私の名前は句楽兼次*1。ウルトラスーパーデラックスマンこと句楽兼人の孫にあたる…のであろう、彼の力を受け継いだ唯一無二の子孫である。
20世紀後半、高度経済成長に陰りの見えなかった日本で、その怪物は生まれた。
誰が呼んだか『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』。
底なしのパワーとどこにでも駆け付ける飛行能力と全てを見通す透視能力を持った超人が平和な日本に現れた。
正義感あふれるその超人は、その力でもって犯罪者や悪徳政治家、公害企業を成敗していった。
それはもうめっためたに。
初めのうちは民衆もマスコミも彼を正義の味方、スーパーヒーローと彼をもてはやした。
だが、日本政府は法治国家として、私刑を行う超人の存在を許しておくことができず、彼を殺人等の罪で逮捕した。
普通の義賊的正義のミカタであれば、話はそれで終わったのだろう。だが、相手は超人『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』だった。
彼は抵抗し、自分を逮捕した警官を八つ裂きにした。
政府は機動隊や自衛隊を派遣し、その“怪物”を「駆除」しようとしたが、当然全く歯が立たなかった。
政府のその対応を受け、マスコミはウルトラ・スーパー・デラックスマンを“殺人鬼”“悪の権化”と報道した。そして彼に報復された。
ウルトラ・スーパー・デラックスマンは自分を悪く言うものを許さなかった。言論の暴力には物理でもって反撃した。
ミサイルも砲弾も彼を傷つけることあたわず、法は彼を縛れず、言論はビルごと弾圧され、文化人の説得は彼の怒りに油を注ぐだけだった。
何をしてもかなわない 超人の皮を被った怪物に、社会は屈し正しく『触らぬ神に祟りなし』の対応をとるしかなかった。
ヒーローが生まれ、身勝手な正義が横行し、それから数年が経って化物は死んだ。
ウルトラ・スーパー・デラックスマンは死んだ。
死因は胃癌。
彼を最強の生物たらしめていたウルトラ・スーパー・デラックス細胞がガン化し、治療の甲斐なく彼は亡くなった。
そして、
しかし彼が亡くなってからの混乱は相当なものだった。
混乱の大本はウルトラ・スーパー・デラックスマンの遺体だった。
ウルトラ・スーパー・デラックス細胞の研究をさせろと各国が日本政府に圧力をかけたり、亡骸が闇取引で競売にかけられたり表も裏も大騒ぎ。
ウルトラ・スーパー・デラックスマンの子どもを身ごもったと訴える母親や、「ウルトラ・スーパー・デラックス精子」を体外受精させる研究者や闇組織たち。
国は混乱の中、第二第三のウルトラ・スーパー・デラックスマン―――ようするに彼の血と能力を引く者―――を発見しようと全国調査を行ったり大変だった。
また、ウルトラ・スーパー・デラックスマンを倒すにはガンだ、と証明されたことで世界中でがんの研究が盛んになり、がんの治療薬が完成。
…そして100%の発がん物質が生み出された。
国際政府は全世界にその発がん物質と治療薬を配布。全ての人々に投与を義務付けた。
何故かというと、がんの治療薬は普通のガンには100%効き目があるが、ウルトラ・スーパー・デラックスがん細胞によるがんには全く効き目がなかったからである。
つまりウルトラ・スーパー・デラックスマンを狙い撃ちにした先制攻撃を行ったのである。
(これは天然のウルトラ・スーパー・デラックスマンがいたなら発見し捕獲したいという思惑もあったのだと言われている。各国政府の次世代超人育成計画、ウルトラ・スーパー・デラックスマンクローン系計画、その他様々な超人計画は全て成果を上げられないでいた。真実ウルトラ・スーパー・デラックスマンの血を引く子どもも、いたって普通の子どもでなんのスーパーパワーも持ち合わせていなかったからだ。DNA・遺伝子・細胞組織、なにをどう調べてもいじっても力のもとが分からない。再現ができない。研究は完全に行き詰っていた)
その結果、新たなウルトラ・スーパー・デラックスマンは発見されず、世界は完全にウルトラ・スーパー・デラックスマンを過去のものとして歴史に葬ることができるようになったのである。
ノストラダムスの大予言の頃、教科書にウルトラ・スーパー・デラックスマンのことが載った。正義の味方ではなく、怪物、殺人鬼、世紀の大悪人として。
全ては過去になった。
ウルトラ・スーパー・デラックスマンを知っているものも多くが亡くなり、若者にとっては過去の対戦と同じく現実味のないおとぎ話のような代物になり果てた。
