そうぞうしんさまといっしょ!   作:水代

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第1話

「ようこそ、ポケットモンスターの世界へ」

 

 真っ白い和服とドレスを足したような衣装の少女が『アナタ』を迎える。

 腰まで届く白く艶やか髪に、その頭部に巻いているのは大きな黄色のリボン、その大きな胸を強調するように開いた胸元に垂れるのは黒いネクタイリボン。

 美しい少女だった。この世の物とは思えないほどに美しい少女が『アナタ』へと笑顔を向けていた。

 

「ようこそ、『アナタ』様、『サイハテ』へ。私は『アナタ』の案内を務めさせていただく者です」

 

 そう言って少女が一つ礼をする。

 

「この世界にはポケモンと呼ばれる不思議な生物が多く存在しています。『アナタ』はそんなポケモンと時に戦い、時に仲を深め、この世界を自由に旅しましょう」

 

 告げて少女はその手にいつの間にか握られていた赤と白の二色模様のボールを『アナタ』へと渡してくる。

 

「こちらはモンスターボール。ヒトがポケモンと共に生きるために作り上げたポケモンを『捕獲』するための道具になります。スイッチを押し、ポケモンへと投げることでボールが周囲のポケモンを感知し『捕獲』を開始します」

 

 説明と共に少女が空いた左手の指をぱちん、と鳴らすとぽん、と煙と共に三体のポケモンが現れる。

 『アナタ』は持ち前の知識でそれがいわゆる『御三家』と呼ばれるそれぞれ『くさ』『ほのお』『みず』タイプのポケモンであると理解できる。

 

「こちらのポケモンの中から好きなポケモンを一匹、どうぞ捕獲してください」

 

 少女の言葉に『アナタ』は一つ頷き、三匹へと視線をやる。

 最初のポケモンだからか、三匹とも動かずじっとしている。これならば簡単に当てられそうだった。

 ボールを振りかぶる。狙いを定め。しっかりと力を込め、振り上げたボールを勢い良く投げた。

 

 ―――直後にボールがすっぽ抜けて少女のほうへと飛んでいく。

 

「えっ?」

 

 突然ボールが自らへと飛んでくる、という予想外の事態に少女が目を丸くした直後。

 

 ポン、とボールから赤い光が伸び、少女を包んだかと思うと少女がボールの中へと消える。

 

 かた、かたかた、かた

 

 二度、三度とボールが揺れ。

 

 かちん、とロックがかかったような音がした。

 

 

 * * *

 

 

 ボールで捕獲できた、ということはどうやら少女は『ポケモン』だったらしい。

 ただ説明役が居なくなるのは困るので『アナタ』はボールを手に、もう一度少女を呼び出そうとする。

 あからさまに目立つ中央のスイッチを試しに押せば、捕獲した時と同じ赤い光が飛び出して目の前に少女が現れる。

 どうやら同じようにスイッチを押せば捕まえたポケモンは出せるのだと『アナタ』は学んだ。

 

「えぇ……これどうすれば」

 

 そうしてボールから出してみれば困ったような視線を向けてくる少女に『アナタ』は首を傾げる。

 

「いえ……そもそも私は、いえ、それ以前に……えっと」

 

 少ししどろもどろな少女はやがて口を閉ざし、何か考えたかと思うと。

 

「少々お待ちください、運営に問い合わせますので」

 

 告げて視線を空へと向けた。

 そのまま虚空に向かって何やらしばらく話かけていたがやがて『アナタ』へと視線を戻し。

 

「すみません、お待たせしました」

 

 ぺこりと一つ謝罪をし。

 

「最初に言っておくと、私は本来『アナタ』たちを導く案内役でして、一緒に旅はできないはずだったのですが……」

 

 ちらり、と彼女は『アナタ』が持つボールに視線を向け嘆息した。

 

「何故か捕獲されてしまったので運営に問い合わせたところ『問題無い、むしろ全然オッケー』との回答を頂いたので」

 

 少し言葉を溜め、少女は『アナタ』へと視線を合わせ。

 

「これからよろしくお願いしますね、トレーナー様」

 

 微笑してそう告げた。

 

 

 

「では気を取り直して、トレーナー様に説明の続きをさせてもらいますね」

 

 そう言って少女がふっと指を横にスライドさせると目の前にふっとホロウィンドが表示された。

 

「こちらがメニュー画面になります。上から『図鑑』『ポケモン』『道具』『プロフィール』『フレンド』『ログアウト』となります。それぞれの説明は必要ですか?」

 

 『アナタ』は首を横に振った。大体の機能は見れば分かるし、知っている物も多い。

 『アナタ』のそんな言葉に彼女は分かりましたと頷いた。

 

