無限の剣製……?   作:流れ水

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第11話

「気配から可能性だけは考えていたけどよ……やっぱ師匠だったか」

 

 濛々と舞う塵の中から響く聞き覚えのある声。

 姿を現す見覚えのあるちょんまげとピンク色の髪。

 悠々と歩くノブナガとその後ろで巧みに気配を消して立っているマチ。

 上階からウボォーギンが床を受け身も取らず粉砕しながら豪快に着地した瞬間、サクラの足元から無数の気配が襲い掛かる。

 

 床を貫き、サクラを中心に円で囲むように出現する10の念糸。

 円を収縮するように迫る全方位からのほぼ同時攻撃。

 そう、ほぼ、である。同時攻撃にも見える糸の攻撃には、刹那とも言える隙間が存在していた。

 その刹那の連撃の隙間を感覚で読み抜き、サクラは【村雨】を閃かせる。 

 

 

 ぶれ、消えるサクラの右腕と刀。

 視界を駆ける不可視の何かと白い光。

 それがサクラの斬撃だと認識出来たのは、オーラを変化させて作られたマチの念糸が周を使った時と同じように、オーラでものを感じとる事が出来るからであり、念糸から凄まじく鋭いもので斬られた感覚が伝わってきたからである。

 また、白い光の正体は念能力に関するものではなく、余りに鋭く速いサクラの斬撃が大気と擦過によって生じた摩擦発光現象であると、マチは冷静に分析していく。

 しかし、分析に思考を割いていたが故に、マチが念糸を伝い、何かが駆け抜けていった事を知覚した時には、――両指があらぬ方向に捻じ曲げられ、ズタズタに引き裂かれた皮膚から折れた白い骨が突きだしていた。

 

 

 切り刻んだ糸で覆われる視界。

 腕から血を垂れ流して背後に下がるマチの動きをオーラの気配で認識しながら、ウボォーギンの拳の一撃を右刀で受け流し、その拳の力を盗み、左刀に乗せノブナガの一閃を打ち払い、次なるウボォーギンの蹴りを左刀の反動を利用して勢いを得た右刀で迎撃。同時に【村雨】から衝撃波を放ち、牽制しているように見せかけながら一部の床の耐久力を蝕み、即興の落とし穴を形成する。 

 

「な——ッ‼」

 

 踏み込んだノブナガの足が先ほどまで問題無かったはずの床を踏み砕き——姿勢が揺らいだ事により、ノブナガの一閃から鋭さが消える。

 そして、そんな一閃がサクラに届くはずがなく、刀で迎撃すらせずに半歩足を動かすだけで一閃は虚空を切断した。

 

 渾身の一閃が空を斬る事によって生まれたノブナガの致命的な隙。そこへ当然のようにサクラの光刃が振り下ろされるが、ノブナガは一瞬の判断で振り下しの反動を利用、上体を深く沈ませ、被害を右肩を浅く裂かれる程度で済ませ、さらに前へ踏み込み、刃を切り上げた。

 床を削り、火花を散らしながら迸る極低空からの斬撃は、サクラの蹴りと激突し、……甲高い金属音を鳴らしながらサクラの靴底に受け止められた。

 

 何故、靴がノブナガの斬撃を受け止められたのか。

 その答えは、切り裂かれた靴底から覗く鈍い鋼色の刃が全てを示していた。

 

 サクラが靴底に仕込んでいた刀の刃。

 その刃にノブナガの斬撃は受け取られたのである。

 片足一本で。

 実に涼しげな表情でサクラはノブナガの斬撃を受け止めていた。  

 

 確かにノブナガの膂力はサクラに勝っていた。

 しかし、サクラの念【無限の剣製】による具現化した剣の制動操作とサクラ自身の膂力、そして、操作に特化した能力を持つ靴底に隠されていた刃【祢々切丸】の力を合わせた場合、サクラの力はノブナガの膂力など軽く上回る事を、ノブナガは知らなかった。

 

 晒されたノブナガの首元を狙い、まるで罪人を裁く断頭台のギロチンのように振り下ろされる光の刃。

 鋭く、速く、疾く、大気を燃やすほど速く振るわれた光刃をウボォーギンのオーラを収束させた拳が迎え撃つ。

 

