女リゾットにベロベロにされる話   作:パッパパスタ

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 ジョジョのアニメが面白すぎたので再投稿。
 



 
 
 


プロローグ

 最初に彼と会話をしたのは自分から。確かそうだったような記憶がある。

 

 

  『あー、すまない。君の隣、座ってもいいかい?』

  『ああ、かまわない』

 

 こちらの方へ越してきたばかりであまり周りの雰囲気に馴染めずにいた当時の自分は、そろそろ固定の友達を作らなければという焦りに駆られ、思い切って自分と同じくあまり人付き合いが得意じゃなさそうな人物に話しかけた。

 もしかしたら断られるかもしれない。

 そんなちょっとした、ほんの少しの不安が心の中に存在していたが、そんな事を思っていた自分なんてそっちのけで彼は快く受け入れてくれた。

 

 彼が隣の空席、つまりこれから自分が座ることになる席に置かれていた教科書をどけようとしたその時に彼の腕から一冊のノートがこぼれ落ちた。瞬間、表紙の隅に書かれていた文字が目に入った。

 

  『その───リゾットって名前は“riso”のリゾットか?』

 『ああ、“riso ottimo”。risottoだ』

 

 唯一無二の親友との出会いは当事者同士が会った瞬間にすぐに分かると言う人もいるが、彼との出会いはこんなふうで別段特出して他と異なっていたことはなかった。

 他人からすればそれも特別な出会いといえばそうなんだろうが。偶然にも彼とは名前が一緒、いや一緒というのは少し誇張した言い方かもしれない。

 『risottoのrだけ』そう、正確には頭文字だけというのが正しい答えだ。

 

 シチリアの小さな小さな街で住んでいた俺達は、知り合って同じ町に住んでいたということを知りやいなや、近所に同年代の友人がそこまでいなかったということや性別も一緒だったことからすぐさま意気投合した。思い返せば、彼とともに自分は青春のすべてをともに過ごしたといっても過言じゃないだろう。

 

 『オーケー、準備万端だ!』

 『急げ───。 早く乗れ!』

 『───このクソガキどもが.....。テメェら待ちやがれッ───!』

 

 時には街唯一の『悪友』として。

 まだ酒が飲める年齢にすらなっていないのにもかかわらずバーから小瓶を盗み出して飲みまくったこともあったし、二人して図体がでかいことだけが取り柄の威張り散らしてる野郎に「礼儀」ってものを分からせたこともあったし、中古屋からボロい車をかっぱらって海の先の方まで乗り回した思い出もある。   

 

 今思えばブタ箱行きラインぎりぎりだったが、最後には少なくとも自分と彼は心を心に通じ合うことのできる『刎頸の友』と言える程の間柄だったはずだ。

 

 だがそれは最早何年も前の話であり、いまもなお数年に一度未だに頭に浮かぶものの、その記憶は意識が朦朧とした朝のおぼつかない頭の中からは浮かんでもすぐに消えてしまう。

 

 願わくば、今はもう顔すらも曖昧になってしまった彼が幸せに暮してますように───。

 

 しばらく時が過ぎると、その祈る行為すらも頭の片隅へと掻き消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 「──ッと。すまない」

 

 

 生まれ故郷───、雲一つない快晴が続くあの小さい島「シチリア」の事を思いながら、頭上のオーバーヘッド・ビンへ荷物を入れ、前々から予約をしていた座席に腰掛ける。

 

 わざわざ慣れ親しんだ故郷を離れてまで移り住んだ島国「日本」から唯一イタリアへ直行便がでているこのアリテリア航空。当日に空港へ行ってみなければ飛行機があるかどうかわからないとまで言われるほど存続が危ぶまれていた経営は、どうにか自分がイタリアに行くまでは大丈夫だったようだ。

 

 もしかすると乗れないかもしれないというハラハラと興奮していた気持ちを抑え、これから数時間はこの閉鎖空間にいることを憂鬱に思いながら、後ろの席の人物に声を掛け少し背もたれを傾けると、唐突にふともも辺りに振動を感じた。

 

 違和感を覚えた場所に手を伸ばすと、それはサイフ───いやスマートフォンであった。

 

 確か仕事関係の人間には数週間休暇を取ると連絡を送ったはずだ。それを除くと母親か、自分が八歳のときに蒸発した父親しかいないわけで。

 まぁ、歳も気にせず四六時中学ランの『あの人』ならたとえ休暇中ですと伝えても構わず連絡してきそうだと、喉奥から湧き出る溜め息を飲み込みスリープ状態のスマホのホームボタンを押す。

 

 「うわ───」

 

 思わず。

 自分の予想通りに、そこには『メールメッセージ』という通知が1つ。

 その下にある『スライドで読む』という通知に一瞬眉を寄せるも、メールメッセージの上の差出人の、頭の引き出しの奥底に仕舞われていた記憶の中から飛び出した懐かしい名前を見て目を見開いた。

 

