外道、フォドラに立つ〜召喚士と英雄の日常外伝〜 作:(TADA)
エーデルガルトは何故か胃痛がしていた。これも昨日になって突如発表された『シェイカー先生のトキメキ特別授業』と言うもののせいだった。
あの頭のおかしさだったらすぐにセテス辺りに追い出されると踏んでいたのだが、エーデルガルトの予想は当然のように裏切られ、むしろ思いの外よかった面倒見の良さからシェイカーはガルグ=マクで居場所を構築しつつあった。
「エーデルガルト様、お顔を険しいようですが?」
「ヒューベルト、わかって言っているでしょう」
エーデルガルトの言葉に陰険従者は愉悦そうに笑う。エーデルガルトの予想通りにヒューベルトはシェイカーと気が合っていた。なにせ怪しげな薬の調合方法を習いに行っているくらいだ。薬の実験台になるであろうフェルディナントには黙祷を捧げておく。
「しかし、シェイカー先生の教えの巧みさは見事なものです」
「わかっているのよ? あの人がとてつもなく優秀な人だと言うことはわかっているの……!! それでもあの人を認めてしまったら私の中の常識が木っ端微塵にされてしまうような気がするのよ……!!」
「我が主も難儀な性格をしていますな」
エーデルガルトは内心で『やかましい』と思いながらシェイカー塾門下生の二人をチラリと見る。
ベレス。ミスパーフェクト。武芸から軍略、果ては政治まで教えられる是非とも帝国に欲しい逸材。
ペトラ。シェイカー塾新進気鋭の新人。武芸に関してはすでにエーデルガルトとディミトリを同時に相手どれる。戦いたがりのフェリクスくんが挑んで10秒後には医務室送りにされたのは記憶に新しい。
二人とも優秀だ。特にペトラは教えられ始めて半月にもなっていないのにも関わらずの大躍進である。もし、これから先、戦闘系の課題が与えられた場合、戦場に二人を投げ込んでおけば終了すると言う確信がエーデルガルトにはある。
エーデルガルトは頭を振ってベレスとペトラが戦場でヒャッハーしている姿を追い出すと、軽く食堂を見渡す。
せっかく大魔導士シェイカー・エナヴェールの授業が受けられると言う理由で、レアが三学級合同で特別授業をすることになった。そのために仕官学校全ての生徒が食堂に集まっている。
「それにしてもシェイカー先生遅いわね」
エーデルガルトの言葉が引き金ではないだろうが、突如食堂の明かりが消え、不思議な音楽が流れ始める。
それは別世界で『コミックサイクル』と言う曲をアレンジしたものである。
この時点でエーデルガルトの嫌な予感が恐ろしく高まっている。
そして食堂の左右の扉が突如開かれた。
左の扉には黒の燕尾服で付け髭をつけたシェイカー。
左の扉には黒の燕尾服で付け髭をつけたレアがいた。
全員がレアの姿を見た時点で絶句した。それはそうだろう。セイロス教の大司教がやっていい服装ではない。
しかし事故は続く。
二人は腕をまっすぐにおろし手首を外側に向けると言うペンギンに似た姿勢をとり、軽快な音楽に乗せて無言で膝を大きく曲げながら食堂のカウンターの方向に向かう。
そしてカウンターの側で二人は剣を抜くと、(何故か)置いてあった丸太にゆっくりと剣を降ろす。
なんと言うことでしょう。力を入れていないのに切れてしまったではありませんか。
怒涛のようにツッコミどころを量産しつつ、二人は気にした風もなく、今度はレアがリンゴを取り出し、シェイカーに向かって投げる。
シェイカーはそれを突き刺して取ろうとするが、失敗して真っ二つになってしまった。
悔しそうにするシェイカー。今度は私にやってみろと言う挑発をするレア。
リンゴを投げるシェイカー。
『おぉ!!』
思わず食堂にいた全員から歓声が出る。レアにの剣には真っ二つになることなく、リンゴが突き刺さっていた。
そして二人で謎の踊り(ヒゲダンス)をするシェイカーとレア。
しかし、二人のフリーダムタイムも長くは続かない……!!
「何をしているんですか大司教ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
そう!! 我らの胃痛担当(セテス)がいるからだ!!
