外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜 作:(TADA)
みんな!新型コロナに負けずに頑張ろうぜ!
「先生、少しいいだろうか」
「ベレスか。どうした」
シェイカーが食堂で食事をしながらティーガークラッセの勉強中心組(リシテア、マリアンヌ)を相手に講義をしながら食事をしていると、最近はガルグ=マク大修道院で大人気になり、肖像画が高額で取引されているベレスがやってきた。
「先生は医術もできたよね?」
「専門ではないけどな。それがどうかしたか?」
ベレスは促されるままにリシテアとマリアンヌの間でシェイカーの正面に座る。
「実は先生に問診をして欲しくて」
「まぁ、できなくはないが、俺より専門家の方がいいと思うぞ?」
「専門家に相談すべき病気かもわからなくてね」
「なるほどねぇ」
シェイカーはそう言いながら魔法でしまってあった問診票を取り出す。そしてベレスに話すように促す。リシテアとマリアンヌにも後学のためにも聞いていくように指示を出していた。
そしてベレスは口を開く。
「最近、先生のことを考えると胸がドキドキしたり、先生に会いたくなったりするんだ。これって病気だろうか?」
『ゴボッフォウ!』
近くで聞いていたリシテアとマリアンヌだけでなく、さりげなく聞き耳を立てていたオーディエンスも思わず吹き出した。
それはそうだろう。ベレスのその症状はどう考えても恋だからだ。その事実に絶望の表情を浮かべている師大好きゾッコンLOVEの次期皇帝さんがいるがリシテアとマリアンヌは見なかったことにした。
周囲の面々が『どう答える!』と言った表情でシェイカーを見るが、シェイカーは怪しげな術式を展開しながら難しい表情を浮かべている。
「ベレス」
「はい」
「結論から言おう」
そしてゲンドウポーズをとるシェイカー。真面目な表情で背筋を伸ばすベレス。どうなると固唾を飲んで見守る周囲。発狂しそうになり陰険腹黒部下に連れていかれる次期皇帝。
「体にスキャン魔法をかけてみたがなんの問題もない。俺は不整脈かと思ったが違うらしい」
『!?』
野次馬の視線が『こいつマジか』と言った雰囲気でシェイカーに突き刺さる。そんな視線を無視して言葉を続けるシェイカー。
「それを考えると心の病気だと思った方がいいだろう。そっちは俺の専門外だからな。マヌエラ先生のところに行ってこい」
「ふむ、先生でもわからないことがあるのだな。わかった。マヌエラ先生のところに行ってくる」
シェイカーに礼を言ってから立ち去るベレス。それを見送った後、シェイカーは空中に浮かんだ怪しげな術式を首を傾げながら見ている。
「う〜む、やっぱりどこも問題ないんだよなぁ」
「え? 先生。それ本気で言ってますか?」
「なんだ? リシテアはあの病状に思い当たる節があるのか?」
その言葉にリシテアとマリアンヌは顔を見合わせる。二人だけじゃなくてこの場にいた全員がそれはわかる。
リシテアとマアリアンヌの視線での戦いの結果、マリアンヌがそれを告げる役割となった。
「あの……たぶんベレス先生は恋だと思います……」
「恋!? あぁ、なるほど恋か。それは俺にはわからなくて当然だな」
『ダメだこいつ』と思ったのはその場にいた全員であった。
ベレスはシェイカーの勧め通りにマヌエラのいる医務室へと向かった。マヌエラは片付けができなくて有名だが、この部屋は定期的にベレスが訪れて掃除をしているために綺麗なものだ。
「マヌエラ先生、いるだろうか」
「あら、先生じゃない。どうかしたのかしら?」
ベレスが部屋に入るとマヌエラが笑顔で迎え入れた。ベレスは患者として来たと告げると、マヌエラは患者用の席にベレスを座らせた。
「それにしても先生が来るなんて珍しいじゃない。怪我や病気だったらシェイカー先生が治してくれるのでしょう?」
「うむ、その先生が心の病気の可能性があるからマヌエラ先生にかかるように言っていた」
「あら、おじさんにも治せない病気があったんですね」
その言葉にベレスが向くと、棚の整理整頓をしているドロテアがいた。ドロテアは帝都アンヴァルでミッテルフランク歌劇団に所属しており、同じ歌劇団に所属していたマヌエラを先輩と慕っている。
ベレスはそんなドロテアをみてそういえばと思って口を開いた。
「ドロテアは先生のことをおじさんと呼ぶな。なんでだい?」
「あら、先生は知らないのかしら?」
ベレスの言葉に答えたのはマヌエラだった。
「孤児だったドロテアに音楽とかを教えてミッテルフランク歌劇団に合格させたのはシェイカー先生よ」
「なんと」
ベレスは驚いた(しかし無表情である)様子でドロテアを見ると、苦笑しながら口を開いた。
「私が孤児だった時に拾ってくれたのがおじさんなんです。それで突然『ティンときた。ドロテア、お前音楽をやれ』と言われて音楽のことを色々教え込まれました。そのおかげで歌劇団でも歌姫になれたんですけど」
「音楽も教えれるだなんて流石は先生」
「確かに意外よねぇ、シェイカー先生は音楽とか興味なさそうなのに」
「本人は興味ないみたいですけど、昔一緒に旅した踊り子達に教えてもらったって言ってましたね」
「それよ。シェイカー先生って何歳なのかしら? 見た目通りの年齢じゃないのは確かでしょうけど?」
マヌエラの言葉にドロテアとベレスは首を傾げる。
「私を拾ってくれた時にはもうあの見た目でしたけど」
「そういえば小さい頃から先生の見た目は変わっていない気がするな」
「えぇ……シェイカー先生って本当に人間かしら……ハンネマン先生に調べてもらった方がいいんじゃないかしら……」
軽く引いているマヌエラ。
「おじさんのことより先生のことじゃないですか、先輩」
「あ、そうだったわ。私としたことが……それじゃあ先生、どんな症状が出るのかしら?」
ドロテアの言葉に本題に戻ったマヌエラにベレスも正直に答える。
「先生のことを考えると胸がドキドキしたり、会いたくなったりするんだ。これは病気だろうか」
「うん、先生。ちょっと待ってね。ドロテア、集合」
ベレスちゃんの発言にドロテアに集合をかけるマヌエラ。そして小声で会議である。
(これってどう考えても恋よね?)
