どうでもいい短編集   作:魚介(改)貧弱卿

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投稿するべきかどうか迷いますが…
ええい!ハラキリ提督と約束したからなっ!


翔鶴のお話し

唐突な話ですまないが

俺には妻がいる

 

三年ほど前に提督だった俺の前に現れて、俺の目と薬指と心を奪っていった

彼女の名前は翔鶴

 

優しくて、温かくて、事務処理も家事も万能で、戦闘もできて、俺の事を見ていてくれる、最高の妻だ

 

俺の側からプロポーズしたのだが、彼女も喜んでくれた

 

そんな彼女には、とある秘密がある

結婚当初から同居しているのだが

 

彼女の部屋は『決して入ってはいけませんよ』

と念を押されている、大掃除の時も、結婚記念日も入れてはくれなかった

 

まぁ、プライバシーというのは重要だし

あまり問題としてはいなかったのだが

 

何故か最近、翔鶴が部屋にこもる様になった

 

彼女の苦手とする夜でもなく、昼間に急に部屋に行ってしまうのだ、

 

徐々に、翔鶴を見ている時間が減ってきている気がする

 

それに不安を、恐怖を覚えた俺は

とても愚かな選択をした

 

「翔鶴……翔鶴?また部屋か……」

 

翔鶴の部屋を覗こうとしたのだ

 

二階に上がり奥の部屋に向かう

「……鍵は…開いている」

 

ノブをゆっくりと回して、ロックを外し

自分でも驚くほどゆっくりとドアを開けて、わずかな隙間を作り、そこに目を当てる

 

そこには、驚くべき光景があった

 

「はぁ……はぁ……まだです…まだ…あの人には…」

 

荒い息、到底室内で起きる様な呼吸ではない

酷く気怠げな姿勢、翔鶴は普段座る時も正座で、その背筋はしっかり伸びているのに、

そして、極め付けに体に走るノイズ

 

俯いた翔鶴の顔色は見えないが

到底良い顔色とは思えない

 

「翔鶴…」

 

思わず、()()()しまった

 

「提督っ!」

 

パッと、振り返る翔鶴

「見て、しまいましたね……」

幽鬼の様にゆらりと立ち上がった翔鶴は、艦娘由来の出力で扉を強引に開き

 

「入ってください…最後のお話ですから」

 

絶望的な表情で、そう告げた

 

「見てしまったからには、お話しします

最初に結論をいいますが

私はもう、長くはありません」

 

「なん、なんで…」

 

「私達、艦娘は財団Dによって作られた投影体、すなわち歴史の影でしかありません、それが偶発的に結像した存在である私達には、必然的に形象崩壊が起こります、それが私の番になったというだけの事です」

 

「つまり、翔鶴は、消えて無くなっちゃうのか…?」

 

「…答えづらいですが、その通りです」

 

俯いて、頷く翔鶴

 

「ですから、まだ存在を維持できている、今のうちに、形見を残そうと思いまして、風車を…」

 

彼女が翳したのは

 

白と青の風車、

「なんで、風車なんだ?」

翔鶴にはもっと、弓矢やそれ以外にも

彼女の形見になる様なものはあるだろうに

 

そう言おうとした俺は

 

彼女の笑顔に遮られた

 

「この街は良い場所です、

いつも、心地よい風が吹いている

 

ですから、私の愛したこの街の風を形にして残そうと思いました、、お嫌いですか?」

 

「いや、風車は、俺も好きだよ」

 

「なら良かったです」

 

「翔鶴」

「はい、なんですか?」

 

 

「俺は、何も見ていない、何も聞いていない、良いね」

 

「………クスッ、本当に、もう

あなたは優しすぎますよ」

 

その言葉を最後に部屋を出る

翔鶴が隠していたと言うことは

本当は、最後の瞬間まで、隠しておくつもりだったのだろう、それをわざわざ台無しにしたのだから、相応の対価を支払おう、

 

「すまない、翔鶴」

 

 

そして、一週間の時が過ぎた

時に笑い合い、時に語り、

一緒に食事して、共に過ごす

平穏な、翔鶴自身が望んだ、静かな時が過ぎた

 

「提督、、本当に、お別れです

今まで………ありがとうございました」

 

翔鶴の体に、ノイズが掛かる

それは他者から見ても、致命的で

 

しかし、翔鶴は揺るがない

 

「こちらこそだ、、本当に迷惑をかけた」

 

本当は、最後の時は笑って送り出してやるべきなのだろう、だが、それはできそうにない

 

溢れる涙を止めるのに精一杯だ

 

 

「ごめんなさい、提督…もし許されるなら

また、貴方と一緒に歩きたかった」

 

「……翔鶴、この手は離さん

君が消えても、君の事を忘れはしない」

 

翔鶴の手を握って

最後の約束をする

 

それを聞いて翔鶴は

微笑った

 

「いいんですよ、忘れても

それが貴方の幸せに繋がるなら

でも、

 

風車は、手離さないで下さいね」

 

そして、儚くも翔鶴は

ゆっくり白い光になって、

その実体を失い消えていった

 

「あぁ、翔鶴…さようなら」

 

 

手渡された風車を空へ翳す

 

今日は良い風が吹いている

 

 

 

それから、数年が経った

俺は、まだ風車を携えている

 

「今日は、、良い風が吹いている」

 

翔鶴の遺した風車を、翔鶴の愛した街の風に当てて

風の導くままに、歩く

彼女の面影を求めて

 

ふと、強く、風が吹く

「うわっ!」

 

正面から吹かれて、反射的に目を閉じて

手の中にあった風車が攫われてしまった

 

「風…」

俺は振り向いて、飛ばされた風車を探して

 

「コレですか?……はい、どうぞ

もう、手離さないで下さいね」

 

そこに、幻を見た

 

「あぁ、もう二度と、手離しはしないさ」

 

強風がすぎて、一瞬の凪

 

そして、また

一段と良い風が吹いてくる

 

二度目の誓いは…きっと

破られることはないだろう

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