俺は、作戦の打ち合わせのために、こいつらのアジトへと連れてこられた。
「私の仲間は少し変わってるって言うか…とにかく!扱いには気をつけるように」
「変わってるっつったって…、お前も大概だけどな」
まぁ最近変なやつによく会うしな。特に目の前のやつとかどっかの変態とか。
「はぁ?まあいいわ。ちゃんと靴揃えなさいよ」
「へいへい。おじゃましまーす」
随分ボロいアパートだなぁ。
「ただいまー」
「おかえりなさぁーい、ってヒイィ!誰ですかその人!?」
「ちょっ、落ち着きなさいって。協力者を連れてきたのよ」
「協力者、ですか?」
あぁ、確か私みたいなのがもう1人いるって言ってたなぁ。
「貴船海翔です」
「はっ、はい!よろしくお願いします…」
「あー、いいのよこんな奴に敬語なんて使わなくても」
なんだよ私みたいな子って。
全然こっちの方がいい子じゃん。
「それで?次の実験ってのはいつあるんだ?」
「次の実験開始時刻は8月21日の午後8時30分ジャスト…だっかしら?」
「え、ええ…合ってます」
「時間はねえが、勝てそうなのか?」
「分からないわ…。でも、私たちは力をつけた。これ以上妹達を死なせる訳にはいかないし、絶対に実験は止めてみせる」
残り2日。
時間はねえが、散々待ったこいつらがやるってんなら異論はない。
それに、実験を知ってしまった以上、これ以上1人も死なせる訳にはいかねえ。
「へっ、俺も付き合うんだ。失敗なんてさせねえよ」
「そのつもりよ。でも万が一ってこともあるわ。私はあなたを死なせるつもりはないけど、あいつが黙ってそうされてくれるとは思えない。さっきは死ぬななんて言っけどそれも状況によるしね。実験まで2日ある。明日は大事な人に挨拶でもしてきなさい」
「だから、大丈夫だっ…」
「あ、あの!」
さっきからずっと静かだった子が急に大声を出した。
「行ってきてください…挨拶に。じゃないとあなたもあなたとお知り合いさんたちも、絶対に後悔すると思います……」
まるでその子はその哀しみを知っているようで、俺はいつもみたいに冗談っぽく返せなかった。
「あぁ、分かった」
「よし、じゃあ今日は解散!明後日の6時半にここに来ること!」
「了解」
「ちょっとあんた」
「何だ?」
「さっきは悪かったわねこれでもあんたには感謝してんのよ。ずっと味方なんていなかったから。でも、引き返すなら今のうちよ。今逃げ出したって誰もあんたを責めないわ」
これは最後の警告だろう。
彼女の不器用ながらの優しさ。
これで俺は再確認した。
クローンなんて関係ない。
こいつらは心を持った1人の人間なんだと。
他の奴らだって心がないって訳じゃないんだ。
だってこいつら2人は、勝てるかも分からない勝負に、他の誰かのために命をかけられるようなやつなんだから。
それなら俺がやるべきことはただ一つ。
理不尽な虐殺からこいつら全員を救い出すこと。
「ばーか」
第7学区に帰って来たけど、ここは相変わらず騒がしいなぁ。
さっきまでのことが嘘みてえだぜ。
挨拶って言われてもなぁ。
俺、友達そんないねえんだよなぁ。
ていうか親の顔だって知らねえし。
俺が死んだら悲しむやつって言ったらたぶん0だし。
……
あいつは、俺が死んだらどんな顔すんだろうなぁ。
というかあいつと俺の関係って何なんだろう。
気づいたら、俺は白井に電話を掛けていた。
あんなに自分から連絡するのを嫌がってたっていうのに。
「もしもし」
「「あなた!一体何をやっていましたの!?あなたのせいで先輩方にネチネチネチネチ……気が狂いそうでしたわ!」」
「悪かったって。それより明日暇か?」
「「突然ですのね…。一応明日は風紀委員の方は非番になっていますが」」
「じゃあどっか行こうぜ」
「「はぁ…。あなた一体どうしましたの?」」
「別にどうもしてねえよ。それよりいいの?ダメなの?」
「「別にいいですの。今は仕事中ですので一旦切りますわよ」」
「おう。怪我すんなよー」
「「余計なお世話ですの」」
なんで白井に電話なんかしたんだろ?
分かんねえが、あいつと会っとかないと後悔しそうって思ったんだよなぁ。
それぐらいには、俺もあいつの事を大事に思ってんのかな。
はぁ。
死、か。
今までそんなのとは無縁の世界で生きてきたからなぁ。
戦うっても精々ガキの喧嘩止まりだったし、本当にやばい事には関わってこなかった。
でも今回は違う。
2万人を殺すのだって躊躇はしねえようなやつを相手にするんだ。
おまけに学園都市の闇まで敵に回すような真似するんだから、運良く生き残れたとしても、きっと今みたいな生活は送れないだろう。
そうなると、今みたいに会うのだって出来ないだろうしなぁ。
「あ、貴船さん!」
げっ!今1番会いたくない人が来やがった。
「お、おう御坂さん。どうしたんだ1人で」
「することもないんでぶらついてたんですよ。今日は風紀委員の見学言ってたんですよね?黒子が言ってましたよ?」
「あぁ、ちょっと用事でなしになっちまった」
「えー。黒子必死に先輩たち頼んでたんですよー!」
「さっきしっかり怒られちまったよ」
しかし全部知った上で絡んでみるとすげえな。
相手に全く不安を感じさせねえ。
白井のやつもそうだが、俺の周りのガキはみんな年不相応にしっかりし過ぎてやがる。
大変結構なことだがよぉ。
そういえば、御坂さんは次の実験のこと知っているんだろうか。
「なぁ御坂さんたちの学校って門限厳しいの?」
「8時20分ってことになってます。守らないとうちの寮監が怖いのなんのって。私や黒子が本気でやっても勝てないんですよー」
「へ、へえ。そりゃあ恐ろしいやつだな」
実験開始の10分前か。
ここはその寮監に免じて大人しく門限を守ってもらいてえが。
まぁ、守るわけねえよなぁ。
「じゃあ無理っぽいなー」
「どうしたんですか?」
「いやぁ明後日によー。夜の8時半におすすめの店がキャンペーンやってるっていうから御坂さんたちもどうかって思ったんだが」
「8時半……ですか」
ここまで露骨に反応するってことは、やっぱ知ってんだな。
だいたいそんな時間になったら学生向けの店なんて全部閉まっちまう。
「てか普通に中学生をそんな時間に連れ回す訳にもいかねえもんな。気にしないでくれ」
「い、いえ。また今度誘って下さい!この前はみんなも楽しかったみたいなんで」
「あぁ。じゃあ俺行くから」
はぁ、なるべく御坂さんには俺が関わってるってことは黙っときたいしなぁ。
どうしたもんかな。
今回もお読み頂きありがとうございます!
ちょっと記憶が曖昧になってきたので、原作を読み返してるんですが、いつの間にか手が止まらないんで困ってます笑
鎌池先生と自分の文章力の差には絶望的な壁がありますが、勉強になる所もあるので皆さんが少しでも読みやすいと感じられるように日々精進します!