外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜 作:(TADA)
ある意味で鬼畜クソ外道の本領発揮ですよ!!(過去話
あ、モーリスくん(獣の紋章の持ち主)の設定が大変なことになります。
「お~っす」
シェイカーがレアの執務室に入ると半泣きになりながら仕事をしているレアと、鬼の形相で仕事をさせているセテスの姿が目に入った。
シェイカーはレアからのヘルプ視線を無視しながら部屋にいたフレンに話しかける。
「なに? レアのやつまた何かやったの?」
「ま!! 逆ですわ!! レア様が何もしていないからお兄様がお怒りになられましたの!!」
「流石に草」
シェイカーの指さし嘲笑いの即座に返そうとしたレアだったが、セテスからアッサルの槍でぶん殴られて大人しく仕事に戻ろうとする。
「お兄様」
「別に俺らしかいないから普通に呼べば?」
「でしたらお父様!! そろそろレア様を休ませてあげないと可哀想ですわ!!」
「フレン……!!」
フレンの言葉に感動の表情を浮かべるレア。
「だって少しは休ませないと効率が悪いですわ!! 奴隷とはいかに効率よく仕事をさせるかですわ!!」
「グラァァァァフ!! 貴様の悪影響がフレンに出ているではないか!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!? そんなの大昔に俺のことを『教育者として優秀だから』と言って預けた親の責任じゃないですかねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
明らかに悪影響を与えた本人を締め上げるセテス。締め上げられながらも平然と煽るシェイカー。「何かまずいことを言ったかしら?」と首を傾げるフレン。そしてレアは仕事地獄から勝手に脱出した。
「おや? グラーフ、貴方にしては珍しいものを持っていますね」
レアの言葉の通り、シェイカーが持っていたのは『セイロス神話』の本であった。
「ああ、これな。ちょっと興味を持って読んでみたんだけどさ」
そこで真剣な表情になるシェイカー。
「セイロス、お前自分のこと美化しすぎてないか? 当時のこと知ってる人間からしてみたら誰だよこいつ状態なんだけど」
「神話の中でくらい完全善性でもいいじゃないですか!!」
「どっちかっていうと邪神だもんな、お前」
「グラーフがそれを言うのか……?」
シェイカーくんの完全ブーメラン発言に首を傾げるセテス。
「いや、まぁ百歩譲ってセイロスが完全善性になるのはいいんだ。教団としても必要だからな」
「流石はグラーフ!! 話が早い!!」
「だがお前のやらかしたエピソードが全部俺がやったことになっているのはどういうことだ?」
シェイカーの言葉に高速で視線を逸らすレア。半眼になってレアを見るシェイカー。そしてため息を吐きながらセテスは説明を続ける。
「神話を作る上でやらかした出来事を誰に当てはめるか議論になってな。そこでレアが『異世界に高跳びかましたバカにしましょう』と宣言してな」
「うん、まぁ、それも理解しよう。お姉ちゃんと一緒に異世界に高跳びかました俺が悪かったと思ってな」
「流石はグラーフ!! 話が早い!!」
レアの言葉にシェイカーは真剣な表情で頷く。
「でも俺が美しい雌馬に欲情してドッキングしたって話は納得のできる説明をくれ」
シェイカーの言葉にレアだけでなくセテスとフレンも視線を逸らした。シェイカーはレアの顔をがっちりつかんで説明を続ける。
