弱小国の王太子に転生したから死ぬ気で国を生き残させる   作:ほそほそピーナッツ

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イルザールの乱

確かにルーグスが言う事は正しい。わざわざ殺されると分かって殺されに行く奴なんていない。だが、今回はイルザール側と正式に約束して決めた会談である。それを理由無しにほっぽり出す訳にはいかない。そんなことをすればヴァイネスは約束を守らない野郎だ、などといる悪い噂がたつ。王位を争っているなかでそんな些細な噂も大きな悪影響になる。それをルーグスに伝えるとルーグスは歪んだ笑みを浮かべながらこう聞いてきた。

 

「ちゃんとした理由があればいいんだよね。兄さん?」

 

「あぁ、そりゃそうだけど...」

 

「じゃあ、こんなのはどう?」

 

ルーグスは笑みを浮かべたまま、1枚の紙を出した。ぱっと見便箋である事が分かる?

 

「一体なんだ?その便箋は?」

 

「さっき言っただろ?僕も兄さんの暗殺に誘われたって。その時イルザール側から送られた手紙だよ。生憎僕は騙し討ちが嫌いだからね。直ぐに僕の署名を貰って去ろうとしたから慌てて取り替えたんだよ。」

 

「本当か?」

 

「本当さ、ちゃんとレシツィア語じゃなくてエルベーシュア語で書かれているよ。」

 

エルベーシュア語はレシツィア王国で発明された暗号語だ。名は発明された時のレシツィア王国の国王の名から取られている。このエルベーシュア語を読む事が出来る人間は限られているが、流石に王国の王太子や大貴族の当主になると当然の如く読める。便箋に書かれているエルベーシュア語を解読すると確かにルーグスの言っている通りの内容だった。

その瞬間、全てのピースが揃ったのだ。イルザール派を一掃する為の全てのピースが。

 

「爺、分かっているな?」

 

「はっ、今すぐに用意出来る兵は五十ばかりですが?

 

「十分だ。直ぐに用意しろ。」

覚悟を決めなければいけない。これは王族に生まれた運命なのだから。

 

廊下の角を曲がり応接室の前に着くとそこにイルザールは居た。トレードマークになっている茶髪に整った顔立ち、には一切の邪悪さの欠片も感じられない。後ろには彼の母方の祖父にあたるアルスラール公爵家当主のウラーバル=アルスラールも控えていたいた。

イルザールは俺を見て笑いながら近づいてきた。否、それは俺の後ろに控えていた兵士を見るまでであった。

兵士を見た瞬間、イルザールの顔から笑みは消えた。

 

「兄さん?なんだいこの兵士は?まさか俺をここで殺そうとしたのかい?」

その目は確かに絶対的な悪を見る目であった。

 

「へぇ、流石最初から殺そうとしていただけあるね?察しが良い。」

 

それまで俺の後ろに隠れていたルーグスが笑みを浮かべながらそう皮肉を言った。

俺の後ろにルーグスを認めた瞬間、一瞬であるがイルザールの顔に焦りが浮かんだのをみたいな。だがそれはほんの一瞬で、すぐさまさっきの焦りが幻と思える様な余裕綽々な顔でルーグスにこう応じた。

 

「何か証拠でもあるのかい?」

 

勝った。そう思いながらイルザールの目の前にルーグスから貰った便箋を突き出す。

イルザールの目は、本当に目玉が飛び出る程丸くなった。信じられない。その感情がひしひしと伝わる。

それもその筈、回収したはずの絶対的な証拠がそこにあるのだ。

 

「な、何故...?回収した筈では...」

 

衝撃の余りか、ウラーバル=アルスラールが口を滑らした。

 

 

 

 

 

そこからは一方的だった。イルザール派の兵達も放心したウラーバルやイルザールを守る気を無くしたのか蜘蛛の子を散らすように逃げていった。イルザール派の処分は一週間後には粗方決まった。

イルザールは南の端の山城に幽閉、ウラーバルは死罪の所恩赦をかけて国外追放になった。アルスラール公爵家もウラーバルに近い親族は全員謹慎となり、アルスラール家がついていた全ての役職も剥奪された。当主には遠い血筋の底辺貴族に継がれ、領地も三分の二以上が王国に返還された。

他のイルザール派の貴族には罰を与えなかった。アルスラール家が居たから奴らはイルザールについたのだ。アルスラール家がいなくなれば鳴りも潜める。

 

「ヴァイネス様。本当にウラーバルの奴死罪にしなくて良かったのですか?」

 

爺は俺にそう聞いてきた。

 

「あぁ、ここで余り厳しくすると他のイルザール派の貴族も後がなくってしまう。そうなると死ぬ気でイルザールを王太子にしようとするぞ?」

 

そう答えると爺は何故か目に涙を浮かべていた。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ウェルス。漸く本編1500字越したわね。」

 

「普通だそれが。今まで一話一話が短すぎただけだ。」

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