「ただ旅に出れば『バトル』をすることもあると思いますので、早めに私の『ステータス』の確認もお願いしますね」

 

 そう言って少女が微笑むと、『アナタ』は分かったと頷いた。

 

「では次に」

 

 告げる少女の言葉と共にぴこん、と電子音が響き『アナタ』の目の前にホロウィンドが開く。

 世界地図のようだった、六つの大陸に囲まれるような形で存在する中央の小さな島に赤い点がついている。

 

「こちらのマップについて説明させていただきますと、こちらの中央の赤いマークが『アナタ』の初期位置になります」

 

 ニコニコと笑う少女の白く細い指がホロウィンドのマップの中央を指した。

 それから北から順番に指を動かし。

 

「こちらが『カントー・ジョウト』『ホウエン』『シンオウ』『イッシュ』『イズモ』の六地方が存在します。この『サイハテ』からはどの地方に行くこともできます」

 

 ただし、と少女が指を『アナタ』へと突き付けた。

 

「1度だけです。もう一度『サイハテ』へ戻って来ることはできませんので。次の別の地方へ行く場合は各地方間を繋ぐ連絡船に乗る以外にありません」

 

 その言葉に『アナタ』は空を飛んでいくことはできないのか、と沸いた疑問を尋ねた。

 

「残念ながら地方から地方へと超長距離飛行のできるほどのポケモンとなると『伝説』クラスとなりますので、基本的には不可能だと思ってください」

 

 そうして前置きの説明を終えて、少女が『アナタ』へと問いかける。

 

「どちらの地方へと向かいますか? マスター様?」

 

 その問いに『アナタ』は少し考えて。

 

 

 ①カントー・ジョウト地方と答えた。

 

 ②ホウエン地方と答えた。

 

 ③シンオウ地方と答えた。

 

 ④イッシュ地方と答えた。

 

 ⑤イズモ地方と答えた。

 

 

 * * *

 

 

 ―――マサラはまっしろはじまりのいろ。

 

 街の入口にそんなことが書かれた看板を『アナタ』を見つけた。

 『アナタ』はカントー・ジョウト地方へ行くことを彼女へと願い、こうしてマサラタウンへと『転移』してきていた。

 

「ここ『マサラタウン』にはご存じの通り、オーキド研究所があります。北へ進めばトキワシティ、南に進むとグレンシティへと行けますね」

 

 『アナタ』は『なみのり』が無いのにグレンシティへ行けるのかと尋ねてみれば少女がはい、と頷く。

 

「『マサラタウン』と『グレンシティ』を往復する連絡船がありますので、半日ほどで着きますよ。ただし相応にお金が必要になりますので、トレーナー様の場合トキワシティへ向かうのが良いかと」

 

 『アナタ』はいくらくらいになるのか尋ねた。

 

「そうですね……だいたい5000円ほどでしょうか。サントアンヌ号などと違うただの連絡船ですのでそこまで高額というわけではありませんが」

 

 『アナタ』は実機での知識を元にメニュー画面からプロフィールを開く。

 そこには『アナタ』の登録した名前とプレイ時間、そして所持金が書かれていた。

 どうやら初期金額は2000円らしい、これでは足りない。

 

「この世界でお金を稼ぐ方法ですか? 基本的にはトレーナー同士のポケモンバトルが多いですね。それ以外では時折道に落ちている道具を見つけて拾ってフレンドリーショップで売ればお小遣いくらいにはなります。あとは……」

 

 うーん、と人差し指を唇に当て、少女は少し考えて。

 

「あとは本編には無かった要素として『アルバイト』などもできます。こちらは主にポケモンではなくトレーナー様自身が働く形になります」

 

 例としては、と少女がいくつか実際にあるのだろうアルバイトの例をいくつか示してくれる。

 どうやら現実で言うところの日雇いバイトのようなものらしい。

 とは言え拘束時間は一時間前後。給料は1000~2000円くらい。

 

「基本的にはポケモンバトルで勝利を重ねたほうが稼ぎは良くなりますね。ポケモンも育ちますし」

 

 言われて『アナタ』は少女のステータスを確認していなかったことを思い出す。

 メニュー画面を開き、ポケモンの項目をタップする。

 六体分の枠の一つに少女のSD絵が表示されているのでそれをさらにタップ。

 

 

 【名前】――――

 【種族】アルセウス/擬人種

 【性別】??