 周囲に吹き散らされる颶風と衝撃波。

 拮抗する剛拳と光の刃。

 だが、少しずつ、【貧者の薔薇(ガンマレイ)】がウボォーギンの拳を焼き斬り、肉と骨を切り進み、――横薙ぎに振るわれた【村雨】がウボォーギンの腕を両断。

 

 足元で床を蹴り、一度下がろうとするノブナガ。

 その動きを察知したサクラは刀を踏みつけ、封じようとするが、ノブナガが刀に込めていたオーラを弱め、刀をわざとサクラに叩き折らせる事で背後に下がり、体勢を立て直す。

 

 突如、裂ける大気。

 身に迫る何か。

 隠が施されたマチの糸を大気の揺らめきで認識したサクラは【貧者の薔薇(ガンマレイ)】を振るい切断。

 踏み込み追撃の一撃を放とうとするが、ウボォーギンは一足でサクラの間合いから離れ、ノブナガの横まで下がり、ノブナガが刀を構えてサクラの動きを牽制する。

 

「……すまん」

「何がだ? もし、左腕の事を言ってるなら、これは俺のせいだぜ。気にするな」

 

 切断されたウボォーギンの左腕を見て、苦い表情を浮かべるノブナガに、ウボォーギンは余裕の笑みを見せた。

 

「それよりもだ。あのピカピカ光ってる左の刀、結構ヤバいぜ」

「ああ、掠っただけだっていうのに、全身灼けるような痛みが走ってるからな。俺の場合、まともに喰らえば一発でお陀仏だろうな」 

 

 だらりと垂れ下がり、力がまるで入らない右腕に、ノブナガは右腕一本で構えていた刀を両手持ちに持ち替えた。その瞬間、まるで火山が噴火したようにノブナガの纏うオーラが爆発的に増大していく。

 この世ではない何処かを見つめているかのように消えていくノブナガの瞳の光。

 吐いた吐息から漏れる血の混じった赤色の蒸気。

 制御しきれない余りの力にひび割れ崩壊していくノブナガの足元の床。

 そして、ノブナガが足を踏みしめた瞬間、サクラの視界からその姿が消えた。

 

 辛うじて捉えられたノブナガの筋肉に動き、視線、呼吸。

 踏みしめた時に生じた轟音から斬撃の軌道を逆算し、衝撃波を推進力に替える事で、辛くもノブナガの振り上げを【村雨】で迎撃する。

 ミシミシと悲鳴をあげる筋骨。

 踏みしめていた床から強引に引っこ抜かれ、上階に吹き飛ばされる肉体。

 上階の天井を破壊しながら流れていく景色。 

 轟音と共に動く人の気配に、サクラは両刀、両腰に納められた2本の刀、靴底に隠していた刀の制動を操作することで、勢いを緩め、靴底の刀を踏みしめる地の代用品とする事で、目の前の虚空に突然姿を現したノブナガの振り下しの斬撃をギリギリ【村雨】で受け止め、——右刀、【村雨】から指、手首、腕、肩へ伝わる莫大な運動エネルギーをサクラは体内で制御、循環させ、そのエネルギーを加え、爆発的に加速した左刀の斬撃を放つ。

 

 衝突する刃と刃。

 爆発する衝撃と高熱がノブナガの頬を叩き、——乾いた金属音を奏で、サクラの光刃がへし折れ、黄金の光を纏った刃の破片達が飛び散る。

 その全てがノブナガへ飛び散るが——

 

「おおおおおおおオオオオッ‼」

 

 ノブナガは咆哮と共にその破片の全てを視認し、軌道を読み切り、全力でオーラを放出し、肉体の挙動をさらに加速させる事でいずれの破片も悉く打ち払い、靴底の隠し刃に乗るように空を翔けるサクラに追いすがる。

 

 ——激突。

 

 ノブナガの刀から放出される斬撃の性質を有したオーラを紙一重で避け、馬鹿みたいな圧力と速度で放たれる斬撃を最小限の力で打ち払い、捌き、時には肘打ち、蹴り、膝蹴りを用いて巧みに剣閃を逸らしていく。

 先人たちの実戦の中で培われた邪道とも言える技術。それらを惜しみなく駆使しながら、サクラはノブナガの剣閃に食い下がる。

 剣閃を逸らす度に響く、手足がもげそうになるほどの衝撃。

 身を蝕む激痛はすぐに消え去るが、手足の感覚まで消失していく。

 