なぜ私にウルトラ・スーパー・デラックスマンの力が宿ったのかはわからない。
私が力のことを自覚したのは中学3年生のことだった。
寝て起きたら空に浮いていた。
それから何度か試し、ウルトラ・スーパー・デラックスマンの力の全てが僕に宿っていることを自覚した。
透視能力、
怪力、
飛行能力、
ウルトラ・スーパー・デラックス細胞、
中学3年生だった私はそれにとても興奮し、両親に披露した。
―――結果、父は私を殺そうとし、母が私の身代わりとなって亡くなった。母の亡骸に縋りつく私に父は呪いの言葉を吐いて首を切って自殺した。
後で知ったことだが父は孤児だったらしい。何があったのか何を知っていたのかはわからない。でも父はウルトラ・スーパー・デラックスマンを憎んでいたのだと思う。彼と彼の力を憎み、それを身に宿した私も憎んで、殺さなければと思ったのだろう。
両親を亡くした私は、地方に住む母方の祖父母のもとに引き取られ、祖父母のもと新しい環境で育つことになった。
その頃の私は、私の軽はずみな行動が興した悲劇を激しく後悔し、力を憎んでさえいた。だが、力はどうあっても私の中にあった。
時は残酷に過ぎていき、後悔や無念といった悔恨の思いは次第に薄れ、私はウルトラ・スーパー・デラックスマンの力を自分の一部として受け入れられるようになっていた。
受け入れるまで5年かかった。たかが5年と思うなかれ、当時14歳・19歳の私にとって5年は人生の3から4分の1だ。
そしてその5年の中で私は私の力を自由に使うわけにはいかないということを理解した。
単純に、ウルトラ・スーパー・デラックスマンⅡ世とバレ、駆除されることになったとして、その場合私は既製品を全く食べることができなくなるだろう。おそらく私が手に入れられる食べ物には須らくそれが混入されるはずだ。先代・句楽兼人のように出前を頼んだら間違いなく入れられる。そうしてガンを発症させられ駆除される。
そんなのはいやだ。
好物のラーメンを今後一切食べられなくなる人生などごめん被る。
そうでなく、駆除でなく、「捕獲」となった場合、ガンを最小に抑えて研究のため捕獲しようということになった場合も考えられる。
間違いなく全身を弄りまわされ、結果『秘密』がつまびらかにされてしまうだろう。
『秘密』―――私の、否。ウルトラ・スーパー・デラックスマンⅡ世の血液には治癒能力があるということを知られてしまうだろう。
―――※※※
私がそれに気づいたのは、高校1年生の頃。
ついうっかり寝坊して、自転車を必死に(もちろん常人の範疇で)こいで学校に向かっていた時、十字路で塀が邪魔で注意していなかったところから走ってきた自動車と接触事故を起こしてしまったことがあった。
私は衝撃で派手に転がった。
もちろん傷一つなかったが、事故の規模から考えて傷一つないというのはどう考えてもおかしかった。
私は大ごとになる前に自転車を起こして学校に向かおうとしたが、事故の目撃者の男性が警察を呼んでしまったので逃げることができなくなった。
「怪我大丈夫? 」と言われ、咄嗟にウルトラ・スーパー・デラックスパワーで足をひっかき、裂傷を作ってみせた。
私は、この力に目覚めてから初めて傷を負った。
驚いたのはそこから。
傷ができたことで流れた血がコンクリートを伝い踏まれた蟻に触れた。
その瞬間、ぴくぴくとしていた蟻は回復し元気に動いて消えていった。
―――※※※
後で動物やクラスメイトで検証して見た結果、私の血には治癒能力があるということが分かった。句楽兼人は胃癌で吐血するまで、傷ひとつ負ったことがなかったのだという。だから本人も気づいていなかったのであろう。
私の血は一滴でも怪我を治し病を治し健康を促進する作用がある。
つまり私自身が万能薬であるということだ。
………放っておくわけがない。
気づかれたのなら私は一生縛られ、血を搾り取られることになるだろう。
後の可能性は捕獲されたうえで、私を使って次世代――Ⅲ世――となる子供を作ろうとする可能性だが、色っぽいことが起きる可能性は、それこそ皆無だろう。搾精器的な何かで機械的に絞られるだけだろう。残念ながら私にそっちの性癖はない。
そうした懸念から、私は私の能力を人前で使うことを禁じた。
それなりに優しい祖父母のもとで、中高大と地元の学校で学び、介護の資格を取って介護士になった。
介護士になったのは需要が増えていたのと、先輩が家の近所に特養が開かれるという情報を教えてくれたからだ。
