ダンまち世界に迷い込むのは間違っているだろうか   作:レイジー

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 今後サブタイは序盤内容で決めようと思ふ(それが楽でいいな)
 ネタバレって嫌な人はとことん嫌うから(お前みたいにな)
 だってつまらんじゃん?だから考察とかも嫌い(当たってたら読むときに楽しみが減るもんな)
 ダンメモ《ダンまち・メモリアフレーゼ》のデアラコラボの時は展開が分かりやすすぎてガッカリだった(コラボすると個人の特徴が失われて中途半端になるもんな)
 どっちの好さも生かせず終わった雰囲気(…この話は終わろう)
 了解(ノシ)


第一〇話 パーティ

「そっちに二体行った!」

「ちょッ!?ちゃんとしろって!」

「こんな大量のキラーアントを相手にしなきゃいけないのは元を正せばオリヴィアの所為だろ!?」

「ちょっとした好奇心だったんだ!」

 

 二人は7階層で大量のモンスター、主にキラーアントと交戦している。

 その数はキラーアントだけで30におよび、二人は通路で挟み撃ちにあっていた。

 その原因はミストが言ったようにオリヴィアの行動によるもので、原因はキラーアントを半殺し状態にして少し放置したこと。

 キラーアントは死にかけると仲間を呼び寄せる性質を持っている。

 オリヴィアの行動に気が付いたミストはすぐにキラーアントを殺したが既に遅く、その場から立ち去ろうとする前に二人はキラーアントに取り囲まれついでに他のパープル・モスやニードルラビットも襲い掛かってきた。

 

「そもそも昨日まで1~4階層で戦ってたやつがこの数とこの強さをまともに相手できるわけないだろ!」

「私も同じだ!」

「だったらせめて5階層で満足しろよ!」

「それは、無理な相談だ!!」

 

 ハッキリと言い切るオリヴィアに罵声を飛ばしながら左手に予備用の短剣を握って前面のモンスターを倒す。

 

「私の方に来いッ」

「!?わかった」

 

 キラーアントの甲殻に苦戦しているとオリヴィアが詠唱を開始した。

 

「【尽きし星の冷たき断片】」

 

 キラーアントの顎を蹴り飛ばして前線から離脱するとオリヴィアが魔法を発動させる。

 

「【オスクロ・エンハンブレ】」

 

 オリヴィアの腕から靄のような闇が流れ出て握っていた大剣を包み込んだ。

 刀身の完全に隠れた大剣を力の限り振るうと、大剣の切っ先から闇が線のように放出されて離れた位置にいたモンスターを残さずすべて切り裂いて魔石とドロップアイテムに変える。

 

「いっちょあがり!」

 

 肩に大剣を担ぐと呆然とするミストから離れて魔石を回収する。

 

「今のは?」

 

 気を取り直したミストも同じように魔石を回収しながらオリヴィアの魔法について尋ねる。

 説明しづらそうに言葉を考えるオリヴィアは二人が回収し終えてから説明を始めた。

 

「モノとしては攻撃魔法。ただ汎用性はそこそこあって、そのまま放出することもできるしさっきみたいに武器に纏わせて全体攻撃にすることも出来て、武器に纏わせたまま攻撃したら攻撃力も上がる」

 

 ただ燃費はワリィがな、と豪快に笑いながら大剣を素振りするオリヴィア。

 逆にミストの魔法についても尋ねられ、ミストは現状分かっていることを説明する。

 

「なんだよ、お互いに燃費ワリィな」

「互いに基本は武器攻撃だな」

 

 ハハハと二人笑いながら探索していると、蝶のようなモンスターと遭遇する。

 

「ブルー・パピリオ!?」

「なにそれ?」

「オリヴィア知らないの?簡単に言うと稀少種」

 

 簡単に説明すると金になる事だけは理解できたオリヴィアが一気に二体のブルー・パピリオを倒した。

 仲間が殺されて慌てた残りの一体が逃げようとしたが、ミストがそこをすかさず一突きにする。

 

「よっし!ドロップアイテムだ!」

 

 『ブルー・パピリオの翅』を確認したミストは嬉々として傷つけないように慎重に回収し、背嚢(バックパック)に収納した。

 

「どれくらいすんだ?」

「ん~これだけで大体八〇〇〇ヴァリス」

 

