山賊達の絶叫が深い森に木霊した。
「た、た、大将!?」
「ええ、その通りですよ」
未だに山賊達は動揺と驚きは隠せないようだった。
まあ、無理もないかな。そもそも、イーストブルーに将官が居ることすら滅多にないのに、そこに大将なんて居たら驚くのが普通だよね。
とは言っても、イーストブルーがあまりにも平和すぎるため、まさかの将官の存在を知らない海賊すら存在すると聞いたときはとても驚いたから、少なくとも大将という存在を知っているこの山賊はそれなりの知識はあるようだ。
もっとも、ガープさんと付き合いがあることから、ガープさんを通して知ったのかもしれないが。
「で、その大将がここに何の用で来たん····いらっしゃったんですか?」
山賊のダダンが慣れない敬語で話し掛けてくる。
「別に無理して敬語なんて使わなくて良いです。別に私は無法者にまで礼儀を求めるつもりはありませんしね。それで、私がここに来た理由ですか····。まあ、端的に言えばガープさんがどうしても私をお孫さんに会わせたいとのことで、半ば無理矢理来させられたんですよ」
「はぁ······」
山賊達はもう何がなんだかという表情で、今にも倒れそうな雰囲気だ。
流石に
「それじゃあな、ダダン。また来る」
「もう来ないでくださいよ!!!」
背後からそんな山賊の切実なお願いが聞こえたのを最後に私たちは森の奥に姿を消した。
いや、割と山賊達も可哀想だね。まあ、世間一般的に見ればどう言い逃れも出来ない悪党だけど、根はそんなに悪くない人たちだし、だからこそガープさんもお孫さんの面倒をみるという条件のもと捕まえていないんだろうし。
ま、ここはガープさんに免じて私もあの山賊達のことは見逃すことにしましょうか。
さて、それはそうと、今はわりかしゆっくりと歩きながらルフィ君の所に向かっている訳ですが······さっきから隣で孫自慢ばかりしてくる親バカ爺ことガープさんが鬱陶しくて堪りません。
口を開けばエースやルフィの自慢ばかりです。
というか、ガープさん······エースくんは海兵じゃなくて海賊ですけど、その懸賞金を自慢してくるのは海兵としてどうかと思いますよ。
まあ、そんなこんなもありまして、ガープさんの孫自慢を聞き続けること十数分。ようやくルフィ君が修行している訓練場?にやって来ましたよ。
流石に船出の一年前とだけあって、原作ルフィ君と殆ど差異は無いですね。
そんなルフィ君も誰かが近付いてくる気配に気付いたようで、こちらを見るなり引きつった顔になり、あからさまに嫌そうな顔をした。
「げぇっ!!じいちゃん!!」
「おう、ルフィ!!久しぶりじゃのう!どうじゃ、海兵になる決心は着いたかのう!!」
「嫌だ!!俺は海賊になるって決めたんだ!!」
「何ぃ!!ルフィ、まだそんなことをぬかしおるか!!?」
そう言うなり何なり、ガープさんは武装色の籠った拳骨をルフィの頭上に振り下ろす。
ルフィ君は勿論それを見て避けようとするがいかんせんスピードが違いすぎて話にならない。
片や大将にも匹敵し得る現役の海軍中将。
片や海賊を志すまだ若い少年。
これでは話にならないだろう。確かにルフィ君は今でもイーストブルーの雑魚海賊相手ならば勝利できるだけの実力は十分にあるが、相手が本部中将では天地以上の差がある。
でも、ルフィ君の頭に出来たまるでアニメのようなお団子たんこぶが出来たのを見ると少し可哀想になってくる。
別に同情した訳じゃない。だって私はガープさんに拳骨を落とされた事は無いからね。
でもまあ、今は何処にでも居そうな好青年のルフィ君が今後、スーパールーキーとして名を世界に馳せると想像すると私もなんかウキウキしてくる。
別に私が海賊になるわけではないのに。
でもまあ、前世ではアニメだった世界に産まれて、目の前に主人公がいて、私はその敵側の組織の人間だ。
相容れない事はないが、組織で対立している以上は軋轢もあるだろう。
それにしてもルフィ君がさっきから私に好奇心の目線を送ってくる。もしかしなくても私のことを誰だろうと思っているのだろう。
その好奇心に答えるべく、私はガープさんの横に並び自己紹介を始めた。
「初めまして。私は海軍本部大将シアだ。そこのガープさんと同じ海軍に居る。今回はガープさんにルフィ君に私を会わせたかったみたいなのでやって来たのだ。どうぞよろしく頼む」
「おう!!よろしくな!お前、俺のこと知ってるみたいだけど、俺はルフィ!!海賊を目指してるんだ!」
ふふふ。本当に元気な青年だ。
まあ、ガープさんはまたルフィ君の海賊宣言に目くじらを立てているようだけれども······
それにしてもルフィ君は私が大将と知っても全然動揺しないな。確か、天然だったな。
成る程、私のことを······というよりは大将のことを知らなくても当然だな。
「ところでよぉ、そっちの白い姉ちゃんがさっき言ってた“大将”ってのは何なんだ?」
ガープさんと喧嘩していたルフィ君がふと疑問に思ったのかそんな質問を投げ掛けてきた。
て言うか白い姉ちゃんって······確かに髪の毛は白いけども······
因みに現在はコードネームの黒狐に合わせてスーツは漆黒にしている。だからまあ、白髪が目立つというのも頷ける事ではある。
ともかく、私がそのルフィ君の質問に答えようとした寸前で、ガープさんが勝手にその質問にペラペラと答えだした。
「よくぞ聞いた、ルフィ!!大将と言うのはじゃな、簡単に言えばワシよりも強い!!」
·······いくらなんでも暴論過ぎではないか?
と言うか、ガープさんよりも強いのは確かだけど、確実に全盛期のガープさんを相手にしたら負ける。だって、今でさえガープさんは中将でもトップクラスの実力者なんだから。
ともあれ、そんなことを聞いたルフィが私に興味を示さない筈もなく、一目散に私の元に駆け寄ってきて前を後ろを観察し始めた。
うん。なんだか気恥ずかしいがルフィ君は純粋で下心なんか無いから安心できる。
「うーん······めちゃくちゃ細いな!!」
ルフィ君からはそんな結論を出された。まあ、確かに私は細い。パワータイプじゃなくてスピード重視だしね。
それでも、大抵の中将に力負けするつもりはない。あくまでも大将という地位に居るということはそう言うことだ。大将は海軍の正義の象徴でなければならない。
でも、私から言わせてもらえば、ルフィ君だって今まで見てきた男達に比べれば随分と小柄で細身だ。でも確かに筋肉はしっかり付いてるし、腹筋も割れている。
因みに私も腹筋は少しばかり割れていたりする。流石に女だから見た目も少しだけは気にするというもの。
「ふっ、ルフィ君。細くても私は強いぞ」
と、私は少し自慢げにそう言い放った。