私は、何故か海軍に居る   作:うどん麺

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10.新しい家族

 

 

 

今日も今日とて新しく手に入れた能力とヤミヤミの実の力を用いて海賊共を蹂躙する。

バイバイの実の能力は実に便利なものだった。単純に身体能力を強化できるのも純粋な強さがあるけど、私の場合は能力が二つ有るのでもう一方、この場合はヤミヤミの実の能力にもバイバイの実の効果があったことが非常に強力だった。

基本的な私の戦い方はヤミヤミの実の能力をフルに用いて、闇の基本属性である吸収を利用して海賊を捕縛している。

これにバイバイの実の能力が加算され、倍加されると単純に吸収力、吸引力が増す。そうなればより遠距離から海賊を吸収出来るようになる。まあ、そもそもそんなに射程のある技でもないからあまり意味はないけれど、ヤミヤミの実の能力としてもうひとつ、吸収以外にブラックホールの性質も持っている非常に危険な能力だ。

ブラックホールと言えばとてつもない密度の質量を持ち、光すら抜け出せない程の重力を持つ天体として現代世界に存在している。

だから、ブラックホールに飲み込まれれば跡形もなく消滅するのだが······まあそこは人が扱える程度のブラックホールなので、天体のブラックホール程は威力はないけどそれでも普通の海賊程度なら消滅させられる。

流石にこの世界は人外共の魔境なので消滅させられない奴もそれなりに存在するが、それでも破格の能力だ。

 

で、結局何が言いたいのかと言えば、このバイバイの実の能力でヤミヤミの実の能力のひとつであるブラックホールを倍加するととんでもないことになるということだ。

そもそも、今の時点でもどうしようもない程には危険なブラックホールの能力。それが二倍、三倍、それ以上になればもはやどうなるのか分からない。

もう一度言っておくが、素の時点でも並みの海賊ならば消滅させられるのだ。

それを二倍、三倍にするとまあどうなるのかは容易く想像できるものだろう。

 

話は全く別の話題に変わるが、普通、大将ともなれば基本的にはデスクワークなのだが、何故だか私はデスクワークよりも実戦····つまり遠征任務で海賊を捕縛することが他の大将に比べて非常に多い気がする。

まあお陰で海賊共からの知名度は非常に高くて、一般市民からの認知度も高い。海軍内からも称賛の声が大きく、特に女性海兵からは慕われている節がある。そのところはおつるさんと同じく。

更にシアだけ他の大将と比べ非常に若く、その容貌も年齢の割には非常に幼く(美少女のように)見えるため男性からも人気のあるのは当然のことだったのかもしれない。

········一部の海兵によるファンクラブも存在するとかしないとか、そんな噂もあるが真相は定かではない。

 

 

 

■■■■

 

 

 

「うげぇ!!?“悪魔の天使”ぃ!!?」

 

目の前の海賊にそう呼ばれた。非常に心外だ。なぜ私にそんな二つ名が付いているのか。非常にダサい。

 

「私にそんなにダサい二つ名が海賊共の間では流行っているのか?であるならばそんな二つ名ごとこの世から海賊という存在を消し去ってやろうか?」

 

まあ、嘘なんだけどね。だってほら、四皇とかに勝てる気しないし?そもそも、ルフィと敵対するつもりは無いし?て言うか、原作主人公様のルフィに勝てる気しないし?

それなら強くなる前に倒せば良いじゃんって思うかもしれないけどさ、私としてはそんな卑怯な真似はしたくないんだよね。それに、別にルフィが極悪人って訳じゃないんだし。今はまだ一人の少年でしかない。

 

「ひいぃぃぃぃ!!!!ゆ、許してくれっ!!」

 

「許してくれ、だと?冗談も大概にするべきだと思うがな。貴様の罪はインペルダウンで死ぬまで償ってもらうとしよう」

 

とうとう目の前の海賊は私の気迫に圧されてかは知らないがプツリと事切れてしまったようだ。

なので、さっさと縄で縛り上げて軍艦に放り込んでおいた。

 

「それにしても何なのだ、“悪魔の天使”とは。そんなにダサい二つ名が海賊の中で流行っているだって?考えるだけで身震いがする。何だってそんなダサい二つ名になったのだ」

 

「お考えのところ失礼します、シア大将閣下」

 

私が二つ名について考えているとディフェンス中佐が声を掛けてきた。

ディフェンスは最近少佐から中佐へと昇進した。

 

「何かあったか?」

 

「はい、少々困ったことが。この子なんですけど······」

 

ディフェンスはそう言って、今までディフェンスの巨体で隠れていて見えなかったが、ディフェンスの背後から見た感じ15~6歳の少女が歩み出てきた。

その様子は酷く怯えたもので、私が心配して近付くだけで小さく悲鳴をあげる有り様だった。

服装もボロボロで、所々破れており肌が露出しているし、その肌も土で汚れている。しかも裸足だった。

 

「大丈夫だ、私は海兵だ」

 

私はなるべく少女を怖がらせないように優しく声をかけて、目線も少女の位置に合わせた。と、言っても私と少女の目の位置は殆ど変わらなかったが。

 

「·········」

 

私を海兵だと認識してくれたのか、少女はこくりと首肯すると黙り込んでしまった。

このままでは埒が明かないので、ディフェンスに事情を聞くことにした。

 

「それで、ディフェンス中佐、この少女は一体誰なんだ」

 

「はい。今回の海賊の襲撃によって両親を亡くしてしまった、謂わば戦災孤児です·······」

 

そう言ってディフェンスは目を伏せた。

 

「そうか······」

 

斯く言う私も思わず目を明後日の方向に逸らしてしまった。

 

「あの······」

 

そんな状況が暫く続いていると、少女の方から話し掛けてきた。

 

「どうした」

 

「これから私はどうなるんですか?」

 

心底不安そうな目で私のことを見てきた。なまじ、年齢が年齢だけに精神がそれ相応に発達しているが故に、両親の死を受け止め、自分のこれからを憂いているのだろう。

 

「主には二つ道がある。ひとつ目はこの国の孤児院に入ることだ。もう一つは海軍の孤児院に入ることだ。私としては後者の海軍の孤児院に入ることをおすすめしたいが······こればっかりは君が自分自身で決めることだ」

 

実際、この世界の孤児院とは非常に名ばかりな存在だ。現代日本のようにきちんと食事も出なければ満足な教育も受けられない。施設の職員による暴行など日常茶飯事だった。

一方、海軍の孤児院も食事と教育は受けられるが、訓練を求められるし、体罰という名の暴力もある。どちらにしろ良いものでは無かった。

少女もその事は理解しているようで、どうしたら良いのか迷っているようなので、私が第三の案を出すことにした。

 

「もし、君さえ良ければだが······私の養子にならないか? 私はシア、こう見えて海軍本部大将だ」

 

私がそう名乗り出れば少女の目が大きく見開かれた。おおよそ、自分と殆ど身長の変わらない目の前の(見た目だけは)少女がまさか海軍でも限られたほんの一握りの実力者に与えられる、大将という地位にあったとは、少女は夢にも思わなかったのだ。

 

「分かりました····これから宜しくお願いします」

 

「よし、これから君は私の娘だ。早速だが君の名前を教えてくれないか?」

 

「私は、ノエル、です」

 

「そうか、ノエルか。いい名前だ」

 

「·······えへへ」

 

僅かに少女───ノエル───が笑った。

 

 

 


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