 その予想外の金額に圧倒されたオリヴィアがまた同じモンスターを探しに行こうとするが、稀少種という事を再び説明するとガッカリしたように引き下がる。

 

「もっと探索しようぜ」

「いや、探索を開始してから結構時間が経っている。そろそろ帰ろうか」

 

 戦い足りない様子のオリヴィアを制止してミストは来た道を引き返す。

 オリヴィアもファミリアには迷惑を掛けられないのか渋々ミストについて行く。

 

 

「「三五四〇〇ヴァリス…」」

 

 地上に戻ってきた僕はオリヴィアと二人で目の前のヴァリスに釘付けになっている。

 幸運にも稀少種のドロップアイテムがあったから収入が大きく跳ね上がったのもあるが、それを除いても稼ぎは昨日の二倍以上だ。

 

「オリヴィアすげぇ」

「ミストすげぇ」

 

 思わずオリヴィアを称えると、同時にオリヴィアも僕の事を褒めていた。

 

「ぼ、僕なんて…トータルの稼ぎで言えば昨日の3倍だし!」

「それを言ったら私も昨日の稼ぎの三倍以上だ!」

 

 二人してパーティを組んだ恩恵に圧倒させられる。

 パーティを組んで連携することで足し算以上の効果が表れて圧倒的に効率が良くなった。

 

「でも今日は大変だったな」

「主にオリヴィアの所為だけどな」

 

 結局オリヴィアのせいでキラーアント事件は二回も起きた。

 

「こっちはキラーアントの性質を説明したってのに…」

「仕方ねぇだろ!?死んでると思って放置してたんだよ!」

「ちゃんと魔石を落としたのを確認しろよ…アイツの性質は厄介なんだから」

 

 文句を言っていると僕たちの間に静寂が生まれ、気づけば僕たちは同時に笑っていた。

 

「まあ、ステイタスに余裕が生まれたらその性質利用して稼ぐのも手だな」

「引き際が重要だけどな」

「大丈夫大丈夫!私とお前が組んだら問題ねぇって」

 

 根拠のない自信を堂々と見せつけてくるオリヴィアに圧倒されるも同時にこちらにも自信が生まれてくる。

 

「ああ、だけど慢心するなよ?」

「それは先輩にも言われたから安心しろ」

「キラーアントは慢心なんですが、それは」

 

 ついさっきも話していたことを掘り返すとオリヴィアがあからさまなとぼけ顔を見せた。

 

「不安だなぁ」

「アハハハハ……」

 

 こうして今後もパーティを組むことになった僕たちはそれからほぼ毎日ダンジョン探索に精を出し、二か月後には十分な上納金をロキ・ファミリアに収めることが出来、ステイタスも全体的に平均値を上回るようになっていた。

 さらに入団から八か月後にはステイタスの伸びは著しく下がってきていたが魔力以外は上位に入る評価を得た。

 

 

 ミスト・グリージョ

 Lv.1

 力:H132→S921 耐久:G252→B758 器用:G250→B711 敏捷:G203→S932 魔力:I86→C688

《魔法》

【ファンタム・リアリティ】

《スキル》

誘導殺戮(ジェノサイド)

 ・意図的な劣勢時にステイタス補正

 ・能力補正は劣勢状況に依存する

 ・発動時間に比例して体力と精神力(マインド)の減少。

 

 これが今のステイタス。

 オリヴィアと一緒にキラーアントばかりと戦っているうちにスキルが発現した。

 このスキルは意識的に発動を切り替えることが出来るため常に体力と精神力(マインド)が削られることはないのだけど、発動時は回復が出来ない副作用があるから戦闘中の発動切り替えが出来ないこのスキルは長時間の戦闘には向いていないのだ。

 ロキはこのステイタスならランクアップには十分なはずなんやけど、と言っていたけれど『冒険』をしない限りは上位の『経験値(エクセリア)』を得ることが出来ないからランクアップは困難。

 ステイタス的にはLv.1の冒険者の平均値はG~Cだからステイタス的にはかなり上。

 けれど13階層以下の『中層』はLv.1には不可能だからそもそも冒険は難しい。

 ステイタスを下手に上げすぎるのは危険だと気付いたのは二人のステイタスが手遅れになってからだった。

 

 

「ランクアップがしたい」

「それは俺もだ」

 

