外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜   作:(TADA)

22 / 25
みんな大好きマイクランくんの登場です

拍手でお迎えください


黒風の塔

 「ここね……」

エーデルガルトは馬車から降りながら呟く。

今節、黒鷲の学級に課された課題は反乱を起こした廃嫡されたゴーティエ家の子息・マイクランの討伐であった。

 「ふむ、なかなかいい立地だね」

 「師」

エーデルガルトの後から降りてきたのは黒鷲の学級の担任であるベレス。ベレスは冷静にマイクランが本拠地にしている塔を分析していた。

 「入り口や通路を少なくしうて数で攻められても守りやすくしている、か」

 (流石は私の師)

ベレスの冷静な分析をもはや陶酔した表情で見つめるエガちゃん。その姿は級長云々関係なく、最近教団で増えているただのベレスファンであった。

黒鷲の学級の面々が戦いの準備をしているともう一台の馬車が止まる。

 「うぉぉぉぉぉぉ!!!!! 唸れオデの筋肉!! ……あれ?」

 「ラファエル、すぐに戦闘にはならないって先生も言っていたでしょう」

そして勢いよく飛び出し、不思議そうに首を傾げいたラファエルの後からイングリットが降りてくる。

そのイングリットに申し訳なさそうにラファエルは頭を下げた。

 「お~、ごめんよイングリットさん。オデ、馬車の中でも筋トレしていたから、知らなかったんだよぉ」

 「大丈夫です、ラファエルにそのあたりは期待していないので」

 「じゃあ安心だな!!」

イングリットの言葉ににっこり笑顔のラファエル。黒鷲の学級の面々は二人の会話を聞きながら「それは大丈夫ではないのでは?」と思ったが、ラファエルの聖人スマイルに黙ることにした。

 「よぉし、全員そろっているなぁ」

そしてペトラとハピと一緒に降りてきたシェイカー。

 「おや? 先生、マリアンヌとメルセデスとリシテアはどうしたんだい?」

 「ああ、あの三人は政治組だからな。学院に残って俺特性課題だ」

その発言にエーデルガルトは内心で三人の冥福を祈る。シェイカーの出す課題は難しいと評判だ。その難易度は普通に帝国の重臣クラスでないと解けないレベルである。そんな課題を生徒に課すシェイカーに対して「やはりキチガイ……」と認識を強くするエーデルガルト。隣でベレスが呟いた「いいなぁ……」という言葉は聞かなかったことにした。

私の師がキチガイなわけがない!!

 「よぉし!! それじゃあ黒鷲の学級及び白虎の学級集合!!」

シェイカーの言葉に集まってくる二つの学級。相変わらずベルナデッタはシェイカーを見てガタガタ震えている。

 「なるほど。やっぱり大師匠は恐れられて!?」

 「ハピ、本人の前で陰口をたたく気概は買うが相手を選べよぉ」

額に魔法の矢(威力:弱小)を叩き込まれたハピは地面をのたうち回っているが、シェイカーはそれを無視して生徒たちに話しかける。

 「今回の戦いは反乱を起こした元ゴーティエ家嫡子・マイクランの討伐だ。さて、どうやる?」

 「はい!!」

 「うむ、あまり答えは期待できないが、一応答えてみようか、ペトラ」

 「はい!! 私、ラファエル、乗り込む、します!! 皆殺し!! します!!」

 「おお!! それはオデにもわかりやすくていいぞ!!」

白虎の学級(戦闘班)の蛮族思考に黒鷲の学級はドン引きした。

 「うん、ペトラとラファエルとベレスがいるからそれができるだろうが、却下な」

 「残念です」

シェイカーの言葉にショボーンとした表情を浮かべるペトラ。エーデルガルトはその姿に飼い主に怒られた大型犬の姿を幻視した。

 「イングリットならどうする?」

 「まず反乱を起こしたマイクランの情報を調べます」

イングリットの言葉に満足そうに頷くシェイカー。

 「戦争で重要なのは情報。しかも鮮度のいい情報だ。それを集めるのが一番だ」

 「先生、私もわかっていた」

 「わかってるからイングリットに張り合うな、ベレス」

何故かイングリットに張り合っている黒鷲の学級の担任がいたが、シェイカーはそれを華麗に流した。

 「さて、本来なら情報を集めるところからやらせるところだが、今回は時間もないので俺が調べさせておいた。ハピ」

 「はいはい」

寝そべった状態で空を見ていたハピがシェイカーの言葉に起き上がる。

 「まず兵力規模はおよそ110人で頭目は元ゴーティエ家の嫡子・マイクラン。マイクランは家の宝である破裂の槍を持ち出してる。集まったのは現状に不満を持つ騎士や盗賊崩れ、中には貴族の次男、三男もいるっぽいね。兵站に関しては出どころは不明。シャミアさんに頼んで調べてもらったら帝国のアランデル侯が絡んでいるっぽい」

