外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜   作:(TADA)

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季節が合わない? 気にすんなぁ!!


焼き芋

 「困りました……」

イングリッドは大量のお見合い写真を持ってガルグ=マク大修道院内を歩く。

イングリッドは今は亡き婚約者のように騎士になりたいと願っていたが、父は紋章を受け継いだイングリッドは結婚し、家を安泰にして欲しいと考えていた。そのために士官学校に入学してからも実家から大量のお見合い写真が送られていた。

いつもだったら人に見つからないように処分しているのだが、今日に限っていたるところに人がいて処分できずにいた。

 「どこで処理しましょうか」

考えているイングリッドは気がつかなかった。

 「きゃ」

 「おっと」

イングリッドとぶつかったのはセテスの胃痛の半分くらいの原因であるシェイカーであった。

イングリッドは持っていたお見合い写真を慌てて隠す。

 「こ、こんにちは!! シェイカー先生!!」

 「おう、イングリッドだったな。何を隠した」

真正面から図星を刺されてイングリッドは慌てる。

 「な、何も隠していませんよ!?」

 「う〜ん、この全く嘘をつけない感じ。懐かしいな、俺にもこんな時代があった」

それはない。

イングリッドは内心でそう考えるが、口には出さない。出したらきっと外道行為が自分に来ることを知っているからだ。

 「それで、何を隠した」

 「な、何も隠して……!? 魔法は卑怯です!!」

必死に隠そうとするイングリッドちゃんの努力はシェイカーの魔法によって呆気なく崩された。

シェイカーはお見合い写真を見て首を傾げる。

 「なんだこれ? 呪いの依頼か?」

 「なんでそんな物騒な話になるんですか!?」

きっと育った環境のせいだろう。

諦めたイングリッドはシェイカーに写真の説明をする。素直にしないと写真の相手が普通に呪われそうだと思ったからだ。

 「ふ〜む、つまりイングリッドはお見合いに困っている、と」

 「ええまぁ」

そしていつの間にかシェイカーに愚痴をこぼしていた。意外と聞き上手なシェイカーくんである。

 「どうにかする方法はあるぞ?」

 「そうです……え?」

シェイカーの言葉に一瞬だけ呆気にとられたイングリッドだったが、すぐにシェイカーの言葉の意味に気づいて慌てる。

 「ど、どうやってですか!?」

 「まぁ、それを説明してやるからちょっとついてこい」

それだけ言ってシェイカーはお見合い写真を魔法で浮かせながら歩き始める。イングリッドも慌てて後を追いかける。

そしてやってきたのは墓場であった。

 「師匠!! ししょ〜!!」

そしてシェイカーの姿に気づいて嬉しそうな表情でシェイカーを呼ぶペトラ。ペトラだけじゃない。リシテア、マリアンヌ、メルセデス、ラファエルと言ったシェイカー塾の面々が集まっていた。

 「師匠!! 言った、葉っぱ、集める、しました!!」

 「おう、ご苦労さんペトラ」

シェイカーの言葉にむっふーと嬉しそうにするペトラ。イングリッドはその姿に犬耳と犬尻尾を幻視した。

 「先生、言われた通りイモも持ってきましたが、何をやるんですか?」

リシテアの言葉にシェイカーはなんでもないように口を開く。

 「焼き芋だ」

 「……え?」

思わずと言った感じで声を出したマリアンヌをシェイカーは半目でみる。

 「どういう意味だマリアンヌ」

 「い、いえ……てっきり呪術の類かと……」

 「この信用のなさはなんだろうな」

 「普段の行いのせいじゃないかしらぁ」

おっとりした言葉遣いで無駄に辛辣なことを言うメルセデス。着実に染まっているようだ。

マリアンヌとメルセデスの反応に驚いたのはイングリッドだ。マリアンヌは普段から寡黙で自分の意見を言うことはない。メルセデスも年長なだけあって他人と話すときは落ち着いた雰囲気で優しく接する。