「うん? どうしたレア? 俺は全然気にしてないぞ? 変化の魔術を使えることを知っているお前らが何故あえて人間の姿で馬とドッキングさせたか理由があるんだろ?」
「痛い痛い痛い!! 私の美しい顔が潰れちゃいます!!」
「ははは、魔術型の俺が人間の顔を潰せるわけがないだろう」
「いやいやいや!! どう考えても人間の力じゃないですよこれ!!! いたたたたたたた!! あ!? マジでちょっと潰れちゃう!?」
「たぶんこの風評被害の元凶は潰しても許されると思うんだよなぁ」
「まぁ、落ち着けシェイカー」
「セテス……!!」
「顔を潰すのはまだ早い。メルセデスが後継者として育ち切ってからだ」
「セテス……!!」
セテスの説得にシェイカーは仕方なしに顔を離す。
「う~、なんて酷いことを……完全究極美女である私になんてひどいことを……」
「「自分で自分のことを美女って言っちゃう奴はちょっと」」
「ま!! シェイカー様もお父様もダメですわ!! レア様は頭が残念なんだから手加減してあげてくださらないと!!」
フォローに見せかけた死体蹴りにレアは吐血した。
「そういえば何故シェイカーは今更になって神話を読んだのだ?」
「ああ、それな。うちの級長……マリアンヌが『私の本当の家の血筋を辿ると大賢者グラーフにつながるんです』って相談されてな。思いっきり身に覚えがなかったから神話で確認したら俺と馬がドッキングして生まれた子供がモーリスっていうアルティメットな話があってな」
「ちょっと待て」
シェイカーの発言に今度はセテスが目頭を押さえながら口を開く。
「マリアンヌがモーリスの血筋なのか?」
「紋章も確認したから間違いないぞ」
「……途絶えたって聞いていたのだが?」
シェイカーとセテスの視線がレアに集中する。その視線にレアは焦る。
「いえ、私も知らなかったんですよ!? エドモンド辺境伯からは莫大な献金と一緒に『紋章について調べないでくれ』って言われたから『あ、おきまりの紋章ない奴ですねぇ』と思って調べなかっただけで!!」
「そしたら特大の爆弾だった、と」
「今後はきちんと調べるようにしよう」
セテスの言葉はもうレアを信用しない宣言と同義であった。
そして今度はフレンが不思議そうな表情になる。
「モーリスさんの血統が残っていると問題ですの?」
フレンの言葉に三人は顔を見合わせる。
「これって言っても大丈夫か?」
「特に問題ないと思いますけど」
シェイカーとレアの視線が自然とセテス(親ばか)に集まる。
それに合わせてセテスは説明をするために口を開いた。
「フレン、モーリスとはどんな人物だったか覚えているか?」
セテスの言葉にフレンは首を傾げる。
「確か魔物に変化できる人で、グラーフさんが内偵のためにネメシス側に送り込んだ方……だったかしら?」
「まぁ、おおまかでは間違っていない。では、何故我々が神話を作った時にモーリスをグラーフの子供にしたか覚えているか?」
セテスの言葉にフレンは満面の笑みを浮かべる。
「忘れましたわ!!」
「おいおい見てくれこの可愛い娘。私の娘なんだぞ?」
「その前に勉強不足を指摘しろよ」
「それをセテスに期待するだけ無駄ですよ、グラーフ」
セテスの速攻の言葉にシェイカーとレアが突っ込むが、セテスはどこふく風だ。
「それでは、何故モーリスさんはグラーフさんのお子様になってのですの?」
「まぁ、結論から言うと、モーリスは俺が生み出した魔術人型決戦兵器だからだ」
まさかの大暴露!! モーリスは人間ではなかった!!
