説明しよう!
ラーニングシステムとは、ポケモンの技を図鑑が『記録』し、数値、データ化することで同じ技を適性のあるポケモンに『わざおしえ』することができる素敵機能である!
―――と少女が言っていた。
「まあ正確に言いますと、ポケモンの技の『記録』全般に関するシステム何ですが、例えばトレーナー様もよくご存じの『わざマシン』なんかもこのラーニングシステムに属します」
『わざマシン』という道具に関してはとても馴染みがあった『アナタ』はなるほどと頷いた。
要するにポケモンに技を学習させる機能全般を指す言葉らしい。
そして実機のように地方各地に『わざマシン』が落ちているようなことは無く、大半の『わざマシン』はフレンドリーショップで購入することができる、もしくは『記録』機能を使うことで『わざおしえ』の一覧にリスト化することができる。
「そもそもの話、わざマシンは通常ディスク状態で獲得されますので、それを再生する機器が必要になります。そのための図鑑でもありますね」
だからとても重要なんですよ、と告げる少女の言葉に『アナタ』は手の中で弄んでいた図鑑をまじまじと見つめた。
「さて、早速ですがトレーナー様、ポケモンスクールに参りましょう」
ポケモンスクール。確かポケモンに関して学ぶための学校のようなものだったはずだ。
実機では子供が授業を受けていて、ポケモンの基礎的知識に関して教えてくれる場所、程度の認識だ。
「実はこちらもチュートリアルの一貫でして、ポケモンスクールで一度授業を受けると必ず『わざマシン』をもらえるんです。本来なら先ほどのポケモンセンターで声をかけてきた男性のようなチュートリアル用NPCが教えてくれることですね」
ああ、やはり先ほどの男性は説明役のNPCだったのか、と『アナタ』は自分の考えが正しかったことを知った。
いやしかし、ゲームキャラクターである少女の口からNPCという単語が出てくるのはメタが過ぎないだろうかとも思うが、そもそもこの少女は運営に直接連絡を入れれるチュートリアル担当キャラだったのだから相応に知能の高いAIを使っているのだろう、正直『アナタ』は少女と会話していて本当に中に人がいるのではないか、と疑っていた。
それはそれとして、ポケモンスクールで授業を受ければもらえるわざマシンとは?
「ああ、それはですね―――」
少女が告げたその名前は、確かに今の『アナタ』と少女にとっては使い勝手の良いものであることは間違いなかった。
* * *
―――アルセウスの『いあいぎり』!
放たれた少女の手刀がコラッタを軽々と吹き飛ばし、致命的なダメージを受けたコラッタが『ひんし』となる。
「良い感じですね! トレーナー様」
新しく技を覚えてから何度目かになる戦闘にご満悦の様子の少女。
けれど『アナタ』もまた満更でも無かった。
ポケモンスクールの授業を受けた結果もらえたのは『いあいぎり』のわざマシンだった。
===【戦技詳細】===
| 技 名 | いあいぎり |
| タイプ | ノーマル |
| 分 類 | 物理 |
| 威 力 | 50 |
| 命 中 | 95 |
| 範 囲 | 単体 |
| 直 接 | 〇 |
| 発 動 | 1.5秒 |
| 待 機 | 4秒 |
| 効 果 | ――― |
============
コンフィグ画面からメニュー画面の表示形式を弄ってみたのだが、以前よりは見やすいのではないかと『アナタ』は満足げに頷いた。
まあそれはそれとして、『いあいぎり』は『おしおき』より少し威力の低い技ではあったが同じタイプの技であるが故に実質の威力は『いあいぎり』のほうが高い。何より技の出が早く、そして技発動後の硬直も短い非常に使いやすい技だった。
実機的思考ならひたすらに威力の高い技を詰め込めば良いと思ってしまうが、こうして実際にリアルタイムバトルで指示をしてみるとこういう回転率の良い使い勝手の良い技というのも必要なのではないか、と『アナタ』は思った。
リアルタイムバトルにおける命中率、というのは一体どういうことなのかと疑問を抱いていた『アナタ』だったが使っていて理解するのは要するにこれは『ブレ』だ。
例えば命中100の技なら同じ態勢から同じ目標を狙って同じ軌道で放てば必ず同じように技が出る。
だが命中が下がるとそこにブレが出る。
例えば『いあいぎり』ならば出が速いが故か、同じ軌道で技を放っても着弾地点が毎回僅かにズレるのだ。命中5の差なのでこのブレは僅かと言って良いレベルだが、20、30と差が大きくなれば決して無視できないだろう。