 「ハピ、お前の私見は?」

 「ハピの考えでは、これは単なる貴族崩れの反乱じゃない。少なくともマイクランを裏で操っている奴……まぁ、十中八九アランデル侯の狙いは教団だろうね」

ハピの言葉に色々な意味で背筋が凍るエーデルガルト。そしてそのエーデルガルトをハピは気怠そうに、しかし冷徹な視線をエーデルガルトに向ける。

 「さて、エーデルガルトは親戚のやっていることに心当たりは?」

ハピの言葉にエーデルガルトは何も答えられない。隠れて教団に反攻しているのは叔父だけでなくエーデルガルト本人もだからだ。

するとヒューベルトがエーデルガルトの前に出た。

 「ハピ殿は我が主がこの反乱に加担していると?」

 「断定はしないよ? でもエーデルガルトとアランデル侯が共謀していて、マイクランが邪魔になった。そういう流れだと今回ハピ達が討伐に向かわせられた説明がつくんだよね」

 「我が主に変わって言いましょう。今回の反乱に我が主は無関係です」

 「なるほど、『我が主』はね」

 「ええ、『我が主』はです」

無表情でハピを見つめるヒューベルト、気怠そうな表情の中に冷徹な瞳で鋭く見つめるハピ。

ものすごく気まずい空間が広がる中で、ラファエルが不思議そうに首を傾げた。

 「つまり敵はマイクランとかいう人でいいのかぁ? なんか難しい話になってオデに理解できないぞ。ペトラさんはわかるかぁ?」

 「さっぱり、です!!」

ラファエルの問いに自信満々に答えるペトラ。その言葉に緊張していた空気が弛緩した。それに苦笑しながらシェイカーは手を叩く。

 「さて、この反乱には色々と大人の考えが入っているが、お前らの課題はマイクランの討伐だ。どんな戦い方を選ぶ、イングリット」

シェイカーに刺されたイングリットは少し考えこむが、すぐに考えをまとめたのか口を開いた。

 「まず教団に対して増援の依頼を。最低でも相手の兵力の三倍。できれば五倍。その後は完全に兵站を断ち切れば所詮は烏合の衆。すぐにでも降伏してくるでしょう」

 「悪くない。だが、上の指示では『現状の兵力』で『短期』に討伐するように指示が出ている」

シェイカーの言葉にまたイングリットは考えるが、再び口を開いた。

 「塔を燃やしましょう」

 『……は?』

イングリットの爆弾発言に思わず声が零れる黒鷲の学級(ドロテアは笑っている)。それに気にせずにイングリットは言葉を続ける。

 「幸いなことに塔の出入りが可能なのはあの入り口だけのようです。ならば私達はあそこを塞ぎ、塔を燃やします。逃げて出てきた敵は弓で射殺するなり魔法で殺すなりをすればこちらの損害は少なくすみます」

 「こちらの損害を少なくして相手を殲滅する、及第点だ。問題はマイクランを確実に殺せるかという点だな」

 「先生、いいだろうか」

 「はい、ベレス」

いつのまにか始まっていたシェイカー教室with黒鷲の学級にベレスは手を挙げている。さされてからベレスは口を開いた。

 「ドロテアがメティオという相手に小粒の隕石を落として殺す魔法が使えていた。その魔法をドロテアは先生から習ったと言っていた。ということは先生はもっと大規模な隕石を落とすことができるんじゃないのかい?」

