私はウルトラ・スーパー・デラックスマン   作:しゃしゃしゃ

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 Twitterで「空気を読みすぎてたいへんなことになった女子高生のお話」読んで書きたいと思ったので書いてみました。
 原作へのリンクは後書きに。
 地の文にオリジナリティを出してみました。
(今世の句楽兼次は“転生:アラサー”です)


【プリンセスに転生したけどあまりに向いていないのでひきこもります】←打ち切り
「最強爺の人生相談・上


 ~~~♪

 

 ~♪ ~~♪

 

 ――97.36点

 

「いえーい」

「やっぱさーちゃんうまいなー」

「次 あたしー」

 

 

 どこにでもいそうな3人の女子高生。

 カラオケ店を後にして、階段降りて外に出る。

 

「あー、歌った歌った」

「おなかすいたね」

「あ、じゃあさ、パンケーキ行こうよ。

 ほら、前から言ってた」

「いいねー、そうしよ」

 

 3人が店外に出てすぐ、

「あっ! あの、大滝さん! 」

 

「あー…隣のクラスの松木くん。どうしたの? 」 

 

 声をかけてきたのは3人とは別のクラスの男子だった。

 彼の隣には自転車。どうやらカラオケ店に入った彼女たちを店の外で待ち伏せていたようだ。………どうやって待ち伏せていたのだろう。ストーキング?

 汗だくなその様子からは、本当に長時間出待ちをしていた風で気持ちが悪い。

 

「は、話があるんだけど、ちょっといい? 」

 落ち着きのない様子で、話があると言う松木。

 そう聞いて大滝さらは困った。

 

(このあとパンケーキなんだけどな…。

 でも…、うーん…)

 急に突然断りもなく話があると言われても困る。自分には次の予定があるというのに…。さらは迷ったが、とりあえず聞いてみることにした。

 

「うん。何? 」

「きゃー! これはまさか!」

「あれだよあれ!! 」

 すわ告白かと色めき立つ雪緑の二人。すっかり感染出歯亀ムード。

 

「わっ、汗だくじゃん。もしかしてずっと待ってた? 」

 ここでさらが松木の様子に気づく。

「! 」

 気づかれた! と松木が首元を隠し、こくこくと首を縦に振る。

「えーうそー! 」

「健気~~~!! 」

 きゃっきゃきゃっきゃする雪ちゃん緑ちゃん。

 一方張本人のさらは、

(ん? 健気っていうか―――)

 

 さらが何を思ったのかはさておき、松木は暗い路地裏に進み、さらも仕方なく彼の後を追う。

 少しして、松木は振り返り、

「俺と! つ、付き合ってください! 」

「えっ」

 と突然に告白をした。

 

(…あーーー)

 さらがそれを受けて考える。

 何を考えたのかはともかく、

 

「私なんかでよければ」

 と、さらは告白を受けた。OKした彼女の笑顔はただ口角を上げただけの、心からの笑みではまったくもってなかったが、それに気づくものは誰もいなかった。

 

 そうして大滝さらに6人目の彼氏ができた。

 

 

「―――じゃ、私ら帰るね」

「あとはお二人でどうぞ~」

 ひとしきり祝福とからかいを終えた友人たちはそんなことを言い出した。

「え」

 彼女たちがいなくなればさらは松木と二人きり。

 パンケーキ。

 

「パンケーキ食べようって言ってたじゃん」

「どうでもいいんだよ、そんなのは! 」

「松木くんと帰りなさいっ」

 

「「じゃあな! 」」

 

「そんなぁ…」

 二人は足早に去って行ってしまった。

(私のせいでパンケーキ延期になっちゃった…)

 さらの憂いはニュー彼には伝わらず、彼女ができたうれしさで脳みそお花畑の松木はまるで気づかない。

 

(また埋め合わせしなきゃ…)

 無理やりな笑みを彼に送った。

 

 

 

 

 友達も帰ったし、帰ろうかと思ったさら。松木が自転車引いて付いてきました。二人並列歩行。彼が車道側を歩いているのは彼氏としての気遣いだろうか。そういうのはさっき発揮してほしかったところである。

 

 

「このあと約束あった? 」

「あ、うんいいよ。ごめんね」

「俺こそごめん」

 やぶへび。

 松木はなぜか照れた様子でさらの体に右手を伸ばします。

 おいばかやめろ。セクハラだぞ。

 

 そ~~…――ガタッ!