「なんですかセテス、騒々しいですよ」
黒い燕尾服に付け髭をつけたまま喋るレア。
「いや!? 騒がしくもなるでしょう!? 何をやっていたのですか!?」
「シェイカーと一緒に大道芸ですが」
「大司教が大道芸!?」
全く悪びれた様子のないレアに、マジ驚愕顔のセテス。
「おいおい子安。お前の声でこの程度のこと驚くなよ」
「? 待て、子安とは私のことか?」
「貴方以外に子安はいないでしょう」
「私はセテスですが!?」
そして謎の名前でシェイカーとレアに呼ばれるセテス。
「と言うか何の真似ですかこれは!! 大司教の執務室に行ったら『シェイカーと一緒に遊びに行ってきます』と言う書き置き!! そしてこの威厳を投げ捨てるような真似!!」
「落ち着きなさい子テス」
「レア、混ざってる混ざってる」
「あら、いけない」
テヘペロポーズをするレア。即座にシェイカーにレバーブローを打ち込まれ悶絶するレア。
「何をしているかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「バッカ!! お前、BBAのテヘペロとか誰得だよ!!」
「確かに殴りたくなったが、本当に殴ってはならんだろう!!」
「セ、セテス、来月の給料カットですね」
なんとか起き上がったレアの無慈悲な言葉にセテスは崩れ落ちる。『そんな、フレンにあげるお小遣いが』と言っている時点でまだ余裕そうだ。
「いや、そんなことよりこれは何の真似ですか!! 納得のできる説明をいただきたい!!」
その言葉は食堂全員の総意でもある。授業だと思っていたらシェイカーとレアの奇行を見せられた。
文字にしても酷い状況だ。
そんなセテスにレアは指を立てて説明を開始する。
「いいですか、セテス。私は重大な間違いに気づいたのです」
「自分の年齢のことか?」
見事に地雷を踏み抜いたシェイカーにレアはローリングソバットを叩き込む。
モップになっているシェイカーを無視してレアは言葉を続ける。
「セテス、私は確かに大司教です。そして敬われる存在になっています。ですが、それは正しいことですか? 本来敬われるのはセイロス様だけであった、私は大司教なのですから、そこまで敬われることはないはずです」
「いや、お前セイ」
重大なネタバレをかまそうとしたシェイカーはレアのかかと落としが突き刺さった。それを見ていたシルヴァンが「美女からの蹴りとかご褒美かよ」と呟き、周囲にドン引きされているのをエーデルガルトは見なかったことにした。
頭痛を抑えるセテスは絞り出すように口を開く。
「つまり、今回の騒動は……?」
「私の威厳とか吹き飛ばすためにやりましああ、ちょっと待って!! グーはダメ!! グーはダメ!!」
怒りのこもったボディーブローをレアに叩き込み、動けなくしてから引きずって食堂から退場するセテス。それを見送る生徒達。
無言の食堂。
「よ〜し、それじゃあ授業開始するぞぉ」
そこに一切空気を読まないシェイカーの宣言。生徒達はある意味でこれに救われた。きっと大司教も普段の仕事で疲れているんだ。今度から優しく接してあげよう、と言う気持ちになったからだ。
そして始まるシェイカーの授業。
しばらく受けてみてエーデルガルトは思った。
(ムカつくほど分かりやすい!?)
中身はあれなのに授業の分かりやすさは何なのだ。なにせ完全脳筋のカスパルやラファエルも理解している。
そして深いことを質問するリシテアのような生徒にもパーフェクトな回答をしている。
(これで……これで性格がマトモだったら……!!)