 オリヴィアが待ち合わせ場所で顔合わせをしたとたんにそんなことを言い始めた。

 ちなみに『俺』と言ったのは俺だ。オリヴィアがその砕けた口調でその一人称は変な感じがする、と文句を言ってきたため探索中の一人称は『俺』にしているのだがこれはこれで以前よりも他の冒険者に馬鹿にされることも減ったので気にはしていないのだが、一日の中で『僕』よりも『俺』の方が圧倒的に頻度が増えたせいで最近は本拠(ホーム)にいる時もつい癖で『俺』と言ってしまって驚かれることがあった。

 

「だけど俺たちには冒険は無理だろ?」

「フッフッフ」

 

 事実を言った途端、オリヴィアが不気味な笑いを出し始めた。

 そしてバッ、と手を突き出してくる。

 

「焦るな少年。手はある」

 

 以前から変わらない根拠のない自信とは違って、根拠があると言わんばかりの表情で両手を突き出してそれぞれ人差し指を一本ずつ立てた。

 

「11階層。そこでインファント・ドラゴンを討伐する!」

「…アイツ稀少種だぞ?」

 

 インファント・ドラゴン自体の強さもさることながら、難易度はその稀少種という事にある。

 下の階層に行けば行くほどその広さを増すダンジョン、11階層ともなればかなり広大でありただの平地と違って入り組んでいるという事もあるから稀少種であるインファント・ドラゴンに意図して遭遇することはキラーアントと一時間ぶっ通しで戦うのとは難易度が違うのだ。

 

「問題ない、昨日目撃情報があった」

「ダメじゃん、討伐されてるだろ」

「だ・が!目撃者は愚かにも11階層の適性評価であるB~Sに少し届かない者たちであったためそのまま逃亡、他の者が討伐したという話もないのだ!」

 

 確かにそれなら可能性はある。

 幸い目撃情報があったところは上下階層に通じる階段から離れた場所だったらしいから探せば遭遇することも出来るだろう。

 

「今日に備えて二本の大剣を新調した、アイテムも十分だ」

 

 そうドヤ顔を晒すオリヴィアの背には白い大剣が二本交差していた。

 

「『ゴブニュ・ファミリア』のを買ってきた」

「おいくらで?」

「一本一〇〇〇〇ヴァリス」

 

 結構いい値段の大剣をわざわざ買ったのかと思ったが、ランクアップには安いのかもしれない。

 その点俺の武器はそれぞれだいたい一二〇〇〇ヴァリスだ。

 前にミィシャに教えてもらってバベルに行ったときに思わず衝動的に買った逸品で、『(アギト)』という銘の灰白色の刀身70(セルチ)ほどの太刀と『幽寂(ゆうじゃく)』という銘の鉄紺色の刀身50Cほどの小太刀だ。

 ちなみにこの二本はどっちも同じ作者で、確か名前が『カミーリア』って人。気に入っているか武器を新調する時はこの人の武器を探す予定。

 

「で、どうする?」

「どうするもなにも……お前一度言い始めたら止めないじゃん、言っても駄々こねるじゃん?」

「分かってるんじゃぁん」

 

 男勝りな性格を少し羨みながらオリヴィアに手を引かれるままダンジョンに潜って行く。

 もはやこのステイタスでは上層に敵はいない、以前オリヴィアに囮になってもらって一対多数でシルバーバックやハード・アーマードたちと戦ったが一撃も食らうことなく勝利を収めた。もちろんオリヴィアも同じことが余裕で可能だった。

 俺たちの魔力ステイタスが他よりも低いのはその為だ。

 ステイタスは本気で打ち込まなければ伸びないから遊びで魔法を使っても伸びない、だからステイタスが伸びない。

 

「昨日目撃証言があったのがここ」

 

 11階層に降りて数十分ほど移動した地点には僅かに戦闘痕が残っていた。

 その他にも逃げるために置いていったとされる荷物が壊れた状態で残っている。

 恐らくはインファント・ドラゴンが踏みつぶしたのだろう。

 

「荷物に残った足跡は向こう側を向いているな、向こう側に行くか」

「お、おい、一人で行くなよ」

 

 勝手に一人で進もうとするオリヴィアの後を追う。

 インファント・ドラゴンと戦おうとする者には思えないほど短慮だ。

 

「出ておいで~インファント・ドラゴンちゃ~ん」

 

 現れるモンスターを全て一閃して倒す。

 威力を抑えることを知らないから残った魔石が一部砕けていてもったいない。

 これに関してはもうどうしようもないと考えている。なぜなら何度言っても聞き入れてくれないからだ。

 

