「とりあえず合わせてくれ、全世界の希望に。」
長官がそう言った後に執務室の扉を開けて入って来たのは勿論、ルッチ君たちが7年間もの時をかけて遂にその手中に収めることに成功したニコ・ロビンことロビンちゃんです。
あ、あとカティ・フラムことフランキー君も一緒に入って来ました。
この二人が世界政府に捕まったのは、なんでも古代兵器プルトンなるものを復活させるための鍵なんだとか。
古代兵器プルトンとはその名の通り、はるか昔に存在した兵器らしく、嘘が誠かその攻撃力はたった一発の砲撃で島一つを消し去ることの出来る力を持っていたらしいです。
全くもって恐ろしい話です。
スパンダム長官はそんな力を求めているワケですが、もし手に入れられたとしても、果たしてアンポンタンの長官に兵器を効率的に扱うことが出来るのでしょうか?
むしろ暴走させそうでメチャクチャ恐いんですが!「ああっ!間違えて砲撃を発射しちまった!!」とか言いだしそうだし、やりだしそうだしで本当に信じれないです。
今だって、古代兵器プルトンを復活させるための鍵であるはずの二人をドカドカバキバキ殴り蹴るという暴挙に出る始末です。
長官ってこんなだから信用と信頼を集められないと思うんですよねー。
長官とロビンちゃんとフランキー君のやり取りに興味がないのでしょう。CP9のメンバーは長官以外の誰もがその三人に視線さえよこさず、唯々無表情に無言です。
と思っているところで丁度しゃべり始めたのはブルーノ君とフクロウ君でした。
「麦わらが現れたのか?」
ブルーノ君のその問いは、スパンダム長官がロビンちゃんを絶望させるために言った言葉によって知らされたことです。スパンダム長官の言葉を抜粋すれば「エニエス・ロビーに侵入して来た馬鹿がいてな、そいつ等もそろそろ捕まってる頃だろう。麦わらとその一味がなぁ。」と、こういう感じです。
ブルーノ君の問いに答えたのはフクロウ君です。
「ああ、さっき通信が入ってしまったチャパパ〜。長官は恥ずかしいぐらい取り乱していたぞ。でもその時の報告では被害は五人だった。」
それを聞いてブルーノ君は視線を執務室へと向けました。もっと細かく言うのならば、執務室の上に設置されているでんでん虫にです。
なんというか、すごい真剣な顔ででんでん虫見てるんですが……。考えていることが『でんでん虫の受話器が、外れている。』とか下らないことじゃなければいいんですが。
いや、下らなくはないですね。もしかすると、今この時にとてつもなく重要な報告が知らされようとしているかもしれないのですからね。第一おかしいんですよ。被害が五人?一億の賞金首を相手に?ルフィ君を追っているのはおそらく下っ端君達でしょう。その子達に一億の賞金首を捕まえるのは不可能に近いと思うんですがねえ。もし捕まえられたとしても、ルフィ君が暴れまくり体力無くした時ぐらいしか無理なんじゃないですかね。
賞金額の大きさは言うなれば危険度と言い換えることが出来ます。一般市民への、政府への、世界への危険度。それを表したものが賞金額の大きさです。
今までの経験上そんな賞金をかけられた者たち、賞金首たちの中には厄介な者たちがいます。それは強者を倒して賞金額を上げた者たちです。市民を襲って賞金額を上げた者は総じて自身の力に驕っている者が多いので隙が大きく、またその隙が多い者も少なくありません。しかし強者を倒して賞金額を上げた者たちは、強者を倒すだけあり本物の強さを持っているものが多いのです。それは戦闘力だけではなく、心に一本揺るぎない信念を持っている場合が多いのです。苦しい戦い程、その信念が勝負を左右することも少なくありません。その信念がどんなものであれ、ね。
勿論、圧倒的に格が違う場合はどんな信念を持っていたとしても勝てる見込みは皆無でしょうが。
そんなことばかり考えていましたが、ようやくスパンダム長官の肉体言語も含めたおしゃべりが終わったようです。長官はロビンちゃんとフランキー君を錠に繋いでおくように言った後、わたし達に各自の部屋で一時の休息を取るように言いました。そしてもう一つ。
「この一件で我々に与えられる地位がとんでもねえモンになるのは確かだ。どうだ、船で一つ祝杯でも挙げようじゃねえか。」
この誘いに即答したのは勿論、我らが実質的リーダーのルッチ君です。
「祝杯という気分ではないですねえ。地位や権力に興味がないので。我々の正義は世界政府に既存する。政府があなたをCP9の司令官と認める限り、その任務を完璧に全うするまで。何もあなたの思想に賛同する必要はない。」
言い終わる前に扉へと歩き出すCP9の面々に遅れないようにわたしも歩き出します。いや、皆さん息揃いすぎてません?わたし一人この場に取り残されるところでしたよ!まあ、その場のノリを読んで皆さんとほぼ同じタイミングで立ち上がったので問題ないのですがね。
フフ、わたしのシックスセンスがキラリと光りました。
っていうかルッチ君、君途中から敬語じゃなくなってますよね、流石です。上官に対してのその不遜な物言いはジャブラ君の言うとおり、ふてぶてしさしか感じられません。
これはマズイです。ルッチ君の唯一のカワイイ要素であるハト君では、このふてぶてしさをカバーしきれません。そのため、ふてぶてしさだけが全面に押し出されCP9はともかく、島の衛兵達にはさぞかし恐れられ嫌われることでしょう。ルッチ君はぼっち君になることでしょう。ぷっ、自分で言っておきながら上手いと思ってしまいました。
ふむ、それではルッチ君、君は今をもってその名をぼっち君に改名しましょう。ぼっち君、安心して下さい。さみしそうな時は皆に人気者のわたしが喋りかけてあげますからね!!
「せ、正論だが……じゃあお前らの求めるものはなんだ!?」
おや?まだ会話は続いていたようですね。というか長官、お前らのってなんですか?別にわたし達の求めるものが全員一緒というワケではないんですよ?
「血、ですかねぇ。」
すいませーん、誰かこの人をインペルダウンに連行して下さーい。この後フランキー君がインペルダウンに護送される予定なんですが、それより先に送らなきゃいけない人を見つけてしまいましたー。
っていうかわたし、そんな理由でCP9にいるんじゃないんですけどッ!
赤ん坊の頃に勝手に政府に引き取られて、あれよあれよとという間にCP9入りですよ。訓練なんて強制的でしたよ。サボろうとしたり逃げ出そうとしたりすると、自分達よりも格上の元サイファーポールの役人がきて叩きのめされるっていうね。ああ…わたしの人生はこのまま任務に全うし、CP9を引退した後は次世代を担うCP9を育てる、そんな人生になってしまうのでしょうか。……よし!サボりましょう!わざわざ人生の全てを政府のために捧げる義理もないですしね。
「ここにいると、殺しさえ正当化される。」
ちょっとルッチ君!もう喋らないほうがいいですよ!長官腰抜かしちゃってるじゃないですか。やっぱりルッチ君はわたしの相手を安心させる微笑みを見習ったほういいと思うんです。
「寒気がするぜぇ……。政府にあって正に唯一の殺し屋集団。なんて頼もしい奴らだ、俺の部下達は。こいつらさえいれば、もはや俺は誰にも負ける気がしねぇ……!キッヒッヒッヒ……ハッハッハッハ!ダーッハッハッハッハ!!!」
長官、普通に聞こえてますからね。