「えっと、はい?私が中将にですか?」
「うむ。その通りだ」
私の問いに対してセンゴク元帥はさも当然とばかりに頷く。
「そうですか······参考までにどうして私が昇進するのか聞かせてもらっても?」
「それなら構わない。君の昇進理由は以前任務で行ったガルドの捕縛作戦の功績を鑑みてだ」
「ああ、ガルドですか······」
ガルド、とは私が以前、と言うか一ヶ月ほど前にあった任務で捕縛した海賊の名前だ。二つ名は“千爪”。その二つ名の通り、爪を使った戦闘をする海賊だが、クロと被るかもしれない。しかし、クロとは圧倒的に戦闘力に差がありガルドは新世界の海賊だ。懸賞金も5億ベリーもある。
「そうだ。奴は並大抵の中将よりも実力がある。それを倒した君ならば中将の昇進にも他からの文句は無いだろう。事実、私もシア准将を中将に推薦しているし、他、大将、中将の大多数に承諾と支持を得ているし、何より五老星からの後押しもあるのでな。逆に昇進をしないと言う方に問題があるのだ。さて、ここまで言ったが君は中将昇進を受けるか?」
「はぁ、分かりました。謹んで拝命いたしますよ。全く、面倒なくらいに根回ししてしまうなんて······」
本当に喰えない人だと思う。しかも少しニヤニヤしているのがうざい。
「君ならばそう言ってくれると思っていた。早速だがここに君を中将に任命することを証明する書類が出来ている。勿論受け取ってくれるな?」
満面の笑みを浮かべてこちらにその書類を渡そうとしてくるセンゴク元帥の顔は、失礼ながら物凄く気持ち悪いと言わざるを得ない。
「受けとりますよ······それよりもセンゴクさん。お顔が緩んでいて、正直気持ち悪いです」
「おっと、それはいかんな」
と、気付いていたのかいなかったのか、私が注意した途端に顔を引き締めるセンゴクさん。遅い。
「全く······まさか私がガープさんの位に追い付くなんて思っても見ませんでしたね。まあ、あの人には到底及ばないですが」
「あいつか。確かにな、あいつは実力だけならば大将並みだが······はぁ、仕事のサボり癖さえなければいいやつなんだがなぁ」
とこのように愚痴をこぼす元帥の相手をするのは私だ。ともあれ、これで私も中将になってしまったので、同時にクザンの部下という立場も解任された。これからは自分で独立するか、それとも大将の下に就くかどちらかなのだが······
「それで、シア准将改め中将はどうする?君が独立すると言うのならば私が軍艦一隻と部下位は見繕ってやれるが······」
「ええ、では独立させてもらいます。それと、部下に関してですが副官は私自ら選んでも構いませんか?前、訓練生を見に行ったとき気になる人が居ましたので」
「おおっ!君のお眼鏡に叶う奴がおったとはな!分かった、それについてはそう手配しておこう」
「ありがとうございます。何から何まで」
「構わんよ。シア中将ならば将来は大将まで上り詰められるだろうからな。少なくとも私はそう見込んでいる」
「過分な評価、ありがとうございます。それでは私は副官となる訓練生を見てきますのでこれで失礼します」
「うむ、わざわざすまんかったな。私も明日までには君が乗る軍艦と要員は用意しておこう」
「本当にありがとうございます」
私はそう言い残して執務室を後にした。
■■■■
場所は変わって海軍本部の訓練施設。
「ゼファー教官、お久し振りです」
「ん、おお!シアか、久し振りだな!お前、中将になったそうじゃないか、出世しやがったな!!」
「ありがとうございます。これも教官のご指導あっての事だと思っていますので」
「ハッハッハ!相も変わらず謙虚な奴だな、お前は。で、今日は何しにここに来たんだ?」
「ええ、今日は私の副官になる訓練生を見に来ました」
「副官って、お前、独立するのか」
「ええ、それで、訓練生の“セリカ”って居たでしょう。その人を呼んできて貰えませんか?」
私が探し人の訓練生の名前を出すと、ゼファー先生はめんどくさそうに髪をむしって口を開いた。
「あぁ、あいつか······それなら飛び級にさせたよ。今頃海軍本部少尉になってるだろうな。あいつを副官にするならあいつはフリーだから大丈夫だ」
「そうでしたか······それほどまでに優秀だったとは」
「ハッ、お前が言うんじゃねぇよ。お前だって飛び級しやがったじゃねぇか」
「?そうでしたっけ、記憶にありませんね」
「はぁ、何で俺んとこばっかに問題児が来るのかねぇ」
「でも、その問題児に感謝する教官も教官ですけどね」
「まぁ、な。あん時はホントに感謝してるぜ。なんたって俺の宝モン守ってくれたんだからな」
ゼファー先生のあの時と言うのは、ゼファー先生が率いていた訓練艦がドフラミンゴに襲われた時の事だ。あの時私はまだ少佐だったが、特別教官として同乗していたときに偶然ドフラミンゴが襲ってきたのだ。その時、私が時間稼ぎして、ゼファー先生が何とか撃退することに成功したのだが無茶をしたせいで私は一ヶ月近く治療に専念する羽目になった。
訓練生の人達にはなんとか死人は出なかったものの重傷者は出てしまったのは悔やまれる所です。
ともかく、そのお陰でゼファー先生は今も海軍で教官として新兵を訓練している。
「あの時は流石の私も死んだかと思いましたよ」
「はっ、良く言うぜ。退院してすぐにドフラミンゴに仕返ししに行こうとした馬鹿が」
「なっ、馬鹿とは聞き捨てなりませんね!?いかにゼファー先生が恩師とはいえ、言って良いことと悪いことはありますよ!?」
「馬鹿を馬鹿と言って何が悪い。あの時俺が止めなかったら確実にお前、死んでたぞ」
「むー。確かに、あの時の私はどうかしていたとしか言いようがないですが······」
「そうだろ。·····と、それはそうだが、お前、そろそろセリカに会いに行けばどうだ?」
「おおっと、そうでした。すいません、では私は行きますね」
「おう、たまにはまた顔出しに来い」
「ええ、それではまた」
■■■■
「私をお探しとの事ですが、シア中将殿。私にどのような用でしょうか?」
私は現在、本部の一室を借りてセリカ少尉に会っていた。セリカ少尉は金髪碧眼のいかにもお嬢様然とした外見をしていて、赤色のスーツが非常に似合っている。
かくいう私も、客観的に見れば白銀の長髪に整った可愛らしい顔と非常に均整の取れたプロポーションと体型に恵まれている。ちなみに私は白いスーツです。
「単刀直入に言いますが、私はあなたを副官に任命します」
「私を、で御座いますか?」
「ええ、私はあなたが良いのです」
そうですわね、としばし思案顔で何事かを考えたあと、何かを決めたような顔をしてセリカが口を開く。
「分かりましたわ。中将のご指名とあらば是非もありませんね。私、セリカ少尉はシア中将殿の副官を謹んで拝命致しますわ」
「ふふ、あなたならそう言ってくれると思ってた」
そうして私に初めての副官ができた。