「わっ 大丈夫? 」

 不健全を許さない神の罰か、松木セクハラ事案は片手運転で不安定になった自転車が倒れそうになることで防がれた。

「やっぱり重いんじゃない? 私持つよ? 」

 さらはかごに入れた自分のリュックが重くてバランスを崩したのではと思い自分で持つと言ってみた。

「へ、へいきだし」

 松木はばれなかった安心と触れなかった不満でそれを拒んだ。

 

 

「そうだ」

 唐突に松木が言った。

「後ろ空いてるし、たまたまだけど、

 の、乗ってく…? 」

 

 きもい。

 

「あ…ありがとう…。

 でも、もう、駅 着いちゃったし…」

 

 さら当然ながらこれを拒否。

 しゅんとする松木。お前まじか。

 

「(あっ…)今度、お願いしてもいい? 」

 気遣いの女、さら。

 彼女の気遣いに気づかず、ぱぁ とうれしそうな表情になる松木。

「もちろん!! 」

 駅で大声を出すな。

 

 ほっとした、乗り切った表情でさらは、

「じゃあ……」

 別れを、

 

「あ、」

 別れ、

「ま、また明日な!

 サ! サラ…ッ! 」

 

 名前呼び。

 それに一瞬顔を曇らせるものの、すぐに笑顔を取り繕って、

「うん、バイバイ。松木くん」

 と言った。

 

 

 

 

 帰宅したさら。そとはすっかり星が出て真っ暗。

「ただいま」

 リビングでは雑に食い散らかされた食卓。

「あ、サラ」

 残っていた母親が答える。

「今みんな食べ終わったところだから。

 最後片付けておいて。母さんもう寝るわ」

「はー…い」

 返事も聞かず、顔も見ず、母は席を立って行った。

 

 食器の跡片付け、皿洗いをするさら。

≪かわい~~~≫

≪ウケる≫

 女子グループのラインに貼られる本当なら自分も行くはずだったパンケーキの店の写真。雪緑はあの後さらを除いた二人でパンケーキを食べに行ったようだ。

 

「パンケーキ行ったのかよ! ずるい! 」

 皿を洗いながらキレるさら。

 

≪今日はありがとう! ≫

≪マジで嬉しい!! ≫

≪これからよろしく!!≫

 

(松木くんからもめっちゃきてる…返さなきゃ)

 そんな憤りはつゆ知らず、能天気メッセージを送ってくる彼氏()。

 

 

 

 

 

 

 

 キーン コーンカーンコーン。

 キーンコーン カーンコーン。

 

「今日は雪ちゃん緑ちゃんと帰っていい?

 パンケーキ前から約束してたのに行けなかったし」

 さらは松木に“今日は友達と過ごしたいからあんたとは帰れないの”と暗に告げた。

 

「いいよ気ィ使わなくて」

「もう二人で行ったし」

「おい」

 そんなさらの内心を見抜けず後ろから援護射撃と見せかけた誤射をする雪緑。

 

 一方、友達と帰っていいかと聞かれた松木はというと、

「! 」

 ショックを受けたようで、

「さびしい。

 けど楽しんで来いよ」

 とバカみたいな台詞を吐いた。

 

「ほらぁー」

「ねー。いいよいいよ」

「えー、でも。うーん……」

「いやいや」

 

 いやいやいや の押し合いへし合い。

 譲り合いのようで主張しあっている、日本人によくみられる行動。

 

(“さびしい”ってなにが? ほらぁーってなんで? )

 さらの心はもやもやでいっぱい。

 なんで「彼氏がいるんだから、彼氏と一緒にいることが普通」みたいな反応をされることに悶々。

 

 

 結局二人とパンケーキ。

 おいしいはおいしいし、きれいはきれいだけど、心から楽しめないさら。

松木くん(カレシ)と一緒に帰らないだけで、

 なんで皆でこんなに気を遣うんだろう)

 ちょっと前の気まずさと面倒な応酬を思い出してうんざり。

(やっぱり、毎日一緒に帰ったほうがいいのかな………)

 

 

 そして帰ってきても うんざり からは逃げられない。

 ピコン!

≪パンケーキどうだった? ≫

 ピコンとライン。

 家事に宿題にと疲れたさらに追い打ちのように。

 ピコン!

(宿題の続き…その前に松木くんに返信)

 

 ピコン! ピコン!