他のマイナス要素が大きすぎた。
そこでシェイカーは何かに気づいた。
「おいベレス」
「何だろうか」
「お前のクラスの奴が一人いないな、なんて言ったっけ。俺みた途端『ヒィ!? キチガイ!!』って超絶失礼なこと言いやがったネズミみたいな雰囲気の奴」
ベレスは少し考えていたようだが、すぐに思い至ったのか口を開いた。
「ベルナデッタのことか。ベルナデッタだったら心の風邪を引いたと言う理由で部屋に閉じこもっているよ。ところで先生、心の風邪とは何だろうか」
「うむ、サボりだな」
「なん……だと……!?」
シェイカーの言葉に驚愕顔を浮かべるベレス。普段、無表情なくせにネタの時だけ表情豊かである。
「ベレス!!」
「はい!!」
シェイカーに呼ばれて席から起立して直立不動になるベレス。
「サボりは?」
「許しはいけない」
シェイカーはニヤリと笑った。
「ならば行くぞベレス」
「はい」
「ちょ、ちょっと待って!!」
二人で出て行こうとしたのをエーデルガルトは呼び止める。
「どうしたエガちゃん」
「やめて、これ以上ツッコミどころを増やさないで」
そしてシェイカーに謎の呼ばれ方をするエーデルガルト。
「え〜と、どこに行くつもり?」
その言葉にシェイカーは200%胡散臭い笑顔を浮かべた。
「ベルナデッタを引きずり出しに」
(あ、これはダメな奴だわ。ごめんなさい、ベルナデッタ)
そしてエーデルガルトは速攻でベルナデッタを見捨てた。誰だって我が身が一番可愛いのだ。
そして他の学級の生徒達も引き連れて寮へとやってくる。
「あ〜、あ〜、ベルナデッタくん。君は完全に包囲されている。大人しく出て来なさい」
その言葉にベルナデッタは少しだけ顔を出し、マジ驚愕顔を浮かべて中に引っ込んだ。
『コホンコホン。あ〜、ベルはあれですね!! 風邪ですね!!』
「魔術で君が健康なのは確認できている。大人しく出て来なさい」
『ベルのは身体的な風邪ではなく!! 心の風邪なので!!』
「ふぅむ、残念ながら俺は頭の病気なので普通ではないぞ? いいか、最終通告だ。大人しく出て来なさい」
『絶対に嫌です!!』
ベルナデッタの拒絶に愉悦の表情を浮かべるシェイカー。どうみても悪いことしかしそうにない。
「ベレス」
「はい」
「やれ」
シェイカーの言葉に轟音を響かせてベルナデッタの部屋の扉を破壊するベレス。中ではベルナデッタが唖然とした表情を浮かべていた。
「ペトラ」
「はい!!」
「連れてこい」
「はい!!」
元気よく返事して部屋へと突入し、ベルナデッタを縛り上げて外に引きずり出すペトラ。
そしてベルナデッタが外に出て来たことを確認してから突然叫ぶシェイカー。
「部屋があるから引きこもりができるんだ!!」
響き渡る爆音。舞う炎。何故かベルナデッタの部屋だけ消し飛ぶ寮。
「ベ、ベルの部屋がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「ふはははははは!!! ベルナデッタくん!! 君がサボるからいけないのだよ!!」
「そ、そう言う問題じゃないんですけど!? ベルの部屋が消し飛んだんですけど!? どうやったんですか!?」
「あ? そんなもん結界魔法と攻撃魔法を同時に使えば一発だぞ」
「並列魔法ですか!!」
シェイカーの言葉に興奮しながら食いついたのは天才魔法少女リシテアだった。
「シェイカー先生は魔導の極みと言われる並列魔法を扱えるのですか!?」
「まぁ、使えるぞ」
そこで何か思いついた表情になるシェイカー。
「よし、リシテア。君も俺の生徒になるか? そうしたら並列魔法だけじゃなく、軍略や政治についても叩き込んでやる」
「!? 是非!!」
嬉しそうにしているリシテア。新たな獲物を見つけた表情になっているシェイカー。
「私の部屋をどうしてくれるんですかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そして部屋の残骸を見て泣き叫ぶベルナデッタ。
「……」
「エーデルガルト様、どうにかしませんと」
「私がどうにかするの!?」
「級長ですので」
ヒューベルトの言葉に、エーデルガルトは肩を落としながらシェイカーに詰め寄っているベルナデッタのところに行くのであった。
エーデルガルト
今日も胃痛が酷い
ヒューベルト
当然のようにシェイカーと仲良くなった様子。薬の実験台は主にフェルディナント。
シェイカー&レア
まさかのヒゲダンス
セテス
声帯子安な胃痛枠
リシテア
シェイカー塾に入塾した天才少女
ベルナデッタ
引きこもっていたら部屋を爆破された
ベルナデッタの部屋
シェイカーが魔法でどうにかしました
久しぶりの更新です。そして止まることを知らないレアさまのキャラ崩壊。誰だレア様にヒゲダンスを教えたのは。
そして作者はポケモン盾を買ってしまったせいで風花雪月のやる時間が消滅しました。このままではこっちの更新に被害が出てしまう。
そこで作者は気づきました。
そうだ、プレイ動画を見よう。
ぶっちゃけ話の確認をしているだけなのでプレイ動画でいいことに気づきました。だからゲームの方は金鹿だけ進めるよ