それがこんなにも普通に話すことに驚いたのだ。

 「せんせぇ、せんせぇが美味いもん食わしてくれるって言うから、オデ、いつも以上に筋肉苛めてきたから腹ペコペコだよ」

 「う〜ん、ラファエルはいつもどおりで安心したわ。とりあえずイモをこれで巻いてくれ」

シェイカーが取り出した銀紙で持ってきたイモを巻くシェイカー塾の面々。

 「……あ」

そしてイングリッドはその隙にお見合い写真を葉っぱの山に隠すシェイカーを見た。シェイカーはイングリッドの言葉に気づくとニヤリと笑う。

内心でシェイカーに感謝しながら、イングリッドはリシテアに言われてイモを巻く手伝いをする。

そして全部巻き終わると一つの問題が浮上した。

 「多すぎだな」

そう、イモ多すぎ問題である。大食いのラファエルがいるからと言って用意したイモの量は集めた葉っぱの山を優に超えている。

 「どうするんですか?」

リシテアの言葉にシェイカーは不敵に笑う。

 「大丈夫だ、そろそろ奴が来る」

 「やはり焼き芋か。いつ始める? 私も同行しよう」

 「大司教院」

そしてシェイカーの言葉タイミングバッチリでレアが大量の紙束を乗せたリヤカーを引っ張りながらやってきた。

 「レア様!?」

 「はい、私です。シェイカー、とりあえず燃やしていいものを持ってきましたよ」

 「おう、ご苦労さん」

突然の大司教の登場に驚くイングリッド。授業中に9割の確率で遊びにくるためにレアの登場に慣れているシェイカー塾の面々。

 「それでレア様は何を持ってきたのかしらぁ」

 「セテスに書かされた反省文です」

メルセデスの言葉にレアが素直に答えると、メルセデスはレアを正座させて説教を始めた。

一介の生徒にお説教される大司教。カトリーヌあたりが見たら五月蝿そうな光景が広がるが、シェイカー塾の面々は慣れた手つきで葉っぱの山に反省文を重ねていく。そしてその中にイモも入れていく。

 「よし、火を起こせラファエル」

 「ウォォォォォォ!! 唸れオデの筋肉!!」

そしてラファエルがサバイバル術で火を起こし始めた。その光景を見てリシテアは首を傾げる。

 「魔法で起こせばいいんじゃないですか?」

 「なんでもかんでも魔法に頼っていたら人間は進歩しない。最後に頼りになるのは魔法という怪しげな技術じゃなくて、己自身の力だ」

リシテアの言葉にそう返しながらラファエルが作った火元を山に放り込むシェイカー。

そしてしばらくは世間話をしながら時間を潰す。

そしていい具合にできたころにシェイカーは剣でイモを取り出す。そしてそれを生徒達に配り始めた。

 「ほれ、メルセデスもお説教はそこまでにしてこれでも食え」

 「あら〜、もうそんな時間になってたのねぇ」

涙目になっているレアと聖母スマイルを浮かべるメルセデス。美味しいイモを食べながらイングリッドはメルセデスがちょっと怖くなった。

 「あ、そういえばシェイカー先生。先ほどの件ですけど……」

 「うん? ああ、あれか」

イモが美味しくて忘れそうになったイングリッドだったが、要件を思い出してシェイカーに問いかける。シェイカーもなんでもないようにレアに声をかける。

 「おい、レア。イングリッドの実家に『イングリッドは騎士の才能があるから騎士にしろ』って伝えとけ」

 「オケ」

 「ちょ!?」

まさかの大司教を利用するという言葉にイングリッドが驚愕する。そしてそんな頼みをあっさりと了承するレアにも驚いた。

イングリッドは慌てて両手にイモを持っているレアに近づく。

 「あの、レア様。本当にいいのですか?」

 「はい? あぁ、大丈夫ですよ。あのキチガイが『才能がある』と言うでしたら本当にあるのでしょう。キチガイですけど、人を見る目は確かですから。キチガイですけど」

 「レア!! キチガイはお前もだから!!」

レアとシェイカーはお互いに中指を立て合うと再びイモを食べ始める。

 「しかし、私に騎士の才能が本当にあるのでしょうか……」

思わず呟いたイングリッドに聖母スマイルを向けるレア。

 「でしたらシェイカーに直接教えを請うのがいいでしょう。あんなのですが教師としては本当に優秀です。きっと貴女をフォドラ一の騎士にしてくれるでしょう」

レアの言葉にイングリッドは自然と頷くのであった。

 




イングリッド
お見合い写真の処理に困っていたらシェイカー塾に入塾することになった。

シェイカー塾の生徒達
みんな仲良し。そしてシェイカーとレアに対して遠慮はない。

シェイカー
たまにやるいい人ムーヴ。

レア
最近はセテスよりもメルセデスにお説教される回数の方が多い。



そんなわけでシェイカー塾最後の一人であるイングリッドちゃんでした!! みなさんの予想は当たったでしょうか。一応、シェイカー塾の塾生はマリアンヌ以外はセイロス仮面の時に名前だけが出てきています。この面々も第二部で必要な人選だったからというのがお題目で、本当は作者の趣味です。

とりあえず次回は山賊討伐課題の話になります。どんな話にするかなぁ。
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