 

≪おーい≫

 

≪生きてる?≫

 

≪w≫

 

<ごめん、パンケーキおいしかったよ!>

<焼きバナナめっちゃおいしかった>

<また行きたい>

 

(すぐ返さないと、ずっと送ってくるからな………)

 はぁ…。

 

 

 

 

 

 ある日、教室移動中。

 

「最近ずっと松木くんと帰ってるね」

 いいなー、と。

「私も夏休みまでには…!! 」

 ぐっ! と。

 

 二人に対してさらは、

「あはは…」

 と苦笑い。

 暗い感情をぐっと我慢、溜め溜め。

 

 

「前の彼みたいにならないといいね」

「う………」

 その言葉にぎゅっと抱えたノートに力を入れるさら。

 

「あー、前の彼ともトラブってなかったっけ」

 ほらー、

「貢ぐぐんになってった彼」

「え、マザコンになった彼じゃなくて? 」

 

「どっちもいたけど!! いいじゃん、向こうがもう無理って離れていったし! 」

 ハイハイ話終わりーと勢いで話題をそらそうとするさら。

「さーちゃんの元カレ全員めんどくさいのウケるな」

「最初は普通だったんだよ…」

「まー、松木くん優しいし大丈夫でしょ」

「ん…」

 

 噂をすれば、正面から松木くん。

 さらは捕まり、薄情雪緑は手を振って先に行ってしまった。

 

 

 

 

 

 きん こんかんこーん。

 きんこん かんこーん。

 

 

 

 

「さーちゃん」

「今日からお昼、あたしらだけで食べるから」

「そろそろ松木くんと食べなよ」

「ね」

 

 良かれと思って雪緑。

 “は? ”さら。

 お花畑カレシ。

 

 どんどん遠ざかる友達。

 心と反比例する彼氏との距離。

 

 

 

 

 

 わざわざ隣のクラスから昼食をご一緒しに来る松木少年。

 脳みそぽわぽわ彼氏は唐突に聞いてきた。

「サラ、日曜ヒマ? 」

「あー………、予定はない…けど」

「じゃあさ! 花火いこ! 花火! 」

 テンション高めに誘う松木。

 誘われたさらは、当然乗り気じゃない。

「…ごめん。土曜日に試合あってさ。

 ……その、日曜は、休みたいかな、って」

 

「だから何もしないんでしょ? じゃあいいじゃん! 」

「そう、だけど………」

 休むって言ってんじゃん。そんな声を胸に抑えて、

 

「テストとか部活で忙しかったじゃん!

 お願い! 一生のお願いっ!」

 

 ………もぐもぐ。

(こんなことに一生のお願い使うんだ…)

 …ごくんっ。

(じゃなかった、花火大会。試合翌日は休んでいたいけど、用事はないし…私が「うん」って言えば喜んでくれるよね。うん)

 

「うん。いいね、楽しそう」

 にへら、とあきらめの入った笑みで言葉少なに返事をするさら。

 誰が見ても喜んで受けたわけではないとわかる笑み。

 しかし彼氏は気づかない。

 

「あ! あとは! 」

(まだあるの? )

 OKをもらったうえで松木はさらに要求をしてきた。

 

「サラの浴衣姿も~見れたらな~って…」

 ちらっちらっ

「え」

 ぽかん さら。

 

 

「や! 無理にとは、言わないけど! 」

 ガタン と立ち上がり顔を近づける松木。

「あぁ、うん」

 引き気味さら。

「でも夏だし! 」

 

「あ! 浴衣ないんだったら買ってあげよっか? 」

 早口でまくしたてる松木。お前浴衣の値段知ってて言ってんのか。安いのならそりゃ買えるだろうが お前。

「なにもそこまで…」

 引いている さら。

 

「俺! サラのために何でもしてあげたいんだ! 「あ! でも無理にとは言わないよ!「浴衣って切るの大変だもんね!「でもそのぶん特別だと思うんだ!「俺も着るし!「どうしてもっていうなら無理には…!

 

「でもでもでもでもでもでもでも 

 ぜっっっっっったいかわいいから!! 」

 

「………………………………………」

 

 ………うーわっ。

 

 

「うん。いいねー」

 

 アルカニックスマイルさら

(アルカニックスマイル:無表情にもかかわらず口元に笑みをたたえたような表情のこと)

 

 

 

 

「ただいま……………」

「……………」

 

 弟との会話もなく、まずい夕食にうんざりさら。

 

「母さーん。浴衣ってどこしまった? 」

「えー、知らないわよ。自分で探せば? 」

 ………。

「着付けも自分でできるでしょ。

 それより母さん朝早いの。もういい?

