外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜 作:(TADA)
「よ〜し、それじゃあ授業やるぞぉ」
着席しているティーガークラッセの生徒達を見渡してシェイカーは口を開く。すると最前列に座っていた勤勉家なリシテアちゃんが手を挙げた。
「シェイカー先生はどのように授業するんですか?」
「うむ、いい質問だ。俺は個人個人に適した課題を出し、それを解かせると言う授業方式で行う」
「なぜでしょう」
「時間がないからだ」
リシテアの質問を一刀両断に答えるシェイカー。その歯に衣着せぬ言い方にシェイカーの失礼千万な態度に慣れた流石の生徒達も苦笑い。シェイカーの言葉ではガルグ=マク士官学校の授業は意味がないとも取れるからだ。
「他のクラスの授業は意味がないのかぁ?」
そして聞きづらい質問も平然としてしまう脳筋(ラファエル)。
「意味がない、とは言わん。だが、人はそれぞれ適正がある。例えばラファエル。魔法の授業を行ったとしてお前は理解できるか?」
「おぉ!! オデには無理だ!!」
「だろう。限られた一年という時間。それを最大限に利用するためには個人にあった授業が最適だ」
「ですが、それだと先生の負担が大きいのでは?」
イングリットの質問にシェイカーが指パッチンをすると空間が裂けて大量の書物が出てきた。
それを唖然としてみる生徒達。それを見渡してシェイカーは力強く頷く。
「大丈夫だ。すでに用意してある」
「いえ、魔術の極みである空間魔法を倉庫見たいな扱いで見せられてこっちはどんな反応をとればいいんですか」
「いやぁ、人生勝組クソイケメンの友人が開発したこの魔法が超便利でな。嵩張る荷物も全部しまえるから超便利」
「空間魔法が収納扱い……!!」
リシテアがシェイカーの魔法の扱いにドン引きしているが仕方ない。シェイカーがいた烈火という世界はそういう世界だ。
「それじゃあ一人づつ教材渡すなぁ、まずリシテア」
「はい!!」
元気よく席を立って教材をとりにいくリシテア。そしてシェイカーはリシテアが学ぶことの説明を始める。
「リシテアには政治と経済を中心に学んでもらう」
「魔法は!?」
そして希望と全く違う授業内容にマジ驚愕顔を浮かべるリシテア。
「ふむ、リシテア。お前が魔法を熱心に学んでいたのは何故だ?」
「それは私の体を治すために……あ」
リシテアが何かに気づいた声にシェイカーは頷く。
「うん、お前はもう健康体なんだよ。だったら今後必要になってくるのは領地経営に必要な政治と経済だ。ちょうどよくお前さんは色々な方向に才能が飛び抜けているからな。内政を学べ」
「はい!!」
思ったよりきちんと生徒のことを考えた教材選びにリシテアは元気よく返事をし、生徒達からは『なんだ、真面目にもなれるんだ』といった視線がシェイカーに向けられる。
「次、メルセデス」
「はぁい。私は何かしらぁ」
「メルセデスにはセイロス教団の運営と上に立つものの心構えを学んでもらう。セイロス教団の運営についてはレアとセテスのところに行っての実技も予定している」
「ちょっと待ってくれるかしらぁ」
頭が痛いポーズをとるメルセデス。
「私は孤児院の経営を学べればいいと思っていたのだけれど……それが何故セイロス教団の運営になるのかしらぁ」
「ああ、それな」
そしてシェイカーは言葉の爆弾を落とす。
「メルセデスには次期セイロス教団の大司教になってもらう」
『ブッフォウ!!』
そして全員が吹き出した。いくらレアと仲が良いと言ってもまさかの大司教乗っ取り宣言である。
「そ、それはレア様が許さないんじゃないかしらぁ」
「大丈夫。レアの奴なら『え? 次期大司教をあんたが育ててくれるの? ヒャッッホー!! あとちょっとで自由の身だぁ!!』って喜んでたぞ」
「レア様……!!」
「セテスの奴は『いいか。真面目な生徒を育てるんだぞ。決してレアのような奴にするなよ』と釘を刺された」
