私はウルトラ・スーパー・デラックスマン   作:しゃしゃしゃ

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遅れまして…詳しくは活動報告。

 そんなわけでオール・フォー・ワンvsウルトラ・スーパー・デラックスマンです。
 どぞ。



No.×××『AFO対USD』

 オール・フォー・ワンと名乗った紳士についてホテルの外に行くと、そこには何とも豪華な車が待っていた。

 詳しくはないので車種とかはわからないが、長くて高そうな車だ。

 

「どうした、乗らないのかい? 」

 

 促され、車に乗り込む。

 私が先に、いや…、少年くんを抱えて一緒に乗り込む。

 

 ………すごいな。なんだこのフカフカ感。やばい沈む。

 

「そう警戒しないでくれよ。私は何もしない」

 

 ぎゅ、と少年くんが私の腕をつかむ力を強くする。………失敗だったのだろうか、連れてこない方がよかったのだろうか…いや、私は間違っていない。守ると決めた。助けると決めた。なら、助けられる距離に、守れる距離にいるべきだ。この底知れぬ力の持ち主から、この子を守るには“そばにいる”以外に方法が思いつかないのだから。

 

「…やれやれ、コレはもう諦めるしかないかな」

 

 小さく紳士がつぶやいた。

 疑問に思った瞬間だった。

 

「、」

 少年の私を掴む腕が落ちた。

 

「き、」

 ―――貴様ッ!

 認識が追い付く前に、私の体は動いていた。

 無理な体勢、無茶な集中。全く力の乗っていないパンチ。だがその拳には人一人くらい軽く粉砕する力がこもっていた。

 

(しまった…っ! )

 激情で、うっかり、意図せず、致死の一撃を放ったことに後悔するも、止められない。私は私の一撃を変えられない。

 スローに見える世界。

 ゆっくりと拳が、彼の顔めがけて進んでいく。

 

 ああ、だめだ。殺してしまう。

 

 

 

 

「あぶないなぁ。僕はただ彼を眠らせただけで、危害を加えたわけじゃない。落ち着きなよ」

 

 拳は、止まっていた。

 どういう原理かはわからないが、何か、そう“なにか”に阻まれて拳が彼にまで届いていなかった。

 よかった、と思うのと同時に、コレがこの男の「個性」なのか? と考える。

 

(ってそんなことはどうでもいい! )

 考えたのは一瞬。すぐに少年の状態を確認する。

 

 確かに眠っていた。眠っているだけのようだった。

 

「個性:スリープボイス。君には効かなかったようだけど。…さっきのパンチといい、君はやはり規格外だね」

 

 面白い、と言わんばかりに薄く笑う男。

 まったく、なんてざまだ。全然守れてないじゃないか…。

 ………落ち着け。冷静に状況を整理しろ。さっきのバリアみたいな力。それに今口にした個性。どう考えても同じ力には思えない。個性は一人一つのはず。応用して多彩なように見せることはできても、「眠らせる個性」と「攻撃を防ぐ個性」が同じものなはずはない。

 多重個性。生まれつき…いや、違う。確か本に書いてあった。

 ゴシップ的な都市伝説としてしか取り上げられていなかったが、そう――「個性を奪う個性」。

 そうか、そういうことか。

 

「オール・フォー・ワン…皆は一人のために、ですか」

 

「ああ、うん。その通り。すごいね、君は。常識に囚われていない」

 

「え? 」

 

「個性は一人一つずつ。個性は個性であって、個性を奪うなんてありえない。それが世間の常識だ」

 ―――君はやはり常識の外にいるようだね。

 そう言って車中の冷蔵庫から飲み物を取り出した。

 

 勧められたが丁重にお断りする。元々酒は苦手だし、何より今の私は肉体的にまだ未成年だ。

 

「それで、その、あなたはいったいどのような用があって私たちに接触したのですか? 」

 

 用、目的。普通に考えれば男の目的は私だろう。私の「個性」。正しくはそうではないが…、私のウルトラ・スーパー・デラックスマンとしての力をどこかで知って、奪おうとして私に接触したのだろう。

 

 いや、

(本当に狙いは私か? )

 

 そもそも私つい先日この世界に現れた異邦人だ。私のことをどうやって知った? テレビなどでも報道はされていなかった。SNS? そんな不確定な情報でこんなラスボスみたいな人間が動くものか?