「落ち着いてほしい……ん?」

 

 残った魔石を拾おうと手を伸ばすと魔石が小さく跳ね上がった。

 一瞬魔石の下からモンスターが生まれたのかと後ろへ下がったが、それはすぐに別の原因だと理解できた。

 

「お!これは当たりか!?」

 

 魔石が跳ねたのはインファント・ドラゴンの巨体が生み出す地響きから。

 一面に広がる霧の向こうに目を凝らすと目的のモンスターが姿を現す。

 

「行くぞ!」

「おう!」

 

 まだ俺たちの姿を認識していなかったインファント・ドラゴンの首筋にそれぞれ一撃を入れると、俺は尻尾に、オリヴィアは後ろ脚に攻撃した。

 

「硬ッ!」

 

 一応全力で攻撃をしたのだけど想像以上に防御力があるらしく表面に浅く傷をつけるだけで終わってしまう。

 それはオリヴィアの方も同じらしく、落下を使って大剣を突き立てたらしいが少しだけ刺さっただけで阻まれてしまい俺たちは急いで離脱した。

 するとさっきまで俺たちがいたところを恐ろしく太い尻尾が通りすぎた。

 

「辛くねぇか?」

「今ので移動と攻撃を封じておきたかったんだが…流石に『冒険』だ。そこまで甘くねぇな」

 

 だけど今の一撃で魔石を狙った一撃必殺はしない方がいいと分かった。

 その可能性がないと分かれば無謀な行動を取らなくてもいい。

 

「インファント・ドラゴンはフレイムブレスと咆哮、あとは噛みつきが主な攻撃だ!」

 

 なにも考えずに突っ込んでいくのを防ぐためにオリヴィアに今ここでインファント・ドラゴンの行動を伝える。なぜ事前に伝えなかったというと、さっきまでのオリヴィアには言っても覚えていられないからだ。

 

「分かった!」

 

 行動を理解できたオリヴィアはインファント・ドラゴンの前面から移動して後ろへ回る。

 あとは尻尾と踏みつけ攻撃しか残っていない。

 

「にしても硬ぇな!」

 

 大剣二本ともに闇を纏わせて攻撃しているが鱗に弾かれて有効打にはなってくれない。

 俺も必死に連撃を入れては回避するがほとんど効果はなく、これでは先に二四〇〇〇ヴァリスが駄目になってしまいかねない。

 

「オリヴィア!闇を収縮して放出しろ!」

「分かった!」

 

 まだ並行詠唱が出来ないオリヴィアはインファント・ドラゴンから距離を取って詠唱を始めた。

 その魔力に反応して攻撃しようとするが俺がその隙に左目に顎を突き刺す。

 

『―――――――ッッッ!!』

 

 はじめて味わった激痛にインファント・ドラゴンは叫び、目から赤い液体を流し、琥珀色の鱗片を落とした。

 

「【オスクロ・エンハンブレェッ!!】」

 

 詠唱を終えたオリヴィアが魔法名を叫ぶ。

 収縮された闇は靄ではなく線のように直進し、インファント・ドラゴンの体に小さな穴を穿ちダンジョンの壁を削った。

 

「ヤベェ…調子に乗っていつものノリで魔法使い過ぎた」

 

 俺と同じように他のステイタスは上がっているのに魔力は上がっていないことを考慮していなかったオリヴィアは精神疲弊(マインドダウン)寸前だ。

 それを逃すまいとインファント・ドラゴンがオリヴィアに向かって直進する。

 

「させるか!」

 

 反対側にいるオリヴィアを守るために全力で跳躍してインファント・ドラゴンの残った右目を潰すべく幽寂を逆手に持って引き付ける。

 だが同じ攻撃は聞かないとばかりにインファント・ドラゴンは首を捻り、俺は壁に叩きつけられた。

 

「にげ、ろ……逃げろオリヴィア!!!」

 

 意識の曖昧なオリヴィアに向かって全力で叫ぶ。

 俺の声が届いたのかオリヴィアはインファント・ドラゴンの姿を認識すると急いで離脱しようとする、が、脚に力を入れた瞬間膝が折れてまともに立てなくなっていた。

 

『ガァッ!!』

 

 首を低くして噛みつこうとするインファント・ドラゴン。

 ここから走っていたのでは間に合わない、ダメージを負っていて瞬発力を俺は失っている。

 