 加速するノブナガの動き。

 制御しきれていなかった超人的な力。

 体内から湯水の如く湧きあがらせ、大気に霧散させていたオーラをノブナガはサクラとの戦闘の中で掌握していく。

 

 そして、——遂に跳ね除けられる【村雨】の刃。

 身を両断せんとする斬撃に対し、もはやサクラの肉体の反応は間に合わない。

 それを理解しているノブナガはきっと勝利を確信しているだろう。

 

 だからこそ、サクラは左腰の一振りの刀にオーラを収束させた。

 

 発動する刀の能力。

 発生する陰陽極、磁気。

 

 ——【雷切(レールガン)

 

 次の瞬間、抜刀される左腰の一振りの刀に、ノブナガは身構える間もなく、ビルの壁全てを貫通し、町中の道路の中心に吹き飛ばされていた。

 

「うぐぅ…」 

 

 脇に、打ち付けられた背中に焼けるような痛みが走り、酸素を取り入れた肺から激痛が駆け抜ける。

 刻まれた腹から臓腑が零れ落ちそうになり、口から血反吐が溢れ出す。

 叩き斬られ、さらに短くなった刀を骨折した両腕で握り締め、ノブナガは立ち上がる。

 内臓が零れ出ないよう腹を刻まれた裂傷を治癒能力を強化する事で塞ぎ止め、折れた両腕の骨を膨大なオーラを消費して繋ぎ合わせ、サクラの襲撃に備えるが、——追撃はなかった。

 

 

 【雷切(レールガン)】の鞘と刀には、磁石に似た性質を付与されている。

 磁石の性質であるS極とN極を自在に切り替えることで吸着と反発を操作でき、磁力の強さは刀に流すオーラの量により変化する。

 

 抜刀の際に吸着の力を用い、デコピンにように鞘に力を溜める事で抜刀時の刀の速度を加速させ、抜刀時に同極に切り替え、磁力の反発力でさらに斬撃を加速させる。

 それがこの刀の本来の運用方法である。 

 

 サクラのオーラを介さない肉体的素養はキルアやゴンなどといった天才と比べれば低い。

 確かに、一般人から見れば、サクラの肉体的スペックは高い。化物のように。

 【黒のコート(バブレバヤーン)】の能力で強化再生を何度も繰り返し、上限を何度も突破したからこそのものなのだから当然だろう。

 しかし、それでもなお、【雷切(レ ールガン)】を全開で用いれば、サクラの肉体はその反動に耐え切れない。

 仮に全力を用いた場合、抜刀した腕は引きちぎれ、刀は何処か訳の分からない場所にすっ飛んでいくだろう。

 

 サクラのオーラ量で発揮する【雷切(レールガン)】の全開に、サクラの肉体がついていけないのである。

 

 なら、肉体で抜刀術を行うという部分を念の操作で補えれば——念の操作で【雷切(レールガン)】の動きを操り、抜刀する事が出来れば、肉体は反動を受けないのではないだろうか?

 

 

 ——【雷切(レールガン)

 

 オーラの操作で抜刀された白刃は、大気を燃やす勢いで弧の斬線を描き、ノブナガの斬撃と衝突した瞬間、ノブナガが、幻のように掻き消える。

 次々と壊れていくビルの壁や床、凄まじい速度で遠ざかっていくノブナガの気配で、サクラはノブナガが吹き飛んでいった事を認識した。

 

 赤熱化した【雷切(レールガン)】の刀身がガラスのように叩き割れ、大気に舞う花弁のように散っていく。

 遅れて、まるで巨大な刃に一刀両断された事に今頃気付いたかのように、ビルそのものが斜めにズレ、地に崩れ落ちていく。

  

 その瞬間、背後で大気が揺らめいた。

 背筋を走る死の予感。

 

 叩き割れ、空を舞う【雷切(レールガン)】の破片。

 その一つに、サクラの背後で、歪んだ笑みを浮かべるウボォーギンの姿が映り込んでいることに気が付いた瞬間、

 ――横腹を衝撃が突き抜けた。

 

「がっ――ッ」

 

 吹き飛ぶ景色、まるで流星群のように流れていく星々。

 ビルの壁全てを貫通し、まるで流星のように町中に落下する肉体を、サクラは他人事のように認識していた。

 