 

(私でないとすると………)

 

 少年くん、だろうか。昨日今日一緒にいただけでも、少年くんの「壊す個性」は尋常じゃないと分かった。成長途上であるはずなのに強力すぎる個性。この子の力を奪おうというのなら―――。

 

「うん。用件は、ちょっとした確認と、質問をさせてもらおうと思ってね」

 

「確認…? 」

 

「ああ、それはもう済んだ。だから、そうだね…僕の“用”はもう君に対するいくつかの質問だけ、ということになるかな」

 

 わからない………。

 どういうことだ? いや、ともかくまずは返答しないと。

 

「………条件があります」

 

「聞こうか」

 

 受け入れられたことにちょっと驚きながら提示する条件に考えを巡らせる。

 

(受け入れられるかどうかは問題じゃない。この男は、この車もそうだけど、随分と“いいご身分”らしい)

 別に皮肉じゃない。僻みでもない。単純にこの男は相当な資金力や権力を保持しているのだな、ということだ。

 強大な力にそういうものはつきものだからな。裏社会を牛耳る影の支配者的なポジションにいるのかもしれない。

 それなら、

 

「私は訳あって、自分の戸籍も住居も持ち合わせてはいないのです。ですから、それを都合してはもらえないでしょうか」

 

「…それはまた随分な条件だね」

 

「あなたにとっては、そう難しいことではないのでは? 」

 

「確かにね…。まぁ、いいだろう。いいよ、わかった。君の条件を呑もう」

 

 まじでか。

 

「…なにをそんなびっくり仰天って顔を―――ああ、そうかもしかしてブラフだったのかい? だとしたらすまなかったね。『そう難しいことではない』から、つい了承してしまった」

 

 こいつ、子どもっぽいな。

 そう私は直感的に思った。まぁ、悪の帝王とかカリスマとかが案外幼かったり、夢見がちだったりするのはよくあることだしな。かの地獄大元帥も超おちゃめだったし。そもそも人格と能力が釣り合っていたら悪の道に進んでいないよな。うん。

 

「失礼しました。いや、ありがたいです。質問でしたか…どうぞ私に答えられることでしたら」

 

「うん。それじゃあ質問その一。

 君は何者かな? 」

 

「………」 

 

 

「君のことは調べたよ。だが、なにも出てこない。君が志村転孤と出会うまでの足跡がまるでたどれない。あたかも、君はこの世界に唐突に現れ出たようにね。

 さて、君は一体何者なのか。教えてくれないかな」

 

 

 

 

 

「異世界人です」

 

 

「へぇ…」

 

 ぴく、と男の眉が跳ねる。冗談を返されたと思って怒った? いや違う。彼は私の言葉を聞いて興味津々といった雰囲気を纏い始めたところだ。

 

 恐らく人の言葉を嘘か本当か知ることのできる個性でも使ったのだろう。それで私の言葉に嘘がないことに驚き、興味を引かれたといったところか。

 

「おもしろいねぇ。実におもしろい」

 

「漫画やアニメの見過ぎだとか言われると思ったんですがね」

 

「僕もそう思うよ。でもこの超人社会でそんな普通は通用しない。ありえないようなこともありえる世界だからね、僕らの世界は」

 

「はぁ」

 

「それにしても、さっきの話が本当なら、君はまるで主人公のようだね」

 

 言っていることは分かる。

 『異世界から現れて』『迷える少年に手を差し伸べ助けようとする』そんな私を主人公のようだと言っているのだろう。

 

「いいえ、違いますよ。私は主人公なんて器じゃない。ただの臆病者です。前世で何もなさず、今世で心の声に従ってはみたものの…結局この子に何もしてあげられていない………」

 

「詳しく聞かせてもらえないかな。僕も異世界の話なんて聞いたことがないからね。君が臆病者かどうかはそれを聞いてから判断しよう」

 

