外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜 作:(TADA)
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夜明け前、シェイカーに指定された集合場所(寮の前)にエーデルガルトとヒューベルトが行くとすでにペトラとベレスは来ていて準備体操をしていた。
「師、早いのね」
「どうせだったら私も一緒に訓練をつけてもらおうと思ってね」
「……師、その格好は?」
エーデルガルトの問いにベレスは不思議そうに首をかしげる。
「先生が用意してくれた運動着だけど?」
「エーデルガルト様!! この服、凄く、動く、しやすいです!!」
ベレスの言葉にペトラが嬉しそうに報告してくれる。一日の間にどれだけ準備がいいんだあのキチガイとエーデルガルトは思ったが口には出さない。出したら頭がおかしくなりそうだ。
「運動着もそうですが……なんですかな、この大きな木の人形は?」
そう言ってヒューベルトが近寄ったのは人のサイズはあるであろう大きな木の人形であった。
「あ、ヒューベルト」
「? なんですグホッ!!」
「ヒューベルト!?」
油断したヒューベルトの脇腹に木人から強烈な一撃!! たった一撃でヒューベルトは戦闘不能になった。
「愚か者!! 貴様のような者に木人はまだ早い!! 修練し基礎を学ぶのだ!!」
そこにやってきたのはフクロウが入った鳥かごを持ったシェイカーであった。何故か付け髭をつけていて帽子まで被っている。
「……シェイカー先生、これはなんですか?」
「おっとエーデルガルトはもうスルー技能を身につけたか。なかなか保身に走っているじゃないか。『これはなんですか?』と聞かれても『これは木人です』としか答えようがないが」
「なんで勝手に動くんですか?」
「え? 動かないとトレーニングに使えないだろ?」
「なんで木の人形を自動で動かせるんですか!?」
「そりゃあ魔力を使ってちょっとな。まぁ、ゴーレムの一種だと思えばいいさ」
それじゃあヒューベルトくんも回復しとくなぁ、と言って回復魔法をかけるシェイカー。せっかくの高難易度の魔法も便利グッズとして使われているとありがたみが薄れると思うエーデルガルト。
「先生、そのフクロウは?」
「ああ、これか。これはガルグ=マクを飛び回っていたフクロウを捕まえてな。とりあえず羽を毟らなきゃいけない使命に駆られて羽をむしってみた」
ベレスの質問にあっけらかんと答えるシェイカー。羽を毟られたフクロウは心なしかションボリしている。
「まぁ、毟った羽は使い道ないからベレスにやるわ」
「本当か? ありがとう」(好感度↑↑↑)
「ちょっと待って」
「今度はどうしたエーデルガルト」
頭痛を抑えるようにしながらエーデルガルトは口を開く。
「今、一瞬師の好感度が上がったマークみたいなのがでた気がするんだけど……」
エーデルガルトの言葉に顔を見合わせた後に笑い声をあげるシェイカー。
「おいおい、ゲームじゃないんだからそんなマークとか出るわけないだろう」
「何故かしら……『それは言ってはいけない』という感情が出てくるわ」
「血迷い始めたエーデルガルトは無視して特訓を始めるぞペトラ」
「はい、師匠!!」
シェイカーの言葉に元気よく返事をするペトラ。エーデルガルトは内心でこの野郎と思ったが、ペトラが楽しそうにしているからまぁいいかとも思った。
「まずは鍛錬の基本だ。体力をつけるために走ってもらう」
「はい!!」
「早い早い。まだ説明終わってない」
シェイカーの言葉を聞いた瞬間に走り出そうとしたペトラをシェイカーは魔力で作った縄で拘束した。
「いいかペトラ。俺の特訓は『人間の限界に挑戦させて限界突破させる』のをモットーにしている。したがって走るのもただ走るだけじゃない。これを使う」
そう言ってシェイカーが取り出したのはTETUGETAだった。
「特訓の基本と言えばTETUGETAを履いてのランニング!! さぁペトラ!! これを履くのだ!! あ、ベレスも当然履くように」
「はい!!」
「わかった」
笑顔でTETUGETAを履くペトラと手慣れた様子で履くベレス。この時点ですでにエーデルガルトの常識がおかしくなっている。だってペトラのTETUGETAはそうでもないが、ベレスのTETUGETAは明らかに地面にめり込んでいる。しかし、ベレスはそんなの気にせずに当然のように履いている。