 へし折れ、肺や臓器に突き刺さった肋骨。

 ミンチのように潰れた五臓六腑。

 感覚が消失した肉体に、【黒のコート(バブレバヤーン)】が膨大なオーラを消費しながら叩き折れた骨を正常な位置に繋ぎ直し、千切れた筋線維や潰れた臓腑を再生していく。

 

「——ッ!」

 

 道路に剛速球で打ち付けられ、へし折れる背骨。

 再生し終えた事で正常に動き始めた痛覚が、激痛を呼び込み、サクラの意識を現実に引っ張り出す。

 

 トラックのコンテナに衝突してもなお、勢いを緩めずに吹き飛んでいく景色。 

 全身がバラバラに飛び散ってしまいそうなほどの衝撃に、視界が赤く染まり、喉元から血反吐が込み上げてくる。

 

 加速する思考の中、サクラは先ほどの衝撃でへし折れた右腕を無理矢理動かし、何とか右腰の刀、【紅桜】の鯉口を切り、その白刃を覗かせる。

 瞬間、白刃から溢れだした赤黒い水、血液がまるで生き物のようにサクラの肉体を包み込み、緩衝材とブレーキの役割を果たして吹き飛んでいく肉体の勢いを停止させた。   

 大気に漂う、むせ返りそうなほどの血の香りに眉をひそめそうになりながら、サクラは【紅桜】を自分の心臓に突き立てた。

 

 貫通し、心臓を穿つ白刃は、血液を吸収した直後サクラの体内に戻され、血管を通して肉体の隅々にまで循環、行き渡り、――それら全ての制動をサクラは【紅桜】を介して念操作の制御下に置いていく。

 急激に加速する血流の流れ。

 その流れに耐えきれず、弾ける毛細血管。

 皮膚下で蠢く血液が、千切れた筋繊維や折れた骨を繋ぎ止めていく。

 

 サクラの体から放たれるオーラが、まるで羽ばたく寸前の翼のような優雅な線を空中に描きながら心臓を穿つ【紅桜】へと収束し、――身体を包み込んでいた血液に波紋が生まれ、その形を波打たせながら2m以上の鬼の面を被った鎧武者に変貌していく。

 

 胸から引き抜かれる【紅桜】の白刃。

 その刀身から赤い血が溢れだし、2m以上の大太刀を形成した瞬間、サクラは一筋の赤い雷光のように駆け出し、撤退するべくヨークシンの郊外へその身を弾丸のように加速させた。

 

 

 肉体の反能速度には限界が存在する。

 オーラの強化によってある程度反応速度を速めることも出来る。

 だが、サクラは強化系と相性が最も悪い特質系である。

 

 戦闘中、脳のリミッターを外し、処理速度を加速させているサクラからすれば、肉体の反応速度は酷く鈍いのである。  

 

 故に、脳から放たれる電気信号を介さず、思考によって肉体を操作出来るようになった現在のサクラは、これまでとは別次元の速度で、高層ビルの壁を蹴り、ヨークシンの町中を跳んでいく。

 限界以上まで稼働される筋線維は血のコーティングによって補強され、決して引き千切れない。

 固体と流体の狭間を行き来する赤い鬼面の鎧は、サクラの動きを阻害せず、地を蹴った際に生じる脚が自壊し兼ねない衝撃を代わりに受け止め、パワードスーツのようにサクラの身体能力を飛躍させる役割を果たしていた。 

 

 ビルの前に着地したサクラの首筋を鋭い斬気が薙ぐ。

 その気配をビルの壁の向こう側から感じた瞬間、巨大な三日月形のオーラの斬撃がビルの壁を斬り飛ばした。

 直前まで全く感じられなかった不意の一撃は、辛くも反応したサクラの【紅桜】の刀身に受け流され、遥か遠くにあったビルやマンションなどの高層建築物を切断して空の向こうへと消失する。

 

 切断され、傾いていくビルの壁ごとサクラを切り裂かんとするノブナガの無数の斬撃の対処に、サクラは全神経を知覚に動員。

 余分な情報である色彩などの情報を視界から排除。

 脳の処理速度をさらに加速させ、サクラの受け流しの隙を突き、振るわれる不可視の斬撃を迎撃する。

 

 見えない刃の錯綜。

 闇夜に咲き乱れる火花。

 