 【Lv】1/120

 【能力】HP:A こうげき:A ぼうぎょ:A とくこう:A とくぼう:A すばやさ:A

 【BP】――――

 【特性】マルチタイプ*1

 【戦技】ちきゅうなげ/コスモパワー/しぜんのめぐみ/おしおき

 【旅技】――――

 【特殊】初期ポケモン*2

 

 

 開かれ表示された画面が知識とはやや異なることに『アナタ』は首を傾げる。

 そんな『アナタ』の様子を見た少女が説明をくれた。

 

「説明させてもらいますね。まず【名前】ですが捕獲したポケモンのニックネームになります。現在トレーナー様は私にニックネームを付けていないので表示されていません」

 

 言われて『アナタ』は少女にニックネームをつけていないことに気づいた。

 少女を捕獲したことは『アナタ』にとっても運営にとっても予期しない偶発的な事態とは言え、少女と同じ種族のポケモンもいつか他のプレイヤーが捕獲するようになるのだろうことを考えるとニックネームというのは『差別化』という意味では重要なのだろう。

 『アナタ』は少女のニックネームを考えておくと伝えると、少女は少し嬉しそう笑った。

 

「ではお願いしますね、トレーナー様。それで次に【種族】になりますが、これはそのままポケモンの種族になります。私の種族は『アルセウス』と呼ばれるポケモンですね。とは言っても『アルセウス』は一匹しかしない種族なので私はその『アバター』になりますが」

 

 『アバター』という聞き覚えの無い言葉に『アナタ』は首を傾げた。

 

「一部のポケモン……はい、そうですね、トレーナー様の言うところの『伝説のポケモン』と呼ばれるような存在は『アバター』という分身のような物を作ってこの世界に存在しています。本体は世界に与える影響が大きすぎるため普段は眠っているような状態ですね。なので私は『アルセウス』というポケモンの力の一部のようなものだと考えてください」

 

 なるほど、と『アナタ』は納得する。

 恐らく『伝説のポケモン』が一体しかいないのでは困るのでユーザー全員が獲得できるようそういう『仕様』になっているのだろうと『アナタ』は考える。

 

「後ろの擬人種というのも同様ですね。トレーナー様は擬人種については?」

 

 一応教えて欲しいことを伝えると少女は分かりましたと微笑んで頷いた。

 

「擬人種はそのまま人と同じ姿をしたポケモンのことですね。人と共に生きるうちに人と同じ姿に憧れたポケモンが人の姿へと『適応』したものだと言われています」

 

 私はちょっと例外ですが、と苦笑しながらやがて少女があっ、と何かに気づいたようにはっとなり。

 

「え、えっと……人の姿をしてるからって、その……えっと。え、え、えっちなのはダメですよ?」

 

 頬を赤らめ、視線を彷徨わせながら消え入るような声で呟く少女に『アナタ』は分かったと頷いた。

 こほん、と咳払いして話を切り替えようとする少女だったが、その頬がまだ赤いことを『アナタ』は黙っていた。

 

「えっと、それから次ですが……【性別】はそのままですし良いですね。その次のレベル、そう【Lv】ですね。これはポケモンのレベルになります。ポケモンのステータスは後から言う【能力】とこの【Lv】によって決定するので単純に【Lv】が高いほど強いポケモンになると思ってもらっても構いません」

 

 どうして上限が100じゃないのか、と『アナタ』は気になったことを尋ねてみた。

 

「それはですね、有体に言えば才能のようなものと思ってもらっても構いません。えっと……トレーナー様にも分かるよう言うならば『個体値』に該当します。ただしこれは後天的に伸ばすことは可能です」

 

 つまり個体値が低いとレベル100に到達しないポケモンも?

 

「そうですね、低いポケモンはレベル75が上限になったりします。ただレベル100までは簡単に伸ばせますので……」

 

 確かにそうしなければこの世界でも『厳選』行為が起こるかもしれないと『アナタ』は納得した。

 

「レベル100上限を超えるのは少し難易度が高いんですが、まあ私は元となったポケモンがポケモンですので……そうですね、トレーナー様の仰る通り『伝説のポケモン』なんかはアバターでもこの上限が高くなります」

 

 大よそ理解したことを伝えると少女がほっと、安堵したように息を吐いた。

 

「では次に【能力】の説明ですね。こちらはトレーナー様に合わせるなら『種族値』に該当します」

 

 どうしてアルファベットなのだろう、という疑問を『アナタ』は少女へぶつける。

 

「具体的な数値はマスクデータになっています。そもそもの能力値の計算仕様が元とは異なっていますので」

 

 メタい、と呟いた『アナタ』に少女はそういう役割ですので、と苦笑した。

 

「最低値がEから始まり最大がSになりますね。これに【Lv】を元にした計算した結果がポケモンのステータスになります。それから」

 