 先程の落胆した気持ちとは打って変わって高ぶる気持ちを抑えメールを開く。

 そこには自らの帰郷を喜ぶメールの差出人の気持ちと、自分が日本へ行っていた数年間で変わったシチリアを案内したいという旨が書かれてあった。

 

 何年も会っていないどころか、連絡すら取っていなかった自分のことを覚えていてくれたことに感動を覚えるとともに、『何故自らが帰郷することを知っているのか』という疑問が湧いた。

 

 が、しかしその疑問が湧いたのもつかの間。それは差出人の彼が今も変わらずにあの街に住んでいて、母から自分が帰ることを聞いていたのだろうということで解決した。

 

 日本に何年もいたせいなのか、この数年で自分はひょんなことでも疑ってしまう「癖」というものがついてしまったようで、メールから感じ取れた旧知の彼と変わってしまった自分に思わず涙が出てしまいそうになるも、そこはグッとこらえる。

 

 彼のメールを読んでいる最中に先程の落胆した気持ちを生み出した張本人のいい歳した学ラン野郎から通知が来たものの、すぐにその人物からの通知を『オフ』にし、咄嗟にこれからの帰郷のことを考え、嫌なことを頭から振り払う。

 

 まるで記憶を上書きするようにメールにもう一度視線を向けると、メールの一番下のところへなにか画像、というよりもメモのようなものが添付されてあるのを見つけた。

 

 2つの『R』という文字が鏡合わせのように並び、その2つの『R』の上の輪っかを通すように逆三角形が書いてある記号。

 

 一瞬理解が追いつかずに、何か暗号のように自分に伝えたいことがあるのかと思ったが、その考えもすぐに消えた。

 

 とはいったものの、これが暗号であるというのもあながち間違いというわけではない。正しく言うのならば、これは『名前』の暗号である。

 

 自らの名前『リナルド』の頭文字『R』と、手紙の差出人の頭文字『R』を組み合わせて作った一種の名前遊びのようなものである。今考えれば小っ恥ずかしい気もするが、当時「007」などに憧れていた自分達にはそれだけでも感動する純粋な心を持っていたのだろう。

 

 スマホに映し出されたその記号を上から人差し指でなぞると、彼と過ごした青年時代の記憶がまるで昨日の出来事のように鮮明に脳裏に浮かんだ。

 二人で秘密基地をつくり、未成年のくせに酒場から酒をくすねて挙げ句の果てに酔いつぶれてケンカをして、親の車を無断で乗り回して隣町まで行ったこともあった。

 

 思い出せばあまり良い事をした記憶がないが、悪い記憶も今思えば一つの良い思い出だろう。

 感慨深い気持ちで窓を見ると、ちょうど飛行機は雲を抜け、小窓から差し込んできた夕日とあのときの思い出が重なり、薄れががっていた記憶の中の彼の顔が浮かんだ。

 

 「こんな気分は───久しぶりだ」

 

 ランダム再生の設定をしてある耳につけたイヤホンからは、見計らったかのように「Don't you」が流れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 「───珍しいな、あんたが考え事をするなんて」

 

 そう言われて、初めて自分が気を抜いていた事に気がついた。

 久々に舞い込んできたボス直々の大仕事を終え、束の間の休息というものを得た自分はいつものようにいきつけのBARで羽を休めていた。

 

 「もしかしてソルベと、ジェラー───」

 「二人の事は忘れろと言ったはずだぞ、イルーゾォ」

 

 語気を強め、すでに酒をたらふく飲んでいるのだろうか、いつもとは少し軽い感じの印象を受ける部下の「イルーゾォ」へ目線をやった。

 まるで今思い出したというように、苦虫を噛み潰したように舌打ちをするイルーゾォは、その苦さを上から塗り直すために再び透明なグラスに入っている酒を飲み干した。

 

 「だが、あんたの耳にも入っているはずだ」

 「─────。」

 

 一体誰が、いつこの情報を掴んだのか分からない。

 だがある時一つの確かな情報が数週間前自らが所属する組織を駆け巡り、その組織の中で最も戦闘に適していると言われる俺達暗殺チームのもとにもひとりの人物「カンノーロ・ムーロロ」と呼ばれる男を通して情報が伝わってきた。

 

『あのボスに娘がいた』

 

 一見すればただの家族がいるという事実が分かったという話に過ぎない。だがそれは自らも所属するこの組織『パッショーネ』の“ボス”となると話は変わる。

 

 かつてのイタリアにいた義賊から始まったとされ、今やヨーロッパ全土をも手中に収めているといってもいい組織───通称『パッショーネ』

 

 構成員は総勢700名以上いると言われ、組織とつながっている情報屋や飲食店全般、福利厚生施設からこのイタリアへつながる玄関口を取り締まる空港、さらには本来この地を取り締まるはずの警察やその上層部、もっと言えば国の議員までも。

 その全てを合わせるともはや数え切れないほどの協力者がいるとされ、まさに文字通り『パッショーネ』が国を仕切っているといっても過言ではない。

 