ある意味でとてつもない発言であったが、ここにいるのは常識から半歩ほどずれた人ばかりなので突っ込まれることはない。
「ま!! 思い出しましたわ!! 確かグラーフさんがネメシス側の捕らえた兵士を使って人体実験を繰り返した末にできた方、それがモーリスさんでしたわね!!」
「改めて言われるとあなた本当に外道ですね」
「おいおい褒めるなよセイロス。照れるじゃないか」
レアの言葉に本当に照れた表情を見せる鬼畜クソ外道。人体実験に対する倫理観とかこの男には存在しない。
「懐かしいな、捕らえた人間を片っ端から人体実験の素材にしてしまうから捕虜など存在しなかった」
「あの頃は血の匂いの記憶しかありませんわ」
セテスとフレンも懐かしそうに会話する。戦場で出会ったネメシス側から「この外道どもがぁぁぁぁ!!!!」と叫ばれたのも遠い記憶だ。
「ですが、あれの発端はネメシス側が悪かったですからね。なにせお母さまの亡骸から武器を作るだけでもぶっ殺し案件なのに、ほかの同胞の亡骸からも武器を作るのですから。そりゃあこっちも人型外道兵器の導入しますよね」
「ははは、懐かしいな。セイロスから『できるかぎり苦しみぬいて殺すように』って依頼を受けて張りきった記憶がある」
アメリカンにHAHAHAと笑いながら会話をするレアとシェイカーだったが、会話の内容は最悪である。
「まぁ、それで戦後にモーリスが捕虜に孕ませてできた子供がマリアンヌの血統だろう」
「うん? でも少し調べてみたら俺の子孫を名乗る家が結構あるよな」
セテスの言葉にシェイカーが尋ねると、答えたのはレアであった。
「あれらの家はシェイカーが作った『量産型モーリス』の末裔ですね」
「? 『量産型モーリス』の末裔だったら少なくないか? 『量産型モーリス』は千体近く作ったはずだが」
もはや会話が倫理観ゆるすぎである。量産型モーリスというパワーワード。
「同じ『量産型モーリス』でも生殖能力の有無があったからな。生殖能力があった個体が子孫を残し、それが今につながっているのだ」
「なるほどなぁ」
セテスの説明にシェイカーは納得するが、ふと何かに気づく。
「そういやモーリスはどうした? あれは俺が作り上げた最高傑作だからまだ稼働しているはずなんだが?」
「ああ、モーリスでしたらあなたがいなくなった後に『大地が俺を呼んでいる……welcom to フォドラ!!』と叫んで魔物になってどっかいきました」
「マジかぁ、そしたら回収しに行く必要あるなぁ。メンテナンスもしたいし」
モーリスを完全に人として扱っていないシェイカー。こいつに倫理観を求めるのが間違っている。
「じゃあ、近いうちに白虎の学級の課題を『モーリスの回収』にしましょうか」
「それだと助かる」
レアとシェイカーはそこで一息。そしてシェイカーは真剣な表情で口を開く。
「ところで神話での俺がかなり女癖が悪くてそこらじゅうに子供を作っているだけならまだしも、獣とまでドッキングしている件についてだが」
シェイカーの言葉にレアも真剣な表情を浮かべる。
「いままでの恨みも込めて最低な存在にしてみました」
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「あはははははははは!!!!! ざまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
シェイカーの怒りに指さし嘲笑いをするレア。そんな二人を見ながらフレンは首を傾げながらセテスに話しかける。
「でもグラーフ様は民間では慕われていらっしゃいますわよね? なんでも『すごく親しみやすい』って理由で」
「それが人間のわからんところだなぁ」
フレンの問いにセテスは遠い目をして答えるのであった。
シェイカー
神話上でまさか動物とドッキングさせられているのを読んで驚愕
レア
とりあえず自分のやらかした出来事はグラーフ(シェイカー)のやったことにした
セテス
神話時代からの苦労人
フレン
神話時代はあまり表には出ていなかった
モーリス
シェイカーくんの作り出した魔術人型決戦兵器。最終決戦において多くのフォドラ十傑を殺した。戦後に捕虜を孕ませた後に暴走、魔物の姿になってどっかいった。
量産型モーリス
シェイカーくんの作り出した魔術人型兵器群。いっぱいいる。生殖機能を持った個体が生殖活動をして子孫を残した。
グラーフ神話
兵器を作り出したり女性拉致って孕ませたり動物とドッキングしたりとやりたい放題な神様
そんな感じで更新です。動物とドッキングとか魔術人型決戦兵器とか量産型モーリスとかパワーワード祭りになりました。
最初はレア様が捏造した『シェイカーくん、動物とドッキング神話』だけの予定だったんですが、そこから話が膨らんでまさかのモーリス(獣の紋章の持ち主)がシェイカーくんによって生み出された魔術人型決戦兵器という設定が出てきました。
つまりマリアンヌもその血を引いている。
神話時代の話も作りたいんですが、なんか発表されている情報が曖昧だけど微妙にあるせいですごく作りづらいです。
まぁ、この作品ではこういうふわっとして設定でいきましょう。