「間に合えぇぇええッ!!!」

 

 考えるよりも早く俺の体は動いていた。

 荷物の入った背嚢(バックパック)を全力でオリヴィアに向かって投げつける。

 Lv.1の中でも上位に入るステイタスで投擲されたその砲弾は凄まじい速度でオリヴィアと衝突し、オリヴィアを弾き飛ばした。

 

「【望みし影、望みし姿。我の望む形へ至れッ!】」

「【ファンタム・リアリティ!】」

 

 オリヴィアが地面に着くよりも早く俺は詠唱を終えてインファント・ドラゴンの五感からオリヴィアの存在を完全に消し去った。

 これで目も耳も鼻もなにを持ってしてもオリヴィアを捉えることが出来ない。

 

「このクソドラゴンが!」

 

 頭に血が上った俺は危険だの作戦だのを全て無視してインファント・ドラゴンが振り向く前にその右目を奪った。

 

『ゴアァァァッ!』

 

 視覚を完全に失ったことで無秩序に暴れだす。

 出来ればこのまま自分にも魔法を掛けて決着を着けたいのだがそれでは俺が先に精神疲弊(マインドダウン)で気絶するのが目に見えている。

 

「ふッ!」

 

 幽寂をしまって(アギト)を両手で持つと俺たちの気配を探って止まっているその頭に全力で振り下ろした。

 

「バキィッ」

 

 インファント・ドラゴンの頭に当たった(アギト)はそのまま滑り落ちて鼻先を切り裂くと根元から折れて砕け散ってしまう。

 

「くそっ!」

 

 暴れる頭を足場にして離脱した俺は(アギト)を鞘にしまうと幽寂を構えなおすが何も打つ手が思い浮かばず固まってしまった。

 このままでは幽寂も砕け散る。

 だが俺には決め手となるものが何もない。

 オリヴィアは気絶しているのか壁から一切動けない。

 

「ミス…ト……これで決めろッ!」

 

 辛うじて意識を保っていたオリヴィアから闇が渡され、幽寂に纏わりつく。

 

「私は意識を保っているのが限界だ…気絶する前に倒せッ」

 

 掠れた声が耳に入ってくる。

 いつもの気迫など感じない弱弱しい声だが意地でも気絶しないという思いが伝わってきた。

 

「ああ!」

 

 もはや狙うのは一点だけ。

 そこに残った力を全て注ぐと精神を統一して脚に力を入れる。

 失敗したら間違いなく死ぬ状況に、体はもはやなりふり構わず体力を絞り出して体の加速に向けた。

 

「死ねクソドラゴン!!」

 

 インファント・ドラゴンに向かって直進した俺はその頭の下で飛び上がり、一撃必殺に全てを掛ける。

 途轍もない抵抗を感じる中で助走のエネルギーを、体の捻りを、持てる全てを費やして魔石を砕いた。

 

『……ガッ、ァ』

 

 インファント・ドラゴンの体が灰になって消えて行く。

 俺の体は言う事を聞かずに地面に落ちた。

 

「や、やったぞ!オリヴィア!!」

「ああ、やったな……」

 

 お互いに体が動かないなか情けなく地面に転がりながら空笑いをするがこのままでは他のモンスターの手で殺されてしまうだろう。

 だが動こうにも脚が全く動かない。

 幸い腕は動くから体勢を変えてオリヴィアの方を見るがオリヴィアも動けないでいた。

 

「早くしないと……」

 

 何とか回復するために腕に力を入れて吹き飛ぶようにオリヴィアの下にある背嚢(バックパック)に向かう。

 

「お互いにボロボロだね……」

「オリヴィアがボロボロなのは俺のせいもあるけどな……」

 

 ゴロゴロと転がってオリヴィアの下にたどり着いた俺は体力回復薬(ポーション)を取り出して一気に飲み干した。

 体力がある程度回復して楽になった俺は精神力回復薬(マジック・ポーション)とともに体力回復薬(ポーション)を取り出してオリヴィアに飲ませる。

 とは言っても動けないから俺がオリヴィアを支えて飲ませる必要があるのだが。

 

「悪いな、ミスト」

 

