外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜 作:(TADA)
「何故だ……」
とある日の夜中、セイロス教会の枢機卿であるアルファルドは自室で頭を抱えていた。
その理由は部下の多くがいなくなったことである。雇っていた私兵の多くは何かに怯えるようにアルファルドの下を去り、数合わせで雇った野盗の多くは行方不明となっていた。
「しかし……しかし今しか機会はないのだ……!! 偶然とは言え四使徒の末裔を集めることに成功し、彼らを利用して始原の宝杯の儀式を執り行うには今しか……!!」
アルファルドの願いは幼馴染であり、初恋の相手であるシトリーの復活。それを果たすために私財を投じ、私兵も投入した。
しかし、それもどこかで狂ってしまう。
灰狼の学級(ヴォルフ・クラッセ)に始原の宝杯を取りに行かせることには成功した。しかし、計画を次の段階に移る前に始原の宝杯が忽然と姿を消してしまったのだ。
心底申し訳なさそうにするコンスタンツェを宥めつつアルファルドは困惑していた。
自分以外にも始原の宝杯の儀式をしようとしている者がいる?
可能性は否定できない。少なくとも自分と同じ枢機卿クラスであれば、資料を読むことは可能であり、自分と同じく四使徒の末裔の血を全て使えば儀式は成功できると思う可能性は高い。
だが、その肝心の四使徒の末裔であるユーリス、バルタザール、コンスタンツェ、ハピの四人は自分の手元にいる。
怪しいのは度々行方をくらませるハピだが、それでも必ずアビスに戻ってきている。
「あるいはハピが何者かとつながっている……?」
ありえなくはない。第一、ハピがアビスにいるのも「あ〜、ここだったら師匠と大師匠に見つからずにすむかも〜」というちょっと何を言っているかわからない理由だからだ。ため息を吐くと魔物が集まってくるという厄介な体質をしているハピであるが、「大師匠に仕込まれたんだよね〜」と言って魔物を殴り殺したり魔法で消し炭にするという残虐ファイトを平然と行える強メンタルだ。
「それとなくハピから聞き出してみましょうか」
アルファルドはそう思うがあまり自信はない。ハピにはいつものらくらりとかわされ、どこか警戒されていることを知っているからだ。
その時、アルファルドの部屋の扉がノックされる。
アルファルドはどきりとしながらも表面上はいつも通りに問いかける。
「おや、こんな夜更けにどなたでしょうか?」
「アルファルド、私です。レアです」
まさかの大司教襲来にアルファルドは卒倒しそうになる。アルファルドが行おうとしているのは教団で禁忌となっている儀式だ。それが露見すればアルファルドの命はないだろう。
アルファルドは一度深呼吸して気分を落ち着けると表面上は穏やかに扉を開く。
「失礼いたしました猊下。こんな夜更けになんの……」
アルファルドは最後まで言い切ることができなかった。なにせ大司教であるレアと、最近レアと一緒に問題行動をしてセテスの胃を虐めているシェイカーが二人揃っていて、なおかつ扉を開いた瞬間にアルファルドの部屋の中に入ってくる。
瞬間的にアルファルドは魔法を放ちそうになるが、シェイカーが自分とは比べ物にならないくらい凄腕の魔術師なのを思い出して自制する。
(儀式に関する資料はこの部屋には置いていない……!! 証拠を抑えるつもりであったなら浅はかだったなレア……!!)
