セリカ
セリカを副官に任命した翌日、センゴク元帥は約束通り、私の乗艦と人員を用意してくれていた。
それからの事だ。私はまず、貰い受けた軍艦をベガパンクに協力してもらって改装して蒸気機関とスクリューを取り付けた。外輪を取り付けなかったのは単に速度が落ちるからだ。
それにしても、ベガパンクは本物の天才だった。会ってみて分かる。この世界にほとんど浸透していないスクリューの概念を、私がほんの少し説明しただけで理解して見せた。
まぁ、そのお陰でスクリューを取り付けることができたのだけど。
で、スクリューを取り付けたとは言っても常時使っているわけではない。使う場面としては主に
まあそれはともかく、私の部隊を創設した後は半年くらいはひたすらに訓練と習熟の日々を重ねた。ほとんど新兵だらけの戦闘要員に私とセリカが指導をして、それ以外の非戦闘員の船医やコックはそちらの方面の技術を磨いてもらったが、最低限自衛を十分に行える位には鍛え上げた。
センゴク元帥が配慮してくれたのか私の部隊には女性海兵が多い。
まあ、多いと言っても元々女性が少ない海軍だから部隊の1/3といった位の割合だけれど。
で、私はその新兵の中でも優秀な人物をもう一人見繕って副官に任命した。名前は“ディフェンス”で男だ。
とにかくその男は硬い。名前が身体を表していると言えるほどガチガチの防御力だ。
その代わりスピードはそれほどでもないが、それでも私の隊の平均以上はある。
しかも、曹長という地位にも関わらず、六式の一つ、鉄塊をも習得している。
私は全てを習得しているし、セリカは月歩、剃、嵐脚の三つを習得しているので、三式使いだ。
私の隊で六式の何れかを使えるのは私を含めて三人だけで、最終的には戦闘員は全員六式の内の一つは習得させたい。
「シア中将殿、前方に海賊船です。確認したところ、懸賞金5000万ベリー、爆音海賊団の“爆音”ウィリスですわ」
「ふーん、そう。なら捕縛するよ。停船警告を出したあと、指示を無視したなら砲撃を開始するように」
「了解しましたわ」
「さーてと、久しぶりの海賊だけど、その程度じゃ楽しめそうもないか······」
■■■■
俺は爆音海賊団船長のウィリスだ。俺はオトオトの実を食べた音人間だ。俺は主に爆音を出して敵を倒すが、実は超音波とかも出せたりする。
「船長!前に海軍です!!」
で、なんか部下によると海軍が居るらしい、最悪だぜ、全く。
「くそが、何時も通り俺が沈める」
そう言って俺は立ち上がる。俺の爆音は軍艦すら沈める威力を持つが、やはりそれ相応に体力を削る、が、やらねぇ訳にはいかねぇ。
「船長、海軍が停船しろと言ってますけど?」
「はぁ?そんなもん無視に決まってんだろ!」
なにバカなこと宣ってやがる!俺たちゃ海賊だぞ!!海軍なんぞの言うことなんて聞くわけないだろ。
······ほら、案の定撃ってきやがった。まあ、無駄だがな。
「スゥゥゥゥゥ─────ガアァァァァァァァァァ!!!!!」
俺の声は衝撃波となって軍艦に向かう。
「はっ、終わったな······何だと!!?」
俺は、あり得ねぇ光景を見た。衝撃波の波紋すら見える、誰がどう見ても高威力な攻撃が何の予兆もなく終息した。
「は?······何だ、何しやがったぁ!?」
その時、俺はあまりにもの怒りで回りを見ていなかった、だから、気付かなかったんだ。
「はあ、さっきから君は五月蝿いなぁ····私の鼓膜が破れてしまったらどう責任を取ってくるんだ?」
突然俺の背後から女の声がした。
「っ!?誰だ!!?」
「はぁ、一応名乗っておいてやろう、私は海軍本部中将シアだ」
「────!?」
その名前を聞いて、声すら出なかった。海軍本部中将シア。その名前を聞けば大抵の海賊は震え上がる。それほどに海賊の間では有名な女海兵だからだ。
奴は、海賊の間で“死神”として恐れられている。死神の由来は奴の戦闘スタイルにある。
俺は、伝聞でしか聞いたことはねぇが、どうも黒い鎌を使って戦うらしい。
そうして圧倒的な強さで海賊を捕まえてくから今の異名が付いたらしい。
「随分怖じ気づいてる様だな。最近、私に会う海賊は皆そうだ、面白味もない」
「くそっ!?」
奴がいきなり鎌を現したから思わず仰け反っちまった。
「くっ、ガアァァァァ!!!!」
俺は先手必勝とばかりに奴に音の衝撃波を放つ。
「くどい、あまりにも単調で単純すぎる」
そう言って、奴は鎌を前に構えて、衝撃波が奴の鎌に当たって、消滅した。
「はぁ?」
あまりにも間抜けな声が俺の口から出た。何だ?何なんだ?何をしやがった?
何も分からねぇ。奴が鎌を構えたと思ったら衝撃波が消えていた。意味が分からねぇ。
「フフフ、訳が分からないとでも言いたげな顔をしているな。貴様には永遠に分かることは無いだろう。さらばだ、『闇の泉』!」
奴がそう言った瞬間、奴が持っていた鎌が形を崩して、何か黒い円形の場所が甲板に出来た。俺はその上に立っている。
「あ?」
は!?何だよ、ホントに何なんだよ!!?足が、沈んでいく!!?
「抜けねぇ!!?」
しかもどれだけ力を入れても全く微動だにしない。
「フフフ、貴様は私に大人しく捕まることしか出来ないのだよ。」
その言葉を最後に俺の視界は暗転した······
■■■■
目の前で頭まで完全に沈んだウィリスを見届けて、能力を解除した。するとそこには無傷で気絶しているウィリスの姿があった。
彼の海賊団の船員は、彼が自分の大技を打ち消されて混乱している間に私が能力で全員捕まえておいた。
ホント、捕まえるときにこの能力は楽だ。
闇の中に落とすだけで大抵の海賊は気絶してくれるから本当に簡単な仕事だった。
そして、私は捕縛が終わったことを伝えるために電伝虫をポケットから取り出してセリカに掛ける。
「セリカか、今捕縛が完了した。私がそちらに戻り次第砲撃でこの船を沈めろ」
『了解しましたわ』
「ではな」
そんな短いやり取りだけして電伝虫をもう一度ポケットに仕舞い直した。
それからすぐに捕縛した海賊全員を縛り上げて、能力者のウィリスだけは海楼石の手錠をして私の闇の中に放り込んで月歩で軍艦まで戻ってきた。
「お疲れ様ですわ。後は私達が処理しますのでシア中将殿はお休み下さいませ」
「そうか、じゃあ頼んだ」
こうして、また一つの海賊団の旗が下ろされた。