 体力が回復して自分で飲めるようになったオリヴィアは精神力(マインド)を回復させる。

 俺もある程度回復し終えると、砕けた魔石と折れた(アギト)の刀身を回収してオリヴィアとともに地上に戻った。

 インファント・ドラゴンに勝ったとはいえ今回はかなりの損失だ。

 必死だったからあまり冒険をしたという感覚はないからランクアップ出来るかは微妙なライン。

 単純な損失で言えば武器は両方使い物にならない。

 

「…てか今気づいたけど、防具もないな」

 

 恐らくは壁に叩きつけられたときだろう、使っていた軽装が全てなくなっている。

 

「気づいてなかったのか…」

 

 フラフラしたオリヴィアに呆れられてしまった。

 既に言い返すほどの元気もない。

 一刻も早く帰って寝たい気持ちでいっぱいなのだ、何せ早朝に潜ったのに今は既に夜なのだから。

 

「じゃあ、一週間後にいつもの所で待ち合わせだ」

 

 流石にこれだけのダメージを負って明日も潜れるほど人外ではない。

 

「おう、私もしばらくは無理だ」

 

 人通りの少ない大通りを通ってロキ・ファミリアに向かう。

 これは確実に骨折している。

 少なくとも肋骨は折れているし腕と足にも罅が入っているかもしれない。

 

「…皆怒るかなぁ?」

 

 今回無茶をした自覚はある。

 だから怒られるのは覚悟しているけど普段怒らない人が怒ると怖いというからできれば怒られたくないものだ。

 

 

「…ただ、いま戻りましたぁ」

「ミスト!?」

 

 門番の人が誰だかよく見えないけれど驚いているのは分かるなぁ。

 とりあえず門を開けてくれたけどなんでか門番の一人が中に入って行った。

 

「…今は、早く、部屋に戻ろう……」

 

 足がフラフラするけど部屋に入るまでの我慢だ…

 こんなところで寝たらリヴェリアお姉ちゃんに怒られちゃうから……

 

「ミスト!?」

「ちょっと!ミスト君!?」

「おいミスト!」

 

 なんでかは分からないけど…皆がいるや

 

「アハハ…『冒険』はまだ早かったみたいだね」

「お前はずっとダンジョンにいたのか!」

「ちょっとリヴェリア!?ボロボロなんだから…」

「ミスト…お前何やってた」

 

 やっぱりリヴェリアお姉ちゃんは僕を心配して怒ってるや…ティオナお姉ちゃんは止めてくれてるけど……

 

「ベートお兄ちゃん……?やっぱ僕は雑魚でいいや。インファント・ドラゴンと戦うだけでこの有様だから」

 

 以前帰れって言われたけど…その通りだったかもなぁ

 もう目もほとんど見えないし、意識もハッキリしないから……

 

「折角勝ったのに体力無くて死ぬところだった…よ……」

 

 意識、が……

 

「…スト!……ト」

「…よく……ったな」

 

 もう、む、り―――

 

 




 あぁの~?(色々と流石に8か月はやりすぎだバカ)
 だって色々仕方ねぇじゃん?原作みたいな異常速度のランクアップは才能ないというか器用貧乏な主人公には合わないし(そうだが!主人公の性格が!?)
 あ、それは安心して。主人公も表面上の性格を模索中だから(根幹は変わってないと?)
 そそ、ベルくんも冒険する時は少し性格が変わるけど終わったら戻るでしょ(主人公は私生活でも性格が変わってるけど?)
 いやいや、んなことないよ。最後の気絶する直前は性格が戻ってたでしょ?普段は必死に自分を偽って、自分すら騙して強気な性格してるけれど根っこは弱い子だから(確かにそういう描写はあるな)
 主人公には自分の使っている性格が自分でわかってないから、とりあえず使ってるけど行動の意味は分かってないのよ。簡単に言うと周囲から吸収して形成した『性格キメラ』って感じ(こういうシチュエーションで使っているのを見たから使うけどそれの意味は分かってない感じ?数式に当てはめて問題を解いてるけど、どうしてそうなるのかが説明できない感じ?)
 そういう事だね、現代人の意味不明言語と同じ(ああ…現代人に『マジ卍』の意味聞いても理解してないのと同じか)
 あ、話戻るけど主人公の冒険が8か月なのはパワーレベリングね(ティオナとベートに戦い方を叩き込まれたからな)
 だからある程度序盤は割と早くランクアップできるけど後半は成長遅くなる感じ(あ~器用貧乏の典型例ね、はじめは周囲よりもなんでもそつなくこなすけど後半で置いて行かれるっていう) 
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