とても真面目なことを考えているアルファルドくんであったが、残念ながらレアとシェイカーはキチガイである。普通のはずがない。
シェイカーは部屋の明かりを消すと部屋の中を真っ暗にする。闇討ちを警戒したアルファルドであったが、レアに手を掴まれて床に座らされる。
そしてシェイカーが再び部屋の明かりとつけた。
「腹を割って話そう!!」
「……は?」
アルファルドは状態異常・混乱になった。
シェイカーが明かりを消す→レアに座らされる→明かりがつく→目の前のレアが酒瓶片手に「腹を割って話そう!!」と言ってきた←今ここ
端的に言って意味不明であった。
「だ、大司教猊下、失礼ながら一体何のことでしょうか?」
アルファルドくんの本音である。だってどう考えても理解できない。
するとアルファルドを見つめるレアは悲痛な表情を浮かべる。
「アルファルド、貴方が始原の宝杯を使ってシトリーを蘇らせようとしていることはわかっています」
刹那の瞬間にアルファルドは立ち上がろうとするが、いつの間にか背後に回っていたシェイカーに肩を押さえつけられ立ち上がれない。
逃げられないことを悟ったのか、アルファルドは覚悟を決めてレアの前に座る。
「大司教猊下……否、レア!! 貴女の言葉があろうとも私は止まらない!! 止まれるはずがないのだ!!」
「あ、シェイカー、防音結界は?」
「バッチリ張ってあるから安心しろ」
覚悟を決めて宣言したのにあっさりとスルーされたことに人格者として定評のあるアルファルドくんもちょっとイラっとした。
レアは酒瓶から直接酒を呑みながら口を開く。
「始原の宝杯で人を蘇らせることはできません。不完全な魔物になるだけです」
「それは四使徒の血液が足らなかったからだ!! 完全に宝杯を起動できれば彼女を蘇らすことはできるはずだ!!」
「グラーフ、製作者としての意見は?」
「魔物にさせるシステムしか組んでいないのに死んだ奴が蘇ったらとある魔術師の関与を疑う」
「昔から思いますけど貴方の知り合いの魔術師って何者ですか? 普通に神々の権能クラスのことやっていますよね?」
「パントについてはマジメに考えるだけ無駄だゾ!!」
レアとシェイカーが普通に話の脱線を始めているが、アルファルドは思考が停止している。
「始原の宝杯を……作った……?」
「うん? ああ、セイロスの奴に『お母様復活用の神器を作れ』って罰ゲームで命令されてなぁ。ムカついたから儀式を行ったら魔物化するように作ってやった」
「グラーフのその悪戯心で四使徒がガチで死にかけたことに罪悪感とかないんですか?」
「レアが苦労したなら勝ちだと思っている」
シェイカーの言葉にレアとシェイカーが胸ぐらを掴みあうが、アルファルドはそれを止めることはできない。
「あ! ありえない!! いくらシェイカー先生が優れた魔術師であろうとも、あれは魔術の業が極まった神器!! 人の身で作れるはずがない!!」
アルファルドくんの叫びもシェイカーとレアはあっさりと言った。
「「だから神だったら可能でしょ?」」
「………………………………は?」
アルファルドくんの惚けた言葉にまずレアが自分を指差す。
「ドーモ、アルファルドサン、神々ノ一柱聖者セイロスデス」
そして今度はシェイカーが自分を指差す。
「俺は色々呼び名がいっぱいあるけど、一番通っている名前は大賢者グラーフだな」
「……………………………はぁ!?」
アルファルドくん渾身の叫びである。もしシェイカーが結界を張っていなかったらアルファルドの叫びがガルグ=マク中に響いたであろう。
「え!? ちょ!? ちょっとお待ちを!! た、確かに私が幼少の頃からレア様は姿が変わっていないので『すごい若作りだな』とか思っていましたが聖者セイロス様本人ですって!?」
「あれ? 遠回しに私ディスられました?」
レアが実の子のように可愛がっていた相手からのまさかの言葉に地味にショックを受けているが、アルファルドは気にすることはできない。
「ちなみにシトリーはグラーフの残した技術を使って私の遺伝子を使って生み出した子供なので正真正銘私の子供ですよ!!」
レアの言葉でアルファルドは考えることをやめた
そしてレアの『腹を割って話そう!!』宣言から二時間後、アルファルドの部屋では完全に出来上がっているレアとアルファルドがいた。
アルファルドは酒がなみなみと注がれているグラスを一気に飲み干すとそれを床に力強く叩きつけながら叫ぶ。