 ノブナガのこれまでの技、成長、経験、力。それら全ての情報から斬撃の軌道を逆算。

 未来予知染みた先読みをもって、サクラはノブナガの斬撃を最小限の力で打ち払っていく。

 

 突然、崩壊するアスファルト。

 弾け飛ぶ民家やマンション、車両の窓ガラス。 

 何処かで事故が起こったのか、爆発音が響き、街から黒い煙が立ち昇り始めた。

 

 弾ける空気。

 巻き起こる旋風。

 視界を駆ける黒い人影。

 

 残像すら捉えられない疾き太刀筋をサクラは上体を倒すように踏み込む事で、避け、一閃を放つ。

 断ち割られるサクラの背後にあった民家が、旋風に煽られ、その形を崩壊させながら、空に舞いあげられていく。

 

 幾つにもブレるノブナガの姿。

 返しの一刀がサクラの太刀を弾き、追撃の太刀が放たれるが、——慣性を無視した肉体では有り得ない動きで、サクラは追撃の太刀に対応。

 受け流す。いずれの必殺を秘めた太刀もサクラの遅速弱剣が、受け流し、打ち払う。

 

 無駄なき遅速をもって速きを制し、弱をもって剛を制す。  

 確かに、ノブナガの動きはサクラよりも遥かに速い。

 だが、ノブナガに限定すれば、未来予知レベルの先読みが行えるサクラの動きには一切の無駄が省かれている。

 振るわれる太刀は全てノブナガの斬撃を弾く最適解の軌道を描き、ノブナガの太刀の悉くを迎撃していく。  

 視界に走る不可視の斬撃の正体。

 それが殆ど刃のない刀の柄から伸びる刀状のオーラであることや伸縮自在であることなどをサクラは識っていた。  

 

 ノブナガの剣戟を交わす度に、【紅桜】の刀身を通して、腕に流れる衝撃。

 それらはサクラの肉体を傷付ける事なく、体内を流れる血液と鎧を通して一回り循環し、【紅桜】の刀身に伝播。

 【紅桜】の攻撃力と速度を爆発的に高め、ノブナガの斬撃と刃を交えていく。  

 

 天を占める大質量の物質。

 ノブナガの切り裂いたビルがサクラとノブナガに崩落していくも、錯綜する刃の余波により一瞬で細切れに変化し、瓦礫となってヨークシンの街並みに降り注いでいく。

 

 圧倒的な膂力と速度。その力を制御する卓越した技量。

 一瞬にして間合いの遥か外に移動するノブナガに、サクラは決して追いすがれない。

 不味いと分かっていながらも、——追いつけない。

 

 

 大上段に構えられ、天高く掲げられるノブナガの刀。

 空へ版図を急激に広げ、天に昇る柱に姿を変えるオーラの刃。

 

 天を穿つオーラの圧力。 

 振り下されるは、避けようも、受け流しようもない一撃。 

 これまでの小細工は通じない。

 だが、それを理解していながら、サクラは両脚で、足の指で、大地を捉え、掴み取り、泰然と刀を構え、

 

 

 ——サクラは、天から落ちてくる斬撃に、刃を振るった。

 

 

 全身を押し潰す未曽有の質量。

 それはサクラの鎧の小手を容易く粉砕。

 衝突の衝撃が吹き飛ぶ大気。

 サクラが大地に受け流したエネルギーが、大地を波打たせ、周囲にあった建造物は崩壊。

 圧に抗おうとした総身の筋肉が限界を超え、断裂。 

 肉体を支える骨がへし折れ、鎧がひびを入れて割れていく。

 粉砕した筋骨を鎧の一部が皮膚に浸食し、繋ぎ合わせていくが、繋がった端から引き千切れ、肉体は壊れていく。

 

 そして――

 

 町に刻み込まれる一文字の斬撃。

 切り拓かれた一筋の崖。

 その底でサクラの意識は目覚めた。

 どれほど意識が無かったのか、分からない。

 1秒か、1分か、……。

 真っ暗な視界、肌の感覚、香りから自身の居る場所を割り出し、念の操作で起き上がる。

 

 右肩から胸まで縦割りに切断されてはいるが、血は溢れ出ない。致命傷足りえもしない。

 もはや襤褸切れと化した黒コート。すぐ傍の地面に転がっている半ばから断ち切られた【紅桜】の刀身。それらがサクラの身を守ってくれたのだろう。

 

