今まで読み専だったんですが自分でも物語を作ってみたくなり、勢いで書いてみました。
慣れない文章で変なところもあると思いますが、お付き合いいただければと思います。
歌うことが好きだ。私が歌うとみんな私のことを見てくれるから。まだ小さい子の可愛い目が、学生たち若者の力強い目が、お父さんお母さんの優しそうな目が、私の目に映る。ステージ上からお客さんを見るのが好きだ。みんな私のうたを聴いて楽しんでいる事が分かるから。
歌うことは好きだ。自分にとって一番楽しい瞬間だから。歌うことは疲れるけれど、私の体が歌うと喜んでいることが分かる。歌う体は熱を持って、その熱はみんなに広がっていく。この感覚が好きだ。みんなに私の歌が伝わっていることが分かるから。
歌うことは私にとっての幸せだ。私のうたで喜んでくれる人がいるならそれは私にとって最高の幸せなのだから。私のうたを聴いて楽しんでくれる人、感動してくれる人はかけがえのない存在だと思う。そんな人がいるということだけで私は満たされた。歌うことだけが私の存在意義とまでは思わないけれど、それくらい私にとってうたを歌うということは大切で大事なことだった。
ーーーなによりほんとに楽しかった。みんなが私のことを見てることが気持ち良かった。疲れなんてそっちのけで熱中して歌えることがなにより幸せだった。自分は幸せなんだと実感することができた。
ーーーだからどうか、
ーーーどうかこれからも私のうたがみんなに届きますように。
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「ライブ?」
「そうそう、また是非出て欲しいっていう勧誘があったんだけどどうする?」
ついこの前やったと思ったのだけど、またライブの勧誘がきたらしい。この前やったライブも結構大きな規模だったからそれなりに疲れているのだけど、せっかくの誘いを断るつもりなんて私には無かった。
「この前にもやったばかりだから疲れてるなら断ってもーーって
「当たり前じゃん。やるに決まってるよ!」
歌うことに幸せを感じている私にとってせっかくの機会を断るなんてもったいないことはできない。まあさすがにずっと連続で勧誘きても困るけど。
「それで、そのライブはいつあるの?」
「ーーそれが実は今週末なんだよね~」
「今週末?いくらなんでも急すぎじゃない?」
「それなんだけど、どうやら出れなくなったバンドがいるらしいんだよね。で、代わりに出れるバンドを探してたところ声がかかったというわけ」
「なるほどね。それならこんなに急なのも納得」
思ったより急だったけど今週末は先週ライブやったのもあって特に何も予定はなかったからよかったかな。まあまあ忙しくなるけどどうにかなりそうだし、歌うことができるというのが嬉しい。
「場所は近いの?」
「ここからだと電車で20分ってところかなー。いままで色んなところでライブしたけどここではまだやったことないね。とりあえずいつものようにセッティングなどの打ち合わせはやるけどいいかな?」
「ありがとー!さっすが
「それが私の仕事だからね」
ーーー香織は私の小さい頃からの友達。香織はうたを聴くのが好きだったらしく、よく私のうたを聴いてくれた。それから香織とは私のうたのことや音楽の話ばっかりしている。今はうたを歌うことになると暴走しがちな私の代わりにスケジュール管理やライブのセッティングをしてくれている。香織には感謝してもしきれない。
「次のライブについてはこんなとこかな。歌うステージがまたあるからってテンション上がりすぎて練習しすぎて本番までに喉壊すんじゃないよー?」
「分かってるよー!」
結構前のことだけど、出演できることが嬉しすぎて練習のしすぎで喉を痛めたことがあった。そんな思いはしたくないから以降は練習配分にも気をつけるようにしている。
「次のライブも全力で頑張って、そして全力で楽しむ!」
「うん。私は手伝うことしかできないけど、いつも楽しみにしてるよ」
ーーーああ楽しみだなぁ。次のライブはどんなステージになるだろう?