(絶対そうでしょう)
(え? これってどうするべきかしら? まさか先生がここまで初心だと思っていなかったのだけれど)
(……そういえば先日、先生がデートに行ったらしくてそのことをからかったら首を傾げながら『デートとはなんだ? 新しい魔法か?』って言われました)
(そこまで重症なの!?)
ドロテアの言葉にマジ驚愕顔を浮かべるマヌエラ。二人の視線がベレスに集まる。美人な顔が不思議(しかし無表情である)そうに首を傾げられた。
頭痛を抑える表情になるマヌエラ。
(シェイカー先生ってこっち方面からっきしなのかしら?)
(そうだと思いますよ。私もおじさんから他人の利用の仕方は教わりましたけど、そっち方面はノータッチでしたから)
(子供になんてこと教えてるんだという説教は後でするとして……先生どうしようかしら)
(先輩、私に任せてください)
(ド、ドロテア!!)
自信満々に頷くドロテア。そこに確かな自信が見えたマヌエラはドロテアに任せることにした。
「先生、その病気は私でもわかります」
「む、そうなのか。だったらドロテア、是非教えて欲しい」
「はい、それは恋です」
「……恋? なんだそれは?」
ベレスちゃんのまさかの発言にドロテアとマヌエラは気が遠くなりそうになるが、すぐに持ち直す。
「その人に自分を見て欲しい、自分のことを大事にして欲しい、自分のことを考えて欲しい。そういうことよ」
「ふ〜む、難しいな……」
マヌエラの説明に難しい表情(しかし無表情である)を浮かべるベレス。そしてドロテアが口を開いた。
「先生」
「なんだ?」
「おじさんの子供が欲しいと思いますか?」
「思う」
「それが恋です」
「おぉ、なるほど。これが恋か」
ドロテアのど直球な発言にマヌエラが驚愕の表情を浮かべるが、ベレスは納得した様子であった。
「そうか恋か……これが恋か……うむ、ありがとうマヌエラ先生、ドロテア」
それだけ言ってベレスは医務室から出ていく。それを見送るマヌエラとドロテア。そしてマヌエラが口を開く。
「あの説明はまずくないかしら?」
その言葉にドロテアはとてもイイ笑顔を浮かべる。
「きっと面白くなるからいいんですよ」
「先生、ちょっといいだろうか」
「ベレス、お前は俺が大丈夫に見えるか?」
「? 先生がお父さんとレア様に締め上げられるのはいつものことだろう」
食堂でのことを聞いた娘大好きパパと仕事をしない大司教がシェイカーを締め上げているのだ。
締め上げられているシェイカーを気にせずにベレスはシェイカーの顔を掴む。そして……
「「なにぃ!?」」
ジェラルトとレアが驚愕の声をあげる。当然であろう。あろうことかベレスは突然シェイカーにキスをしたのだ。
沈黙する空間。口をパクパクさせるジェラルトとレア。じっくり10秒くらいシェイカーにキスをして離れるベレス。そして満足そうに口を開いた。
「これで私と先生の赤ちゃんをコウノトリさんが運んできてくれるな」
この後団長と大司教と師大好き次期皇帝とシェイカーの間で追いかけっこが発生したのは完全に余談である。
ベレス
ついに恋心を自覚して子作り(ベレスちゃん主観)を行なった主人公
マヌエラ
この後ベレスちゃんに保険体育の授業を行うことになった
ドロテア
想像以上に面白いことになって大爆笑
ベレスちゃん大好きクラブ
シェイカー殺す
シェイカー
珍しく何もしてないのに酷い目にあった。
そんな感じでベレスちゃんがついに恋心を自覚するお話でした。いやぁ、子作りシーンまで書いちゃうとかR-18タグが必要ですかね(すっとぼけ
そして孤児だったドロテアも拾って育てていたシェイカーくん。この設定も初期段階からありました。そのせいでドロテアが愉悦部に。どうしてこうなった。