 サクラの意に従い、傷口から伸びる糸のような血液が、切断された肉体の断面を正確に繋ぎ直し、血液そのものが潰れた肺や臓器の代用品の役割を果たし、体内に酸素や栄養を巡らせ、サクラの身体を動かしていく。  

 

 切り立った崖から覗く夜空。

 煌めく星達の中に、一つの気球と気球から伸びた念糸に引きあげられる死にかけのノブナガを発見するが、今のサクラに戦闘の継続は不可能。

 生命を維持するので、精一杯の状態である。

 

 しかし、……どうやら彼らはサクラの存在に気付いていないらしい。

 その事実に気付き、サクラは安堵の吐息を漏らすも、緊張を緩めず、隠を用いて気配を消して、崖を背にするように座り込む。

 

 

 風に乗り、徐々に小さくなる気球の姿。

 その姿が地平線の向こうに消えるのを、息を潜め、見送った。

 

 

 それから数日。

 

 血液操作による自動操作で全身の身体機能を代用していたサクラは【黒のコート(バブレバヤーン)】を具現化。ある程度回復していたサクラのオーラを根こそぎ食い潰し、潰れた肺や臓器、断裂した全身の筋肉、複雑に叩き折れた骨などの全身の機能を強化再生した。

 結果的には、身体能力や肉体の頑強性が向上したが、こんな体験はもう御免である。

 

 暫く護衛は不可能と判断され、ホテルで療養に努めていたサクラに、ヴィットーリオが落ち込み、本当に暗い顔をしながら、幻影旅団が街から去った事を伝えてくれた。

 あれだけの戦闘だったのだ。親しい部下の1人や2人、死んだのかもしれない。

 だが、次の日に見舞いには、とても楽しそうに街の被害を報告してきたのだから、ヴィットーリオのことは本当によく分からない。

 急段な変化についていけないサクラはいつも通りヴィットーリオの言葉を適当に聞き流し、適当に頷き、適当に戦闘内容を伝え、さらに興奮するヴィットーリオをぞんざいにあしらった。 

 

 

 誰であれ人は、サクラのオーラと雰囲気に畏れを抱く。

 だが、ヴィットーリオは決してサクラを畏れない。

 寧ろ瞳を輝かせてサクラを見つめる始末である。

 けれど、そんなヴィットーリオだからこそ、サクラとの交友関係を続けられるのかもしれない。

 ふと、サクラは自分がらしくない想いを抱いていることに気付き、苦笑を浮かべ、夜空を見上げた。

 

 

 

 




 ノブナガ
 技の初動を見せた時点で平然と対応してくるサクラに対抗するべく念能力を作成。

 【鬼刃】 強化系×放出系
 自身の潜在オーラを3分間に圧縮し、放出する。(要はウルトラマンである)

〈制約〉
 刀の柄を両手で握る。
 カロリーをオーラに変化させ、貯蔵しておく。

〈誓約〉
 カロリー消費。
 使用したオーラは24時間回復しない。
 過剰な強化による肉体的負荷。(息を吐いただけで血が混じったのはこの誓約の一端である)

 これまで能力発動による緩急の法により、残像を作成。
 爆発的に上昇したノブナガの動きに相手が対応出来ないうちに殺害していたため、能力の制御が甘かった。
 しかし、サクラの死闘を切っ掛けに、積んできた鍛錬と才能が覚醒、急激に制御出来てなかった力を掌握し、パワーアップした。 

 イメージ元はキング・アーサー聖剣無双とウルトラマンである。


 【祢々切丸】 具現化系 死者の念
 全長約325cm、刃長216.7cmの大刀。
 所有者の意に従い、自在に動く。
 それだけの能力だが、動く速度、力、共に強力であり、単純に強い刀と言える。

 サクラが靴底に仕込んでいたのは、この刀を短刀サイズに構成し直したものである。 

 【紅桜】 具現化系
 刀身から生物の血液を吸収する。
 吸収した血液を刀身から放出する事も可能。
 
 作中で血液を操作していたのは、サクラの【無限の剣製】による、剣の制動操作である。
 【紅桜】に吸収された血液はサクラの操作能力の制御下に入る。
 その能力を利用して使用されたのが、血液操作である。
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