 いいわね。おやすみ」

「………」

 

 

 

 

 ピコン! ピコンッ!

 

≪浴衣レンタルプラン料金表≫

(浴衣は高いし)

 ピコン!

 ピコン!

 ピコン!ピコン! ピコ!ピコ!ピコン!

 

(……通知はうるさいし)

 ピコン!ピコン!ピコン!ピコン!ピコン!ピコン!ピコン!

(デートって大変だ…)

 ピコン!

 ピコン!

 ピコン!

 

 

 

  ピコン!

≪前も行ったけど やっぱ

≪ヨリ戻さね? 忘れられない≫

「うわっ! 」

 元カレからのメッセージ。

(なんて返したらいいんだ…?

 ってか振ったのそっちじゃん)

 

 

 

(「付き合って」って言ってくる人がいるから)

(周りもみんな恋愛の話ばかりしているから)

(だから私も恋愛しなきゃいけないんだけど)

「???」

「………………………」

「あ~~~~~~~~~~~~~」

 

 

 

(こういう時、お姫様なら、

 生まれた時からみんなに愛されて、

 みんなを愛してて、

 すてきな恋をしていつまでも幸せに暮らすのに)

「…」

 

(なんで私は、うまくできないんだろう………)

 

 

 

 キュッキュ キュッキュ バシーンバシーン

 

「でさー、昨日雪ちゃんがカラオケでー」

「おおお、やめろおお」

「え? 行ったの? いいなー」

 

「ラブラブだもんねー」

「誘えないよー」

 

「………」

 

 

 

 

 

 ぴーひょろぴーひょろぴーひょろろ

 ぴーひょろぴーひょろぴーひょろろ

 とんちんしゃんしゃん

 とんちんしゃんしゃん

 

 

「か「か「かわいい!! 」

 

「一生の宝物だ」

 

「そっか………

 松木くんも、それかっこいい」

 アルカニックスマイルさら。

 

 それを受けて ぱぁぁあ 松木。気づけ。

 

「(今日めちゃくちゃ元気だな)どこ行く? あっちに人がいっぱい―――」

 

 あ、

 

 

―――ぐぅわしっ!

「こっち、あ、穴場あるんだ」

 どもり指さす松木クン。左手右手つかんで離さず。

 

「へ、へー…」

 ドン引きさら。

 

―――ぎゅうううううっ!

 

(握力つよ…)

 気づかぬ松木。気づいて。

 

 

「あっ」

 さら、雪緑発見。

「おーい。雪ちゃん緑ちゃん」

 

 ―――スッ。

 

(あれ…。聞こえなかったかな)

(そういえば最近3人でカラオケ行ってないな。

 そもそも全然話せてないし…部活でだって……)

 

 暗がりへ、二人。

 

(今日だって、普段着で二人と来たほうが楽しかったんじゃ…)

 

「………」

 さすがに彼女の様子に気づいた彼氏。

「りんごあめ食べる? 」

 違うそうじゃない。

「なんで? 松木くん食べなよ」

 

 ぼんやりさら。

 おろおろ不満松木。

 

 

 

 花火。

 夜空を彩る大輪の花。

 

 人気のない斜面で、

 

「わー、きれいだねー」

 久しぶりの笑顔。

 

 意を決したような松木。おいばかやめろ。

 

 近づく距離。

 寸前、さら気づく。

「の! 」

 ぎりぎりで気づき立ち上がるさら。

「のど、渇かない…? 」

 ぎりぎりセーフ。セクハラ回避。

 

「―――ジュース買ってくる」

 

 無色の顔で佇む松木。背を向け駆け出すさら。

 心の距離は広がるばかり。

 

 

 

 

 

(苦しい帯締めて)

 

(鼻緒のずれの痛みに耐えて)

 

(眩暈がするほど暑い中)

 

(私は一体)

 

 

 

(私は一体何をしているんだろう? )

 

 

 

 

 

 

 

 

 花火大会は終わり。人の群れを抜けて、駅に到着。

 

「じゃあ…」

 もう疲れた、と言わずともわかるさら。

「サラ! 今日はごめん! 」

 頭を下げる松木。

 

「サラの心の準備ができるまでずっと待つから。

 仲直りしてくれる? 」

 

 おま…おまえまじか。

 

「うん。私もごめん」

 

 目も合わせないさら。

 その場は仲直り…ということになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし………

 

(ラインがとめどない…)

 松木はメッセージを大量に送ってきた。いつでもどこでもどんな時でもどんなことでもひっきりなし。

 

(さすがに大変になってきたし、相談してみよう)

(雪ちゃんと緑ちゃんならわかってくれるよね)

 部室のドアノブに手をかける直前、

 

「さーちゃん ちょーいみわかんなくない? 」

 

「彼氏できてもモメてすぐ別れんじゃん」

 

