「着いた……」
鉄橋を抜け、物静かな工業地帯を過ぎた先にある列車操車場。
機体の整備や終電を走り終えた電車を保管しておく場所だ。
一般的な校庭ほどの広さの敷地内には巨大なコンテナや車庫が周りを取り囲むように並んでいる。
数十分後にはここで実験が行われるはずだが、さっき川へ飛び込んだせいで携帯も故障してしまい、正確な時間までは分からない。
操車場に人気はない。
終電は最終下校時刻に合わせられているため、この時間には作業員もみんな帰ってしまっている。
作業用の照明はすべて消され、辺りには民家などもないためここが学園都市だということを忘れそうになるほど、暗闇に包まれていた。
「どうしてこンなとこに一般人がいんンだァ?」
「ッ!?!?」
いきなり声かけられて心臓止まるかと思ったぜ。
俺は声がした方へとゆっくりと視線を向ける。
暗闇の中心にそいつはいた。
そいつの姿は、俺の中の一方通行というイメージからはかけ離れていた。
痛々しいほど細い体。
今まで外に出たことがないのかと疑いたくなるほどの白く繊細な肌。
その真っ白な髪と赤い瞳はうさぎを連想させるが、彼の雰囲気がそれを塗り潰していく。
まるで白い闇。
白い闇なんてのはめちゃくちゃな言葉だが、そんな言葉を真っ先に思い浮かばせるほど、不気味な存在だった。
「一応聞くが、お前が一方通行か?」
「なンだァ、お前?」
「これ以上超電磁砲のクローンは殺させない」
「はァ?どこでンなこと知ったのかは知らねェが、ハンパな正義感なんて捨てちまえ。ガキの遊びじゃねェンだよ」
「うるせえこのクソ野郎!てめえの勝手な理由であいつらを殺してんじゃねえよ!」
「おいおい……。人を人殺しみてェに言うなよォ。だいたいアイツらはボタン1つでいくらでも代わりは作れンだよ。人形をいくら殺そうが俺の勝手だろォがよォ」
「お前……」
普通に生きてりゃ人間のクローンなんてフィクションの世界でしか見ることはないだろう。
そんな状況では、そんな考えを持ってしまうのも仕方がないのかもしれない。
ボタン1つで作れる人間のコピー。
昔の俺だって、その1文だけを聞かされてもこの実験を止めるためにここまでやっていたかは分からないし、もしかしたら、知らないふりをしていつもの日常へと帰っていたかもしれない。
しかし今の俺は、彼女たちがただのコピーではないということを知っている。
俺たちと同じように痛みは感じるし、怪我をしたら血だって出る。
今はまだ頭の中はインプットされた戦闘スキルや実験のことなんかしかないんだろうけど、こんな実験が終わればきっとあの二人みたいになれるだろう。
知らないやつがいるなら、知っている人間が教えてやればいい。
間違ったやつがいるなら正しい道へと引っ張ってやればいい。
「あいつらは確かに超電磁砲のコピーだ。けどなぁ。それが2万人だろうと、それぞれはたった一人しかいねえんだよ!」
「はァ、意味わかんねェ。お前がこの実験止めたいってのはァ充分伝わったがどうするよォ?わざわざここに来たってことはまさかお前。俺を倒せるだなンて思ってたねえよなァ?」
「そのつもりって言ったらどうするよ?」
「ハハッ、おもしれェなァお前。お前は今、誰にそんな口きいてンのか分かってんのかァ。学園都市に7人しかいねェレベル5。その中でも第1位の俺にお前なんかが敵うと思ってんのかァ、オイ」
一方通行の眼が俺を捉えた。
湧き出した殺意がどんどん膨れ上がる。
まるで360度から命を狙われるような尋常ではない殺意。
ここまではっきりとした恐怖を感じたのは初めてだった。
「ごちゃごちゃうるせえぞ。こっちも時間がねえんだ。嫌なら逃げても良いぜ、ヒョロガリ野郎」
「チッ。ちょっと怪我させてやらねェと分かんねェみたいだなァ」
今回もお読み頂きありがとう!
一人称での戦闘シーンは書きにくいんですけど、頑張って皆様の読みやすいようにします!