なるほど……これだけブレるなら確かにワロスエッジ*1は当たらないのも無理はない。
とは言え、実機とは違ってこれは割とどうにでもなる部分ではある。
要するにブレるならその分近づけば良いのだ。
極論を言えば目と鼻の先で放てば、命中100だろうが命中70だろうが方向さえあっていれば当たる。
逆に言えば相手のコラッタの『たいあたり』を少女が軽々と避けるように命中100であっても避けることは可能である、ということだ。
ただし近づいた分だけ相手の攻撃も当たりやすくなる。
そこはトレーナーである『アナタ』が上手く指示してあげる必要があった。
とは言え今少女が使える技は直接攻撃技ばかりなので結局相手との距離を詰める必要性はあるのだが。
そして何より難しいのが技を出すタイミング、だ。
少女と同じレベル……或いは少女のレベル以下の相手ならば大概の場合能力値の差で勝てるのだが、まだまだレベルの低い少女の場合、少女より高レベルのポケモン相手では当たり負けする。
先も言ったが少女の攻撃は直接攻撃技ばかりだ、つまり相手にかなり近づく必要がある。
今作におけるポケモンの技には全て『発動』と『待機』があるのはすでに知っての通りではあるが、これは当然味方と相手両方に適用されるルールだ。
なので迂闊に指示を出すと、相手の攻撃に向かって突っ込んでいくような形になってしまう。
発動時間は技の充填時間、充填が終われば強制的に技が発動してしまう。溜めたまま近づくなんてことはできないため、距離を離すと何も無い場所で勝手に技が発動してしまうのだ。
当然技が空振りに終わっても待機時間はしっかりと存在する。待機時間中は行動が鈍り、特に技の発動直後は硬直が入るため攻撃を避けるのが難しくなる。
故に実機のようにとにかく攻撃の指示を出す、ということができない。
相手の攻撃を避けて、こちらの技を出す、というのが理想ではあるがそう簡単に相手も避けさせてくれないし、先に技を出されると後手に回ってしまうこともある。
何より『アナタ』を困惑させたのは環境そのものだ。
実機では特に意味の無かったはずの周囲の環境だが、当然コラッタのような小柄なポケモンは草むらに飛び込まれれば視認することが難しくなる。
草むらの中に隠れて一瞬見失っている間に奇襲で飛び掛かられて先手を取られたこともあったし、逆に当たると思った攻撃を咄嗟に周囲に生えた木を盾にして回避したこともあった。
トレーナーの処理すべき情報量が従来の仕様よりもずっと多く、故に『アナタ』は中々バトルに慣れることができずにいた。
とは言え、これも追々慣れてくるのかもしれないが……。
===========【ステータス】=============
| 名 前 | ――― |
| 種 族 | アルセウス/擬人種 |
| 性 別 | ???? |
| レベル | 6/120 |
| 能力① | HP:A こうげき:A ぼうぎょ:A |
| 能力② | とくこう:A とくぼう:A すばやさ:A |
| B P | 25 |
| 特 性 | マルチタイプ |
| 戦 技 | ちきゅうなげ/コスモパワー/いあいぎり/おしおき |
| 旅 技 | ――― |
| 特 殊 | 初期ポケモン |
==============================
これが現在の少女のデータ。
レベルが上がったお陰かトキワシティ周辺で苦戦することも減ってきてはいるものの、時々『急所』に攻撃を受けてポケモンセンターに駆け込むことはあった。
とは言えさすがにこの辺りではレベルが上がりづらくなってきたのを『アナタ』は感じた。
それはさておき。
「トレーナー様はジム挑戦などにも興味はおありでしょうか?」
一戦終え、一息ついたタイミングでの少女の言葉に『アナタ』は一瞬戸惑ったが頷いた。
ジムバッジを集め旅をするのはやはりポケモンというゲームに欠かせないコンテンツだと『アナタ』は思った。
「ポケモンリーグへの挑戦には『ジムバッジ』が不可欠となります。また他にも他地方へ移動する際にはその地方のバッジが最低4つは必要となりますのでご注意ください。それ以外にも取得したバッジの数に応じてフレンドリーショップのラインナップなどが増えます」
ジムバッジの取得順などはあるのだろうか、という『アナタ』の疑問に少女は頷いて答える。
