無事、アラバスタ王国へ到着した。しかし、問題が幾つかある。それはアラバスタ王であるコブラ王にかけられたダンスパウダー持ち込みの疑惑だ。
まあ、これは後に事実ではなかったと発覚するのだけれど、現状はアラバスタの情勢は不安定だ。
王国各地では反乱軍が結成されて、ビビ王女と護衛隊長のイガラムがバロックワークスに潜入。
バロックワークスへの潜入は兎も角として、反乱軍に関しては全てがクロコダイルの掌の上だとは誰も気付かずにいる。それも後二年間もの間続くのだから。
だからこそ今回のレヴェリーではコブラ王のダンスパウダー使用の疑惑についての審議が行われるのだ。まあ、現状は証拠が不十分なので処罰は先送りにされるだろうが。
実は私が部下の一人をバロックワークスに潜入させていたりする。特に今のところはなにもするつもりもないが、まさかとは思うが、万が一にでもコブラ王が処罰されるならば、それを無罪だと証明できるだけの証拠は既に揃っている。流石に無実の人が罪を背負うのは間違っているのでね。
それはともかく、情勢不安定なアラバスタ王家は今回船は世界政府の船で向かうらしく、港には軍艦より一回り位大きな帆船が停泊していた。
既にコブラ王は乗船しているらしい。
船に横付けされているタラップを登ると、コブラ王が数人の側近と護衛を従えて居たので、取り敢えず敬礼をした。
「初めまして、コブラ王。私は海軍本部大将のシアです。今回はコブラ王の要請に応じ、護衛の任に着く次第であります」
「ああ、よろしく頼む。海軍の最高戦力と名高い大将に護衛をしてもらえるとは······限りなく心強い」
「そう言っていただけるとありがたい······さて、そろそろ時間ですから出港致しましょう」
そうして船が出港すると私たちは船室に入り、コブラ王は専用の部屋で休息を取ることになった。
そして今私は、私に与えられた部屋で休んでいる。
「ふぅ、これからずっと見聞色を発動していなければな」
そう言い見聞色を発動させる。常時発動していると練度も上昇するし、持続時間も長くなる。まあ、私以外にも軍艦が護衛しているからそうそう私の出番は無いだろうけどね。
しばらく私がベッドで横になって休んでいると、ドアがノックされる音が聞こえた。
「誰ですか?」
「私だ。ネフェルタリ・コブラだ」
「おっと、失礼しました、どうぞ」
まさか、国王が一人で直接私の部屋に来たものだから咄嗟の事で驚いたが、直ぐにドアを開いた。
「失礼するよ。突然訪れて申し訳ない」
コブラ王は謝罪の言葉を述べてから頭を下げた。こういう様子を見るに、やはりコブラ王は良き王だと思う。こうして、海軍本部大将とはいえ、平民に頭を下げられる国王はコブラ王の他に、元ドレスローザ国王のリク王と他に数える程度だろう。
「頭をお上げ下さい。それで、私の所に訪れたと言うことは何か私に話でもあるのですか?」
「左様······率直に聞くが、シア大将殿は今、私に掛けられているダンスパウダー使用の疑惑についてどう考える」
「本当に率直ですね······そうですね。私はそれは事実ではないと確信します。理由としてはそうですね、先ほどコブラ王は私に頭を下げられました。ダンスパウダーの使用も所持も認められていないのにも関わらず、持ち込みどころか使用するような輩がたかが海兵に頭を下げるとは思いませんしね」
「ふふ····そうか。だが、私がそういう演技をしているだけかもしれないぞ」
「それはあり得ませんね。演技を本当にしている人ならば、演技をしている事を仄めかす様なことは言わない筈ですから。それに、コブラ王の功績は私の耳にも及んでおります。とても良き国王だとか」
「ははは、お見通しというわけか。シア大将殿にそう評価して貰えるとは、光栄だな」
「勿体無いお言葉です。さて、話は変わりますがバロックワークスという組織を聞いたことはありますか?」
私がコブラ王にそう問い掛けると、先ほどの嬉しそうな顔から、一気に真剣な顔付きに変化した。
「聞いたことはある。これはシア大将殿であるから言うが、私の娘····ビビと護衛隊長のイガラムが潜入している。このことは他言無用で頼む」
「勿論。誰にも言いませんよ。私からも追加の情報です。実は私の部下数人にもそのバロックワークスに潜入させているのですが、その部下からの報告によれば、クロコダイルは反乱軍とアラバスタ正規軍が戦う内戦の混乱に乗じて、アラバスタ王国を乗っ取るつもりです。なまじ、相手が七武海の一人なのでその地位から引き摺り下ろすのに時間がどうしてもかかってしまいますし····それに、今のままでは証拠も不十分です。私の強権で下ろせるかもしれませんが、賭け事はあまりしたくありません。どうかそれまで耐えてほしいのです」
「なんと!······そうだったか。分かった、バロックワークスに対しては最大限警戒をするようにしておこう」
「ええ、そうしてください。私としてもなるべく早く証拠を揃えるよう努力しますので」
「そちらもよろしく頼んだぞ。それでは私はそろそろ戻らせて貰うよ。護衛には内緒で出てきてしまったからね。心配させる訳にはいかない。有意義な話ができて良かったよ」
そう言い残してコブラ王は私の部屋を出ていった。
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その後、特に海賊が襲ってくることもなく、無事に聖地マリージョアの港に入港した。
主に世界貴族関係の仕事をしているボルサリーノさんにも会うことが出来た。
流石に私がレヴェリーに乗り込むことはしなかったが、コブラ王は証拠不十分で追及を免れていた。
アラバスタ王国に関しては原作通りルフィ達にお願いすることになりそうだ。
レヴェリーが終わったら次は帰りの護衛任務がある。元々護衛とはそう言うものだし、帰りは行きと違って幾つかの海賊団と遭遇したが、護衛の軍艦だけで無事に撃退出来たので、今回は何の被害もなく任務を終えることが出来た。
コブラ王からはこれでもかと言うほどのお礼の言葉を貰った。