「モテるってよりおんなじことなんかいするんだよっていうね」

 

「5回連続はウケるわー」

 

「あれでいてさーちゃん自己中だからなー」

 

 

 

 そんな二人の声が聞こえてきた。

 

 

(あれ? )

 

(なにそれ )

 

(なんでそんなこというの)

 

(だって私、ずっとみんなに合わせて、合わせて…)

 

「松木くんも付き合ってからそっけなくなってたって言ってたしー」

「かわいそ~」

 

 ………。

 

 

 とぼとぼ歩くさら。

 俯いていたためぶつかってしまう。

「すみま―――あ、松木くん」

 

「おは――前髪3ミリ切った? かわい」

 ヒッ

 さらの髪に触れる松木。ひえええ。

 

「……………おはよ」

 

 不満そうな顔になる松木。さらの意気消沈っぷりには1ミリも気づかない。

 

 

「あ、さーちゃん松木くんおはよー」

「おはよー」

 

 まさか聞かれたとは思っていない、いつもと変わらない二人。

 

「おはよ…」

 

 

 

(雪ちゃんと緑ちゃんは、なんで私なんかと仲良くしてくれるんだろう)

(松木くんは、なんで私なんかを好きになったりしたんだろう)

 

 

(松木くんと一緒にいたら、何かわかるのかな)

 

 

 恋人つなぎで下校中。

 さらの中に何かが芽生えかけた瞬間だった。

 

「サラ、最近元気ない? 」

 最近じゃねぇよ。もとからだよ。

「え…」

「話してても上の空だしあんまり笑ってくれなくなったし」

 ………。

「だから」

 ―――ガシャン!

 

「だから、特別なものをあげようと思って、一生懸命探して買ったんだ「 指輪 「ペアの」

 

 勝手に盛り上がってさらの手をつかみ、無理やり指輪をはめる松木。

 

「ホラ、だからこれでさ、笑ってよ サラ」

 

「っ! 」

 心底おびえた表情で振りほどくさら。

 

「ま、松木くん? どうしたの?

 ねぇ、松木く―――」

 

「サラはさあ!! 」

 

 急に声を荒げる少年。

 

「いつになったら俺のこと名前で呼んでくれるの? 」

 

「もしかして気づいてない?

「そっちからデート誘ってくれたことも、

「手をつないだことも、

「ラインくれたことも

「一度だってないんだよ」

 

 

 

「俺、サラのこと大っ好きで………

「一番大切で……………

「初めてできた彼女だったからさ

 

 

 

「だから

 

 

 

 

 

「だから

「毎日毎日毎日毎日

「サラが何したら喜んでくれるかなって

「いろいろ考えて

「もっとかまってほしかったけど

「ずっとずっとずっとずっと

 ずっとずっとずっとずっと

「毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日

「サラが嫌だって思うことは我慢しようって

「だって大事だから

「本当は寂しかったけど

「耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて

耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて

 

 

 

「サラは! 」

 

 

「俺のこと好き? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………っ

 ……………」

 

 

(そうか 私)

 

「松木くんのこと…嫌いじゃ、なかったけど」

 

 

 

 さらの瞳から涙がこぼれる。

 さらの指から 無理やりはめられたサイズの合ってない指輪が抜け落ち、階段を転がっていく。

 

 

「―――好きでもない」

 

 

 

 

「は」

 

 

 

「な   んだよ  それ」

 

 

 呆けた面からすぐに怒りに表情を変化させた男はさらの肩を強くつかみ、くってかかった。

 

「ふざけんな! なんでだよ! 」

 

「同情で付き合ってたのか! 馬鹿にしてたのか! 俺はずっとずっと本気だったのに! 」

 

 

「俺は! こんなに! 尽くしたのに! 「私だって!」」

 

 怒り狂い喚き散らす松木。尽くす自分への自己陶酔から愛ではなく恋で、見返りを欲した思いを抱いた男に対し、さらは初めて心のままに言葉を発する。

 

「私だって、私だって、合わせようとした…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「告白なんて! 何時間も待ち伏せして友達の目の前でするなんて! 」

 

 

「私も周りも何にも考えてなかったよね! 」

 

 

「試合で疲れてたけど花火も行ったし!

