「提督ー!」
抱きついてきた美女
金剛を引き離す
やはり大学生くらいに見えるな
イギリス出身の艦、金剛だ
「なぜ抱きついてくる、今帰ってきたと言ったろうに」
「提督を愛してるからネー!」
反応が早い…こんな時にばかり、
都合が悪くなると勢いでごまかそうとするとは、
「元艦長でショー!こんな時くらい器を見せなヨー!」
「うるさいから少し静かに」
こちらとて年をとった、今や40を過ぎている
もう退艦して久しいというのに
この美女は俺を離してくれる様子がない
まぁ、死神に捕まった身だ
先に踊ることになるのは俺の方だろう
「提督ー!」
「それは聞き飽きたよ」「バーニング・ラヴ!」
いつもながら声が大きい、
鉄の塊は魂だけでなく火の属性まで宿したのだろうか?
「機関出力最大デース!」
「体を痛める、9割までにしなさい」
限界温度で動かすのはタービンにも排熱にも缶室の環境にも悪い、体調を崩させるわけにはいかなあ
「はぁ……提督が構ってくれなくて辛いデース」
「静かにはならんのかね?金剛は静音性も優れていたはずだが」
「静かになったらキャラが死んでしまいマス!」
「自分が騒がしいと言う事は自覚しているんだな?」
全くこの娘は
「静かにしたら…ばれてしまいマース」
「ん?なんだって?」
「いえいえ!なんでもないデース」
「そうか、なんでもないなら…
いいんだ」
その日の夜、
珍しく金剛が改二の姿から通常状態へ戻り
べったりとくっついてきた
「ねぇ…提督?」「なんだい?」
「提督はいつになったら私を選んでくれるノ?」
「いつか、だよ」
正直、俺は金剛の事は娘同然に思うのだが、それは艦の父をしていた艦長時代の経験であって
この金剛の事ではない
美女はたとえ人外でも美女だ
だが、それと同時に
たとえ美女だとしても、艦である以上はそう言った目で見ることは許されない
以前、
ミニスカートとストッキングの間にわずかに見える生足が実に良い、面白い格好をしてきた事があった
あの時は必至に欲を抑えた
多分金剛は俺に対して好意を持っている
だから、それに付け込めば
そんなこともできる、そう囁く悪魔から逃れるのには骨が折れた
「てーとくー?」
「なんだ?」
「私、人外だから子供は産めないけど、女の子ではあるんだヨー?いつまでも保留されると泣いちゃうんだからネ!」
こんな事も言い出して、全く
俺の頭をどれだけ酷使させる気なのか
「おい…金剛?」
「当ててんのよ?」
ソファに座っている俺の後ろは確かにガラ空きではあったが…「俺に気取られずによく移動したな」
「燃えるラヴがあれば何でもできるのデース!」
「今週は一層激しいが?」
「たまたま強く燃えてるだけデース!」
俺から離れた金剛は壁に背を預けて
俺に聞こえない音量で呟いた
「だって…最後ですから…」
「なにが最後だって?」
「エッ!提督っ!聞こえないんじゃなかったノー?」
「あいにくと、俺も金剛には聡いのでな」
「いつもながら…勘の鋭い提督デース」
そのまま壁を使って移動して、、俺の布団に入り込む
「おい?それは俺の布団だぞ?」
「それくらい知ってマース」
金剛が俺の布団を被って隠れてしまった
「はぁ……金剛?」
「今は出たくありまセーン
提督が来てクダサイ!」
ダメだなぁこりゃ
俺は、夜四時まで粘られた挙句
結局ソファーで寝た
土曜になり、穏やかな週末を過ごしていると
なにやら思いつめた顔の金剛が入ってきた
「提督、もう時間がありません」
「なんだと?なにがあった?」
「私達は艦船をデータ化したシュミレーターから実体化したデータの塊デース、だから
そこには実体化の限界がありマース」
提督には最初にお話ししましたヨネ
と乾いた笑いを浮かべた金剛は、そのままつづけた
「私も、その除籍日が迫っていマース
ここ一年くらい前から積極的になったのはそのせいでもありマース」
「一年前…か」
「提督?一年前の今日…忘れてませんからネー!」
ジト目で見てくる金剛
たしかに失礼だったな
「私の除籍日は来週の、遅くて火曜
はやくて月曜デース」
「なん……だと」
二日くらいしかないじゃないか!
そんな、、
「そんなことになるまで…俺は金剛の事に気付かなかったというのか……」
「暗くならないで、提督
私はこれで良かったとも思ってるからね」
「だが!」
「なら、今夜は……提督?」
思わせぶりなこと言いやがってこの金剛は
「はぁ、、金剛、そりゃ無理だ落ち着け」
「ナニヨー…最後の夢くらいみせてくれても良いと思いマース」
「はぁ……そりゃ失礼した だが、俺はお前のことを女としては見られない
俺にとって、お前はあくまで乗艦なんだ、ごめん」
「男としてサイテーだけど、人としては良い人なのよネー、はぁ〜」
ソファに座ったまま、ぐだぁと机に突っ伏す金剛
「最後の二日となるのか、
すまない、金剛、お前の想いを無駄にして」
「んー、、仕方ないデース
最後に、kissだけでも、させてくだサーイ」
罪悪感と共に、最後というキーワードが脳裏を巡る
「はぁ……ブレないなぁお前は」
「うふっ、私は食らいついたら離さない
これも言ったでショー?」
「以前聞いたな、それは」
金剛は、存在が摩耗しきるまで
俺のそばにいてくれた
決して実らないと分かっていたのに
愛を注いでくれた
なら、俺も
いつまでもかつての、金剛艦長としての自分に囚われるのはやめにしよう
「テイトクー」「金剛」
「「I love you」」