落ち着いた彼女から、俺は今学園都市の裏で起きている実験の真相を聞いた。
絶対能力進化計画《レベル6シフト計画》
その名の通り、レベル5を超えたレベル6を生み出すというのがこの実験の目的だ。
候補に選ばれたのは、学園都市に7人しか存在しないレベル5のやつらだった。
しかし、学園都市が誇る世界最高のスーパーコンピューター、樹形図の設計者《ツリーダイアグラム》で予測演算した結果、レベル6へと到達できるのはレベル5の中でもただ1人ということが分かったらしい。
そいつの名前は一方通行《アクレラレータ》
運動量・熱量・光量・電気量など、能力の効果範囲に触れたあらゆる力の向きを自由に操作することが出来るらしい。
こいつが散々言ってた反射ってのも一方通行の能力の1つらしい。
演算結果によれば、通常の時間割を250年間組み込むことによって一方通行は、レベル6へ進化することが出来るという事だった。
まぁどんなに強力な能力を持っていようと、一方通行は人間であるという大前提があるため、一旦計画は保留となった。
再び樹形図の設計者で演算を行ったところ、超電磁砲、つまり御坂美琴を128回殺害することで、同様の結果が得られることが分かった。
まぁ当然、御坂さんを128人も用意するなんてことは出来ない。
そこで注目されたのが、同時期に学園都市で進められていた量産型能力者計画《レディオノイズ計画》だ。
それから樹形図の設計者で再演算をした結果、量産型能力者計画によって作られた2万人のクローンを利用し、2万通りの戦場を一方通行に提供することによって、一方通行はレベル6へと進化することが出来るという結果になった。
「殺されることが目的の人間を作るなんて、随分とひでえことするなぁ」
「これまでに1万人以上の妹達があいつに殺されてるわ」
こんな計画を思いつき、実行した科学者たちはもちろんだが、その一方通行ってやつも大概だな。
そんだけ強いってのにそこまでレベル6にこだわる理由がそいつにはあるんだろうか。
「クローンってのは何となく無感情キャラってイメージがあったんだけど、お前みたいに実験を止めようとする個体は他にいねえのか?」
「私の場合は少し特別な事情があってね…。もう1人私みたいなのがいるけど、他の子たちは自分たちの扱いに疑問なんて抱かないし、この計画で自分たちが死ぬことにだって躊躇してない」
「御坂さんはこの計画を知ってんだろ?2万人以上のやつらが殺されるのは承知の上でこの実験に協力してんのか?」
もちろんそうは思いたくない。
でも、本当にそうだったら?
たった一人の人間を育てるために2万人もの命を見殺しにするなんて間違っている。
彼女がそんな計画に協力して、何事もなかったようにこの前みたいな笑顔を浮かべているような人間だったとしたら。
俺はどうすればいいんだろうか。
「安心なさい。お姉様はこの実験に反対しているわ。この間もお姉様の手で研究所が1つ潰されている」
「じゃあなんで御坂さんはあいつらに自分のDNAマップを渡しちまったんだ?」
「騙されるたのよ、お姉様は。まだお姉様が小さい子供だった頃、筋ジストロフィーという病気を治すために役立てたいという研究者の嘘に騙され、DNAマップを提供してしまった」
「御坂さん自身が気づいた時にはもう手遅れだったって訳か」
「でもよぉ、この街はいつだって人工衛星で監視されてるんだ。いくらこそこそしようがそんな計画とっくに潰されてなくちゃおかしいだろ」
クローン人間の作成は日本ではれっきとした犯罪だ。
しかも、2万人のクローンを作成し、全てを殺害するような実験なんて、今すぐ中止されてなきゃおかしいはずなのに。
「知ったうえで、理事会はこのことを黙認してんのよ。その手は警備員や風紀委員にだって及んでる」
「そんな馬鹿なことが…」
「ええ、馬鹿げてる。でもあいつらにはそんなの関係ない。たとえどんなリスクを背負ったって計画を成功させる気よ」
間違っている。
下衆な実験に心を痛め、立ち上がった少女がたった一人で戦っているんだ。
まだ中学生だってのに、周りの大人には何も相談出来ず、たった一人で抱え込んでいたのか。
━━━…超電磁砲なんて大層な肩書き背負ってるくせに出ることなんて何も無い…。
俺は、ある日の彼女の言葉を思い出した。
そうだ、いくら人より強い力を持っていたって、中身は中学生の女の子。
そこにレベルの大小は関係ねえ。
たった一人で学園都市の闇を敵に回したんだ。
平気なわけがねえ。
それでも、白井たちの前で笑っていた。
本当は泣きてえはずだ。
「お前はどうするつもりなんだ?」
「この実験を止めるわ。そして、妹達にあなたたちの価値はそんなもんじゃないって教えてあげたい。私たちのために苦しんでいるお姉様を救ってあげたい」
「でもよぉ、どうやって止めんだ?今まで御坂さんが色々やっても効果なしだったんだろ?」
「研究所を破壊したところで次々と研究は引き継がれるし、効果は薄いわ」
「じゃあどーすんだよ」
「一方通行を殺す」
「は、はぁッ!殺すってお前…」
「もうそれしかないの。いくらなんでも柱となる一方通行が消えてしまえばこの実験も中止するしかなくなるわ」
「まぁ確かに、そいつを殺せば全部無くなるんだろうけどよお」
それで全て解決すんならどんなに簡単な話だろうよ。
「それが出来んだったら殺しはしないにしても、御坂さんは真っ先にそいつをぶっ倒してるはずだ。それなのにわざわざ研究所潰すなんて回りくどいことしてるってことは、御坂さんじゃそいつには勝てねえってことなんだろ?」
「ええ。レベル5の1位と3位。たった2つの順位の間にはとんでもない戦力の差がある。あいつとお姉様が戦っても絶対にお姉様は勝てないわ」
御坂さんでもそのレベル。
クローンのこいつが戦っても絶対に勝てない。
「じゃあどうすんだよ?無駄死にするだけじゃねえか」
「私だって考え無しにこんなこと言ってる訳じゃないわ。勝算はある」
「まぁ止めたって無駄だろうけどよ。そんな話聞いちゃぁ無視できねえ。俺にも協力させろ」
「だめよ。この実験であなたまで死んでしまえばお姉様がどう思うか。あれは次元が違う相手なのよ」
死ぬのは自分1人で十分ってか。
妹達に自分の価値を教えるなんて言ってたが、てめぇも分かってねえじゃねえか」
「死ななきゃいいんだろ。俺だって御坂さんをこれ以上追い詰める気はねえよ。死にそうになったらお前を置いとっとと逃げるから安心しろ」
「断ったらどうするの?」
「2人が1人になるだけだ。この実験は気に食わねえ」
「ちっ、いいわ。その代わり自分の命が第1に優先しなさい。失敗したらもうこの実験のことは忘れること」
「あぁ。失敗なんてする気はねえけどな」
「着いてきなさい。時間はないわよ」
待ってろよ一方通行。
そのふざけた計画、俺がぶっ潰してやる。
今回もお読み頂きありがとうございました。
自分はどちらかと言うと、ラノベはラブコメの方が好きなので、何となく一人称で描き始めましたが、とあるとかのジャンルだったら三人称の方が絶対良かったですよね…凄い後悔してます笑