「ペトラは初めてなのでまだ軽いTETUGETAだが、日を増すごとに重さは重くなっていく。そしてさらにこれを背負ういい!!」
そう言ってシェイカーが魔法で取り出したのは巨大な大岩!! どう考えても背負うレベルではない。
「こっちの大きいのがベレス。一回り小さいのがペトラだ。これも日をおうごとに大きくなっていき、一ヶ月以内にベレスと同サイズを背負ってもらう」
「はい!!」
ペトラは元気よく返事をして小さいほうの大岩をプルプルしながら持ち上げた。その隣でベレスは余裕の表情で持ち上げている。
そしてシェイカーは流れるようにベレスの大岩の方に腰をかけた。
「さぁ!! まずはガルグ=マクの外壁をひたすら走るのだ!!」
「「はい!!」」
「ちょ、ちょっと待って!!」
慌てて止めるエーデルガルト。ベレスからの今度はなんだという視線がとてつもなく辛いが、大事なことを確認していない。
「何周するのかしら?」
エーデルガルトの言葉にシェイカーは笑顔で答える。
「そんなものは決まっていない!! 俺が良いというまでだ!! さぁ、走れペトラ!! これが最強への第一歩なのだ!!」
「は、はい!!」
TETUGETAと重石で辛そうに走り出すペトラ。『ママとパパはベッドでゴロゴロ。ママが転がりこう言った「お願い欲しいの」「しごいて」おまえよし俺によし うん よし』という謎の歌を歌いながら走り始めるベレスをエーデルガルトは見送ることしかできなかった。
「ペトラ!! 食事もまた特訓である!!」
「はい!! 師匠!!」
朝食時、食堂にてシェイカーとペトラ師弟の声が響く。
「体を作るにはとにかく食え!! そしてそれを筋肉に変えるのだ!! 幸いなことに他のクラスにも料理上手な生徒がいたから(強制的に)巻き込んだ!! ドゥドゥー、メルセデス、アネットだ!! 三人に礼!!」
「ありがとうございます!!」
ペトラの元気の良い返事に名指しされた三人は恐縮しながら引き下がる。なにせシェイカーとドゥドゥー、メルセデス、アネットの作った量はやばい。食堂の長机がいっぱいになっている。
「食え!! とにかく食え!! それが筋肉の元になる!!」
「おぉ!! 食べ物が筋肉の元になるのか!! だったらオデも食べてぇぞ」
「む、ラファエルだったな。よかろう、おまえも食べるが良い!! さぁ、食え!!」
シェイカーの合図に長机の食料を食べ始めるペトラとラファエル。それを遠目からエーデルガルトは眺めている。
「止めなくてよろしいのですか?」
「わかっているでしょ、ヒューベルト。止めても無駄よ」
「ですな。先生も一緒になって食べていますしな」
「師!?」
エーデエルガルトが驚いた先にはペトラとラファエル以上のスピードで食い荒らすベレスがいた。
「おーっす、シェイカー。俺も食うから追加頼むわ」
「テメェは霞でも食ってろ、ジェラルト」
「さっさと準備しやがれクソ鬼畜」
流れるように乱闘を始めたベレスの先生と父親を見ながらエーデルガルトはなんとも言えない気持ちになるのであった。
授業中、これは唯一シェイカーの奇行から解放される時間である。教師業に自信がないと言っていたベレスも授業はとてもうまい。
持っている教科書が『サルでもなれる名教師』という教科書でなければ素直にエーデルガルトも感心できただろう。
だが、まぁ授業は普通に進んでいるし、内容もわかりやすいから良いのだろう。というか良いということにしないとエーデルガルトの心労がマッハになる。
エーデルガルトは授業を聞きながら級友達の様子を見る。基本的にみんな真面目に受けているが、リンハルトだけは眠っている。
エーデルガルトが後でリンハルトを叱らないとと考えている時に事件が起きた。
『デデーン!! リンハルト、アウトー!!』
「「「「「「「は?」」」」」」」
その言葉に呆気にとられる黒鷲の学級。しかし、ベレスの動きは素早かった。
「え? 先生、なんで僕を拘束する……え? きちんと踏ん張らないと痛い? どういうこと」
リンハルトが最後まで言い切れることはなく、黒鷲の教室に入ってきた木人に視線が集中する。
そして木人はベレスが拘束しているリンハルトのケツに向かって強烈な蹴り!!