 苦しかったけど浴衣も着た! 」

 

 

「5分おきのラインにだって返事したし!

 付きまとってきても断らなかった! 」

 

「全部、全部 松木くんがしてっていったから! 」

 

 

「なんで私にそこまでするの?

 なんでそんなことが言えるの?

 わかんない」

 

 

「ねぇ」

 

 

 震えて、泣いて、縋って、

 

 

 

 

「好きって なに? 」

 

 

 

 

 

 

 

「――触んな」

 

 

 振り払われた手。

 

 

 

「お前、人のことなんだと思ってんの」

 

 

 失笑物の言葉を最後に、振り払われ押された勢いのまま さらは足を踏み外し、

 指輪と同じにコロンコロン。

 

 

 

(あれ? )

 どっ

(なにこれ)

  がっ

(私、私死ぬの? )

   ぐちゃ

(こんな、こんなことで? )

     どしゃ

(ほんと、意味わかんない)

       ごきん

 

 

……………………………ばしゃ

 

ドゴン!

ぐちゃ…

 とっ

   とっ

     とっ

       とっ

         とっ

           とっ

 

           すっ

 

           ふわり

 

 

 

 

―☆★☆―

 

 

 

 

 

 

「………ん。

 ……え? なにここ」

 

「階段から落ちて死ぬなんてかわいそ~~~!

 手足ずるずるだけどもう大丈夫だよ! ここは魂だけの死後の世界だから!! 」

 

 

(なんだこれ……………しゃべる、なに、こいつ)

 

「(やばい。やばいやばい)あー……あはは」

「大丈夫です! 」

 

「わっ、どこ行くの? 」

 

 

(やばいやばい)

(死後の世界ってなに? )

(何もなくてずっと暗い)

(やだ)

(怖い)

 

 

 

 

「またそうやって、笑ってごまかして逃げるんだねぇ」

「ここには私と君しかいないから意味ないんだけど」

「ね。大滝サラちゃん」

 

「今までずぅっと辛かったねぇ。誰にも言えなくて、わからないことすらわからなかったんだ」

 

 

 

 

 

「私は神! 」

 

「あわな君に。救済のチャンスを与えよう! 」

 

 

「転生するんだ! お姫様に」

 

 

 

 

 

―☆★☆―

 

 

 

「さって、と………傷は治ったけど…」

 

 男は少女の血まみれ姿を見て目を細めうなり声をあげる。

 

「んー………きれいにしたりとか…、したほうがいいのかねぇ? 」

 

 セクハラかなぁ、でも起き抜けで血まみれとか最悪だよなぁ。

 

 

 

 悩む男性。

 彼こそは、句楽兼次。

 またの名を、ウルトラ・スーパー・デラックスマン。

 

 

 

 




 webサイコミ(第1話~第5話+α)。↓
https://cycomi.com/fw/cycomibrowser/chapter/title/128

 読めばなんとなく分かったでしょうけど作者的にはサラちゃん擁護です。彼氏くんも神も転生後の王子たちも「くそどもが」と思っています。

 普通に怖いし気持ち悪いよ。サラちゃんが告白断らなかったのが~とか、もっとはっきり~とかあったけど、無理だって。No!って言えたら苦労しないわ! な感じ。
 自分も流され対人壁づくり人間だから、めっちゃ共感しちゃって、男どもが超絶気持ち悪く感じましたわ。
 あなたはどうでしたか?


 最後にちょろっと出てきただけの主人公。次は句楽兼次主体でお送りします。

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