 『アナタ』も気になっていたBPと呼ばれる項目である。

 

「そうですね【BP】はそのままボーナスポイントで構いません。これはレベルアップした時に獲得できます。獲得したボーナスポイントはステータス数値に割り振ることができ、ステータスを『補正』することが可能になります」

 

 恐らく『努力値』……ゲーム的に言うなら『基礎ポイント』のようなものだろうか。

 

「そうですね、大よそそのように捉えてもらっても構いません。割り振り自体は好きにできますが一つの能力値に割り振れる合計値には上限があります。ただリセット機能もあるので好きに割り振ってもらっても大丈夫です」

 

 しかしそうなるとレベル上限というのは重要になるだろうと『アナタ』は思った。

 大概のポケモンがレベル100上限の中で、レベル120まで上げれるならば20レベル分のステータスが得られる上にボーナスポイントも20レベル分割り振れるということになる。

 

「そうですね、ただどんなポケモンでもレベル上限を上げることは可能ですので、最終的な条件は同じになります」

 

 初期ポケモンが私で得した、くらいで良いんですよ?

 なんて悪戯っぽい笑みを浮かべる少女に『アナタ』は確かにラッキーだったのだろうと思った。

 

「次は【特性】ですね。残念ながら私は一つしかないので、これで固定になりますが、複数の特性を持つポケモンは好きな特性を選択して切り替えが可能になります」

 

 それは便利そうだと思ったが、夢特性……『隠れ特性』というのはどうなるのだろう?

 

「ポケモンの『隠れ特性』に関しては少し仕様が特殊でして、最初は解放されていませんが、条件を達成することで解放されます。それ以降は好きに切り替え可能です」

 

 なるほどと納得した『アナタ』に少女はさらに説明を続ける。

 

「【戦技】と【旅技】ですが【戦技】はつまりポケモンバトルの際に使える技になります。【Lv】が上がると新しい技を覚えたりもしますが、基本的にセットできるのは4枠だけになります。5個以上の技を覚えますと【戦技】の欄がタップできるようになりますので、それで技の入れ替えができるようになります」

 

 『技忘れ』や『技思い出し』がいらないのは手間が無くて良いが同時に寂しいと『アナタ』は思った。

 

「ま、まあ……一部地方にはいなかったり、行くにしても各地方はかなり広いので技の入れ替えだけで数日かけることになったり、なんてこともありますので」

 

 言われて確かにこの広大な地方を技一つのために駆けるのは相当な手間だと理解する。

 ただ『タマゴ技』や『教え技』などはどうなるのだろうか。

 

「えっと、それに関しては『ラーニングシステム』というものがありまして。また別の話になりますので、まずは説明の続きをさせてもらいますね」

 

 『ラーニングシステム』という何とも惹かれる響きの言葉だったが、少女は構わず続ける。

 

「【旅技】はいわゆる『秘伝技』などですね。『いあいぎり』『そらをとぶ』『なみのり』『かいりき』などが該当します。こちらは覚える枠に制限はありませんが、ポケモンごとに覚えれる技と覚えれない技もあります」

 

 【戦技】とは別枠で使えるというのは確かに便利だった。まあ最近だと実機でも同じように覚えさせる必要も無くなってきているが。

 

「最後に【特殊】というのはポケモンごとの特異性、とでも呼びましょうか? 分かりやすい例を挙げるなら『色違い』などが該当します。こちらは先天的にしか得られない物も多いですが後天的に付け加えることのできるものも多いです」

 

 初期ポケモンというのは特異性なのだろうか。それにそれに際して実効力があるとなると無視できない要素ではある。

 

「基本的に効力があってもそこまでの物では無かったり、メリットとデメリットが一緒だったり『初期ポケモン』くらいですね、純粋に便利なのは。基本的に先天的に得られる【特殊】要素で絶対的なメリットを得られる、というのは余り無いですし、そもそも初期状態で【特殊】がついてるポケモンは極めて少ないので普通に旅していても滅多に見れないと思いますよ」

 

 まあ例として挙げられたのが色違いという時点でその確率はお察しではあった。

 

「まあ説明はこれくらいにして。どうでしょう? トレーナー様。試しにマサラタウンから出て見てポケモンバトルというのは」

 

 少女のそんな言葉に『アナタ』は色めき立った。

 そんな『アナタ』に少女が仕方ないなあ、と苦笑し。

 

「では行きましょう、トレーナー様」

 

 そう告げて手を差し出した。

 

 

*1
持っている『プレート』に対応して『タイプ』が変化する。

*2
『アナタ』が初めて捕まえたポケモン。取得経験値に補正がかかる。

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