ベレスの言葉にシェイカーはニヤリと笑う。

 「いい着目点だ。確かに俺はもっと大規模なメティオを使える。だったらどうする、ベレス?」

 「簡単だ。大きな隕石を塔に落としてマイクランごと消し飛ばしてしまおう。それだったら味方に被害が出ない」

 「いや、師。一応、破裂の槍の回収も命じられているんだけど……」

エーデルガルトの言葉にベレスははっきりと答える。

 「レア様は『できれば破裂の槍も回収してくれ』と言っていた。残念ながら回収できなかった。それでいいだろう」

 「いや!? ダメでしょう!?」

当然のように破裂の槍を消滅させる思考に驚愕するエーデルガルト。そして気づいた。

 「あ、あれ? 師、天帝の剣は?」

 「ああ、あれ使いづらいから置いてきた。やっぱり慣れた剣が一番だからね」

 「師!?」

英雄の遺産を『使いづらいから』という理由で放置してくるベレスにエーデルガルトはマジ驚愕顔を浮かべる。それにベレスは不思議そうに首を傾げる。

 「英雄の遺産と言ってもただの武器だ。使いづらかったら使わない。当然でしょう?」

ベレスのあんまりは発言にエーデルガルトの意識は一瞬飛んだ。教団嫌いなエーデルガルトでも英雄の遺産の力強さは知っているし、なんだったら自分でも使うことは検討している。

しかし、ベレスはあっさりと『ああ、あれ? 使いづらいから使わない』宣言である。この英雄の遺産をありがたがらない思想はどこから生まれたのか。

 「あんな中途半端な武器使わないのが一番だ。なんだったら俺がもっといいのを作ってやる」

そして原因はやっぱりシェイカーであった。そのうえこのキチガイはもっといいのを作ってやる宣言である。

 「あ、あれは英雄の遺産なのよ? すごい力を持った武器なの」

 「はは、あの程度ですごい力とか笑わせおる」

その言葉にエーデルガルトは色々諦めた。こいつに常識は通用しない。

 「それで先生。どうするんだい?」

ベレスの言葉にシェイカーは頷く。

 「ベレスの案を採用。だが、魔法は俺が使うと世界が滅びるのでハピにやらせる」

ポンと出た世界が滅びるという言葉もシェイカーが言うと信憑性が高くなる不思議。だが指名されたハピは不満そうだ。

 「え~、メテオ超疲れるからハピちゃん的に反対なんだけど」

 「ハピが最後におねしょをした年齢は」

 「わぁ!! ハピ、急にやる気がみなぎってきた!! 大師匠死ねばいいのに!!」

ハピの言葉に満足そうに頷くシェイカー。

 「うんうん、孫弟子がやる気になってくれて大師匠は嬉しい」

 「こいつマジで死ねばいいのに」

気怠い目で罵倒を飛ばすハピ。気にしないシェイカー。

 「ところで大師匠。メテオ使うのいいけど私達も巻き添え食らうよ?」

 「なに? お前まだ並列魔法使えないのか? 課題追加な」

 「うぼわぁ」

何気ない疑問に課題が増えたことに絶望するハピ。

とりあえず結界はシェイカーが張り、ハピは詠唱を開始する。

 「それじゃあみんな耳塞いだほうがいいよ。はい、メテオ~」

ハピの詠唱終了と同時に空から家の大きさくらいの隕石が降ってくる。

そして塔に着弾。

隕石によって押しつぶされる塔。塔を中心に大地が裂け、巨大な爆発が起こる。生徒たちから悲鳴があがるがその悲鳴も爆音によってかき消されてしまう。

そしてすべてが終わったあと、解かれた結界周辺は何もなくなっていた。

 「よぉし!! じゃあ今節の課題はこれで終了な!!」

あまりの出来事にエーデルガルトは意識を飛ばすのであった。




エーデルガルト
今日もシェイカー塾に振り回される。

ヒューベルト
主をナイスフォロー

ハピ
エーデルガルトをばっちり疑っている

イングリット
「なるほど、攻城魔法として使えそうですね」

ペトラ&ラファエル
出番がなくてショボーン

黒鷲の学級
ドロテア以外は基本的にドン引き

マイクランくん
やったね!! 魔物化しなかったよ!!(なお、それよりひどい目に

破裂の槍
「あんなゴミいらん」(シェイカー談)





この作品の大人気キャラマイクランくんの退場です。皆様拍手でお送りください。

相変わらずの独自設定の嵐です。

原作でメティオを見ている時から『なんであの規模の隕石が降ってきてその程度?』という疑問があったので、原作のメティオは対人魔法。本気のメテオはやばいよ! という設定にしました。当然のようにグリットちゃんは軍事転用を考えます。
王国と帝国がピンチ

そしてこの作品で色々暗躍しているアランデルおじさん。そして筒抜け。これはアランデルおじさんの能力が低いわけでなく、シェイカーくんの能力が高すぎるせい。
そのためにアランデルおじさんのやっていることは教団にはばれていません。報告しろシェイカー。

ですがハピの考察シーンは書いていて楽しかったです。

そして人間のまま逝ったマイクランくん。あいつはいい奴だったよ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。