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
悶絶するリンハルト。
『はっははぁ!! 授業中の居眠りは感心しないぞ!! 他の生徒も授業をサボったりした場合容赦無くこの罰を下すからな。男女貴族平民関係ねぇから!!』
『あなたはもうちょっと手心を加えるということを学んだらどうですか?』
『おいおいレア!! こんなに手心加えているじゃないか!! 現にリンハルトが爆散してない』
なんというか放送もひどいが会話内容も酷い。本気出したら爆散できるのかとか仕事しろ大司教とかツッコミどころが多すぎる。
「じゃあ次のところに行くよ」
そして平然と授業を続けるベレスに黒鷲の学級は戦慄した。
放課後、ペトラはシェイカーに呼ばれて訓練場に来ていた。
「師匠、今度の訓練する、なんですか?」
「うむ、次の訓練は俺の弟子には必須科目の『ナギ流格闘術』だ」
シェイカーの言葉にペトラは首をかしげる。
「格闘術、ですか? でも、私は剣使う、します」
「愚かぁぁぁぁ!!!」
どこか劇画タッチになりながら宣言するシェイカー。
「いいか、ペトラ。もし戦っている時に武器が壊れたらどうする? 素手では戦えないから見逃してくださいとでも言うのか?」
その時ペトラに電流走る……!!
「た、確かに、それはする。駄目です!!」
「だろう!! だからこそ格闘術は必須なのだ。今回は月末の学級対抗戦に間に合わせるために俺の魔術空間で行う」
「魔術空間、ですか?」
「俺の友人であるイケメン天才魔道軍将が作った魔術空間でな。まぁ、精神と時の部屋みたいなものだ」
「せいしんとときのへや、ですか?」
「簡単に言うと特別な修行空間だ」
「おぉ!!」
修行空間という言葉に期待のこもった表情になるペトラ。
「では行くぞペトラ!!」
「はい!! 師匠!!」
「ペ、ペトラちゃん!? 大丈夫!?」
「ド、ドロテアですか……」
「ちょ、ちょっと何があったの!? 体に傷は全くないけど!?」
「体の傷、師匠、治す、しました。あと、部屋で休む、しろと……」
「ちょ!? ペトラちゃんここで寝ちゃ駄目!! 誰か手伝って!!」
ペトラちゃん
人間を辞める第一歩を踏み出した未来の剣豪。
ベレス
シェイカーの特訓を幼少期から受けているんだから既に人間をやめている。
エーデルガルト
シェイカーの奇行に今日も胃を痛める。
木人
シェイカーの操るゴーレムの一種。戦闘から組手までなんでもこなせる。
リンハルト
授業中の居眠りによって罰ゲームを受けた被害者。
ベレスが訓練の時に歌っている歌
洋画とかにあるアメリカ兵が訓練の時に歌っている汚らしい歌詞の歌。
羽を毟られたフクロウ
フェーちゃんと間違われた模様
そんな感じでペトラちゃん特訓編でした。こんな特訓を毎日続けられます。ちなみにそれは書くことしません。物語の背後で進行しているってことで。
そして最後に巻き込まれるドロテア。でもなんだかんだ言いながら面倒見の良いドロテアだと面倒見てくれる気がします。
次回は三学級対抗戦の予定。