「基本的にはどこからでも挑戦可能となっております。また所有バッジの数に応じて相手の使用ポケモンの強さも変化しますのでどこから挑戦しても大よそ問題はありません」
となるとトキワシティにも確かジムがあったはずだ、と『アナタ』は思い出す。
「はい、トキワシティにもトキワジムがありますが、早速挑戦されますか?」
などと少女は問うてくるが、さすがにレベル6のポケモン一匹で勝てるとは思わないので『アナタ』は首を振った。
そもそもトレーナー対トレーナーのバトルすら熟したことが無いのだ、どう考えても野生のポケモン相手とは勝手が違うだろうし、一度くらいは体験しておきたい。
そんな『アナタ』の提案に少女は頷いた。
「分かりました、では『トキワのもり』へ向かいましょう。『トキワのもり』は多くの野生ポケモンが生息しており、またそれをゲットするために多くのトレーナーが滞在しております」
『トキワのもり』という言葉に『アナタ』は視線を遠くに見える森に向けた。
『トキワのもり』はトキワシティとニビシティを繋ぐ広大で鬱蒼とした森だ。
実機で歩くにはそれなりに広い、程度だったが自分の足で歩くとなると一体どれほど広大なのろうか、と『アナタ』は思った。
「それと、先も言いました通り『トキワのもり』には多くの野生ポケモンが生息しております。この辺りで新しい仲間をゲットしてみてはいかがでしょうか?」
なんて少女の提案に『アナタ』は頷いた。それは『アナタ』も思っていたことだからだ。
とは言え、育成の手間を考えるならば手あたり次第というわけにもいかない。
どのポケモンをゲットすべきか、そんなことを『アナタ』は考える。
なんて考えてみて、出会ってから考えれば良いか、と『アナタ』は思考を放棄した。
* * *
『トキワのもり』は非常に広い。
何せ南はトキワシティから北はニビシティ、東はタマムシシティから西はセキエイこうげんまで近くまで伸びているのだ。
とは言え規模自体は非常に広範囲なものであっても実際に『トキワのもり』と呼ばれるのはトキワシティからニビシティへと続く道の周辺一帯を指す。
それはそこが最も森の密度が濃い場所であり、いわば『トキワのもり』の中心と言える場所だからだ。
この森で出会えるポケモンは大半が『むし』タイプのポケモンだ。
キャタピーにビードル、その進化系のトランセルやコクーン、さらに進化系のバタフリーにスピアーがあちこちに生息しており、それを捕食するポッポやピジョンたち鳥ポケモンが時折木々の上に陣取っている。
そして何よりこの『トキワのもり』にはカントー地方でもここにしか生息していないポケモンが存在する。
| NО | 25 |
| 種族 | ピカチュウ |
| 分類 | ねずみポケモン |
| 高さ | 0,4m |
| 重さ | 6.0kg |
| 特性 | せいでんき/ひらいしん |
| 説明 | しっぽをたてて まわりのけはいを かんじとっている。 だから むやみに しっぽを ひっぱると かみつくよ |
| 分布 | カントー地方『トキワのもり』『むじんはつでんしょ』 |
「ピカ?」
ピカチュウである。
正確には今現在は『むじんはつでんしょ』のほうにも住んでいるのだろうが、元々はこの『トキワのもり』の固有種だったらしい。
その愛らしい外見から他地方にも輸出されて全国的にその生息域を広げたとかなんとか、そんなことを少女が語っていたが、裏設定か何かだろうかと聞き覚えの無い設定に『アナタ』は首を傾げた。
道なりに進むとポケモンと出会わなかったシティ間の整備された道路と違い、『トキワのもり』はどこからでもポケモンが飛び出してくる無法地帯だ。
当然歩いているだけでポケモンと遭遇するのだが、まさか一番最初に出会うのがピカチュウだとは思わなかった。
「ピ~カ?」
人懐っこい性格なのか警戒心も無くピカチュウが『アナタ』の傍に寄って来る。
そっと指を差しだすとスンスン、と鼻先で指の匂いを嗅ぐような仕草をして。
―――ピカチュウの『どろぼう』!
さっと『アナタ』のかざしていた『ポケモン図鑑』を咥えて走り出す。
「あ、ちょっと、待ちなさい!」
少女が慌てて追いかけようとするが、すぐさま森の中へとその姿を消してしまった。
>>クエスト発生『トキワのもりのちいさなどろぼうをさがせ!』
突然の事態に一瞬呆けてしまっていた『アナタ』の意識を呼び戻したのは、視界に開いたホロウィンドウ。
そこに表示された『クエスト』の文字に『アナタ』は首を傾げた。
やっぱネトゲと言えばクエストでしょう。