その日、世界に一つのビッグニュースが舞い込んで来た。
世界新聞により報じられたその内容は、海軍の新大将四人についての事だった。
“赤犬”ことサカズキ大将、“青雉”ことクザン大将、“黄猿”ことボルサリーノ大将、そして、“黒狐”ことシア大将。
その四人の大将を迎えて、海軍は新たに四大将の体制を確立することになった。
それと同時に、海賊の間でも悪名高い赤犬と黒狐ことサカズキとシアは海賊からは恐れを以てして迎えられた。
それと同時に、史上初の女性大将となったシアの知名度は民間、海賊問わずに広まっていった。
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私が大将になってからはその殆どは遠征任務や書類仕事になった。なので、相対的に海賊を自ら討伐する機会は減ってしまった。
だけど、自由度も高いのが大将だ。ある程度は自分の判断で動けるし、一々元帥に指示を仰がなければならないということも無かった。
それと、私の副官であるセリカ中佐はその実力をメキメキと伸ばし、ついに准将という、将官に至った。
もう一人の副官であるディフェンス軍曹も一気に佐官である少佐に昇進している。
その他私の部隊の戦闘員は全員少なくとも伍長以上の位を有している。
大将という立場上、おいそれと本部の外に赴くことは以前よりも難しくなったが、私の場合は未だに積極的に海賊をインペルダウン送りにしている。
殺すのは本当に最低限に止めているけど、それでもどうしても殺さなければならない状況もあった。
現在は原作開始まで後二年に迫っているが、私がするべきこと何ていつもの仕事しかない。来るべき頂上戦争もまだ先だし、そもそもルフィが船出して僅か一年で出来事が多すぎる。
どう考えてもそれに一々私が全て対応できるはずがないし、そこまで規模の大きくない出来事に大将たる私が動くことも出来ない。
まあ、シャボンディ諸島でルフィが天竜人を殴り飛ばしたときには動くかもしれないけど、何であんなクズのために動かないといけないのか、毎度そう思うけど、勿論口には出さない。
「はぁー、流石に飽きてきたなぁ······」
「飽きた、ではありません!シア大将殿!まだ書類はこんなに残っていますわ!」
「そうは言ってくれるな、セリカ。私だってやらないといけない事くらい分かっている。分かっているのだが······こうも多いと気が萎えてくるんだよなぁ」
「全くもう。私もお手伝いいたしますからもう少しやる気を出してくださいませ。このペースでは何時まで経っても終わりませんわよ」
「分かってるよ。それじゃあセリカはそっちの書類をお願い」
「了解しましたわ」
そういったやり取りから約二時間で書類全てを終わらせることが出来た。
「シア大将殿、やれば出来るのですから、面倒臭がらずに毎回やっていただければ良いのですわ」
「セリカ······なんだかだんだんと私に対しての当たりが厳しくなってきていないか?」
「そうでございますか?私としては何も変えているつもりはないのですが······」
「そう······まあいいや。それじゃあセリカは次の遠征のための物資の積み込みの指揮をしてきて」
「わかりましたわ。それでは、失礼いたしますわ」
と、そう言い残してセリカは私の執務室を退室した。
そう言えば大将は自分の掲げる正義を自分の執務室に張り出しているのだけど、私もその例に漏れず私の掲げる正義である『曖昧な正義』を流麗な文字で額縁に入って飾られている。
勿論、これは私が自分で書いた文字ではない。自分で書いたらこんなに綺麗にバランスよく書けないだろうから。これはその手の専門の人に任せて書いてもらったのだ。
大将になって変わったことと言えば勿論給料アップはしたが、それよりも部下が増えた。基本的に四大将の何れかの下に着くことになるのだけれど、何故か私のところに殺到してくるので、なるべく女性を優先させてあげている。この世界はどちらかと言えば男尊女卑の傾向があるので、扱いの悪い女性海兵も多いのだ。勿論、“大参謀”つる中将等の大物も居るが、それはほんの一握りですから、私の所に入れて鍛えているのが現状ですね。
それ以外で採用しなかった人がサカズキさんの所や、ボルサリーノさんの所、クザンさんの所に流れることになっている。
個人的におつるさんとは仲が良い。女性同士というのは勿論あるだろう。元々数の少ない女性海兵の中で、飛び抜けているのが私とおつるさんだろうからね。
まだ将来のヒナ少将は階級が少佐だしね。まあ、それでも高いことには間違いはない。
仕事が終わったとはいえ、暇になるわけではない。私の所には絶え間なく部下からの報告が来るし、センゴクさんにも報告しなければならない。
たまにサカズキさんの日本庭園で盆栽を眺めていたりするが、忙しい身なので見れるときもそこまで長くはなかった。
「ディフェンス少佐、次の遠征は諸事情により私が行くことが出来なくなったので、全指揮権をセリカ准将に委譲すると伝えておいてくれ」
「はっ、了解しました、シア大将閣下」
目の前のディフェンス少佐はそれはもう巨漢の男だった。身長三メートルは優に越える体躯に、その熊を思わせる毛深さと獰猛そうな顔。筋骨隆々の優に私の三倍近くの太さのある腕。
全てが戦闘に特化しているような男だった。
「私からは以上だ。それでは仕事に戻ってくれ」
「それでは失礼します」
そう言ってディフェンス少佐は退室、一人残された私は深くため息を吐いた。
「はぁーー。何で私が“レヴェリー”の護衛に選ばれるんだ······」
そう、私はレヴェリーに向かう王族の護衛に指名されてしまった。何故大将の私が護衛に指名されるのかは疑問に思ったが、今回護衛する王族はネフェルタリ家だった。
そう、この世界で名君と名高いネフェルタリ・コブラに指名されたのだ。流石に王族の指名とあらばさしもの大将でも断るのは難しい。それこそ、バスターコールレベルの大事でもなければ断ることは出来ない。
それに、私としても作中屈指の名キャラであるコブラ王に会いたかったので二つ返事で承諾した。
原作から二年前なので、今年が丁度四年に一度の
だが、何でコブラ王が私を指名したのかは、私がどれだけ考えてもついぞ分かる事なく、護衛当日を迎えた。