 かつての街を守っていた義賊は跡形もなく消失し、今ではもはや暴力や薬を使い街全体を裏から操り、組織を害する反逆者には死がもたらす、いわゆるギャングとよばれる集団でしか他ならなくなってしまった。

 

 要するに、当初彼らパッショーネが持っていた街を守るという確かな『情熱』は街全体、今や国をも襲う『受難』となってしまったというわけだ。

 

 まぁ、もっともそのパッショーネが今のような子供にまでヤクを売り捌いて儲けるようになったのもほんの数年前の話だ。禁じ手とされていた“薬”が解禁になった年、おそらく、その瞬間が先代の“ボス”から今の“ボス”へと変わったときだと推測できる。

 

 「........」

 

 自らの正体を決して明かそうとはしない『ボス』

 

 この事実はボスの正体を、あまつさえ居場所を暴くことのできる『道具』どころか、今もなお恐怖という名の首輪でつながれている俺達暗殺者チームが娘を手に入れることができれば、他のチームとのアドバンテージを取ることができる。いや、もはやボスへと至る道に入ったといっても過言ではない。

 

 だが、それもすべてはボスの娘を手に入れたという前提での話だ。この世界において浮かれることは油断を生み、生まれた油断は即座に死へ直結する。重要なのは、何事も『慎重に』することだ。

 

 「.....さすがのボスにも弱点はあったってことだぜ」

 

 よほど酔っているのか、イルーゾォはせせら笑いながら先程止めたはずの話題を蒸し返すものの、再びボスのことを言うとすぐさま水をかけられたかのように平静を取り戻し話を変えた。

 

 「あ───、そういやリゾット。あんた数週間ほど休みを取るって言ってたな。」

 「───ああ」

 「珍しいな───コレか?」

 

 ニヤニヤしながら人差し指と親指でグラスを持ちながら器用に小指を立てるその様子は、どこか人を苛立たせる。が、そこはいつもの事だと酔いで苛立ちやすい心を抑える。

 

 「いや、ただの昔馴染みの男だ」

 「───へぇ!なおさら珍しいじゃねぇか。あんたにそんな存在の人間がいるなんてなあ」

 

 唐突に会話に入り込んできたのは既に少し酔いが回っている様子で店に入ってきた坊主頭の男、暗殺者チームの一人であるホルマジオだった。

 

 「けっ、たいした成果も挙げれねぇ奴が“仕事終わり”の一杯なんて笑えるぜ.....」

 「ここ数週間誰も殺してねェお前には言われたくねぇよ」

 

 そんな存在───か。

 ホルマジオは別に深い意味を込めて言ったわけではなく、ただ単純にそう思ったから言っただけなのだろう。だが、自分でも気づかぬうちに何故かその言葉を頭の中で反芻していた。

 

 確かに、今思えば奴は裏の世界へ足を踏み入れる前の俺の存在を唯一知っているわけだ。稀有な存在であるといえば稀有な存在なのだろう。今でも心が通じ合うほど仲が良いのかと言われると、さすがにそれに「はい」と答えはできない。だが、以前の自分、数年前の自分であれば即答していただろう。

 

 であれば、友人であったからというだけの理由で彼をわざわざ探し出し、ここへいつ帰ってくるのかという予定を調べ上げる手間をするだろうかと疑問が湧かれても仕様がない。

 たとえ真の心の通じ合った友人であったとしても自分に対して何らかの『見返り』という「得」が無ければ聖人でもない限りそのようなことはしないだろう。

 

 店主の後ろにある棚、その上に乗っている高級そうな置き時計の時間を確認すると、座っていたカウンター席の上にイルーゾォの分の代を含めた代金を置き、手に持っていた写真のうちの三枚目を代金の上に重ね置く。

 そこには美しい海を背景に、一人の少女と『一人の少年』が映りこんでいた。

 

 

 「───! あぁ~、なるほどなあ」

 「そういうことだ」

 

 

 一人納得いったような顔をしているイルーゾォを一人店内へと残し、その店の常連客だけが通ることのできる裏口から抜けて薄暗い路地に出た。

 

 すると、月明かりが少し傾いているように見えるカーブミラーにちょうど当たって自分が立っていた辺り一面を照らした。

 フードの先につけていたアクセサリー、鏡合わせになった『R』の文字が鈍く光輝き、それが路地裏の暗闇を一層際立たせていた。

 

  あの頃の自分───こちら側へつま先の一部ですら触れたことのなかったあの頃の俺の事を詳しく知っているのはもう、彼一人だけだろう。

 

 あの子が、あんなクズに殺されて、それに耐えることができずに手を下してしまった自分を今の彼は一体どのように思うのだろうか。

 蔑むだろうか、軽蔑するだろうか。それとも──────

 

 

 

 

 




 
 
 続きは書くか書かないか未定。

 
 
 雑いからまた書き直す。
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