がんの特効薬が作られたことで先進国の高齢化は大きな社会問題となり、介護士の需要が年々増加していた。ありていに言って、どこに行っても仕事に困らない職業と言えた。だから資格を取って介護士になった。
祖父が認知症を患ったのも決意の一因と言えるかもしれない。
ともあれ、私は私がウルトラ・スーパー・デラックスマンということを誰にも知られることなく、実家近くの特別養護老人ホームで介護職員として働くことになった。
業務はそこそこ大変だったがウルトラ・スーパー・デラックスマンである私にとってはどうということもない。
給料も、私一人が生きていくためなら足りないということはない。
シフトが入っていない休日は、レンタル店で借りた映画やドラマを見て、ネット小説を見たり、古本屋で買ったマンガを読んだりしていつも笑って過ごしていた。
毎日笑って、コーヒーも飲んで、がんにならないよう気を付けて生活し続け40年。
60代後半に差し掛かった現在、私こと句楽兼次は病床に臥せっている。
誰もいない家、誰もいない寝室で、生涯を終えようとしていた。
断定はできないが末期がん。
健康診断は簡単なものしか受けていなかった。精密検査などされては私がウルトラ・スーパー・デラックスマンであることがばれてしまうかもしれなかったからだ。
しかしそのためにガンも見つけることができなかった。
いや、見つけられていたらどうだというのだろうか。
きっとこれでよかったのだろう。
職場にはメールで退職届を送った。心配に思って自宅を訪れてくれるほどの信頼関係を持った職場仲間はいない。
きっとこのまま、私は一人命を終えるのだろう。
それが、少し寂しく、悲しく………。
しかし、うん。これでよかったのだ。『大いなる力には大いなる責任が伴う』と、昔借りた映画で言われていた。
これが私の果たすべき大いなる責任だったのだ。
私が亡くなったあと、遺体からウルトラ・スーパー・デラックス細胞が見つかったら、また数十年前の混乱が起きるかもしれない。
子孫を見つけようとしたり、発がん物質と抗がん剤を注射することになるかもしれない。
抗がん剤は、天然痘に対する牛痘のようなもので、痕が残ってしまう欠点があった。だから後年打つ人が減ったわけで。
後の世に悲劇をもたらすわけにはいかない。だから、私は60余年の生涯を童貞で過ごしたし、遠出もせず、海外どころか県外にすら一度も出なかった。男女問わず深いかかわりの人間を作らなかった。死んだ後で誤解を受けて迷惑をかけることがないように。
ああ、でもやっぱり、一人は寂しいな。
もっと自由に生きてみたかった。
ひとところにとどまるのではなく、海外にも行ってみたかった。
愛されたかった、愛したかった。
家族と、友達と、誰かと繋がっていたかった。
「次は、もっと 自由 に 」
句楽兼次
(ウルトラ・スーパー・デラックスマンⅡ世)
隔世遺伝。初代ウルトラ・スーパー・デラックスマン、句楽兼人の血と能力を受け継ぐ一般人。
好きなもの:醤油ラーメン
嫌いなもの:ふかしたナス
★7つのスーパーパワー★
・ウルトラ・スーパー・デラックス怪力
・ウルトラ・スーパー・デラックス飛行力
・ウルトラ・スーパー・デラックスX線眼
・ウルトラ・スーパー・デラックス耐久
・ウルトラ・スーパー・デラックス細胞
・ウルトラ・スーパー・デラックス治癒血液
・ウルトラ・スーパー・デラックス直感
超人的能力を持ちながら、私的公的利用を一切せず、ひた隠しにして生涯を終えた二代目。
(初代のやらかしのせいで、やらかそうにもやらかせなかったというのもある)
(やらかしていたら間違いなく社会とテクノロジーに殺されていた)
自覚なく自由と繋がりに飢えていたが、自制心で欲望を抑え込んでいた。
どこぞのマジンではないが、『神にも悪魔にも成れる』。善性にも悪性にも転びうる心根の持ち主。
そんな句楽兼次さんが異世界転生/転移してしまうというコンセプトです。
世界によって正義の味方になったり破壊神になったり~。
1話~3話ぐらいの短編集になるかなーと思っています。
活動報告で転生/転移する世界を活動報告で募集します。
↓活動報告
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=220317&uid=223131
転生/転移のタイミングや場所、句楽兼次さんの外見年齢などは指定されたらそれに沿うように、なかったら作者の方で自由に考えて書いてみようと思います。
それでは。