私は、転生者で、今は海軍本部准将の位を拝命している。
名前はシア。前世は男だったけどこの世界では女として産まれた。
気付いたときにはこの世界に生まれていたので、前世の最後は覚えていない。が、せっかくONE PIECEの世界に来たのだから海賊か賞金稼ぎにでもなって自由に生きようかなぁ、なんて思ってたんだけど······
気付いたら何故か海軍に入隊していた。
うん。よく分からなかった。よりにもよって海賊とは正反対の海軍に何故入隊していたのかと聞かれると、本当にいつの間にかって事しか言えない。無意識って怖いよね。
で、辞めようにも「辞めたいです!!」って教官に言い出せる勇気なんてなくて、そのままズルズル海軍やってたらなんか本部の准将まで上り詰めてたんだ。
て言うか、当時の教官が海軍本部“元”大将ゼファーなんだから、言い出せなくても仕方ないじゃないか。
で、将校になったら自分の正義を掲げないといけないんだけど、私は『曖昧な正義』を掲げている。
そのままの意味、私は完全に正義に着いているわけではない。必要悪は許容する。どう考えても正義が絶対的に正しいなんて事は無かったし、悪が正しいときだってあった。
でも、この世界は海軍=正義で海賊=悪の等式が成り立っている。例外的に七武海や四皇とか居るけど、それはただの例外なのであって、海軍からは疎まれる存在だった。
改めてこの世界に来てみてその歪さが良く解った。天竜人何て言う傲慢な絶対権力者が民に権力を振りかざし、民を守る筈の海軍は黙ってそれを見ているしかない。世界政府も天竜人には強く出れないし、CP0と言う、私から見たらどう考えても天竜人の味方としか言い様の無い諜報組織すら存在する。
でも、私は我慢しなければならない。それが海軍に入ってしまった私の運命なのだから······
さて、ここまで長々と語ってしまったけど、実は私はちゃっかりとこの世界を楽しんでいる。
だって、漫画の中の世界に来てみて楽しまないのは損だと思うし、そもそももうもとの世界には戻れないのだからやりたいようにやる、と言うのが私の心意気だ。
だから、その通りやりたい放題させてもらった。ああ、ちなみに言っとくと、既に私は人殺しも躊躇なく行える。とは言ってもそれは犯罪者や悪人に対してだけだけどね。
そうやって割り切っていないとこの世界ではやっていけないから。私が海賊と戦闘するときはなるべく捕縛するようにはしているけど、本当にやむを得ない時はその命を絶つ。
後はコング元帥に昇進祝いに“悪魔の実”を貰ったりした。コング元帥曰く、「将来有望な海兵に期待するのは上官として当然の事」らしい。
で、私がそうやってコング元帥に貰ったのは何と!!“ヤミヤミの実”
それを聞いたとき私は恥ずかしながら固まってしまいましたよ。ヤミヤミの実って、確か、白ひげ海賊団のサッチが見つけたんじゃなかったっけ?そんで、ティーチが奪って食べた筈なんだけど······
それがどういうわけか、コング元帥の手元にあった。
どこでそれを手に入れたのか聞くと、「とある四皇からの売却品」とのことだった。
そのとある四皇とは間違いなく白ひげの事だろう。
ともあれ、完全にその時点で原作と乖離したことは間違いない。ヤミヤミの実を食べなかったティーチが今後どうなるのかはその時分からなかったけど、意外にも今でも白ひげ海賊団の船員だ。
現在はルフィの船出の8年前。周りの海軍の原作キャラの年齢から差し引き計算した。
私は今は26だから、原作には既に34のいい歳をしていることになる。
と言うか、今日も今日で海軍本部に居るとクザン中将に絡まれて面倒くさい。
「お、いたいた!シアちゃん!ねぇ、今から俺とお茶しない?」
クザンはそう言いながら私のお尻に手を伸ばしてくる。
「何度も言いますけど、しませんから。それと、さりげなく私のお尻を触ってくるの止めてくれませんか?クザン中将」
「つれないこと言うじゃないの~」
「はぁー。そんなことより、ちゃんと書類は片付けましたか?」
「うげっ!シアちゃんまでそんなこと言っちゃうのかぁ~······」
「もう、センゴクさんにどやされても庇いませんよ!」
本当に、何時もこの人は······原作ではなかなか格好いい人物だと思ってたんだけど、実際こんなのが上司だと苦労しかしないわぁ······
「ちょっ!それは勘弁してくれ!」
こいつをどうしようかと思案していると、クザンの背後からセンゴクさんが歩いてくるのを発見した。どうやらクザンはまだ気付いていないようだ。
「あっ、センゴクさん!丁度良いところに!実はまたクザン中将が仕事サボってて······」
「何だと!この問題児は!?」
「うわっ!こりゃおっかねぇ、さっさととんずらさせてもらうわ!」
「そうは問屋が卸しませんよ~」
そう言いながら武装色の覇気を纏った手でクザンの手首を掴む。
「イテッ!痛い痛い!ちょっとシアちゃん!放してくれないか!?」
「そう言うわけにはいきません!!センゴクさん、はいこれ」
そう言ってクザンをセンゴクに投げ渡す。
「すまんな、シア准将。さて、クザン!お前には椅子に縛り付けてでも仕事を終わらせてもらうからなぁ!!」
「そんなぁ、勘弁してくださいよ!」
そんなクザンの泣き言を完全に無視するセンゴクはそのままクザンを引き摺って奥に消えていった。
まあ、こんな光景が日常で見られるのだから平和なものだろう。
こう見えても私は見聞色と武装色の覇気をどちらも習得している。残念ながら覇王色の覇気は私には備わっていなかったが、あとの二つの覇気の才能はこれでもかと言うほどあったので、武装色はゼファー先生程、見聞色は冥王シルバーズ・レイリーに少し劣るくらいにまでなった。
後は、ヤミヤミの実の能力であるが、覚醒したことにより他人の能力を吸い取れるようになった。闇の根本はあらゆるものの吸収であるから、普通はブラックホールのような性質をしている。でも、覚醒してからは本当の闇の能力を使えるようになった。それがありとあらゆるものの吸収。
それなりの覇気の乗った攻撃程度ならば完全に吸収できるし、海楼石も銃弾程度の大きさならば吸収できる。あまりにも大きかったら吸収しきれないが······覇気の乗っていない攻撃など論外だ。それならばどんなに大規模で威力の大きい攻撃でも吸収できる。
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「で、センゴクさん。何で私を呼んだんですか?」
私は今、センゴク元帥の執務室でセンゴクに呼ばれたので来ていた。
「それはだな······シア准将。君の中将昇進についてだ」
そして、センゴクさんの口から出たのは私の想像もしていなかった言葉だった。