私は、何故か海軍に居る   作:うどん麺

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11.ノエル、海兵を志す

 

 

「ここが私の家だ」

 

私は現在、新しく家族に養子にとったノエルに自分の家を案内していた。

私の家は時々部下を数十名招いて宴会をする程には広く、私はそんな家にたった一人で住んでいるので、部屋を持て余している。

そんな状況で同居人······家族であるノエルが加わる。それだけで家は賑やかになるだろう。

 

「うわぁ······とても広いです!」

 

と、ノエルはそんな私の家を見てとても大きいと至極当たり前な感想を述べていた。

まあ、そうだろう。私の家は恐らくだがマリンフォードでも最も大きい。前世では見たこともないような豪邸も超豪邸だった。

 

「そうだろう。だが中はもっと凄いからな。楽しみにしておくといい」

 

超豪邸の外観は平安時代の京の貴族のような屋敷が最も当てはまるだろう。尤も、大きさは全然違うが。

屋敷のあまりの広さから使用人を雇っているが、別に住み込みではない。

 

「そうなんですか!?楽しみです!!」

 

つくづく仕草の可愛い女の子だ。それと表情はどれも可愛い。

出会ったばかりではあんなに怯えていたのに数日間一緒に居ただけでこの変わり様だ。

そんな大はしゃぎなノエルを門をくぐって玄関に通す。

 

「とっても綺麗······」

 

ノエルが感嘆の声をもらす。

私が仕事で居ない時も使用人の人が掃除してくれているので清潔に保たれている。

それに廊下は基本的にフローリングで、玄関は石畳になっている。部屋は基本的に畳を敷いている。

 

「着いてこい。こっちが台所だ」

 

そう言って私はノエルを引き連れて案外玄関から近い台所をまず始めに案内する。台所から案内するのもどうかと思ったのだがこれから住むのなら何処から案内しても結局は同じと思い直し、取り敢えず台所を説明する。

 

基本的に電気設備は繋がっているが、この台所に関しては水道以外は電気だけだ。ガスはこの世界には普及していない。

その代わりの代用できる燃料はあるが、希少でおいそれと手が出るものでもない。それは石炭であり、石油である。どこの世界でも化石燃料は高いものなのだ。

なのでいつもはマッチで可燃物に火をつけて調理する。

 

私が料理を出来るのかと言われれば、人並みには出来るだろう。だが、決して料理人のように作ることはできない。あくまでもまともな料理を作れるというだけの話だ。

 

そのつぎは各部屋を案内した。あまりにも室数が多いので、これから使うことの多いだろう居間と寝室を案内した他には、恐らくこれは私の屋敷にしか無いだろうが囲炉裏を案内した。

ノエルも流石に囲炉裏は初めて見たのか、不思議そうに見ていたが、私が囲炉裏がどういったものなのかを説明すると、成る程、と納得していた。物分かりの良い子でもあるようだ。

居間に関しては現代の家庭とそう変わるものはない。強いて言うのならば現代日本には少ない和造りであるが。

その他は普通にテレビもある。ソファーは無いが、代わりにちゃぶ台と座布団が用意されている。

 

寝室はこれと言って特にはない普通の寝室だ。布団なので昼間は押し入れに閉まってある。

あとは日本庭園を案内した。この世界では珍しいから、ノエルも大はしゃぎだったのはご愛嬌だろう。

 

取り敢えずノエルには一通り自宅を案内し終えたので私は仕事に戻ろうとしたのだが、そこで一悶着あった。なんと、ノエルがいきなり海軍を見に行きたいと言ったのだ。

恐らく何かあっての事なのだろうとは思ったが、その時はあまり何も気にせずに、ノエルが見たいんだしまあ良いかと軽い気持ちで承諾した。一応センゴクさんにも連絡して許可を取り付けた。私が養子をとったことに非常に驚いていたが。

 

「ノエル、急に海軍を見たいだなんて、一体どうしたんだ?」

 

ノエルには海軍の施設を見せた後にそう聞いてみた。因みにこの後は新兵の訓練の様子を見せる予定だ。

 

「えっとね、私、お母さんみたいな立派な海兵になりたいの」

 

と、ノエル口からは私が全く予想もしていなかった事が吐き出された。

まさか、ノエルが自ら海兵に志願するとは思わなかったのだ。志願理由が何であれ、海兵になる以上は一般人よりも遥かに死が近くなる。当然海賊と最前線で戦うのだから当たり前のことだ。

しかし、海賊にトラウマを抱えているノエルが海兵になりたい等と、私にはその志願理由が復讐以外に何があるのかと思った。

 

だから私はノエルに、「何を理由に志願する」と聞いた。

 

「私、正直に言えば海賊と戦うのは怖い。でも、私みたいに親を失う子が居るのに、海賊はのうのうと生きてるなんて許せない!だから、私は私みたいな子をこれ以上出さないために強くなりたい!」

 

聞いてみれば復讐なんかよりも遥かに立派な答えが返ってきた。

それに、ノエルは自分が今言ったことが所詮は綺麗事だと諦めてはいない。ちゃんと意志がノエルの瞳の奥で確かに燃えている。

 

「本当にそれで良いのか?海兵になれば今よりも遥かに危険に晒される。それに、普通の人よりも何倍も辛くて苦しい事をしなければならないんだ」

 

「それも覚悟の上です!」

 

どうしてもノエルの意志は曲がらないようだ。これでは海兵になるまで梃子でも己の意見を撤回しそうにない。

 

結局、私が折れることになった。

センゴクさんにまた連絡してノエルの海軍入隊を認めてもらい(別に元帥である必要はない)、ゼファー教官の所に行ってノエルの訓練をお願いしたり、その他の手続き諸々をした。

次の日からは早速訓練だった。

私は心配になって見に行った。

 

ノエルは人一倍身体能力があるわけでもなければ体力も人並みだった。武器を扱う技術は文字通り素人。

 

しかし、ノエルは人一倍強く芯が通った心を持っていて、決して曲がることのない意志を持っている。

厳しい訓練の中で、何度失敗して怪我をして、教官に怒られても、それで泣いても、決して諦めることは無かった。初日はそんな感じだった。これが今後の日常となるのだ。

私は、ノエルが、自分の(養子であるとはいえ)娘が毎日傷だらけで帰ってくるのは心苦しいものがあったが、ノエル自身が決めたことだし、何よりもノエルは諦めていない。私に泣きついてきても、弱音を吐いても。

最後にはその心を叩き直し立ち直る。

 

───私よりもよっぽど強いじゃないか───

 

私は単にそう思った。私は未だにこの世界でも前世の日本人の感性を引き摺っている。

痛みには勿論人一倍弱いし、心も弱い。ちゃんとした志があるわけでもなく、ただ時代に流されて生きているだけだ。

確かにこの世界でも有数の実力者であるが、結局モノを言うのは心の強さだ。

諦めなければ必ず報われる。なんてことは言わないが諦めないことが重要なのは分かる。少なくとも諦めなければ可能性は幾らでもあるから。

但し、諦めればその時点で可能性は潰える。

私は強者(じゃくしゃ)だ。ただ己の能力を振り回しているだけの。能力がなければもしかしたら私は弱い。

いや、確実に弱いだろう。確かに、能力も自分の力だが、あくまでも外から貰った力だ。最後に頼りになるのは結局、己の身体と技術。

 

私はこれを機に心を入れ替えようと思った。少なくとも、日本人の心は忘れずに、自分の弱い心を叩き直そうと思った。

 

 

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