敗で命を狙う側から狙われる側になってしまうことなどザラにある話です。
チラリとルッチ君を見てみれば、明らかに何かを企んでいそうな表情です。まさかとは思いますが、麦わらの一味が追ってくることを予想……いや、確信してるんじゃないですか?
殺し大好きルッチ君はそれはそれはイヤラシイ嗤いをその悪人顔に貼り付けています。おーいルッチ君や、もしロビンちゃんを奪還されればシャレになりませんよー。
……………そろそろ、変えたほうがいいでしょうか、職場。