 

 

 そう促され私は話し始める。『発光する赤児が生まれていない世界』『句楽兼人/ウルトラ・スーパー・デラックスマンの世界』の話を。

 そして…迷ったのだが、『句楽兼次の世界』についても全て包み隠さず話した。

 

 ………話し終わって、なのだが、私は私を知ってもらいたかったのかもしれない。承認欲求というのだろうか。年寄りとして、自制できていた感情がうまく抑えられないでいる。私の中の“ぼく”が「自分は超強い力を持っていながら先代みたいに使わなかったんだ! すごいだろう! 」と言っているように思えた。

 

 

 

「なるほど、ねぇ」

 

 私の話を聞き終えた彼はなにか噛み締めるように瞳を閉じ天井を見上げ、

 

「なかなかどうして、面白い話だったよ。二代目くん」

 

 二代目くんと言った。少し喜んでしまっている自分がいることに驚く。

 

「それにしても世界を敵に回して、我を通して屈服させるとは、君の先代は無茶苦茶だね」

 

「まぁ、でも結局力と精神が釣り合っていなかったんですよ。彼の死に立ちあった同僚さんによれば、彼自身自分の力におびえていたといいますし。

 …まぁ、力におびえて何もしなかった私が言えた立場じゃないですけどね」

 

「いやいや、君は正しかったと思うよ。ふってわいた力に振り回されず抱え込み続ける。君は確かに臆病者かもしれないが、正しい人間であると僕は思うよ」

 

「いえ、そんな…」

 

 ふと、この自分を称賛した男、オール・フォー・ワンのことを考える。

 まぁ、この世界が漫画やアニメなら、この人は間違いなくラスボス的な立ち位置の悪党だろう。

 『正義の味方には、倒される悪が必要』……私も句楽兼人も、力を持った敵がいれば、大手を振ってヒーローとして戦えて―――

 

 ―――待て待て待て。馬鹿なことを考えるな。句楽兼次、お前はいくつだ。60過ぎの爺だろうが。英雄願望など、両親を亡くしたあの時に捨てているはずだろう?

 冷静になれ、冷静になれ。私は確かにこの子のヒーローになると決めた。だけどそれは正義の味方のような、大衆の味方ではなかったはずだ。ただ単に一人の少年を救う保護者として、そういうことだったはずだ。

 初心を思い出せ。

 惑わされるな。

 若さを捨てろ。

 

 

「…そうだなぁ。うん、うん。…やれやれ、まいったな」

 

「どうしました? 」

 

「いや、これはもう完全に参ったなと思ってね」

 

 笑いたいけど笑えない、愉快なのかそうでないのか本人にもわからないというような表情で話を聞き終えた男はそう言った。

 

「うん。君の話を聞かせてもらった代わりに、僕のしようとしていたことについて、話そうか」

 

 

 そうして彼は自身の計画(?)を話し始めた。

 

 

「つまり貴方、自分の弟のワン・フォー・オール? を受け継いだ何々某を絶望させる手段の一つとして、少ね…志村転孤くんを引き取ろうとしていたと…? 」

 

「ああ、まあ、そういうことだね」

 

 そりゃ、オール・フォー・ワンがあるのなら、ワン・フォー・オールもあるだろうとは思っていたけどさ…。

 この人えげつねぇよ…。計画通りだったら間違いなく折れるって。正義の志ポッキリだって…。もしもそれでも折れないなら、志強すぎるだろ…。

 

 

「すごいですね…なんていうか、面白い―――」

 

 違う違う。何を言ってるんだぼくは。いや、私は。面白いとかふざけるな。

 

 

「面白い、ね。うん、確かに成功していたら面白かっただろうね。場合によっては、志村転孤くんは僕の―――いや、未練だね」

 

 未練?

 

「言葉通りの意味さ。僕はその子から手を引く。勧誘も教育もしないよ」

 

「それは、幸いですが…どうして? 」

 

 なぜ? なぜこの子から手を引く?