「私はただシトリーの子供であるベレスちゃんの成長を親戚のおじさん的な立ち位置から見守りたかっただけなんです!! たま〜にシトリーやジェラルト殿と喧嘩したベレスちゃんが私のところにやってきてお菓子やジュースをあげながらプリプリ怒っているベレスちゃんを温かい目で見守りつつ、シトリーとジェラルト殿が迎えに来るのを待っていたかったんです!! それでシトリーから家族の愚痴を聞いたりジェラルト殿から年頃になった娘との接し方の相談をされたかっただけなんです!!」
「わかります!! わかりますよアルファルド!! 私もベレスの孫のように可愛がって可愛がって可愛がりまくってシトリーからちょっと叱られたりしたかったんです!!」
「それ!! それもいいですねレア様!!」
「いやいや!! アルファルドの親戚のおじさん的立ち位置もいいですよ!!」
そして二人はいつの間にか『もしシトリーが生き残ってベレスがガルグ=マクで生活していたらどう可愛がっていたか』に話がシフトしていた。
それに呆れながらシェイカーは口を開く。
「あ〜、一応、アルファルドには始原の宝杯がどうなったか伝えとくな」
「何を言っているんですかシェイカー先生!! そんなことよりベレスちゃんですよ!! なんですかあの娘!! シトリーそっくりに育ってくれて初めて見たときアルファルドおじちゃん泣きそうになりましたよ!!」
「アルファルド!!」
「レア様!!」
アルファルドと全く同意見だったのかレアはアルファルドに抱きつく。それにアルファルドも抱き返した。
シェイカーは呆れながも口を開く。
「始原の宝杯は解体した」
「あ、それがいいでしょう。シトリーを蘇らせることができないならあんなガラクタに興味ないんで」
「淡白すぎるだろ」
説得、説得か? うん説得説得。説得したシェイカーの言葉ではないが、シトリーを蘇らせることができないと知った後のアルファルドの始原の宝杯に対する塩対応が酷かった。
「まぁ宝杯についてはいいや。後はヴォルフ・クラッセだが」
その言葉にアルファルドは土下座する。
「どうか四人には寛大な処置を!! 全ては私の責任ですので!!」
「わかってるわかってる。ユーリスは最初からレアについていたし」
「え?」
マジで? って表情でレアを見るアルファルド。その視線を受けてレアは力強く頷いた。
「アルファルド、貴方には昔から悪事ができないと言っていたでしょう。たかだか人質をとったくらいで全部言うことを聞かせることなど無理だと思いなさい」
レアのどこかズレた説教をアルファルドは正座しながら受ける。
「で、次にバルタザールはホルスト卿が引き取ってくれるそうだ」
「バルタザールとホルスト卿は友人だそうなので安心なさい」
「で、コンスタンツェは俺が推薦書を書いて魔導学院に行くことになった」
「魔導学院の学長はこいつなんで安心していいですよ」
次々と出てくる事実にアルファルドは背筋が凍る。主にこんなバケモノを敵にしようとしていた意味で。
「ハピは俺の孫弟子にあたるんでな、俺が直接引き取ることにした」
そしてアルファルドは心の中でハピに祈りを捧げたのであった。
「いやぁ、なんだかんだあったけど大師匠を頼って正解だった。ユーリスもバルタザールもコニーもちゃんとしたところに行けたし。ハピもこれからはアビスでゆっくりしよう」
「お、いたなハピ」
「さよなら大師匠。ハピは旅に出ます」
「はっはっはっ!! 残念ながらお前が出るのはティーガー・クラッセの教室だ!! 俺の後継者として色々みっちり仕込んでやるからな!!」
「うボワぁ」
アルファルド
原作では頑張って悪党になろうとした属性・善。この作品では残念ながら全てレアとシェイカーの手のひらの上だった模様。ちなみに始原の宝杯事件自体がなかったことにされたため、今後も枢機卿としてアビスの改善を目指している。
レア&シェイカー
証拠を集め終わったので詰問タイム
ヴォルフ・クラッセの皆さん
ユーリスはレアの部下に、バルタザールは友人であるホルスト卿のところへ、コンスタンツェはシェイカーが学長を務める魔導学院へ。そしてハピはシェイカーの孫弟子だったためにティーガー・クラッセへ
メトジェイ
レア&シェイカーの証拠集めの途中で地味に拷問されて死んだ
そんな感じで第四の学級始末です。
自分で検索して結果は知っていたんですが、自分でクリアしたら「アルファルドさんを救わなきゃ」と言う使命感に襲われたのでアルファルドさん生存ルート解放。今後も枢機卿の一人としてアビスをよくしていってくれるでしょう。
そして好きなキャラであるハピをスカウト。彼女はシェイカーくんの孫弟子にあたり、シェイカーくんの後継者に(強制的に)されます。
え? メトジェイ? あとがき死でも十分な扱いでしょ?