薄幸の美少女時雨ちゃんが提督とお別れします
「そんな……お別れなんて…」
今日、俺は嫁艦の時雨から
別れを切り出された、理由は
データの磨耗による存在の消滅
時雨と共に歩いてきた日々が頭を巡る
2013年冬に出会い、次の秋に結ばれた
以来、6年もの間
隣に立ち続け、互いに協力し、戦って、
理解りあった最愛の艦娘
時雨との、別れ
「僕も悲しいよ、提督」
「……」
冷めた表情の時雨が、やはり冷たく告げる
結婚を機に辞職し、二人で築いた新築の家に
涙の雨が降る
「でも、だからこそ、提督は前を向かなきゃいけない、僕のようなデータから出てきた、不安定な存在じゃない
愛し合えるお相手を見つけてね」
時折ノイズの走る体で、
歪む声で、それでも告げてくる
「いやだよ、お前以外なんて考えられない
俺の嫁は時雨なんだよ」
「提督、これは絶対なんだ
僕自身では何も出来ないんだよ」
すがりつく俺から、一歩下がる
それだけで、超えられない線を引いた時雨
そして、
「お別れだ、提督
たとえ僕がいなくても、君には進める道がある」
身を切るような夜の雨は
あまりにも冷たく、罪なき者を傷つける
「時雨…そんな言い方無いだろ!」
「僕たちは、過去に沈んでしまった亡霊でしか無いから、未来のある提督が、僕たちの事を覚えていてくれれば、それでいいんだ」
「しぐれっ!」
「僕のことなんて忘れて…ちゃんとした女の子と付き合いなよ」
時雨の、あまりにも悲痛な声に
涙が溢れる
「もう限界が来たか…」
時雨の体に走るノイズが激しさを増す
「時雨、時雨!」
「ごめんね、提督…」
時雨の体が揺らぎ、体勢を崩した
その瞬間、理屈抜きの超反応で
時雨の体を支えた
もう、大半が喪失してしまった軽い体、それは、そんな状態になるまで隠し通して
俺との生活を続けていたという証
「無理すんなよ…寿命縮むぞ…」
「それは何回も聴いたね…耳にタコが出来ちゃうよ」
俺の腕の中で
かすかに微笑う時雨
「提督…もう体の消滅が始まっちゃった…感覚がないんだ、最後に
壊れるくらい、思いっきり抱きしめて
それなら、きっと分かるから」
「……あぁ、これで…お別れだ」
そうして、俺は目を閉じて
強く、優しく
「あぁ…あったかい…
ありがとう、愛しているよ…提督」
唐突に、唇に感じた触感に
驚きと共に目を開けば……
そこには、もう、何も残っていなかった
[いままでありがとう、提督
これから、幸せになってね]
かすかな音を、舞い散る飛沫が掻き消して
最後の言葉を曖昧にしてしまう
薄れて消えた少女の姿を
決して忘れないように
俺は、最後の言葉を胸に刻んだ
止まない雨は無い…だから
俺の雨も、いつかあがる
でも、今は
この涙の枯れるまでは
雨は上がりそうに無い
このあと提督は、、どうしたんでしょうね