 

「君、一度決めたことは貫き通す質だろう。僕はそういう奴を何度も見てきたから分かるんだ。君は絶対に志村転孤を離さない。そうだろう? 」

 

「それは……買い被りですよ…。私は」

 

 

「じゃあくれるのかい? 」

 

「あげません」

 

「だろう? 」

 

 あっ。

 

「そういうことだよ」

 

 参った…。そりゃ参るわ。

 自分はこんなに頑固な人間だったのか。先代の独善を笑えないな。

 

「君と戦って、その結果得られるのが光を見た少年では割に合わないしね」

 

 ?

 

「………志村転孤は、あのままなら深い絶望と闇の中をさまようことになるはずだった。でも君が来た。君が、志村転孤のヒーローになってしまった」

 

「ヒーロー…」

 

「まぁ、ヒーローとまではいかなくてもね。“手を差し伸べられた”という君の存在は彼に大きな影響を与えてしまった。

 記憶を閉じ込めても、感情は残る。だから、だめだ」

 

 

 

 

 

「『泥の樽にワインを一滴混ぜてもそれは泥のままだが、ワインの樽に泥を一滴混ぜるとそれは泥になる』

 僕にとって、君が志村転孤に与えた温もりは、僕にとっては泥の一滴。彼という未熟なワインは熟成を待つことなく飲めない代物へと変わった。だから、いらない」

 

 では、

 

「うん。僕はもう興味はない。面白い話を聞かせてくれたお礼に要求した戸籍等の生活に必要な者は用立ててあげよう。それでおしまいさ」

 

「ありがとうございます」

 

「いいよいいよ。ああ、まったくままならないものだね、人生っていうのは」

 

 走っていた車が静かに停まった。

 転孤くんを背負って車を降りると、目の前には普通の一軒家が立っていた。

 

「ここが君の家だ。僕の協力者が所有していることになっている家だから、僕個人とのつながりもない。手続きなんかは明日明後日にはすべてやっておく。それで…これは当面の生活費」

 

 ポンッ、と重たい札の束が手渡される。

 …60余年生きてきて、一度もお目にかかったこともないようなちょっとした大金だ。

 やべぇ。無駄遣いしないでいられる自信がねぇ…。

 

 

「じゃあね」

 

 あ、はい。

 えっと、えっと。

 

「お金ありがとうございました! 」

 

 その日の夜、あの一言はなかったな…と、ちょっぴり恥ずかしくなった私なのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――15年後。

 

 

「………」

 

 転孤に日課のモーニングコール。

 

『………』

 

「おはよう。朝だぞー」

 

『ジジイ、うるせぇ…』

 

 電話の向こうから起き抜けイラつきボイスが返ってくる。

 

「はいはい、起きた起きた。今日は講義早いんでしょ? 遅刻するぞー」

 

『うるせぇ………』

 

 ありゃりゃ。二度寝っぽい。まぁ一回起こしたしな。なんで起こしてくれなかったんだ! ってなりそうだな。

 

 

「今日の占いは………っと」

 

 テレビ番組の占いをメールで送信。

 

 

 あれから15年。当時は色々あったものの、家族になって、成長を見守って、気づけば転孤は大学生だ。一人暮らしでバイトもしてるし、立派に育ってくれた…。

 個性の破壊衝動についても、通院と調整された精神安定剤でほとんど影響のない程度に抑えられているし、なにより転孤は優しい子だ。問題ないさ。

 世間はオールマイトが雄英がと言っているけど、私の日常は変わらない。

 

 定期健診でも特に問題はないし、このまま、転孤の子どもの顔がみられるくらいまで生きられればそれだけで十分だ。

 

 さ、今日も一日頑張ろう!

 

 

 

END・・・?

 




 はい。こんな感じで。
 バトル(殴り合い)を期待していた人ごめんなさい。













 ちなみに15年後の句楽兼次さんの職業はデリヘル会社(異形型個性の女の子たち)の社長(転孤には内緒)&介護士です。

 why…? なぜ…?
→ヒント①「売春は違法」、ヒント②「デリヘルは適法」、ヒント③「不器用」

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