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「『Yu-ka』さんですね?今日は出演していただきありがとうございます!」
今日は待ちに待ったライブ当日。出演の勧誘を受けてからたった数日なのにかなり長かったように感じる。それだけ楽しみだったということなんだろうな。あと少しでステージで歌えると思うと、もうテンションは最高潮だった。
「いや本当に助かりました。『Yu-ka』さんがいなければ穴が空いてしまって困るところでした。控え室はこちらになります。」
ーーー『Yu-ka』とは私のアーティスト名だ。私の名前の頭文字と香織の頭文字から1文字ずつとってつけた。私がこうやってライブに出演できているのは香織の力が大きい。香織がいなければこうやって歌うこともできなかっただろうから。香織は最初そのまま『Yuika』でいこうといっていたけど、それだと私1人みたいな感じがして嫌だったんだよね。私にとっての香織はただの友達じゃない。香織は大事な大事な友達だから、どうしても2人としてアーティストになりたかったんだ。
「結歌お疲れ~。昨日リハーサルしたときには調子悪くなさそうだったけど本番大丈夫かな?」
控え室に入ると、先に香織がきていた。昨日のリハーサルもスムーズにできたのは香織のセッティングのおかげだ。香織のこういう能力はほんとに素晴らしい。
「バッチリだよ!香織のセッティングもよかったし後は全力で歌って楽しむだけ!」
「お~頼もしいね。そういや今日って女性アーティストだったりガールズバンドメインなライブらしいね。少し様子みてみたけど大盛り上がりだったよ」
そうだったんだ。あまり他の出演者の方は気にしないようにしてるんだけど、これだけ盛り上がってるとなると結構有名な方もきてるのかな。
「盛り上がってるのいいね!テンションさらに上がってきたよー!」
私の出番はトリのひとつ前だ。トリのアーティストも気になるところだけど、そのひとつ前で最高に盛り上げていきたい。
「さてと、私はそろそろ特等席にいきますかね。頑張って!」
「最高に盛り上げるから楽しみにして待っといてよね! いつものよーに会場を熱で包ませてあげるからさ!」
香織はいつも最前列で私のうたを聴いてる。一番近くで一番熱を感じるところにいたいらしい。私としても香織には一番伝えてあげたい相手だから、香織が最前列にいてくれる事が嬉しかった。
「『Yu-ka』さん。あと少しで出番なのでステージ隣まできて下さい!」
スタッフの方が呼びにきた。いよいよ私の出番だーー。
ーーー最高に楽しくて最高に幸せな瞬間が始まる。
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前のアーティストの出番が終わる。心臓がうるさいほどに高まる。ステージが暗転して前のアーティストが退場してくる。私の体に熱が帯びる。この熱をみんなに広げよう。
ステージの準備が終わった。つまり、後は入場するだけだ。あと数歩あるけば私はステージの真ん中だ。
暗転したままのステージを歩く。一歩一歩を噛みしめながら歩く。そして真ん中にきた。あとは照明の演出と同時に始めるだけ。ついに時がやってきた。
ーーーさあ、最高のステージの始まりだ。
ーーー最高のステージが始まるのだと、そう信じていた。
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「よろしくお願いします!『Yu-ka』です!最高に盛り上がっていきましょーー!」
照明がつくのと同時に始まった。お客さんの歓声が聞こえる。さあ、みんなに熱を広げよう、みんなで最高に盛り上げーーー
ーーーえ?
何かがおかしい。いや、何かが足りない。
熱だ、熱がないんだ。
お客さんの歓声も聞こえる。ステージは最高に盛り上がってるはずなのに。
お客さんの目はずっと遠い奥をみてる。まるで、次のトリを待っているかのように。
ああ、そうか。この盛り上がりは私のおかげじゃない。次のトリのアーティストのために形だけ保っているんだ。
分かってしまった。お客さんは私を見ていないのだと。
私の熱は、全てトリのアーティストに持っていかれてしまったのだと。
香織の辛そうに私を見る目だけが、焼き付いて離れなかった。
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私のステージが終わる。照明が消え、退場を促す。歓声だけは鳴りやまないけれど、熱は感じないままだった。足取りがすごく重たいけれど、無理やり笑顔を作って退場した。
退場したらそこには彼女たちがいた。みんなの熱を集めた彼女たちが。
ステージに歩いていこうとする彼女たちと目が合った。
ーーー彼女たちの目からは今まで感じたことのない熱を感じた。まるで燃え盛る炎のような情熱の熱さだった。
ーーーそして気づいてしまった。
ステージに歩いていった彼女たちの準備が終わる。照明がつく。
「……『Roselia』です」
ーーー私が彼女たちに届くことはないのだと。
感想、評価、指摘などあればありがたいです。