しかし彼は他人との接触、まして体液に触れるなど言語道断の潔癖症であった。
日常的に粘膜接触まで強要されるこの島で彼に平穏は訪れるのだろうか……?
続くか未定。需要も不明。
そんな詳しく描写しないのでR-15で許して……。
朝、目を覚ます。
性格には今日もまた、まともな睡眠をとることが出来ず夜中から虚ろげに天井を見上げていたのだが。
「……また、朝が来てしまった」
ドアをノックする音が聞こえる。
「起きてる、弥彦? ご飯の用意してあるから、さっさと食べて学校行きなさいよー」
その相手は顔も見せることなく要件だけを伝えると部屋から遠ざかっていった。
のろのろと起き上がり、部屋にある姿見に目を向ける。
鏡に映るのは中性的だが整った顔立ちの少年だ。贔屓なしにイケメンと呼ばれる人種に属すことが出来るだろう。
――――目元に病的なまでの深いクマが出来ていなければ。
「近いうちに、病院行かないと」
上手く頭が回らないままで、部屋を出る。
いつものように顔を洗い、支度を済ませ、用意された食事を口にしてから、荷物を今一度確認してから家を出た。
敷地を出て僅か数秒。
嬌声が聞こえ、朝早くから公道で致しているカップルが目に入る。
「……っ!」
家族に何度も注意された舌打ちが思わず出てしまった。
カップルは行為を初めてから時間が経っているのか、汗やらの体液が四肢を伝い地面まで滴っている。
……汚い。
今は夏場、むせ返るような臭いがぬるい風によって伝わってきた。踵を返して他の道を探すことにする。
この島、青藍島ではいつでも、どこででも行われている性行為。
僕は、それが唾棄する程に嫌いだった。
学校に着けば校舎に入るまでもなく、吐き気のする性臭が漂ってくるようだ。
目的他はA等部1年の自分の教室。
寝不足によるダルさはあるが、問題ない。
始業時間まではあと数分。この時間帯なら人も減っており、更に朝であれば使われない場所というのはいくつもある。
裏手の方に回り込み、
もちろん、まだ人通りのある1階ではなく理科室、家庭科室などの集中している人通りの少ないフロア。
鞄からゴム手袋を取り出し、靴をビニール袋にしまいながら排水管を伝って上に登る。
最終的には片手でつかまりながら持ち帰っている室内用の履き物を履き、そのまま校舎内へ。ゆっくりはしていられないが、HRには十分に間に合う時間だ。
「なっ……!?」
しかしいつもと違うことがひとつ。
「い、いま窓から……」
普段ここを通る生徒はいない筈なのに、男子生徒に見つかってしまった。
告げ口されては困る。
窓を開けてもらいづらくなるし、昇降口を通るのは無理だ。
「なんの事かわかりませんね。それより、早く教室に戻っては。……先輩、でいいでしょうか?」
「お前が1年なら、そうなるな……」
「そうですか。見ない顔だったので、そうではないかと……」
「まあ転校してきたばかりでもあるしな」
「……なるほど」
そういえば、つい先日に自分の学年にも転校生が来ていたような気がする。珍しい時期だったので少し噂になっていた。
「ちなみに、お前……。男、でいいんだよな?」
「この学校で男子の制服着てる奴はみんな男ですよ。スカートなんて履いた日には後ろの穴が開きっぱなしになりますが?」
「いやそれはないだろ……」
「頭に精液詰めてるこの島の人間ならやりかねないので」
そこで、余計なことを言ったと気づく。
どうせこの男もこの島に染まって頭のネジが緩み抜けていくのだ。そうなった時に、島の人間を悪く言うような話をしたことを広められては面倒だ。
顔をはっきり覚えられる前に退散することにする。
「お、おい……っ!」
呼び止められるが、完全に無視を決め込んで自分の教室へ。
教室までの廊下には、誰のものともしれない体液が散乱している。
……汚い。
さっさと学校を卒業して、本島に戻りたい。
体液を踏まないように歩きながら、両手に使い捨てのビニール手袋を嵌める。
これが自分の登校経路。
本島の学生からは逸脱した、非日常の日常だ。
大きくため息を吐いてから、手袋越しに触れる教室のドアを開け、中に入った。
「一体アイツは何だったんだ……」
急に窓から現れた男子(?)生徒が去っていった後。
SSの監視が少ない場所を探していたら嵐のように過ぎていった。
どこかで見たような顔をしていたが、それを思い出す前に教室へと行ってしまったためにその正体を掴むことはできなかったが、
「いるのか……? 俺やアサちゃん以外にも、ドスケベセックスから逃げている奴が……」
生徒が入ってきた窓から顔を出すと、とても飛び降りたりできる高さではない。
真似をすることができたらSSに見つかることもなく家に帰ることが可能になるが、筋力も体力もない妹がこの経路を使うのは不可能。
しかしだ。これを平然とやってのける奴の協力を得られるなら……?
「いや……」
本当にSSから身を隠しているとは限らない。
妹の身を守るためにも、慎重にことを進めなければ……。
「弥彦くん、今日は――」
「見た目通り、疲れてるんだ。また今度に」
「あ……。そう、だよね……」
この島の女性は基本的に肉食系女子であり、このように大人しく引き下がることは少ない。
疲れてるならマッサージをしてあげるなどと宣い、股間を刺激してきて、反応してしまったが最後。枯れるまで相手をすることになる。
しかし、ある噂のおかげでこの学園内では回避することができている。
「流石は青藍島の守護者……。アイツがいなかったらこの島にイチモツは残ってないからな」
「そうだよね。私たちがドスケベセックスをしてられるのも弥彦くんがあの人を食い止めてくれているからだもん……」
頭が痛くなる。
もちろんそんな噂は出処不明のデマであり、体調不良は単なるストレスと寝不足である。
「でも羨ましいよなぁ……。片桐奈々瀬さんの相手を毎日してるんだろ。俺も相手してもらいたいぜ」
そんなことを言ってくるクラスメイトになんとも言えなく、愛想笑いだけ返す。
「あ、いたいた。弥彦ー、そろそろ帰るわよー」
噂をすればご本人の登場だ。
クラスはざわつき、今や島中から認知されるギャルビッチの称号を手にした――、
うちの姉だ。
オリ主プロフィール
片桐弥彦(A等部1年)
性別・男性
趣味・掃除
特技・パルクール
姉との中は良好。
姉同様に身体能力は高く、容姿も似ているが性格は似ることなく、口汚い器量の狭いやさぐれた人間。
普段からカバンの中に消臭スプレーからゴミ袋、ゴム手袋、ビニール手袋、消毒用アルコールetc…を入れ持ち歩いている。
人との接触が生理的に無理。直接触れると鳥肌、体液まで触れると吐く。
肉親はDNA的に近いという自己暗示で接触を克服。
非童貞非処女。