「セテス様……!!」
メルセデスは気づいた。これは完全に逃げられない流れだということに。だからため息を吐きながらも教材を受け取る。
「次、ペトラ」
「はい!!」
シェイカーの言葉に元気よく答えてシェイカーのところにやってくるペトラ。クラスメイト達は頭に犬の耳が、そしてお尻に犬の尻尾がブンブンと振られている姿を幻視した。
「ペトラには戦争での戦術を学んでもらう」
「はい!!」
「あとは個人の武勇を鍛えろ」
「はい!!」
教材を受け取ったペトラは驚いた表情になる。
「師匠、これ、書く、ブリギットの言葉!!」
「ああ、時間がないと言っただろう。効率よく学ぶためにペトラの教材はブリギットの言葉にしてある。それでも同時並行でフォドラの言葉も学ぶように」
「はい!! 頑張る!! します!!」
生徒達のこいつ何者なんだ視線を無視して教材配りを続けるシェイカー。
「次、ラファエル」
「おぉ」
やってきたラファエルにシェイカーは教材ではなく何かの道具を渡す。それを受け取ってラファエルは首を傾げる。
「せんせぇ、これなんだぁ?」
「筋トレ道具」
『何故!?』
生徒達の声がハモる。それはそうだろう。個人に適した授業を行うと言っても筋トレだけでは士官学校の授業にならない。
シェイカーも頭をかく。
「いや、俺も悩んだんだよ。ラファエルに内政は無理、かと言って戦争での部隊指揮も期待できない。そこで完全に戦闘に特化させることにした。お前は身体鍛えながら徹底的に戦闘訓練を行う」
「おぉ!! 机に座っているよりそっちの方がわかりやすくていいぞぉ!!」
目を輝かせて喜ぶラファエル。他の生徒も『まぁ、本人が納得しているならいいか』と言った感じで流した。
「次、イングリット」
「はい」
教材を受け取るイングリット。それに目を通して首を傾げた。
「戦略概論?」
「そう、お前さんに戦争の絵図である戦略を学んでもらう。イングリットの適正は騎士じゃない」
「な!?」
文句を言おうとしたイングリットを止め、シェイカーはニヤリと笑う。
「イングリットの適正は騎士の上、将軍。それも普通の将軍じゃない。将軍達を束ねて率いる大将軍の器だ」
その言葉にイングリットは衝撃を受ける。
「私が……将軍の器……?」
「間違えるな。さらにその上の大将軍だ。国によっては軍務卿だな」
シェイカーのどうするという問いにイングリットは力強く頷いた。
「よぉし、最後。マリアンヌ」
「は、はい……」
どこかオドオドとしながら出てくるマリアンヌ。そのマリアンヌにシェイカーは笑顔を見せた。
「マリアンヌが学ぶのは君主論や各種帝王学。上に立つ者に必要な技能も全部覚えてもらうぞ」
シェイカーの言葉にマリアンヌは目眩がする。目立つことが不得意な自分に何をやらせる気だこの外道的な意味で。
「わ、私は……そんな器では……」
「大丈夫、大丈夫。俺が徹底的に鍛えてやる。一年後には他の級長達より君主としての適正高くしてやるから」
「いえ……それを望んでは……」
「よし!! これで全員は課題がわかったな!! それじゃあ各自取り組め!! そしてわからないこと、疑問に思ったことはすぐに聞きにこい!!」
『はい!!』
「あの……いえ……もういいです……」
マリアンヌの背中には哀愁が漂っていた。
リシテア
宰相
メルセデス
大司教
ペトラ
将軍
ラファエル
前線指揮官
イングリット
大将軍or軍務卿
マリアンヌ
(強制的に)君主
そんな感じで初授業と国を興した時のそれぞれのお仕事紹介でした。ラファエルとペトラの違いは一部隊の指揮官と一軍の指揮官の違い。イングリットはその上の方面軍の指揮官って感じです。
そしてさらりとレア様にクビ宣告をするシェイカーくん。テメェの仕事ねぇから!!(尚、本人は喜んでいる
きっとセテスさんはレア様よりメーチェの方がいいと考えると思う。